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秋雨

がたん、ごとん、がたん、ごとん。
電車の外は雨が降っている。
こんな日くらい死者を悼んでセンチメンタルな気分になっていても許されるだろうか。

2年前の秋、今日のように天気の悪い日に、私はサークルの友達が死んだことを、当時の恋人からのLINEで知った。

夏休み中から、連絡が取れなくなっていた一人暮らしの友人だった。地元が北関東の男の子で、夏休みだから帰省しちゃってスマホ放置気味なのかな、とか、バイト代パチンコで溶かして電気一切合切止められたのかな、とか、あまり心配してなかった。

夏休みが終わって、文化祭の準備が始まって、でもLINEは相変わらず既読のつかないままで、周りに聞いても全然消息わからないし、彼の住んでるところが男性寮ということもあって会いに行くこともできず、少しずつ不安感が増していった。

そして、みんなが心配しだした10月はじめ。唐突に知った。同じ男性寮に住んでいた彼と仲良しの先輩が、サークル員を探し出して教えてくれた。彼は夏休み中に死んだのだと。
彼は1人で死んで、丸一日気付かれなくて、その次の日、腐敗臭でようやく見つけられたらしい。急性心不全。そんな意味不明の死因が、死んだ彼につけられた。


春休み。わたしは3時間かけて彼の実家に挨拶に行った。
神道だという彼の実家は、沢山の稲穂と魚、果物が供えてあって、彼は死んだことで新米の神様になったんだ、そう説明を受けた。

ごめんな。ごめんな。会いに来るのにこんなに時間かかっちゃったよ。

がたん、ごとん、がたん、ごとん。
こんな秋の寂しい日くらい、感傷的に死者を悼んでも許されるだろうか。
電車の外は、雨が降っている。

#エッセイ
#友達
#雨の日