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コウモリコモリ                  とドラキューラ


カタ カタ カチカチ

「コヤツら!またワタシを侮辱しておる」

カチカチ

「本当救いようない愚民共めっ」

カチカチ カタ カタ カチカチ

「命を持って償わせるか!?」


「あ〜まただ。始まったよ、、、
        伯爵のエゴサーチ。。」

「おい、コモリ!?何か言ったか?」

「伯爵、なぜ毎晩、毎晩、エゴサーしてるの?」

「何故って?コモリ!貴様ぁぁ」

「だって、気になるやん!」
「何故(なにゆえ)
    私はこんなにも嫌われているの?」
「ウチが何をしたって言うの?」

「始まった。。」
「伯爵ってほんとメンタル弱いんだよなぁ」


あ、俺はコウモリのコモリ。
伯爵に使えて、もう何百年になるだろう?
先代の伯爵も含めると・・

かれこれ1000年くらいかな?

そう、

俺はヴァンパイア伯爵に仕えるコウモリだ。

ヴァンパイア・・・

いや、

【吸血鬼】と言う方が馴染みがあるだろう?


民話や伝説、漫画などに登場する存在で、
命の源とも言われる血を吸い栄養源とする
蘇った死人または不死の存在。

狼男、フランケンシュタインなどの怪物と並び、
世界中で知られている怪物のひとつ。

多くの作品において登場してきた。

生と死を超えた者。
または生と死の狭間に存在する者、不死者の王とされる。

また、現在では
凶悪な犯罪者の通称としても使われたりもする。

だから人々は吸血鬼・・・

いや、

ヴァンパイアにいい印象が無いのは当然の事だ。

だけど実際は・・・


伯爵はPCの画面を見ながら
「あぁぁ!!ウチって、
    ほんとイメージ悪いんですけどーっ」
「マジでぇ〜」
「ウチの事、カッコよく言ってくれるのんって
ほんとヴィジュアル系位なんですけどぉ〜」

皆が思い描くヴァンパイアとは程遠い。。

伯爵はPCの画面を横に向けて
「見てぇぇ〜これ酷くない?」

それを聞いたコモリは
「伯爵、何がですか?」

「これ、めっちゃ傷つくわ」

カチカチ カタ カタ カチカチ
とマウスをクリックしてはスクロールした。

どうやら掲示板のようなものを見ているようだ。

【今年ハロウィン衣装どうする?】
【やっぱ、ゾンビ!?】

「何がゾンビやねん!?ベタやん」
「どんだけハザードすんねん」
「ハザードは車だけでええって」

【パーティー!ハロウィンパーティー】
【狼男でご来店の方ドリンク半額!!】

「世も末やな。。」
「あんな月みて吠えるしか
    脳のない奴でなんで半額なるねん!?」

それを聞いたコモリは
「伯爵、人と狼の半分半分だからじゃない?」
「絶対そうだ!半分だから半額」

伯爵は言った。
「はぁ〜?しょうもな!」
「てか、そもそもハロウィンパーティーって
なんやねん!?ハロウィンにパーティーが付く
のが意味わからん!」
「てか、ハロウィーンやしなっ!!」

伯爵は他の書き込みもコモリに見せた。

【やっぱりコスプレはフランケンっしょ!】
【フランケン!?うけるぅ】

「うっざっ!」
「あんなもん、ネジつっこんでるだけやんけ」
「てか、あのネジなんなん?
      ホームセンターで売っんの?」
「あいつ、頭にネジつっこんでる割には、
   頭のネジぶっ飛んでる位のアホやからな」

