ダブり〜1限目〜D

エトウが住む街はタワーマンションはなく、
駅前には飲み屋が並ぶ下町風の町だった。

副会長がスマホを取り出し地図を見ながら
エトウの家まで導いてくれていた。
その道中で2人の男が声をかけてきた。

「ユウくん、お疲れ様です」
「こんなところで何してるんですか?」
ゴウの仲間のテマエとシマキだった。

するとシマキが
「そう言う事っスか!?ユウさんって、、、
        そんな感じの趣味なんスか?」
「おい、邪魔したら悪いから行くぞテマエ」

やはり、そう見えるのか?

「違う、違う」と俺は言った。
今度は、俺の袖を握らずに手を顔の前で左右に
振る副会長だった。

やっぱりゴウは別格だな。

「実は、ウチのクラスの奴が不登校でモトキタが動けないから、俺達で届け物を届けにきたんだ」
「お前達は、何してるんだ?」
「今日、ゴウと一緒じゃなかったな?
        さっきゴウは暴れていたぞ。」
するとテマエが
「俺達は、別でタカギの地元へ行ってたんスよ」

タカギとはさっきゴウにやられた奴だ。

「すると、ゴウさんから連絡来て
            終わったからって!」「だから俺達1回、家帰ろかって事で帰ってる
        途中に駅前で見かけたんスよ」

俺は聞いた。
「家?お前ら地元か?」
「そうっスけど?どうしたんスか?」
「ここに行きたいんだ、どう行けばいい?」
副会長がスマホを見せた。
2人に道を教えてもらいたどり着いた。


大きくてモダンな1軒屋だ。
まさに、ざっ金持ちが住むって感じの。
白い外壁に、木目のガレージシャッターがさし色ですごくハイセンスだ。
門扉に、警備会社のステッカーが貼ってあり
正面だけで、カメラが3台位ついている。

でもまったく動じない副会長。
さすがタワーマンション。
7階だけど。
団地の俺は少し動じてしまった。

「会長、じゃあインターホン押すよ」
「おっ おう。」

ピンポーン ピンポーン

今のインターホンって1回押せば2回鳴るのか?
俺の知ってる
1押し1ポーンが当たり前じゃないのか?
ちょっとテンションが上がった。

インターホンから声がした。
「はい、どちら様でしょうか?」
副会長が
「こんにちは」
「私、エトウ君のクラスメイトで
            ナカタと申します」
「本日、モトキタ先生が来れなくて
        その代理で届けに来ました」
「エトウ君はいらっしゃいますでしょうか?」

「・・・・」
返事は無かった。

そして、少しすると
重厚なドアが開き女性が出てきた。
エトウの母親だ。


「ごめんなさい 息子は体調が悪くて、、
       わざわざ友達が来てくれたのに」

その表情はこのハイセンスな家には似合わない
寂しそうな表情だった。

副会長が
「そうですか…
    ではコレを渡していてもらえますか?」
と言って預かりものを母親に渡した。
そして荷物を受け取った母親が扉を閉めようとしたところで、俺は思いだした。

国語と英語

「ちょっと待ってっ」
俺は母親を呼び止めた。
「どうしてもエトウに会って話したい事が
    あるんで会わせてもらえないっスか?」

母親は、
「会わせてあげたいのだけど…」
と何かある感じの表情だった。

俺は、ドアノブを握って閉めさせなかった。
俺は、母親の目をずっと見て言った。
「エトウに会わせてもらえないですか?」
と言うと母親が話始めた
「受験が終わってからあの子の顔を見てないの」「恥ずかしい話なんだけど、
           あの子引きこもりなの」
と俺達に打ち明けた。

すると副会長が
「会長、今日はこれで帰ろ」
と言ったが俺は何故かこのままじゃいけない気がした。
それは、会長だからとかでは無く
また、国語と英語が欲しいからとかでも無く
ただそんな気がしただけだ。
後者は、気にしていないって事はない。
だから、素直に言った。
「とにかく、エトウに学校に
      来てもらわないといけないんだ。」
「だからエトウに会わせてくれ」
「頼みます」
俺は頭をさげた。
その熱意が伝わったのか母親が俺達を中へ入て
エトウの部屋の前まで案内してくれた。

鍵がかかっている扉をノックして
「エトウ、エトウ聞いてるか?」
「ってはじめましてだな」
「俺は、同じクラスのコニシユウだ」
「少し話さないか?扉を開けてくれないか?」

反応はない。
何度問いかけても反応はない。
このまま声を荒げて扉を蹴り破り、引きずって
学校まで連れて行けばいいのだが、
さっき感じたせいかそうはしなかった。
いや、できなかったんだ。

俺は部屋の前に座りこの事を話す事にした。

「エトウ、聞いてくれ実は、、、」
と、国語と英語の事を話した。

すると、扉の隙間から1枚の紙が出てきた。
副会長がリズミカルに俺の肩を叩く

俺は副会長の顔をみてうなずいた。
そして、紙を手にとり見ると

「ごめん。君の力にはなれない」

俺は悔しかった半分、
余裕ぶってた自分が少し情けなく思った。
そんな簡単な事で終わる事ではない程エトウは
訳ありだったんだ。

「悪いなエトウ」
「今日は帰るわ」
「しばらくモトキタが来れないから当分俺が
届けると思うからまた、話たくなったら開けてくれ!」
と言って副会長に話す様にジェスチャーで手を口の前で広げたり閉じたりした。

「エトウくん、届け物ここに置いて置くからね」
と部屋の前に置いてこの日は帰る事にした。
               
               1限目Eにつづく











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