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あくびの伝染



他人があくびをしたら、つられてあくびをしてしまうといういわゆる
「あくびの伝染」というのは、元来人間のみとされていた

それは「あくびの伝染」には高い知性が必要とされていたからである

そして「あくびの伝染」において高い知性が必要とされるのには「あくびの伝染」は『共感力』によるものとされていたからである
スターリング大学の心理学者Jim Anderson博士らによる研究で「あくびの伝染」は5歳からで、それよりも幼い乳幼児では見られないという結果がでた。

ほかに「あくびの伝染」はミラーニューローン細胞によるもの、という仮説もある。
ミラーニューローン細胞とは霊長類などの高等動物に備わっている運動神経細胞であり、他者の行動を自らの行動のように理解、共鳴することができるものとされている。

だが、他者のあくびによってミラーニューローンが刺激されるという事実は今のところ確認されておらず
またミラーニューローンは他者の特定の行動により多く場合にて反応があるのに対して「あくびの伝染」はよくある事とはいえ、成人にあくびのビデオを繰り返し見せた場合でも42-55%の伝染率ということからもわかるように、個人差があるのでミラーニューローン細胞に直結するには心もとない説と言える。

また、ミラーニューローンを『共感』とすることもあるが。
細胞単位でのミラーリングははたして『共感』と呼んでも良いものなのだろうか

『共感』とは日本語でかくと「共に感ずる」と書く
文字通りの解釈でいうなれば「感じなければならない」のである
確かに、あくびによって「眠い」「退屈」等の感情は後発的に生じるやもれないが、それは“あくびの感情”であって個人の感情とは言いずらいと私は感じる。

次に「あくびの伝染」を本能とする仮説もある。
他者のあくびを見ることにより人間の本能を刺激して「あくびの伝染」を受けるというものである。
これは、赤ちゃんがあくびも含めて他者の真似をするというものである。
事実、赤ちゃんが他者の真似をするというのは誰に教わるわけでもなく、本能的に自発的に行うので本能といえるであろう。

だが、こちらにおいても本能を基盤として考えるのであれば「あくびの伝染」には知性が必要であるというところと矛盾してしまう。

生物ごとにおける本能の知性はばらつきがあり、人間はその中でも抜きんでた本能的知性を持ち合わせているのかもしれないが。
「あくびの伝染」が起きるのは、ある程度言葉も理解し通常問題なく言語による意思疎通ができるようになる5歳からである。
すなわち、人間としての知性を持ち合わせてからになるのだ。
先に記述をしたような赤ちゃんが他者を真似る行為は3歳までの乳幼児に多くみられ、それ以降は急激に減っていく。

赤ちゃんの頃には引き起こされない「あくびの伝染」が赤ちゃんでなくなってから、“赤ちゃんのように”引き起こされるというのもまた奇妙な話である。


こういった「あくびの伝染」に関しての学術的論文は、以外に多く国内外で数多発表されている

だが、そもそも「あくび」そのもののメカニズムについてはまだ明確には解明されていない。

また、「あくびの伝染」の歴史についても詳しく書かれている論文は見つからなかった

つまり「あくびはうつるものである」という思い込みが「あくびの伝染」を引き起こしている可能性も否めないのである

「あくびはうつるものである」という知識が「あくびの伝染」を引き起こしているとすれば「あくびの伝染」には知性が必要である
という結論を導き出すことができる

そして、ひとつのあくびがおよそ50%の人間に伝染したのならば
続いて、ニューローンや本能とは違う人間の“社会性”によって広がっていくことも十分に考えられる

“社会性”とは『共感力』がもたらすシステムのひとつである
その点においても知性の有用性は理解に値する

なので「あくびの伝染」を調べるのであれば
「あくびのメカニズム」を組み込んだ研究方法と
「あくび」に関するアフォーダンスの一切ないもののみでの研究をするべきである

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