「伯爵!ダメだよ、フランケンの事
              悪く言っちゃ」

「コモリ!オマエまさか!?アイツの・・」

「おっ!伯爵、これ伯爵の事じゃない?」

「え!?どれ?どれ?」

伯爵は画面を覗きこんだ。
そこにはこんな書き込みがあった。

【ドラキュラのコスプレする人って
       ハロウィン初心者過ぎて 草。】

「・・・コモリ、、」

コモリは焦った。
「は、は、は、く、しゃ、く」

「コイツなんやねん!?」
「てか、ドラキュラってなんや!?」
「正式名称はドラキューラやからな!」
「ドラキュラやて
      コイツの方が初心者で 草。」

「えっ!?ドラキュラでしょ??」
「ドラキューラって何?ってか誰?」
「完全にハロウィーンに引っ張られてない?」

他にも書き込みが

【ドラキュラって血吸うんだっけ?】
【蚊みたい】

【てか、朝日だめなんでしょ?】
【夜勤オンリー】
【夜勤あけとともに 氏。】

「いやいやいや、ワテ毎朝5:00に起きて
          朝活してるっちゅーに」
「誰や、、氏(うじ)って?」

コモリは
「いやいや、実際朝日ダメっしょ」
「てか、早起きって言っても部屋真っ暗じゃん」
「朝活って・・朝ご飯食べるだけじゃんっ」

「それ、氏じゃなくて ◯ってことだから」

【にんにくが弱点ってダサない?】

「はい、でたー。。ブーブー✖️」
「にんにくめっちゃ好きぃ〜」
「はいっ!先生、はいっ!」
「僕、いつも増し増しです!!」

【いや十字架でしょ、今どき十字架て】
【チャペル婚無理やん】

「はい、漫画の見過ぎぃ〜」
「てか、ワテ西洋人ですねん。
        十字架があかん訳ないやん」
「逆に、仏壇の方があかんわ!!」

伯爵はそう言いながら時計を見た。
「あっ、もう22:00か?(じゅうじか)」
「って言うてる場合か!?」

「カッチーン、ゴッさ腹立ってきた」

「コモリっ!今夜はコイツらに決定!!」
「支度しろ!」

「あ、はいっ(汗)」

「てか、バっチボコいったんねん」


伯爵とコモリはコウモリ達が引っ張る
ブランコ?のようなものに乗りながら

「特定できたか?」

「はい、IPアドレスから住所を特定したよ」

「さすがコモリ!早速行くぞ」

どうやら、何処へ向かっているようだ。


ここはとあるネット民宅。
「ハロウィンはやっぱりゾンビの子が
               可愛いなぁ」
「いや、待てよ。このアニメコスもいいな」

カラカラカラ

ヒュー

とあるネット民は風を感じた。

「なんだ?俺、窓開けてたっけ?」

すると、中へ

パサパサ

「うわー、コウモリだー。気持ちわりぃ」

パサパサ パサパサ

「うわ、何匹いるんだ?」
「えい、えい」
と近くにあった棒のようなものではらった。

コウモリは外へ出て行った。

「ふぅー、なんだったんだ?」
「まーいっか、てかこの事、書き込みしよ」

男は再びパソコンへ向かった。

その時

「おい、愚民」

