ばんえい競馬 能力検査中の事象における個人的見解

4/18 この日は今年度最初の2歳、3歳の能力検査実施日であったが、3歳馬は21Rの2頭のみで実質ほぼ2歳馬による試験日。馬場はかなり軽めの水分2.5%~3.5%だったが、例年通り2歳馬は20レース行った中で不合格馬続出。中には3Rのように過半数が中止になる等あったが決して珍しくない光景。

毎年1回目の試験はかなりの数が受けるが、この試験は8月まで10回あり、不合格馬は何回でも再受験できる仕組みとなっている。また、例年多くの馬が合格となり、7月8月となると受験馬自体が少なく、10頭前後まで落ち込む。残念ながらそこまで不合格で残ってしまうと大抵そのまま受かる事なく、競馬の舞台から姿を消すが、中には昨日の2Rで1人気2着だったフジダイビクトールのようにギリギリ合格しながらも勝利を挙げ、活躍している馬もいる。

かつては現在の7倍超の生産量があったばん馬も近年生産者の高齢化、利益率の低下により廃業が相次ぎ、以前は合格率が20%台であったが近年は競走馬頭数確保の観点から合格のボーダーラインがかなり甘くなり、現在の合格率はなんと70%を超えておりその影響で平均能力の低下が見受けられている。

云わばここで受からなくてもまだチャンスは複数回ある状況であった。

今回は20日にTwitter上での指摘から炎上が広がる結果となったが、その後の調査や供述で一致していた事に対し、一部関係者による推測での反論で、「身内が不自然に庇っている」という印象を持たれた事で様々な意見が飛び交い、最終的に愛護団体に目を付けられ、非常に面倒な事を引き起こした事について整理しておく。過去に鈴木は暴行事件で逮捕された経緯がある事がより心象を悪くしているが、あくまで起きた事についての原因、対応の問題点、改善点を考える。

鈴木恵介

帯広市の調査にて能力試験の際馬が言う事を聞かずイライラして蹴ったと供述。以後、鈴木からの発信、発言は無し。本人の申し出により、騎乗自粛中。但し騒ぎになった20日午後の時点で23日の出走投票は終わっていたが、鈴木の名前はなかった。例年、定期的に休養期間をこの時期に設ける騎手である為、自粛が無くても騎乗予定は元々なかった可能性は否定できなく、自粛=例年の休養期間と捉え兼ねられないが…。

帯広市ばんえい振興課

上記の事案により対象騎手へ聞き取り調査実施。上記の聞き取りを行い、リリース。規定通り、厳重注意及び戒告処分。これに関しては名古屋競馬やJRAでも馬の顔に鞭入れや殴打を行った騎手への処分と同等で、現状は妥当。また、今回の事に関し、30日に会見を行うとの話もある。

担当厩務員

上記リリース前に独自の視点で所謂砂食い(鼻が大きな馬は地面に倒れると砂を吸い込んでしまい、肺にダメージを与える事がある)を避ける為にやむを得ず蹴ったのではないかと理由を推測。実際、当該馬は砂食い状態が見られたとの事。

生産者

当該馬生産者は能力検査を馬主と共に見学。取材に対し、「一流のジョッキーには、プライドがあり、言い訳は言わないと思います。そばで見ていた厩務員の言うことが正論だと思いますね。馬が憎たらしくて打ったとは思っていません。砂が入り込んでも違う方法で対処してほしいというのは、分からないでもないですが、市の人は、馬のことをよく知らないんでしょう。鈴木さんと打ち上げで飲んだときは、鈴木さんは、『力及ばず、申し訳ありません』と謝罪していましたが、馬主もその場にいて、『とっさの場合は、仕方がなかった』と意見が一致していました」と発言。

その他ばんえい関係者

ほぼ生産者と同じ見解。但し、帯広市に対しより不満や疑問を発信している。

アニマルライツセンター

完全な部外者でほぼ触れなくていい所だが、23日に帯広警察署へ告発文を送付。


実際の能力検査の状況を見ながら解説していく。

3:30付近で膝を折って前のめりになったがこの時点では馬に前進気勢が見受けられる。しかし3:37付近で完全に顔を地に付け、立ち上がる事を拒否。3:40付近では所謂砂食い状態で口と鼻を地面に付ける状態に。そこで鈴木は手綱を引き顔を上げる動作。その後、何度も引くが馬が顔を地に付けようとする。既にこの時点でタイムオーバーで不合格。3:58で鈴木はソリを降りるが、ソリを外したりせず、引き続き同じ動作を続行。4:03で馬の顔に近づき、より強い力で引き上げ動作。4:05一度目の蹴り。左足で顔というよりは口に当たる。馬は驚き、顔を上げ、その後立ち上がる。4:13鈴木はソリの横に戻り(ソリには乗らず)引き続き馬に坂越えの動作。4:17再度馬が倒れ込む。坂の天板に顔をつけてしまい、膝を折り馬が立ち上がる事へ拒否行動を取る。鈴木は継続して手綱で顔上げの動作を行う。4:38再度馬の顔に近づき、短手綱持ちで立ち上がりを促す。4:44二度目の蹴り。右足で同じ個所に当たる。馬は驚くが立ち上がらず。ここで試験中止、係員へ馬を引き渡しソリを外す。係員は顔を手で上げる動作が少しだけ確認できるが、あくまで馬具外す為の動作を思われる。

この一連の動作だが、問題点として挙げられるのは

①何故不合格確定で続行させたのか?

②何故一度立ち上がった後に継続させたのか?

③蹴る必要性があったのか?

