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第4回mokuba「消える移動、生まれる移動」を開催しました

LCCやシェアリングエコノミーの台頭など、話題が尽きない移動分野。昨今では、ラストワンマイルを押さえたビジネスがペイメント領域を押さえることで既存の産業構造を大きく変えるような動きが海外を中心に起こっています。そんな中で、今回のmokubaでは「消える移動、生まれる移動」というテーマで《移動の本質》について考えてみました。

第1部:Keynote Speech

今回はANAデジタル デザイン ラボ・チーフディレクターの津田佳明さんにお越しいただきました。常にチャレンジする精神を忘れないANAのDNA、その根源から最新の取り組みまで幅広く、かつ密度の濃い講演をいただきました。

「ANAってチャレンジの歴史なんですよ」

飛行機に乗ったことがある方なら一度はみたことであろう「JL」や「NH」航空会社コード。JLがJALなのは納得であるが、なぜNHがANAなのでしょうか?

「じつは、NHって日本ヘリコプターの略なんですよ。当時のANAは2機のヘリコプターを有する会社でしかなかった。でもいつか、ジェット機を飛ばせるような航空会社になろうという野望はあった訳です。最初からANAはチャレンジのDNAを持っていたんです。」

そう話してくれた、津田さん。今となっては1日に何便もの国際便や国内便を飛ばしているANAですが、そのルーツがヘリコプターにあるとはとても驚きでした。

そして、立ち上げ以降もチャレンジ精神を忘れなかったANA。
例えば、今となってはよく見かけるようになったペイントジェットも初めにトライしたのはANAでした。

(くじらを機体全体にあしらった「マリンジャンボ」)

ほかにも、全席通路へのアクセスを可能にしたビジネスシートの開発やLCCとの協業体制の一早い構築など、時代の変化を見越したチャレンジをしてきたANA。そのANA DNAの中で「デジタル デザイン ラボ」という部署が出来たのもある種当然だったのかもしれません。

『破壊的(Disruptive)』な存在となるのは誰か?

社内でもっとも迅速な意思決定を実現し、イノベーション創出のエンジンであることを期待されているのが、ANAに2016年に設置された「デジタル デザイン ラボ」です。このラボのANAの中の立ち位置について、津田さんは次のように語ってくれました。

「次に『破壊的(Disruptive)』な存在となるのは誰か?ということに常にアンテナを張り巡らせ、個人の思いからボトムアップでプロジェクトを創り上げていくことが、僕らのミッションなんです。」

たとえば、航空会社に対する「破壊的」な存在として例に挙げたのが、価格破壊を起こすLCC、移動の手軽さを実現するドローン、そして宇宙空間へ人間を運んでくれるロケットでした。こういった分野について、どこよりも早くキャッチアップの必要があると訴える、津田さん。

ほかにも「乗ると元気になるヒコーキ」や「赤ちゃんが泣かなくなるヒコーキ」など、これまでの常識では考えられないようなコンセプトでプロジェクトを進めるANAのデジタル デザイン ラボのメンバー。
そんな彼らが近年特に注目しているのが「アバター」分野だと言います。

「瞬間移動」を実現する、ANA AVATAR XPRIZE

「航空業界にとって一番怖いものってなんだと思います?冗談みたいな話ですけど、どこでもドアがそうなんですよ(笑)
どこでもドアがあると、そもそも移動をしなくてもよくなるんです。それなら、どれだけ距離が離れてても、その場の感覚や匂いなんかが感じられるとすれば、どこでもドアと同じような条件が揃いますよね。まさにANA AVATAR XPRIZEはそんな『瞬間移動』を実現しちゃおうというプロジェクトなんです。」

新しいプロジェクトについて、興奮気味に説明してくれた津田さん。
VR・AR(視聴覚)、ハプティクス(触覚)、ロボティクスなどの技術を複合させて、自分が実際に移動せずとも、現地にいる「アバター(=分身)」を用いて、物理的に物を動かしたり触ったりできる最先端テクノロジーの実現を目指して始まったのが、ANA AVATAR XPRIZEプロジェクトなのです。

XPRIZEとは?
XPRIZE財団は、「イノベーション界のカリスマ」として有名な、ピーター・ディアマンデスさんが設立した財団で、アメリカ西海岸を拠点に、多数の財界人や起業家などが本財団を支援し、世界中のイノベーターのチャレンジをサポートし続けている非営利団体です。
この財団が展開し、世界中で参加が可能な「XPRIZE」という賞金レースがあります。レースのテーマは、「人類に利益を与える技術開発」。
条件をクリアして優勝したチームに多額の賞金を贈ることで、様々なテーマに挑むモチベーションを促し、結果として世の中の課題解決を早期に実現可能にすることが期待されています。(ANA AVATAR XPRIZEページより)

なんと賞金総額は1000万ドルとのこと。現在まさに動き出したプロジェクトですが、すでに複数の自治体とも協力をしながら未来の「瞬間移動」を目指しています。

まさに、いつの時代においても新しい移動を生んできたANAの取り組みに発想の刺激をいただきながら、ワークショップパートに入っていきます。

第2部:Workshop「消える移動、生まれる移動」

今回のワークショップでは、過去から現在、そして未来の移動までを見通し、「移動の本質を捉え日常の移動体験をアップデートする」ことをゴールにおきました。

アイスブレイクで自分自身の「黒旅行(自分史上最低最悪な旅行体験)」のシェアをしてもらいながら、旅行や移動についての感度を高めてもらいます。

その後は、津田さんの講演や、自身の経験、知識などから過去〜未来にかけての「移動体験」を考えてもらいます。
シェアリングでの移動が一般的になってくる、そもそも移動しながら生活をするようになる、などなど複数の未来の事例も出てきました。

次に、その事例を共有してもらいながら、グループ内でそれぞれの移動の事例同士がどういう共通点を持っているのか議論してもらいました。この複数の事例の共通点こそ、時代を超えても変わらない、「移動の本質」となります。

その後は、自分の中での「困った移動体験」に思いを巡らせてもらいます。
いまは当たり前と思っていても、「移動の本質」を充てがうことで「新しい移動としてアップデートできる」可能性があるかもしれません。

「自分の中で疑問のある移動体験 × 移動の本質要素」によって新しい移動体験(=アイデア)を創出してもらいます。

その後は、いよいよプレゼンです。

・あえて目的地まで少し遠い通路を提案してくれるアプリ
=これまでと違った視点で移動することで、新しい発見や出会いを与えてくれることが価値。

・電車版ティンダー
=同じ方向に向かう電車に乗る人同士でマッチングをすることで、つらい朝の移動時間などに新鮮な刺激を与えてくれる。

などなど、個性的で面白いアイデアが多く生まれました!

まとめ

今回は、前回に引き続き「自身の経験」に重点をおいたテーマでイベントを行いました。最終的なアイデアを聞くに、自分の生活の中で使っているイメージがとても想像できるものが多かったです。
「移動の本質」を講演やワークショップを通じて考えてもらいましたが、参加者に聞いてみると「やはり本質を考え出すのは難しかった、でもいつも使っていない脳みそを使っているようで面白かった」ということ。
なかなか日常的に「これってなんで面白いのか?なんで意味があるのか?」なんてことを考える機会は少ないですが、こういった場で少しいつもより俯瞰した思考ができるのはいいのかもしれないな、と思いました。

次回のmokubaの勉強会は「公共交通」がテーマ!移動関連のテーマが続いていますが、果たしてどのようなものになるのか・・・!?
次回のnoteもお楽しみに。

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