その声にとあるネット民の背筋が凍りついた。

「ゆっくり、振り向け」

とあるネット民は直感的に気づいた。
これはヤバいと・・・

絶対に振り向いてはいけない事に頭では
理解しているが体はその言葉のままゆっくりと
振り向いている。

とあるネット民は恐怖のあまり目を閉じたまま
振り返った。

伯爵は言った。
「目を開けて、我を見よ」

すると
とあるネット民の閉じていた目はゆっくりと
自分の意思とは逆に開き頭を上へあげた。

「ぎゃああああ」

とあるネット民は叫んで助けを呼ぶが声が出ない
いや、確かに叫んでいる。
今まで味わった事のない恐怖が声量を消している
のだ。

伯爵はさらに言葉を発した。
「頭が高いぞ。我を誰と心得る」

その言葉に
とあるネット民は一瞬でひざまづいた。

いや、土下座だ。
それも、おでこを床へ・・
いや、更に下へ・・下へ・・と擦りつけ

あまりの恐怖の圧に涙し失禁したあげく
命乞いをしたのだ。

これは当然の行為。

恥ではない。

自らの命を捧げる事は簡単。

だが、

目の前の伯爵いやヴァンパイアは
そうではなかった。

命が絶えるまでにどんなに残虐な事が起こるの
かと人間は怪物を目の前にしてそう思ったのだ。

だから、とあるネット民がとった行動は

「すみません、すみません」
「なんでもしますから助けてください」

そう、ただ謝ると言う行為だった。

それしか出来なかった。

伯爵は
「ほー何でもするか?」

「はい、何でも何でもします」
と言うとあるネット民に伯爵はこう言った。
「そうだな・・」
「では今からワタシが言うことを掲示板に記せ」

とあるネット民は迷う事なく
          伯爵の言う通り記した。

【ヴァンパイアかっこいい】
【おれ、ハロウィン、ヴァンパイアコスする】

「こ、、これでよろしいでしょうか?」

「待て、ちょっと貸せ」
伯爵はキーボードで打った。

【フランケン、きもー】

とあるネット民は土下座をして
「ほんとすみませんでした」

「わかればよい」
「だがこのままでは面白くない
     だから最後に恐怖を与えてやろう」

「うわーーー」
とあるネット民はあまりの恐怖に気絶した。

「コモリ、見ろ、この顔」
「あースッキリした!次行こーぜぃ」

コモリは
「伯爵、ダメだよ。最後にアレしなきゃ」

「あっ、せやなー」

ガブっ チュー
と男に噛みつき血を吸った。

「これで、記憶は消え、そして操作した」
「これでコイツもヴァンパイア推しだ!!」

「さぁ、コモリ、次だ」

コモリは地図アプリを見ながら
「えー次はちょっと遠いよ」

「朝までに終わるやろ?」
「ほな、いこか!」

伯爵とコモリは次のターゲットの所へ向かった。


そう、
このヴァンパイアは一日中エゴサーをしては、
自分をディスる奴らを探しては特定し、凸し、
散々恐怖のどん底へ落としたのち、
噛みつき血を吸う事で記憶を消して操作し
ヴァンパイア推しにすると言う行為を朝方まで
行っているのだった。

