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命乞いする蜘蛛 毎週ショートショートnote

夢を見た。大きな蜘蛛になった夢。
私はいそいそと網にかかった獲物を頂こうと近づいた。
なんと獲物は人間の姿の私だ。
蜘蛛の私は思いがけないほどの大きな獲物に喜ぶべきか、共食いならぬ自分食いを恐れるべきか迷っていた。という夢。食べては無いけれど後味の悪い夢だった。

ふと、天井を見ると蜘蛛の巣がある。何年ぶりだろうか。天井の隅に蜘蛛の巣を見るなんて。変な夢を見たのは、あの天井の蜘蛛のせいに違いない。

とにかく、蜘蛛には外に出て行って欲しい。足の多いヤツ、足がないヤツと友達にはなれないし、なりたくもない。

「外に出なよ」
私は天井の蜘蛛に睨みを利かせて言った。
天井の蜘蛛は微動だにしない。無視する気か。

暫くすると天井の蜘蛛は、少しづつ糸を出しながら私の元に降りてきた。少しづつ、少しづつ天井の蜘蛛が大きくなる。

「おい、ちび蜘蛛!お前を食ってやろうか」
小さいと思っていた蜘蛛は私より遥かに大きい。

私は、泣き泣き命乞いをするしかなかった。



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たらはかにさんの今週のお題、『命乞いする蜘蛛」です。
なんの捻りもありませんが、これが精一杯です。


#毎週ショートショートnote