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MOTTO2ndLIVE小説風レポ(七海うらら出演シーンのみ)

 2月4日渋谷WOMB。
 晴天とはいかなかったが、それでも雨や雪という事もなくそこは安堵していた。

「ぁ……」

 少し早めに来て並んでいたが徐々に並ぶ人が増えてきて、その中に七海うららのパペターを持っている人を見つけた。
 今日はワンマンではなくフェスライブ。そのためこの集まった人の中には当然七海うららを知らない人もいる。その中で自分と同じうらんちゅを見つけられて嬉しかった。
 そして時刻は16時。
 中へと案内されリストバンドや特典を受け取りロッカーへ。

「あ、まだ7番空いてる」

 推しである七海うららにちなんで7番のロッカーに上着や荷物を入れ、七海うららのパペターやダイヤモンドのペンライトを手に奥へ。
 プレミアチケットに申し込んでいたためその甲斐あってかなり前の方に陣取れた。

「めっちゃ近い……!」

 七海うららの1stワンマンの時も前の方だったが、その時よりもだいぶステージに近い。冗談ではなく本当に目と鼻の先、と言っていいほど。
 推しの姿をこれほどの至近距離で眺められるのは最高だし幸せでしかない。決して安い値段ではなかったがこの距離で推しの活躍を眺め、生歌が聴けるのなら安いもの。実質無料である。
 そして外で並んでいた人たちも全員中へと入りやがて時間もフェスライブの開始時刻に。
 明るかった室内が暗転しステージにトップバッターであるWaMiが登場し歌を披露する。その歌声とトークで場を盛り上げる。
 だが30分という時間はあっという間。すぐに次の人の番へ。
 そうしてどんどんと番が回っていく。やはり30分という時間はその人を知る機会としては十分だが、しっかり知ろうとすれば短い。
 Risa Yuzukiの出番が終わり次はいよいよ本命の七海うららの出番。
 今まで聴いてきたWaMi、Marpril、DJ WILDPARTY、Risa Yuzukiのどの曲も素晴らしかったが、やはり今日の一番の目的であり推しの七海うららの出番に胸が高鳴る。
 配信や動画などでこれまでずっと歌は聴いてきたが1stワンマンで魅せられたようにやはり生歌の良さは格別だ。
 それを肌で感じて知っているからこそ、胸が高鳴り気分は高揚していく。
 抱えていたパペターを左手にはめ、ペンライトを用意する。推しの出番はすぐそこだ。


 そして――時はきた。


 七海うららが舞台袖からバッと弾かれたように飛び出す。

「!!!???」

 ステージ衣装を身にまとい髪をツインテールにまとめている。それはライブ直前にされた七海うらら本人のツイートから知ってはいたが、直接その姿を見ると衝撃は大きかった。

(推しが可愛すぎる……ッ!!!)

 1stワンマンの時もVtuberの姿と瓜二つで驚かされたが、今回は前回よりも近くで七海うららの姿を見ることができしかも珍しいツインテール姿。衣装も髪型も似合い過ぎている。
 その姿が見れただけでも十分このライブに来てよかったと思える。
 舞台袖から出てきた七海うららがすぐに歌いだす。

(Trigger!? こんな序盤で?!)

 歌い出した瞬間、何の曲かを理解する。そして青色にしていたペンライトを赤色へ。
 七海うららはツインテールの可愛い姿とは裏腹に力強い声をWOMBの場内に響かせ始めた。
 周囲に居た観客たちもその装いから想像していなかった曲調に驚いた様子を見せていた。ただそれでもみなすぐに順応し、カッコよく勢いのある曲にすぐに盛り上がり身体をリズムにのせる。
 七海うららのメジャーデビュー曲の2曲目であるTrigger。既に何回も、何十回も聴いてはいる。
 しかしこうして直接聴く生歌は動画や配信越しに聴くよりも魅力を増している。まるで七海うららという女性の持つ力、エネルギーが歌声を通して自分の体内へと送り込まれているかのよう。
 気が付けば視界の端に赤いペンライトの光がちらりと見える。恐らく他のうらんちゅだろう。
 ワンマンライブと違い七海うららを知らない人もいるフェスライブでその存在は力強い。
 曲が進むにつれ、曲が盛り上がるにつれ自然とペンライトとパペターを振る腕に力が入る。
 序盤から七海うららオリジナル楽曲の中でもライブ映えするTrigger。うらんちゅを魅了し、七海うららを知らなかった人に興味を持たせるには十二分だった。
 その証拠にTriggerを歌い終わると観客たちは歓声を上げたり手を振り上げていた。

「はい、どうも七海うららです!! まず最初にお送りしたのは私のデビューシングルの2曲目Triggerです。どうでしたかー!?」

 問いかけると観客たちはすぐさま「よかった!」「最高!」などと叫びかえす。
 それを聴いた七海うららは嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ありがとうございますっ。そういえばここにくるのに結構急な上り坂を上ってこられたと思うんですけど、大変じゃありませんでしたか?」