だが、書き込みは絶えない。

でも逆に
何十年、何百年もこの活動をしていると
だんだんと推しも増えつつある。

今ではフォロワーも1500を超え
あと、500人で収益化だ。

だけど、欠点があった。

それは、いいねが少ないって事だ。

やはり、自らが操作している事により、意思が
ついてこないのであった。

だけど伯爵は今日もまた、ディスる書き込みを
探しては特定し噛みつき、操作する。


時は進み10月末

街はハロウィンで賑わっている。
今年もやはり、鉄板のゾンビが圧倒的に多い。

この日、伯爵は最高に機嫌が悪かった。

「なんでやー。コイツらほんまアホやで」
「どいつも、こいつも、ゾンビって」

「伯爵、やっぱりハザードの新台のせいだよ」

「やっぱりか・・」
「バズるには、なんか世にでやんとな」

コモリは寂しそうな伯爵を見て
「大丈夫だよ!伯爵は絶対バズります!!」

「コモリ、、、」

「よっしゃ、ほな今日もビビらしに行こけ」

2人はいつも通りターゲットの元へ向かった。


「伯爵、ここっスよ」

「コモリ、結構綺麗な家やな」
「だいたい、ネット民はアパートが多いけど」

「あっ伯爵、この辺新しい家がたって
      街の雰囲気が変わってるんだよ」
「でも、GPSはこの家をさしてるよ」

「まーとりあえず行こか」

2人はGPSが指す家へ向かった。


カラカラ

伯爵とコモリは窓を開けて中に入る。

部屋の中は真っ暗だ。

伯爵は指を鳴らした。

パチ

すると、
伯爵の周りにロウソクが現れて火がついた。

伯爵とコモリは驚いた。

「伯爵、、!!」

「あぁ、、これは、、子供部屋だ」
「しかも女の子だね」

「伯爵、間違えたかな?」

「コモリ、一ついいことを教えといてやろう」
「例え子供と言っても甘くみるな!」
「むしろ、子供の方が残酷だかんな」

その時だった。

「しーっ、誰かくる」

伯爵はロウソクを消して姿を隠した。

ガチャ

扉が開き、中に人が入ってきた。
だが、部屋に灯はつかず真っ暗なままだ。

「コモリ、子供か?何故灯をつけない」

伯爵とコモリの目が暗闇に慣れていない。

コモリはわからないとジェスチャーをした。

だんだんと目が慣れてきた伯爵とコモリ。

よく見ると部屋には子供がいた。
子供は灯を付けず真っ暗のまま机の上にある
ラジオのスイッチを入れた。

部屋にラジオの音が響く。

子供は、そのまま椅子に座り本を開きだした。

「コモリ、あいつ何してんだ?」
「真っ暗の中、そんな年頃?
      てか、真っ暗が流行ってんの?」

すると

「誰かいるの?」
と子供が話した。

伯爵はそれにこたえようとした。

「伯爵、しーっ」
コモリはそれを止めた。

「ね?いるんでしょ?」
「大丈夫だから出ておいで」

「伯爵、どうする?」

「いっそう、出て書き込みしたか聞いてやろう」

「あっ、そこにいたんだ!絵本よんであげる」
と子供は上を見上げた。

伯爵とコモリは姿をあらわした。

「おい、貴様、頭が高いぞ」
と伯爵は子供の顔みた。

そこには女の子の子供がいた。

伯爵は
「あっ、子供や」

すると女の子の子供は
「誰?妖精さん?どこから来たの?」

伯爵は
「えっ、なんて?妖精?」
「んなアホな、ヴァンパイア、ヴァンパイア」

女の子は
「バンバ?」

コモリは
「まだ小さいからわからないんだよ」
と言ってその女の子に近づいた。

「俺はコウモリのコモリ、そしてコレは
      ヴァンパイア、あっ、ドラキュラ」

女の子は理解したのか
「コモリとドラちゃん」
と笑顔で言った。

「コモリ、お前今、コレ言うたな」
「てか誰がドラちゃんやねん!?
    ワシ、ポケットから何もでーへんぞ」

女の子は
「ドラちゃん、コモリ」
と指をさして言った。

「コイツ、俺らの事怖ないんか?」

その瞬間
「あー苦しい、てか痛い痛い」
と伯爵は脇腹をおさえだした。

「痛い、めっちゃ痛いし」

「伯爵、大丈夫?」

女の子はその痛がる姿を見て爆笑していた。

コモリは女の子の子供に
「ダメだよ、鉛筆はなして」

女の子は鉛筆で✖️の文字を作っていた。

そう、ヴァンパイアは実は
十字は平気だが✖️がダメなんだ。

女の子は鉛筆を離した。

伯爵はうずくまりながら
「はー痛かった。てか久々にヤバかったわ」

「おい!子供、我にむけた態度、どう償う?」

女の子は
「ドラちゃん積み木したいの?」
「ゴメンね、積み木ないのだから絵本読んで」

伯爵は
「おい、子供!我が怖くないのか?」

「うん。怖くないよ」

そんなはずはない。
「我の姿に恐怖しない奴は今まで居なかった」
「では、このキバを見ればどうだ」

女の子は全く恐怖していない。

「このキバが怖くないのか?」

すると女の子は伯爵とコモリにこう言った。

「実はわたし、生まれつき目が見えないの」
「だから、ドラちゃんもコモリも見えないの」

2人は顔を見つめた。

女の子は
「今、まずい事聞いたって顔したでしょ?」
「大丈夫だよ!」
「目は見えてなくてもこうしてお話はできるし、聞こえるから」
「あと、美味しいものも食べれるからね」
「でもピーマンは苦手だけど」
「あと、絵も描ける!!」


