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方法の開発 5

過去の動画の原稿も公開です。

こんにちは。研究の過程を、課題の発見、方法の開発、客観的証明の三つのステップからなると言う話をしました。今回はその中の、2の方法の開発についてです。

方法の開発は研究の世界では最も華々しい成果とされる 研究の肝中の肝です。

私の専門の生物学分野に関する研究の最高峰は、みなさんもご存知のノーベル医学生理学賞もしくはノーベル化学賞とされていますが、これらの受賞者の研究の内容のほとんどはこの方法の開発に関するものです。

例えばiPS細胞の山中教授の研究も、iPS細胞という新たな実験材料を作る方法の開発と言うことができますし、 本庶先生のがんの免疫治療に関する功績は、開発したような抗体を用いた新たながん治療の方法の開発と言うことになるわけです。

その他挙げればキリがないくらい、これらの受賞者ほとんどは、今までの世の中にはなかった全く新しい方法を開発して、 そのことで今まで実現が不可能だったことを可能にした功績を評価されたものです。

こう考えると方法の開発は研究において、実社会において、最も意義深い成果だと言えます。

方法は研究の発見の限界点を決めます。ある方法を使って様々な人が努力をします。あるところまで進むとやれることの中身が類似してきて、このことを通じた発見の目新しさがどんどん失われます。

新たな方法はこの限界点を取っ払う力を持っています。これはまさにイノベーションそのものということができるでしょう。

方法の開発の重要性を一通り理解していただいたところで先に進みます。では私たちはどうやってそうした方法の開発を行うことができるのでしょうか。

このことの回答は新たなアイデアを出す方法と似ているといえます

よく必要は発明の母だと言われますが、大きな方法の開発の様々な過程を振り返ると、多くの場合実はこれは当たらないという風に思えます。

なぜなら実際に適応できる方法を開発した経緯を見てみると、 方法の原理自体は一見何の関係もなさそうなところからもたらされることが非常に多いのです。

発見者は一見何の関係もないようなことを一身に追求していくうちに、あるときにふとそれが全く別の用途に用いることができることに気づくわけです。

そうすると何かを目的に一身にその追求をしていることからはこうした大きな方法の発見に繋がらないことになります。絶望的な結論ですが、えてしてそうなのかもしれません

真っ直ぐ目的に向かう人の現実的な対応としては、幅広い視野を持ち可能性を広げておくぐらいしかないのかもしれません。 あるいはそのこだわりの発見を求めるのであれば他人の発明した方法大いに利用すれば良いのだと思います。

けれど一方で自分が一身に追求していることが自分の本来の目的以外のところに大いに役に立つ可能性を秘めている事にも気づく必要があります。これはもはや神のみぞ知るとしか言えませんが そうした運を掴むためにも、世界の誰もがやっていないような先進的なことを試みる必要があると言えるでしょう。

どんとこいサイエンスアンドテクノロジー。目の前に見えていることだけに集中していては、大きな飛躍が得られない。今回はそんなお話でした。

たどたどしい動画も是非。チャンネルではもう少し軽い動画もあります。


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