知らないということのディスアドとレオパレス
私は今話題のレオパレスのとある一室に住んでいる。
件の引越し対象となった物件ではないと、先日ポストに手紙が入っていた。
とりあえず一安心したが、同時に酷く落胆もした。
というのも、私がここに住んでいるのは自分の意思ではないからである。
所謂社宅扱いで、会社が契約して、私を住まわせてくれているのだ。
会社の規定には、限度額までならば補助が出てそれ以上は自腹を切る、と書いてある。
先輩社員に、限度内だったら自分の好きな場所に住めると言われていたが、人事部の人間に相談したところ、慣例としてレオパレスを使っているからそうしてくれ、と言われたことと、辞令が出て2週間で引っ越さねばならなかった為、不本意ながら今の部屋で暮らしているのだ。
それが落胆の理由だ。
私は建築法にはすこぶる疎い。
と言うより、自分の興味のあること以外の知識はほぼないと言った方が正しいか。それが法令ともなれば尚更である。
私はレオパレスの件のニュースを見て、今住んでいる建物はきっと引っ越し対象だろう、と思ってしまっていた。
何故ならば、あまりにも他の部屋の音が聞こえすぎるからだ。
『レオパレス伝説』などという有名なコピペがあるが、それは軽く凌駕している。
隣の部屋のインターホンやLINEの通知音が聞こえるのは序の口。上の部屋で風呂又はトイレを使えば水の流れる音は聞こえるし、何より驚いたのは、隣の部屋の【食事をしている時の音】か聞こえるのだ。
皿と皿、またはフォークやスプーンがぶつかり合う音。これが、聞こえてくるのだ。
それほどまでに遮音性が低いのだ、きっと引っ越し対象の部屋だろうと、私は思っていた。
が、実際は対象外と判断された物件であり、今も私はこの部屋にいる。
いつもやかましい隣人は今日はもう寝たようではあるが、さっきまで上の階の住人が洗濯機を回していたらしい。正直、やかましかった。
それでも、この物件は、建築基準法を満たしてしまっているらしい。
先にも書いたが、私は自分の興味のあること以外には疎い。
即ち、建築基準法など名前と、火災報知器の設置義務程度しか知らないのだ。
その為、この建物が如何に遮音性が低くともそれを愚痴ることは出来たとて、問題点を指摘することが出来ない。
そんなディスアドバンテージを抱えている。
しかしこのディスアドバンテージは解決しようと思えばすぐにでも出来る。
私が今この散文を認めている、掌の中のスマートフォン。これで『建築基準法』と調べれば良いだけだ。
しかしそれをしないのは私に建築基準法への興味がないことと、どうせ仮の住まいだからというある種の諦め、そして何より、七つの大罪にもある怠惰が原因だ。
環境を変えたいならば、今すぐにでも建築基準法について調べ、この建物が基準を本当に満たしているのかを調査し、仮にも満たしていなければ然るべき機関に報告をすれば良いだけの話。
しかしそれをしないのは、私の怠惰が原因である。
知らないというディスアドバンテージと不満を抱えながら、今日もぼんやりと天井を見上げる。
私のやる気が怠惰に勝る日はいつ来るのだろうか。
ともあれ今は、建築基準法について知らないということを知った、という、所謂『無知の知』を得ただけでも一歩前進かなと思う夜明け前である。
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