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第99回全国高校サッカー選手権~PK戦までもつれこんだ名勝負~

■11日 第99回全国高校サッカー選手権 山梨学院(山梨)2―2青森山田(青森) PK4ー2 (埼玉スタジアム2〇〇2)


毎年、この時期に高校生の一生懸命でひた向きな姿を見て感動を覚えるのが選手権(全国高校サッカー選手権)だ。2020年度は新型コロナウイルスの影響で夏のインターハイが中止となり、3年生にとっては最初で最後の全国大会となった。

この決勝戦も手に汗握る熱い試合を見せてもらった。

3大会連続決勝戦に進出し、ここまでの4試合で15得点2失点を記録している青森山田高校と11大会ぶり2度目のタイトルを狙う山梨学院高校が激突した。

試合開始から青森山田が右サイドを崩しクロス攻撃。「ゴールをもぎ取るぞ!」と宣戦布告をする形となる。[4-1-4-1]の布陣を組む青森山田は、ボールを持てば直ぐにサイドに展開し波状攻撃を仕掛けていくが、[4-4-2]の布陣で、しっかりと守備ブロックを敷く山梨学院は粘り強く弾き返した。

しかし、先制点は劣勢を強いられていた山梨学院に転がる。12分、左サイドから侵入すると、ガラ空きとなった右サイドのスペースにポジションを取った広澤灯喜が右足を強振。ブロックに入ったDF2枚の間を潜りぬけゴールネットを揺らした。この時ばかりは重心が前に傾いていたことで”攻→守”への切り替えが遅かったことも失点の要因だろう。気落ちせずボールを前に運ぶ青森山田だが、相手GK熊倉匠の守るゴールを割れない。追加点を狙うべくアンカー脇を突くことで活路を見い出すが、青森山田の圧倒的な攻めに押される。

また、今大会、SNS上で何かと話題に上がっているロングスロー戦術。これがゴール前の攻防を熱くさせていた。57分、右サイドの高い位置で、そのロングスローから青森山田が同点に追いつく。スロワーから放たれたボールは混戦の中、松木玖生がシュートを放つが守護神・熊倉がこれをブロック。しかし詰めていた藤原優大が押し込み試合を振り出しに戻した。一気呵成に出た青森山田は、その2分後にもCKからタビナス・ポール・ビスマルクがヘディングシュートを打つがクロスバーに跳ね返されるも、63分、右サイドを崩しグラウンダーのクロスを入れると、ゴール前に走り込んだ一人がスルー。中央に飛びこんできた安齋颯馬が蹴り込み逆転に成功した。

だが、これで試合は終わらない。ボールを奪ってからパワーとスピードを出せずに苦しむ山梨学院だったが、78分、一瞬の隙を突いた。カウンターから狭いスペースに走り込んだ野田武瑠がゴールを狙って同点に追いついた。

90分間で勝負を決めたい青森山田は、82分にCKのチャンスを藤原がヘディングで狙うもポストに嫌われ、89分にはフリーだった仙石大弥がシュートを外してしまい、2-2のまま延長戦へと突入した。

延長前半7分には山梨学院にビッグチャンスが訪れる。1点目と同じような形だった。右サイドに引っ張られたことで左サイドにスペースが生まれたが、途中出場の茂木秀人イファインが躊躇したことでチャンスは泡となって消えていった。

その後、お互いの集中力が切れないままスコアは動かずPK戦に投入した。両チームの1人目が決めたあと、青森山田の2人目をGK熊倉がストップ。さらに青森山田の4人目が外し、4人すべてが決めた山梨学院がPK4-2で勝ち、3,962校の頂点に立った。


1校を除けば、他のすべては敗者となるのが勝負の世界。例え、どんなに素晴らしいパフォーマンスをしても、試合に負けてしまうこともある。この試合も青森山田に多くの決定機はあった。それを決めていれば違った結果になっただろう。優勝候補に挙げられ、その重圧を跳ね除けながら戦ってきたことも簡単ではなかったはずだ。

優勝した山梨学院には心からの賛辞を、青森山田は、涙の分、悔しさの分だけ、まだまだ強くなると思う。

Jリーグの初代チェアマンを務めた川淵三郎氏は自身のツイッターを次のように更新した。
『クラマーコーチが1960年最初のミーティングで、理想の指導者像を1.fair play2.good game3.winと黒板に書いた。good gameとは技術、戦術、体力、精神力で最高のものを見せること。今日の高校選手権決勝を見て両校にそれがあった。勝ち負けだけを除いて。
指導者が以って範とすべき歴史に残る名勝負』

全ての力を出し切った両校に拍手を送りたい。

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