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2000文字のシナリオ④『二人隠れんぼ』

○今日のお題:
・隠れんぼ
・女子大生
・気心
○総制作時間
3時間
○タイトル:
『二人かくれんぼ』
○あらすじ:
大学生の貴船涼太は偶然、幼なじみの見藤雄大と出会い、お茶をする。
その時、隠れんぼをした時だけいたもう一人の幼なじみの話になり、その子のことを誰も知らないという事を聞かされた。
涼太たちは隠れんぼをしてみることにする。すると、三人目の幼なじみ、三好雛子が現れた。
三人で隠れんぼをすることに。涼太と雄大は緊張しながらも久しぶりの隠れんぼに夢中になっていく。
涼太は雛子の正体について聞いてみることに。
すると、彼女は普通の女の子だった。付き合ってくださいと言われて、雄大の手前、後で返事するという。
後日、会ってお茶をしていると、隠れんぼをしていると現れる三人目の話になった。
それは君のことだろうと言おうかどうか迷っていると、この前『二人』で隠れんぼした時には現れなかったねと言われる。
二人ではなく三人のはず……。
しかし、雛子には雄大が見えていなかった。
○キャラクター
・木船涼太
20歳。地元を離れて東京の大学に通っていたが、連休で地元に帰ってきた。
性格は良くも悪くも普通で、取り柄がないことがコンプレックス。
恋人よりも友情を優先するので、彼女とはすぐに別れてしまう。
・見藤雄大
20歳。地元で暮らすフリーター。
性格は面倒見が良い、頼りがいがあるタイプ。
屈託なく笑う様子が女の子にモテる。
※実は7歳の時に交通事故で亡くなっている。死んだことに気づいていない。
・三好雛子
20歳。地元の大学に通う女子大生。
性格は真面目で一途。少し度が過ぎてしまうドジっ子でもある。
恋人よりも勉強だったため、恋人の作り方が分からない。

○本文:

//セリフは25字×3行
//背景:寂れた町


【涼太】
(ったく、オヤジが倒れたって聞いたから、
駆けつけたのに……ただのぎっくり腰とはな)

(本当はこんな田舎になんて、
帰ってくるつもりはなかったのに……。
あーあ、早く東京に帰りたいな)

【?(雄大)】
ん……もしかして。
涼太か?

【涼太】
え、っと……。

【?(雄大)】
覚えてない?
ほら、隠れんぼとかして遊んだだろ。
雄大だよ。

【涼太】
あ、思い出した!
久しぶり!
何年ぶりなんだろう。

そうだ、時間があるなら、
お茶でもしていかないか?

【雄大】
おお、いいね!


//背景:寂れたカフェ


【涼太】
(田舎のカフェか……。
客も少ないんだろうな)

【雄大】
涼太は今、どこにいるの?
家は出てる感じ?

【涼太】
まあ、東京の大学。

【雄大】
お、いいよな東京!
憧れる~。

【涼太】
いやいや、けっこううるさいよ。
ま、こっちよりはいいかもしれないけどさ。

雄大はこっちの大学?

【雄大】
いや、フリーター。
車が好きだから、それ関係ね。

しっかし、久しぶりだよな。
ちっちゃな頃はよく公園とか行ったっけ。

【涼太】
そうそう。
隠れんぼとかしたな。

【雄大】
……隠れんぼと言えばさ。
もう一人誰かいなかったっけ?

【涼太】
は? もう一人?

【雄大】
ほら、三人で隠れんぼしてただろ、俺たちって。

【涼太】
そういえば、そうだな。
……誰だっけ、三人目って。

【雄大】
女の子だった気がする。

【涼太】
うん。そうだな。
おかっぱの女の子だった。

【雄大】
……でもさ、俺会ったことないんだよ。
隠れんぼ以外で。

【涼太】
ちょ、怖いやつかよ……。

【雄大】
なあ、これから公園に行って、
隠れんぼしてみないか?

【涼太】
……出てくるかもってことか?

【雄大】
物は試しだよ。
そのコーヒー飲んだら、行ってみようぜ!

【涼太】
やめといたほうが……。

【雄大】
ノリが悪いなー。
それでも東京の大学生か?

【涼太】
……ああ、わかったよ。


//背景:公園


【雄大】
いやー、久しぶりだな、この公園!

【涼太】
そうだな……。

【雄大】
じゃあやるぞ!
隠れんぼする人この指とーまれ。

【涼太】
…………。

【?(雛子)】
え……涼太君!?
涼太君でしょ!

【涼太】
え?

【?(雛子)】
私よ、覚えてない?

【涼太】
お、お前の仕込みか?

【雄大】
い、いや、俺はなにも……。
だって涼太に会ったのも偶然だろ。

【涼太】
そうだよな。

【雛子】
三好雛子なんだけど、覚えてない?

