TSUTAYAのレンタルが終わる話

 この世界は既に限界を迎えていて、なんとか今まではだましだましやっているが、あちこちで少しずつ崩壊は始まっているのだ。
そしてそれがようやく私の眼の前でも起こったというだけに過ぎないのだ。

・・・近所のTSUTAYAのレンタルが終わる!世界の終わりだ!


 丁度先日貸本版墓場鬼太郎を読み終わった(例の映画に触発されまして)のだが、60年代前半の貸本屋時代の終焉による業界の混乱っぷりが如実に現れていた。
当時の漫画は貸本屋でレンタルして読むのが主流だったが、週間漫画雑誌等の台頭により貸本屋が次々に潰れ、貸本屋用の漫画を出版していた会社も潰れたり漫画家に給料が払えなくなったりしていった。そのため1960年に開始した貸本版墓場鬼太郎は数話おきに出版社を変更しながら連載され、1965年には週間少年マガジンへ移ることとなった。
……ということらしい。現代のレンタルビデオ業界と同じような状況だ。貸本屋に対する漫画雑誌は動画配信サイトということだろう。



 レンタルが終わるTSUTAYAの店員に、残ったレンタル用DVDの販売はするのかと聞いたらまだ何も決まってないと言われた。レンタル終了まで1週間をきっているのにまだ決まっていない……当時の貸本屋ほどではないにしろ現場はかなり混乱しているようだ。店員も哀愁漂う物悲しい目をしていた。お労しや。
なんでもTSUTAYAの多くの店舗を運営している会社はかなり前からレンタル事業からの撤退を宣言していたらしい。そことは別の会社に運営されている店舗も追従しているみたいだ。そういえば実家の近くのTSUTAYAも昨年終わってしまったし、私が行かないから知らないだけで世のあちこちのTSUTAYAレンタルが終了していっているのだろう。悲しいことだ。

 だが、TSUTAYAは悪くないんだ、時代が悪いんだ。TSUTAYAでのDVDを借りるには再生機器が必要だが、それを除けばTSUTAYAレンタルがサブスク等の動画配信サイトに比べて優秀な点は沢山あるのだから……


 では動画配信サイトにないTSUTAYAレンタルの魅力を挙げていこう。

①品揃えの良さ

店内の端末から注文するだけでお取り寄せができる。一週間以内には店に届くので、借りているDVDを返しに行く際に注文していたDVDを受け取り、さらに次のDVDを注文すれば良い。毎週同じ曜日にTSUTAYAに通うのだ。

②安い

取り寄せレンタルは一週間で200円ちょい。安い。
一方で動画配信サイトはどうか?単品レンタルだと300円以上することも多いし、ドラマアニメなどは一話ごとに同じくらいの額がかかることもある。それがDVDなら一枚に複数話入っているのだ。古いアニメだと一枚に7話くらい入っている。なんてお得なんだろう。

③サブスク特有の手間やリスクと無縁

動画配信サイトの賢い使い方として、その時観たい作品に合わせてサブスクを乗り換えるという手がある。
観たい作品が配信されているサブスクを探す→登録→観たかった作品を観る→もったいないので同じサブスクで観られる他の作品も観ておく→1ヶ月以内に解約する
という流れだ。面倒くさいし解約忘れのリスクも怖い。それに比べてTSUTAYAは安くて作品数が豊富なのでそれ一つで事足りるというわけだ。

④特典映像

DVDやBlu-rayにはオーディオコメンタリーや特典映像がついている物も多い。メニュー画面が凄く凝っている映画もある。例を挙げると

・「アイアムレジェンド」や「28日後」、「死霊のはらわたⅢ」なんかは映画のラスト数分が2パターン作られていて特典映像になっている。両方観て気に入った方を自分の中の正史としておきたい。
・「ショーンオブザデッド」はオマケのコミック風アニメーションまで観ないと勿体ない。この映画が名作扱いなのは特典映像込みの評価。
・「処刑軍団ザップ」では映画のオチの部分がまるまるカットされて未公開シーンとなっているため、本編だけではあまりに消化不良。
・アニメ「物語シリーズ」には原作者描き下ろしのキャラクターコメンタリーが全話に収録されている。オーディオコメンタリーの脚本ってどうやって作っているんだ……??

等々。わざわざ一枚ん千円する円盤を購入するまでして観るほどではないが、2、300円くらいかけて観る価値は十分にある。


⑤字幕

字幕に対応してない動画サイトは多い。
DVDなら、吹替映画に字幕をつける事ができる。
ちなみに私は吹替用字幕ではなく字幕用字幕の方を付けるのが好き。同じセリフでも口パクに合わせる都合などで吹替と字幕の内容は違っている。そのニュアンスの違いを楽しむのが通ってもんよ。……私だけ?


 以上、DVDレンタルの利点を5つ挙げてみたが今の時代の人達はこういった事に魅力を感じないのかもしれない。令和の日本人は"物質的なモノ"に重きを置いていないんじゃあなかろうか。"情報"や"体験"みたいな本質的な部分に重きを置いている?今どきDVDやBlu-rayを買うのもコレクターくらいなものだろう。私も狭いアパートの自室に物を置ききれなくなるからなるべく買わないようにしてるし。
これも時代の流れか。

寂しいねえ。

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