見出し画像

小旅行

電車が止まった。アナウンスを聞いていると、この先で合流する路線で人身事故が起きたらしい。しばらく電車も動かないようだ。

埒が明かないので、駅で緊急停車している車両から降りて、改札を出た。私と同じような帰宅難民が駅前でさ迷っている。運転再開予定時刻は未定とのこと、電車の中でじっとしてるよりは動いたほうがマシだ。
とにかく一刻も早く帰りたかった私は、振替輸送を利用して近隣の路線を乗り継ぎ、帰路の路線まで向かうことにした。

緊急停車した駅からひとつ先の駅、そこで別の路線へと乗り換えることにした。幸いにも次の駅は徒歩10分ほどで着く。何度か歩いたことのある道だ、迷うこともない。

乗り換えする路線の駅へ行くと、改札はごった返していた。やれこの電車は○○へ行きますかだの、定期ないけど大丈夫ですかだの、右往左往支離滅裂和気藹々である。でも、普段いるはずのない数の人がいるっていう状況、ちょっと非日常ぽくてワクワクしてしまう。こんなときに不謹慎かもしれないけど。

話をわかりやすくするために具体名を出す。
私が立ち往生を食らったのが、阪急淡路駅。人身事故が起きたのは淡路駅の所属する阪急京都線だ。私は阪急十三駅に行きたかったのだが、京都線の電車が動いていなかった。なので、阪急淡路駅すぐそばのJRおおさか東線のJR淡路駅に行き、新大阪まで振替輸送を利用して向かった。さらにそこから、地下鉄御堂筋線を使って、新大阪から西中島南方駅へ。そこから阪急南方駅へ行くもまだ電車が動いておらず、南方駅から1駅先の十三駅まで、25分かけて歩いた。これ地元民じゃないとまったくわかんないよね。逆にわからないよね。

正直、めんどくささとワクワク感が半々であった。乗ったことの無い路線に、振替輸送という状況ではあるがタダで乗れるわけだ。人も多い。振替輸送の電車に乗っていると、同じ境遇であろう人を何人も見かける。私はあえて「楽しんでいる感」を出す。一体誰が気づくというのか。

普段は歩くこともない道を歩くことになった。いつもは電車の車窓から眺めているだけの道だったが、非常時とならば致し方ない。コンビニでアイスを買って、えっちらおっちら歩き始めた。本来ならば計上されなかった出費、そう考えると少しbad。

へぇ、こんなところにこんなもの!なんてことも、初めて歩く道ではよくあること。耳に流れ込む音楽も聴こえないほどに、風景を見ることに夢中になっていた。

自分の好きな感じの風景を見つけてしまう。街歩きの醍醐味。帰宅難民であることも忘れて、人目を気にしながらシャッターを切る。それがこの記事の最上部に貼ってある写真。二又の道、こういうのなんて言うんだろ、ともかく雰囲気があってすごいよかった。

いつもは飛ばすプレイリストの音楽も今日は聴いてみようという気持ち。いつもは10分で帰れる道のり、今日は2時間かけて進んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?