【涼太】
あ、いや、覚えてるよ。

【雛子】
そっか、よかった。
こんなところでなにしてるの?

【涼太】
ああえっと……隠れんぼだけど。

【雛子】
隠れんぼ?
なんかそういうのあるよね。
私も混ぜてもらっていい?

【涼太】
……どうする、雄大?

【雄大】
……いや、断ったらダメだろ。
そういうのってさ。

【涼太】
……そう、だよな。

(こんなタイミングで出てくるなんて、
絶対にアレだよな……。
断ったらきっと呪われる……)

【雛子】
どうしたの?

【涼太】
いや……なんでもない。
じゃ、じゃあやろうか。

【雛子】
うん。
ふふ、隠れんぼが終わったら、
私たちどうなっちゃうんだろうね?

【涼太】
え……。

【雛子】
ううん、なんでもないよ。

【涼太】
…………。


//暗転(時間経過)
//公園・夕暮れ


【雄大】
ふぃ~、やっぱ楽しいな隠れんぼ!

【雛子】
もうおしまい?

【涼太】
あ、ああ。
もう終わりにしよう。
暗くなってきたし。

【雛子】
そっか、帰っちゃうんだ。
久しぶりにね、遊べて楽しかったよ。
昔に戻ったみたいだった。

【涼太】
……うん。

【雄大】
なあ、涼太。
聞いてみようぜ。

【涼太】
……なにを?

【雄大】
だから、正体をだよ。
気になるだろ。

【涼太】
(何言ってるんだ……)

【雛子】
ねえ、涼太君!
聞いてもいい?

【涼太】
え?

【雛子】
涼太君って彼女とかいる?

【涼太】
彼女?
いや、……いないけど。

【雛子】
じゃ、じゃあさ、立候補していいかな?

【涼太】
は?

【雛子】
……ああもう、ちゃんと言うね。
昔からずっと好きでした!
付き合ってください!

【涼太】
ちょ、ちょっと待って、だって君……幽霊じゃ。

【雛子】
幽霊?
違うよ……ほら、体温あるでしょ。

【雄大】
あ、これは……。
うわ、涼太、これマジ告白ですわ。

【涼太】
マジ告白って。え?

【雄大】
あーあ。

【涼太】
ちょ、お前っ!

【雛子】
えっと……その反応はダメってことかな?
そ、そうだよね、変なこと言ってごめんね。

【涼太】
ちが……違うんだ!
幽霊って言ったのは俺じゃなくて。

えっと、あの、その今日はちょっと疲れちゃって。
改めて返事するよ。

【雛子】
うん……わかった。
真剣に考えてくれてありがとうね。

//背景:暗転

【雛子】
じゃあ、待ってるね返事。

【涼太】
うん。

//演出:雛子の立ち絵表示が消える

【雄大】
ありゃマジで普通の女の子だわ。

【涼太】
お前が変なこと言うから。

【雄大】
ま、彼女ゲットでオールOKじゃん♪

【涼太】
調子が良い奴……。

【雄大】
じゃ、俺こっちだからさ。
会えて嬉しかったぜ、親友。
幸せになれよ。

【涼太】
はいはい、お前もな。

【雄大】
…………。


//背景:カフェ


【】
――今日は、雛子と付き合ってから丸一年の記念日。
俺は再び田舎に戻っていた。

【雛子】
今日は楽しかったな。
実は昨日から楽しみで眠れなかったんだ。

【涼太】
俺も似たようなもんだよ。
田舎だと思ってたけど、
遊べるところがたくさんあって捨てたもんじゃないな。

【雛子】
卒業したら、こっちに戻ってくるんでしょ?

【涼太】
うん。
そしたら、また一緒に隠れんぼできるかもな。
三人で。

【雛子】
……三人?
そういえば、昔は三人だったかも。
私と涼太と、それから――誰だっけ?

【涼太】
雄大だろ。
ほら、ちょうど一年前も一緒に隠れんぼしたし。

【雛子】
……隠れんぼはしたけど。
三人じゃないよ。

【涼太】
……いや、三人だっただろ。

【雛子】
二人だったよ。
あの時。

だって、私が来る前は、
涼太が一人で隠れんぼしようとしてたじゃない?

【涼太】
一人で隠れんぼなんて……。

【雛子】
一人で隠れんぼしていると、
お化けがやってくるってやつ。
涼太はアレをやろうとしてたんだよね?

……違うの?

【涼太】
……。

まさか……三人目って……。


//背景:夕空


【涼太】
帰って母親に確認をしたところ、
十数年前に俺と同い年の少年が
交通事故に遭って亡くなったことがあったという。

その少年の名前が、見藤雄大。
隠れんぼが何より好きな男の子だったらしい。

//背景:余韻を残すようなフェードアウト


終わり


総文字数 2692文字(演出指示含む)
※483文字オーバー

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