伯爵は聞いた。
「娘、今いくつだ?」

「6歳、小学1年だよ」

「名は?」

「あさひ、朝に日って書くんだよ」

「嫌な名だな」

「あっ、もうこんな時間だ!帰って寝ないと」
「なぁ?コモリ」

それを聞いた朝日は
「えー帰るの?私まだ眠たくない」
「もう少し遊ぼうよ」

「伯爵?どうします?」

「あーめっちゃ眠たくなった」
「だから帰るわ!またな!!
        いや、2度会う事ないけど」

伯爵とコモリは帰ろとした。

「いやだ、もう少し遊ぼ」

伯爵とコモリは朝日の目が見えない事を逆手に
そっと窓から帰ろとした。

「うー痛い、痛い!」

「伯爵?」

「痛っ、めっちゃ痛い」

再び脇腹が痛くなる伯爵。

「ハハハハ」
笑い声が聞こえる。

朝日だ。
また鉛筆を✖️の形にしたのだ。

伯爵は
「やめろ」

朝日は
「じゃーもう少し遊んでくれる?」

伯爵は
「いやだね」

朝日は✖️にした鉛筆を伯爵に近づけた。

「うわぁ〜ヤバっ」
「これ、過去イチやばいかも」

「伯爵、ちょっと遊んで寝かせて帰りましょう」
「子供だからすぐ寝ますって」

「そうだな」
「わかった、だからやめろ」

朝日は鉛筆を離した。
「やった!やった!」
「ありがとうコモリ、ドラちゃん」

そんな事で伯爵とコモリは朝日が寝るまで
遊ぶことになったのだ。


絵本を読み、ゲームをしたり
あんなに嫌がっていた伯爵も結構楽しんでいた。

そしてだんだんと夜が更けていく頃

とうとう朝日が眠たくなってきたのだ。

「ドラちゃん、コモリ?」

「なんだ?」

「私が寝るまで居てね」

「わかった。わかった。もう鉛筆は嫌だからな」

朝日は布団に入りこう言った。
「ねぇみんなで布団に入ろう」

伯爵とコモリは朝日が寝るのも時間の問題だと
思い、言われたとおりに布団に入った。

右に伯爵

左にコモリ

真ん中に朝日

すると朝日は話始めた。
「わたし、夢を見たいな〜
     目が見えないから夢も見えないの」
「ねーコモリ、夢って楽しい?」

「あぁ、最高だよ」

「おい、コモリ!そんな事言うなよ」

「あっ、そっか」

朝日は
「いいの、いいの、ドラちゃんも楽しい?」
「2人の楽しい夢の話を聞くと想像で形になって
私も夢が見れそうだから」
「だから、詳しく教えて」

そんな朝日を見て伯爵とコモリは夢の話をした。

朝日はだんだんと眠りにつこうとした頃
「コモリ、ドラちゃん
         今日はありがとう」

それを聞いた伯爵は突然起き上がり
朝日を起こした。

「おい、まだ寝るな!!」

「もう眠いよ」

「もう少しだけ頑張れ!」
「コモリ、いいな?」

コモリはうなずいた。

「よし!最後に少し夜空を散歩しよう」

「えー!?そんな事出来るの?」

「当たり前だ!ワタシはヴァンパイアだぞ」

と言ってコウモリを沢山呼び、
朝日を夜の空へ連れ出した。

「どうだ?楽しいか?」

「うん。風が気持ちいい」
「お月様の光が私のまぶたに当たる」

「あーお星様見たいな」
「いや、違うよ違うよ、大丈夫!ありがとう」

そんな朝日の姿を見た伯爵は自らの指をかじり、指から流れる血をグラスに入れて、こう言った。

「のど渇いただろ?ほれ、飲め」

「ありがとう」

朝日はグラスを受け取りゴクゴクと飲み干した

「あー美味しかった。ご馳走様でした」

「今、飲んだのはワタシの血だ」

朝日はびっくりした。

「びっくりしただろ?でも大丈夫!
        病気になったりしないから」

「でだ、朝日」
「今日、朝日がワタシの血を飲んだ事で明日から
今まで見えなかったことが見えるようになる。
でも、その見えるものすべてがいい事かと言うとそうじゃない。きっと悪いことも見るだろう」

「怖いことも?」

「あぁもちろん」
「でも、それはほんの一瞬だ!」
「朝日が名前のように朝のような日の光みたいに育っていけば、きっといい事だけが見えるさ!」
「とは言えワタシは朝日を見た事はないからな」