 大変だった、という声がちらほらと返ってくる。

「私も今日の朝あの坂上ってきたんですけど結構大変で」

 そう言いながら少し大げさに坂を上るジェスチャーをする。その動きがコメディチックで観客たちの笑いを誘い、至る所から笑う声が聴こえてくる。
 歌だけでなくMCでも観客の心を掴み幸先は上々だ。

「さて、もっとお話ししていたいですけどあまり時間もないので次の曲に行きます」

 もっとトークを聴きたいが、30分という制約がある以上そうゆっくりもしていられない。

「つい先日リリースされた私のPrismというアルバムから2曲お送りします。まず1曲目はみなさんそれぞれの可愛いを大切にして欲しい、そんな曲です」

 そう前振りされればすぐ何の曲かピンとくる。

「それでは聴いて下さい、キワメテカワイイ」

 カッコいいTriggerから180度変わって可愛く明るいキワメテカワイイへ。
 しかしただ可愛いだけの曲と侮ることなかれ。聴く者の自己肯定感をあげ頑張ろう! とやる気を出させてくれる七海うらららしい楽曲だ。
 大勢の視線を独占しながら歌い踊る。
 MVも踊っている動画も七海うららによってYouTube等にあげられているため、直接見たり聴いたりするのは初めてでも見覚えも聴き覚えもある。
 だがしかし。
 初めてキワメテカワイイを聴いた時のような衝撃を味わっていた。
 耳に届くのではなく直接心に飛び込んでくるような、エネルギッシュで感情を揺さぶる歌声。
 Triggerを聴いた時から想っていが、改めて想う。七海うららの歌声は生歌だと。
 身体を動かすのは苦手だからと振付を覚えて来なかったが、こうして直接生歌を聴きて踊る推しの姿を見ると踊れるようにして来ればよかったと後悔の念が湧いてくる。
 それほどまでに七海うららの歌とダンスは魅力的だった。
 TriggerとMCで観客の心を掴み、1曲目とはまた違う曲調のキワメテカワイイでより惹きつける。
 YouTubeなどでも聴けるキワメテカワイイでも頑張ろう、自分を大切にしようと想うのだがライブで聴くとよりその気持ちが大きく膨れ上がる。
 七海うららの生命力溢れる歌声と人の背中を押したりやる気が湧いてくるオリジナル楽曲は非常に相性が良い。
 可愛い推し、可愛いダンス、可愛いうえに自己肯定感もあげてくれる曲。
 最高すぎるひととき。
 これまで幾度となく想い、そしてこれからも幾度となく想うであろうことをこの瞬間にも想っていた。
 七海うららと出会えて、七海うららを推していて良かったと。
 やがてキワメテカワイイも終わり、次の曲へ。
 曲が流れだし正面のモニターに映像が映り出した。

(茜光……)

 うらんちゅにとって思い出深く、そして涙腺にくるこの曲は七海うららの4th Single。そして黄昏キエラの曲でもある。
 そして正面の画面に映し出されているのはYouTubeにも投稿されている茜光のMV。 
 この曲を聴いただけでもエモーショナルな気持ちになるのに、当時を思い出させるMVの公開。
 つい目元がうるうるしてしまっても仕方のないこと。
 ただそれでも歌って踊る推しをしっかり見つめながらオレンジ色にしたペンライトを振る。
 短い七海うららの出番、僅かにでも見逃すのは惜しい。
 七海うららと黄昏キエラ。
 同一人物というわけではないものの、全くの別人という訳でもない。
 だからなのだろうか。それともMVが流れているからなのだろうか。七海うららの姿から黄昏キエラの面影を感じた。
 そして七海うららは歌いながらステージの前の方へ来ると軽く観客を見渡す。
 いくつかの方向に向けて手を振り始めた。
 その先にはオレンジ色の光が見える。
 茜光を聴いて即座にペンライトの色を変えるのはうらんちゅだろう。つまりうらんちゅに向けてのファンサービスである。
 歌いながらファンサをする七海うららを眺めながら自分にも手を振ってくれないかなと思う。
 そして、その時は来た。
 ゆっくりと七海うららが自分のいる方へ寄ってきたあと、こちらを見て手を振った。
 今推しに認知され自分のために手を振ってもらえている。
 その事実がとてつもなく嬉しい。その感情のまま手を振り返したかったが、そうもいかない。
 周囲には他の観客たちもいるからだ。そのため控えめにペンライトとパペターを振り返す。
 それでもしっかりと伝わったのか、七海うららはにこりと笑みを浮かべてくれた……ような気がした。
 他のうらんちゅへ手を振りに行く七海うららを見送る。
 うらんちゅたちがこうしてフェスライブに来ていることが嬉しいらしく、うらんちゅを見つけると嬉しそうに手を振っていた。
 やがて茜光も終盤へ。
 ファンサービスを終えた七海うららは心を込めて最後に向けて歌う。
 歌を聴いてくれているすべての観客へ。そして来たくてもこれなかった人や七海うららを大切に想ってくれる人へ。
 そういった人へ自分の持てる全てを届けるように。黄昏キエラの想いも込めて。
 そしてモニターに映し出されたMVに曲や制作にかかわった人たちの名前が次々と映り、最後に曲のタイトル『茜光』が浮かび上がって終わりを迎えた。

