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認知症とアルジャーノンに花束を(ネタバレあり)

アルジャーノンに花束を。ダニエル・キイスの小説。実は私がまず知ったのはアニメ”ダーティーペア”からだった。それからしばらくして劇団昴で観劇してそして小説を読んだというのが順番である。

ネタバレすると、ある知能障害の人チャーリー、ゴートンを手術で治療し、段々と賢くなっていくその過程を専門家が経過観察する、というストーリー。アルジャーノンとは実験動物のネズミで、チャーリーと同じ手術を施され、やはり賢く(観察している専門家を欺くほどに)なっていく。チャーリーはこのネズミに親近感を持ち、逃走したがっていたアルジャーノンの逃亡の手助けをしたりする。
段々と賢くなっていくチャーリーへの、周囲の人の対応の変化、距離の取り方、接し方、女性の専門家(観察者)との恋愛や葛藤、その他諸々の事柄に悩んでいく。

観察者の専門家よりも自分のが賢くなっていくのに相変わらず自分は当事者であって観察される側。それに我慢出来なくなっていく。アルジャーノンが逃げ出したがっている理由も同じ。だから手助けをした訳である。

やがてアルジャーノンは手術の副作用で段々と凶暴化していき、最後には死に至る。チャーリーもやはり副作用で、自分にこれから何が起こるかを知る。もの凄いスピードで知能が劣っていくようになるのだ。それも手術する以前の自分よりも劣っていくのである。

それを知ったチャーリーは、やがて最終的に行き着く場所、入所してお世話になる施設を「自分が理解出来なくなる前に知っておきたい」と、訪れるのである。
やがて字すら書けなくなる最後の手紙に「最後のお願いです。アルジャーノンのお墓に花束を捧げて下さい」と書き残す。

これは小説で、自分には縁遠い出来事だと思っていたが、この間ふと思った。自分が認知症を発症したら、果たして気付けるだろうかと。
認知症の人は自分がそうだと気づかないまま進行するそうだが、医学が進んで「貴方は認知症になります」と言われる日がきたら?

もしかしたらチャーリーのように自分がお世話になる場所や人や施設を自分が理解出来るうちに知っておきたいと・・・思うかもしれないと。

ちなみにダーティーペアの方の結末は、こちらのストーリーでは実験所から逃げ出した賢くなったネズミはオスメスのペアで、ダーティーペアによって普通のネズミに戻る薬品をメスの方が打ち込まれ、普通に戻ったメスのネズミのその姿を見たオスネズミは飛び降りて自殺するという結末だった。(そして非常に印象に残ったので興味が湧いたわけである)

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