かと思われるが、①、②について鈴木も帯広市も発言が無い為、推測になってしまうが、不合格でも馬に完走させる事で「完走させる勉強、調教」が目的だったと思われる。馬は賢い生き物で、競馬に限らず乗馬等でも疲れた馬を緩めたり甘やかすと覚えてしまって疲れたら止めればいいんだという事をしてしまうのでそれをさせない為にあくまでも完走をさせる事を目的とした行動と思われる。鈴木は砂食いの知識は恐らく持ってはいるだろうが、今回の一連の行動は砂食い防止は主体ではなかったと思われる。そうでないと、一度立ち上がった馬を再度継続させた理由がつかない。もしこれが砂食い防止が最優先なら、一度立ち上がった時点で中止にするのが正解になる。

③については、砂食い防止だろうが完走させる為だろうが共通で、「これをやったらダメなんだぞ、こういう痛い目にあうぞ」というあくまで教育の為で、ばん馬は軽種馬と違い、人間の力では到底敵わないパワーを持っている上、頑丈なのでどこで痛みを伴った教育ができるか考えるとああいう行動しかない為に皮膚が薄く人間の力でも痛みを与えられる顔付近を蹴るという「狭い選択肢の中で選ばざるを得ない行動」だったのではないか。

但し、競馬はレース中でも顔への鞭入れが明確に禁止されているように、顔へのダメージは「虐待」と捉えかねない上、主催者側も「如何なる理由であれ、出走馬を蹴るということは認められず」と発言した以上、今後は教育目的でも許されない事になった。

また、その「教育」も問題行動(例・人噛み、蹴り上げ、暴れ等)を是正目的での叩き行動なら理解も得られるだろうが、今回は馬自身が能力が足らずに疲れ果ててしまった上で、馬が拒否している所を無理矢理叩いて蹴って続けさせようとした事は一般観点からは「教育」より「体罰」「虐待」と捉えられて何も不思議はないだろう。ここで合格できないと馬肉だぞ、という意見も散見されたが、今回は最後の試験でもないし、それだけが理由でその行為を適正であると思うのはやや人間のエゴが強く、それこそばんえい競馬、競馬の存続問題へ発展しかねない。だから、「やり方が間違ってる」という意見が出てくる。

人間ですら受験勉強でどれだけ頑張っても試験時間内で終わらなかったが、全部問題を解けと言われそれが出来なければ蹴られたりしたら今のご時世、どうなると思いますか?言葉を話せる人間ですらそうなるのだから、動物相手にしている業種はより外部からどう見られているのか注意しなければならない時代になったのだ。

ばん馬は愛玩動物ではない。経済動物であり、また競馬以外にも農耕馬、観光馬、そして馬肉として人間だけではなく様々な動物のエサになる等、それぞれ利用価値があって成り立っている。馬の元値が取れない、赤字になるから馬肉に簡単にできない、は馬主の言い分としては理解できるが、それが全ての免罪符にはならない事を覚えてほしい。そもそも、不合格になった2歳馬だけではなく元値が取れて成績が落ちた古馬を市場に出している以上、最初から分かっててやっているのだから。

上記の事から、鈴木の供述に補正を加えると「(完走させる為に立ち上がらせるように操作したが)馬が言う事を聞かずイライラして蹴った」と言葉となり、騒がれている「砂食い防止」ではなく、「完走させる事」という別の目的があっての行動になった可能性が考えられる。これで、①②③全てに説明がつく。馬の身を守る事より、試験合格させるという人間の都合を優先させた結果だからこそ、反省の上で騎乗自粛という結論も納得する。

これに対し、あくまで砂食いを回避する為だったと主張する人達が一定数いるのは、鈴木の供述不足及び帯広市側の説明不足と、ソースがない生産者の話によるものである。擁護意見はあくまで馬の事を思ってやった、という意見、反対意見は馬の事は関係なくただ人間がストレス発散で蹴ったという意見だが上記の通りの内容をよく読んだ上で、考えてほしい。

また、関係者は憶測で話をSNSで広げるリスクを考えてほしい。昨年、全協はSNSにおける注意喚起の研修行いましたよね?自分も競馬に関しては色々ダメな話題出しますが、ほとんど裏付け取れている事ばかりなのですよ。生産者の話も、このご時世で打ち上げや会合はするなと通達が出ている中であの供述はあまりにもお粗末な話で、心象に悪く映ってしまう。

憶測で混乱を起こした上で、完全にとばっちりで全協や帯広市の職員が責任取らされて処分される状況で、かつその職員らに不満を挙げる行動はいくら黒字化したとはいえ、畜産補助振興事業で多額の補助金で海外から繁殖用の牝馬を購入したりしている立場で到底許される行為ではない。

擁護するなら、裏付け取ってから帯広市や全協に事実とは違うから公表を訂正して欲しいと申し入れする事が正しい行動であって、憶測話をSNSで広めて擁護意見同意意見だけ吸い上げて、愚痴を言う事ではない。

変な愛護団体に付け入るスキを自分達で作り出して自分達で分裂している自覚を持ってほしい。


今回の反省、改善点は、

①映像化された事によって一般人に発見されやすい環境、時代になった。より今まで以上に馬や人に対する行動を「見られている」意識を持つ必要がある。それは現場で競馬に関わる全ての人に言える。

②身分を明かした関係者は事実をしっかり認識した上で、推測の域を出ない話を断定してSNSに出さない事。ただの燃料にしかならないし、やるならせめて身分を隠せ。

③鈴木は憎たらしくて蹴ったという認識をあの発言では持たれかねない。何の目的があってあの行動に至ったのか説明しないとならない。またそれを帯広市がカバーした上で、単なる虐待目的ではなかったと発表しケアする必要がある。


以上。

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