夏の群馬~思いは残さず⑤~
朝起きて「ほーほー」と優しい鳴き声がしていた。窓を開けると電線にそれらしき鳥がいたので写真を撮っていると電線の上を歩き始めた。なんと鳥ではなくて猿の親子。
後から鳴き方を調べてみたけれど「ほーほー」というのは載っていなかった。女将さんが「仲間に挨拶してたんじゃないの。」と言ってたので、そういうことにしよう。
今日は昼まで仕事をして帰る日。午後はみなかみ駅近辺で遊んで帰ろうと計画していた。でも気がかりなことが1つ。女将さんの体調が良くなくて今朝は上の血圧が170あったらしい。
おまけに昨夜、飛び込みで予約が入り私が帰る今日は満室に。お客さまの受け入れや夕食の準備を大将と2人でするには大変じゃないだろうか。そんな思いがふと沸いたけれど、どうすることもできないしと朝食をもりもり食べ業務開始。
チェックアウトしたお客さまの部屋を片付けに入った。各部屋の掃除をし次のお客さまへのセッティングをしていく。
11時。あと1時間で仕事を終えて、私は帰る。先ほどからバタバタと動きまわっている女将さんを見つつ、ドアノブを拭きながら思っていることを切り出せずにいた。
残り30分。女将さんとすれ違うときにふとこう言った「私、さえさんが帰った後、大丈夫かしら。」あぁ、これがタイミングだ。「女将さん。あの、明日から仕事だから泊まるわけにはいかないんですけれど、もし良ければ夕食の準備まで手伝って帰ろうと思うのですが。どうでしょう?」
みなかみの駅までは30分かかる。「民宿を空けられないから貴女を送っていけないの。」と女将さん。「私は終電に乗れれば大丈夫なので、お客さまへ料理を出し終わって落ち着いてから送ってもらうのはどうですか?」「本当に?嬉しい。有難う。」と喜んでくれた。差し出がましいかなと思っていたので言って良かった。
その後、女将さんから話を聞いた大将は、いつもより更に目尻をさげて「残ってくれるんだってな。有難う。」と言ってくれた。「迷惑にならないように頑張りますね。」「馬鹿なこと言うな。居てくれるだけで嬉しいよ。」
と言うことは!なんと夕方まで時間が!?
アルーッ。
懲りない私は女将さんへこう言う。
「女将さん、職場のひとへお土産を買いに行きたいのでもし車を使わないようでしたらお借りできませんか。」
っしゃー!鍵ゲット!
さぁさぁさぁ、私にあるこの4時間。どこへ行こうか。ここからの景色、さいっこう。行ってきまーす!
向かうはみなかみ駅。今度は間違わないぞ。念のため近くの酒屋さんで道を聞く。みなかみ駅を通り過ぎて道の駅へ。そう、初日にきた道の駅に新鮮野菜を買いにきたのだ。
まだ色づいてないミニトマトを毎日眺めてる大将へ新鮮なミニトマトをお土産に。そして自宅で食べる茄子やきゅうりも。
続いては行きたかった湯テルメ谷川!私はこの温泉が好きなのだ。温泉上がりには念願のアイスー!食べたかったよー。
女将さんの大好きなイチジクを買って戻ると喜んで、すぐに食べていた。そんなに好きだったとは。あっと言う間に無くなったからよっぽど好きなんだろう。今度はもっとたくさん買っていこう。
夕方、いつもと同じように準備をしお客さまが夕食を召し上がっている最中にみなかみ駅まで送ってもらった。
相棒のフィットを運転するのは大将。この3日間、本当にお世話になった。よく走ってくれたしよく言うことを聞いてくれた。やっぱり私は運転がドライブがどこかへ車を走らせるのが大好きだと思いださせてくれた。素敵な相棒よ、有難う。
車を降りて挨拶をしドアを閉める。さて、帰ろう。
女将さんはきっと今頃、お客さまへビールをお出ししているかな。大将は夜の買い物へ向かった。
今度は正月にこれる?なんて聞いてくれた。少し先のことだから分からないけれど、きっと雪が深いからどこにも出られないんだろうな。じゃあ、やっぱりスノーボードかな?スキーでもいいな。
なんて思いながら、電車に揺られ帰路へつくワタシなのでした。
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