「ありがとうございました。今お送りした茜色の光と書いて茜光は去年の秋に放送された『世にも奇妙な物語』の挿入歌にも使用されました。せんこうって知らないと読めないですよね。変換するときもでなくて、私も変換するときは茜と光で変換してます」

 くすくすと観客たちから笑う声が聴こえる。

「さて、残すところ一曲となりました」
「「「えー!!」」」

 今度は七海うららが楽しそうにほほ笑む。

「30分ってあっという間ですよね。私もまだまだ歌い足りないです。でも、なんと! 来月私のワンマンライブ……あ、これ宣伝なんですけど」

 思い出したかのように付け足すと会場に笑い声が響く。

「私七海うらら、来月3月4日に豊洲PITでワンマンライブさせていただきます。私にはとっても大きな会場でつい先日チケットの一般販売も始まったのでよろしくお願いします」

 七海うららがそう言うと背後で行ってみようかな、という声が聴こえてきた。

「3月30日には大阪でも松下IMPホールさんでワンマンライブさせていただくので、もしよかったら遊びに来てくれると嬉しいです」

 もしこのフェスライブがきっかけでワンマンライブにきてうらんちゅにまでなってくれる人がいたら、これ以上のことはないだろう。

「それで話を戻すんですけど、最後の曲はちょっとみなさんにお願いがあるんです」

 残す最後の曲。まだ曲名を発表していないがうらんちゅには何を歌うのか分かっていた。
 まだあの曲を歌っていない。

「えっと、リズムふんふんってゲームあるじゃないですか」

 ゲームタイトルをぼかして言うが、観客はすぐにそれが何を指すか理解して笑いをこぼす。

「そのリズムふんふんみたいに私がダメって言ったら食い気味にダメって返して欲しいんです。いいですか? ……それでは聴いて下さい電子シュガーのパラドックス」

 タイトルコールしたあと歌いだす。
 電子シュガーというタイトルに相応しい甘めの可愛い声での歌い出し、そしてそれに続く電子音。
 昔流行った電波ソングを聴いているかのような聴いていて癖になる曲だ。
 この会場に来るまでコールの予習として何回も電子シュガーのパラドックスを聴いてきたが、生歌で聴くほうが迫力も魅力も段違いだ。
 曲は進んでいきいよいよ例の場所へ。

「ダメ」

 七海うららが歌い、すぐさまマイクを観客に向ける。

「「「ダメっ」」」

 明らかにうらんちゅだけの声量ではない。観客全員からコールが返ってくる。
 ライブの良さは生歌や生演奏などだけではない。こういった観客も合わせて一つになる一体感もまたライブの良さだ。
 観客の反応に満足気な七海うららは再びマイクを自分に向けて歌いだす。
 楽しい曲ではあるが、これで終わりなことを意識してしまいどこか寂しくもある。やはり30分という時間はとても短い。
 ただ足りない分は来月のワンマンライブで摂取すれば良いだけの話だ。
 今は今目の前で歌って踊る七海うららを全力で楽しむだけ。
 わざわざ気持ちを切り替えようとしなくても推しの歌声に耳を向ければ自然と気分は上がる。
 電子音に乗せて甘い砂糖のような可愛い歌声が場内に響く。
 明るく元気で可愛らしい歌声ながらしっかりと芯があり、聴く者たちに元気を分けてくれる。ただ可愛いだけじゃない、ただ甘々なだけじゃない。
 それは七海うららの良さであり魅力の一つだ。
 聴く者の心に響く、聴く者の心に残る、聴く者を元気にさせるそんな生命力あふれる歌声。
 そんな七海うららの歌声に1stワンマンライブで惚れ、それは今なお健在。いや、より磨きがかかっていると言っていいだろう。
 歌声に耳を澄まし、二回目のダメへ。

「ダメっ」
「「「ダメっ!!」」」

 一回目で要領を得たのかより大きく勢いのある声が返ってくる。
 自分の推しが七海うららを知らない初見の人にも受け入れられ、こうして大声でコールしてもらえているのは心にくるものがある。
 観客たちを味方にし勢いのままラストへ向けて歌い進めていく。
 最後のダメは今までで一番の声を出そうと決めその時を待つ。
 そして。
 その時はすぐにやってきた。

「ダメっ!」

 七海うらら本人によるダメのあと食い気味に。

「「「ダメっっ!!!」」」

 と他の観客たちと共に叫ぶ。後悔しないように、七海うららにライブ最高だったよ、ありがとうという気持ちを伝えるために。
 そのコールを受け取った七海うららは嬉しそうにそのまま最後まで歌い切った。

「ありがとうございました、七海うららでした!! この後も楽しんでね!」

 歌い終わった七海うららは観客全員に向けて手を振り、舞台裏へはけていく。そんな推しを手を振り返して見送った。
 30分というわずかな時間。ただ推しから得られたものは決して少なくは無かった。
 それでも足りない分は来月のワンマンライブで摂取すればいい。
 当たり前のことだがワンマンライブでは最初から最後まで七海うららだ。
 今日のフェスライブにきて、より来月のワンマンライブが楽しみになった。

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