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あの選択をしたから

私の人生で進路で選べた時ってそんなになくて、いつもだいたい、ここあたりに行くことで決めとこう、みたいな感じで押さえどころを作って次に進むという感じでやってきました。ひとつだけ例外があって、それが留学した時でした。日米の制度の違いもあると思うけど、アメリカの大学にいくつか出願して、合格通知を三つくらいもらったのでした。州立大学の学費の手の届くところで、同じ日本の大学の出身者が合格していて、プログラムが充実しているところ、という基準で選んだ大学でした。それで、最後の一つに絞る時に、大学のゼミの担当教授に相談に行きました。いつも日本政府を批判している怒ってばかりいる韓国人の教授でした。でも自分の先生だから相談してみたのです。そうしたら、心底うれしそうな笑顔を見せて、「〇〇大学には○○先生がいる」と言ったのです。私はその先生のその笑顔を見て、ああ、その先生はそんなに笑顔になるほど素晴らしい先生なんだ、と確信しました。そうしてその先生に習うためにアメリカの大学に行ったのです。最初の学期、その先生は休暇中で授業をしていませんでした。でも二学期以降は授業がとれました。どんなロマンスグレーなんだろうかと想像していたら、なんか、居酒屋から出てきたばかりのおじさんのような人という印象でした。でも素晴らしかった。教えるのも、性格も、本も、全部、一挙一動がすべてエピソードになるくらい素晴らしかった。そして、人生の財産になるようなことを教えてくださった。私にとって人生で数えるくらいしかない素晴らしい出会いとなったのです。卒業後もメールのやりとりが続き、何度かお会いすることもできました。人も紹介してくださいました。卒業後、25年間、ずっとやり取りが続く交流になったのです。今は86歳のおじいさんです。私がこの先生と知り合えたのは、21歳の時、担当教授の笑顔を根拠に自分の進路を選択したからだと思っています。人を笑顔にさせるものが素晴らしいはず、と直感的に思った、あの時の選択は今でも最高だと思っています。

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