劇に出た。登場人物は4人。
新婚夫婦役2人。子どものミキトはじゃがいも役
そしてクリオネ役の私。

台本はこちら。
新婚旅行で北海道へきた夫婦がクリオネと出会う。クリオネが「私はクリオネ」と言ったあと、ジャガイモが川から流れてくる。クリオネとジャガイモが想像していたのと違うと驚き逃げる夫婦。その後、そよそよ泳ぐクリオネと転がるジャガイモが対決。閉幕。

打ち合わせ3分。本番。

みんなクリオネを
知っているのかも分からない
むしろ私も知らない
けれど私はクリオネになった

決め台詞はこれだ
わぁたぁしぃは　クリ・オネッ！（決めっ

子どもや大人の前で渾身のクリオネで
力尽きた。やったよ、あたいやったよ
転がるジャガイモとも戦った
もう無くすものは何もない気がする

その後、子どもたちの可愛らしい劇が
いくつもあった。うんうん。
やっぱりいいよね、子どもたちの劇。

夜の会も終わりが近づいた。

「では、何か言いたいことがある人～」

はーいとスタッフのすみれちゃんが
手を上げた

「さえちゃんのクリオネがもう一回見たいでーす」

いやいやいやいや！と目で訴える私。
キラキラした目で私を見る
すみれちゃんと子どもたち

目を見開くクリオネ。いや、私。
まさかのアンコールクリオネ！！！

もはやクリオネになるしかない
どんな感じだったかなんて
もはや覚えていない
こんな感じだったかなとやってみた

わぁたぁしぃはぁ　クリ・オネ！(決めっ

よく分からないけれど
盛り上がった子どもが一緒にやりたいと
再アンコールクリオネをすることになり
子ども2人を引き連れて
一緒にクリオネをやった

わぁたぁしぃはぁ
クリ・オネ！(決めっ

後から聞くとどうやら
最初の演技のほうが良かったらしい

だよなー
もうやることはないと
全力でやったクリオネだもの
やっぱり1回目が一番の出来だよな

いやいや、そんなのは言い訳で
アンコールで盛り上がりを
見せることのできない私は
まだ本物の女優ではない

ちょっと悔しい

いや、悔しがってる場合ではない
この年でクリオネは恥ずかしすぎる

今夜眠ったらどうかみんなが
クリオネを忘れてますように
たのんます

しかし
このクオリティの低いクリオネが
子どもたちのツボに入るなど
誰が思っただろう

最終日までこのクリオネ劇が続くことを
まだ知らない私は
呑気に川の流れる音を聞きながら
眠りについた