【VCのホンネ】“原体験”は必要か
こんにちは。ベンチャーキャピタリストJです。
最近、ある独立系VCのキャピタリストと議論になった
「起業家に原体験は必要か」
について書きたいと思います。
前提として、私は原体験“必要派”です。
それを基に書いていきますのでお付き合いください。
目次
1. なぜ、原体験は必要なのか
2. 必要な理由①
3. 必要な理由②
4. 「原体験」がない場合
5. まとめ
1. なぜ、原体験は必要か
原体験が必要なのは、おもに2つの理由からです。
その2つは以下の章に記載しますが、要約すると
原体験があれば、「人」と「(シリーズAまでの)お金」を集める事ができます。
原体験は、ツライ時、上手くいかない時、起業家を支えてくれます。
今はベンチャーブームが起こっているので資金調達もしやすく、
バリュエーションも上がりやすいため、
「原体験不要論」をキャピタリストでも言っている方もいます。
そんな中で、1つの考え方として「原体験は必要なんだ」と思って頂ければ幸いです。
2. 原体験が必要な理由①
原体験が必要な理由1つめは、
原体験が、“粘り強さ”の源泉だからです。
投資家、特にVCの投資判断において
「経営者」は特に重要なファクターです。
その中でも、「粘り強いか」「逃げ出さないか」
という部分を非常に重要視しています。
ベンチャーは、そのほとんどが10年で死に絶える(倒産してしまう)非常に過酷な環境に身を置いています。
お金がない、仲間がいない、せっかくサービス作ったのに、認知すらされない。
いわゆるハードシングスの連続です。
そんな中で、自分のアイデアをやり抜く為の相当な根性、気力と気合い。
それを支えるのが、原体験と考えています。
投資家サイドは、10社に1社のホームランを狙って投資しているため、
その事業が駄目だったとしても、
「経営者が死んでいなかったら大丈夫。」と考えています。
投資家にとって一番嫌な事、悲しい事は
起業家の心が折れ、挽回の望みが無くなる事」なのです。
それ以上に、
起業家を信じて投資しているので
自分の目線・目利きが間違っていたのか・・・と
精神的な方がツライかもしれません。
原体験があれば、「起業家の心が折れてしまう可能性は低い」
と考えられていますので、投資家は特に原体験を好む人が多いと思います。
3. 原体験が必要な理由②
理由の2つ目は、「仲間もお金も集まるから」です。
仲間は、メンバーはもちろん、提携先などパートナーも含みます。
大企業によるベンチャー買収の目的の1つに「チームアクハイヤー」が挙げられている事からも、
Exitを目指すベンチャーにとって「優秀な」チーム組成は重要である事が分かります。
チームを組成するにはメンバーが必要で、
不安定なベンチャーにフルコミットしてくれる「優秀な人」を集めるには、
起業家が「この人についていきたい」と思われなければなりません。
その為には、人を惹きつけるストーリーが必要で
そのストーリーは「頭が良い人が作ったビジョン」よりも
「原体験に基づいて作ったビジョン」の方が、惹きつける力は強いものです。
余談ですが、私がVCとして初対面の起業家と面談する時、
原体験を聞かずとも「その事業にかける意気込み」みたいなものは感じ取れます。
後々、話をすると、やはり原体験がある事が多いです。
また、原体験のある起業家は「お金」も集める事ができます。
シード投資家、シリーズA投資家は経営者のみでなく「チーム」を重要視します。
(セールスフォースベンチャーズ代表の浅田氏も、「資金調達に成功している起業家の特徴」として「原体験に基づいた事業である」と言っています。
4. 「原体験」が無い場合はどうすれば良いのか
ここまで書くと、
「原体験ないけど、どうすれば?」という質問が飛んできそうです
原体験が無いという場合は、
「解決したい社会課題(又はクライアントの課題)」を深掘りしましょう。
「原体験」と聞くと「生い立ち」をイメージされる事もありますが、
「なぜその課題を解決したいと考えるようになったのか」
これも深掘りすれば、立派な原体験です
その課題に共感してくれる人は必ずいます
かくいう私も、「元社でその課題を理解していたので投資した」事例があります。
5. まとめ
以上が、起業家において「原体験が必要」な理由です。
一方で、こんなツッコミもあるかもしれません。
「シリアルアントレプレナーに原体験はあるのか」
という事です。
これに対しては「原体験は(あまり)ない」と考えています。
それでもシリアルアントレプレナーが成功できるのは、
彼ら・彼女らが「成功のメソッドを知っている」からです。
そんな彼らがエンジェルとして積極的に投資している昨今なので
全体的に起業家のレベルは(原体験がない人が多いものの)
高くなっているのかなと感じています。
一方で、エンジェルから「スキル」「ノウハウ」を伝授された結果、
なんとかシリーズAまで調達できた起業家は、
Exitまではいかないだろうな・・・と踏んでいます。(個人的に)
最近の資金調達トレンドは、シリーズAまでは簡単に、なので2億くらいは簡単に
集まるのが現状です。
「資金調達、案外簡単」とか言う起業家もいると思ういますが、
自走してる又は自走が見込める(自走=単月営業黒字)状態でない場合、
このトレンドが終わったら、痛い目見ると思います。
そんな時、起業家を支えるのは「原体験」なのかなと思っています。
起業家の皆さん原体験はありますか?
fin