「ドラちゃんは朝日を見た事ないの?」

「あぁ、見た時ねぇよな!?コモリ!?」

「うん」

「コモリもなんだ」
「どうして見ないの?見えるのに」

「見えても、見れない事もあんだよっ!」
「てか、見ると俺たち消えるっ、みたいなっ」

「みたいな?見たいの?見える?何それ?」

「まだ、わかんねーなっ」
「よし、帰ろか?」

「きっと朝日には素晴らしい世界が見えるさ」

「って、寝てんのかい!?」

少しずつ夜が明ける頃、伯爵とコモリは
朝日を布団の中まで送り届けた。


その日の朝。

「あれ?」
「夢なのかな?いや違う、あれは夢じゃない」

「おーいっ、コモリ?ドラちゃん?」
「あっ、鉛筆、鉛筆」

「ほれ、ドラちゃん!どうだ痛いか?」
「おーいっ」

朝日は伯爵とコモリの事を大声で叫んでいた。

その声は1階まで響いた。
朝日の叫び声を聞いた、お父さんとお母さんは
びっくりし慌てて2階の朝日の部屋へ向かった。

「朝日、どうしたの?」

すると朝日は扉の方を見てこう言った。

「お母さん、お父さんおはよう」

「朝日、びっくりしたじゃないの」
とお母さんは朝日に近づいた。

すると
「あっ、お母さん口にジャムついてるよ」
「もーお父さん、頭ボサボサ」

お母さんの口にはパンのジャムが付いており
お父さんは確かに寝ぐせでボサボサだ。

お母さんは朝日に
「朝日、あなた見えてるの?」

朝日は元気な声で言った。
「うん。見えてるよ!」
「お母さんもお父さんの顔も!!
     そして外の朝日も!全部見えてる」

お母さんとお父さんは朝日を抱きしめた。

「お母さんとお父さん泣いてる」
「悲しいの?」

「悲しくないよ。嬉しいの」

「良かった。ドラちゃんの言う通りだ」

「ドラちゃん?」

「ううん。なんでもない」

そう、朝日は伯爵の血を飲み目が見えるように
なったのだった。


それから半年。

目が見えるようになった朝日は
天性の絵心をいかして、絵本を書いた。

【コウモリコモリとドラキューラ】

これは、目の見えない女の子の前に突然現れた
コウモリのコモリとドラキューラと朝まで過ごすと言うお話。

小学生が描くにはもの凄くリアリティのある
話だったようで、すぐにバズった。

そしてこの絵本は、見事な賞を獲り
朝日とドラちゃんとコモリは時の人となった。

それは、伯爵とコモリの耳にも入っていた。


「伯爵、伯爵」

「あの子、やりましたよ」

「やな」

「すごいなぁ〜」

「やな」

「まさか絵心まであるなんて」
「ね、ね、凄いね?」

「やな」

「伯爵、テンション低いね?嬉しくないの?」

「おい、コモリ!」
「嬉しいわけあるかー!!」
「てか、なんでお前が主役やねん、こら」
「全部やったん、ワシやろがい!」

「黙っといたろ思たけど絵心もワシやからな!」
「あいつは、恩をあだで返す奴や」
「知らんけど」
「アイツほんま血吸ったろか!?」

「まぁまぁ、伯爵、落ち着いて」

「千歩譲って、ドラキューラ言うたとこは
              認めたるけどな」

コモリは思った。
「うわぁ!ほんまやドラキューラ言うてる」
「朝日はやっぱり子供だな」

「なんか言うたか?」

「いや、何にも」
「伯爵は主人公ですよ」

「どこがやねん!」
「いらん慰めはやめてくれ」

「慰めなんかじゃないよ」
「この間観た怪盗とバナナのお化け
            みたいなもんだよ」
「伯爵がその怪盗で俺はそのバナナ」

「ほーそれもそうやな」

「そーだよ」

「・・ってか、バナナの方がバズっとるやんけ」
「あー腹たってきた!今日はコイツら片っ端からやったるぞ!コモリ、こいつら特定せぇ」


この年のハロウィンはヴァンパイアとコウモリの
仮装が物凄く多く、メディアで取り上げられ

#ヴァンパイアパーティー

がトレンド入りすることを
伯爵とコモリはまだ知る由もなかった。

                おわり


あとがき

音声配信アプリ【スタンドエフエム】の企画。
まさか、人生でヴァンパイアの事を考えるとは
思ってもいなかった。
なんだかんだで9000文字くらい書いていた。

本来の企画の趣旨とは全く違うことは承知だが
ネタのない僕には、ネタとして配信できる
ありがたいことだ。

この物語はヴァンパイアもこんな感じなら
おもろいかな?と勝手な解釈だ。
そう、強面の人みたいだろ?
見た目は怖いけど、
話すとめっちゃ優しいみたいな

ネットが普及し、姿形を隠して投稿する。
それを見て傷つく人も少なからずいるのでは
ないか?
伯爵とコモリはそれをターゲットに心ない書き込み者を成敗すると言った、世直しダークヒーロー
と言う設定にした。

そして、偶然に知り合った女の子。

目の見えない朝日は伯爵の雰囲気で
悪い人ではないと本能で感じたのだ。

朝日と遊ぶところ位から正直、
ハンターハンターのように将棋的なゲームでも
させようかと思ったが、僕はそれを我慢した。

何が言いたいかと言うと、

姿、形は見えていても中まで見てますか?

って事を言いたい。
今、書き込みしてるあなた!
されてる側の気持ち見てますか?

心ない書き込み

ヴァンパイア来ますよ。

追伸
ディズニーピクサーお待ちしてます

       おやつちんみのユウのほう

朗読

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