お待ちしています、王子様


IDOLiSH7・六弥ナギの夢小説です。
ヒロインは小鳥遊紡ではありません。

ここは、東京都の秋葉原。なにかに夢中な人たちが集う情熱的な街…いわゆるオタクの聖地だと私は思っている。もちろん他に二次元といえば〜とたとえられる場所はあるけれど、この秋葉原はなんというかすごいと思う!んです!…あー語彙力ほしいわ。とにかく、私はそんな秋葉原のとあるアニメ系のショップで働いているんだ!
「いらっしゃいませー!」
「ありがとうございましたー!」
一際元気よく挨拶をする。だってその方が気持ちいいしね!私が働いている店は自慢じゃないけど他の競合店に比べたら大きい方だ。ここで働くのが夢だったからもうこれは天職だと思ってる!そんな充実した毎日を送っていた私に、ビックリなことが起きたんだ。

うちの店や他の競合店に来る人たちはなんとなくこの人そうかな?って分かっていたりする。本当になんとなくだけど。雰囲気というか、なんというか、まぁ勘?かなぁ?そんな感じだけど、たまに…え!?この人そうなの??っていう人もいたりするよ。驚くね〜!これは、そんなときどきだった驚きに私が遭遇した時のことだよ。

いつものように出勤していつものように準備をしていつものように働いていた時、エレベーターを上ってくる長身の人が見えてきたんだ。なんのきなしにレジでお客様を迎えようとしたら、だんだんその長身の人の風貌が露わになってきて私は驚いた。…イッイケメン!!ものすごくイケメンだったから!エレベーターを降りたその人が優雅に神々しいばかりの背景を背負ってそうな足取りでゆっくりと歩いてくる。あれ?これ夢かな??…痛い!つねってみたけど夢じゃなかった!そうこうしているうちに、わわわ〜!レジに来るよ〜!
「ーーハーイ、ガール。お忙しいところスミマセン。こちらの予約をしていて、受け取りにきました。ヨロシクお願いしマース!」
私の真ん前に来てその人は華麗に用件を告げた。ウインクも台詞も眩しすぎてしばらく動けなかったが、気遣われるように覗き込まれて我に返った。
「は、はい!少々お待ち下さい!」
私は慌ててお客様の目当ての商品を探し始めた。顔が熱い。大量の商品の中からなんとか見つけ出したそれをお客様に差し出した。
「お待たせしました!こちらでよろしいですか?」
若干上擦った私の声を気にすることなく、お客様は商品を見て確認する。
「Oh!Yes!これです!ありがとうございマース!!」
商品を手にした彼は目を輝かせ、隠すことなく頬を上気させていた。面食らった。すごいイケメンがアニメグッズを手にしてすっごく喜んでいる…!しかも予約をしてまで!なんだかとにかく圧倒されてしまった。…ん?でも、あれ?この人どこかで見たことないーー?
「では、サンクス、ガール!」
私がどこかで見た気がするイケメンについて思考を巡らせている中、その本人はウインクまでして店を出て行った。私の顔に熱が集中した。なに、あのイケメン!外国の人ってみんなああなの!?嵐でも過ぎ去ったようだ。
「…まるで二次元からそのまま出てきたような人だったな…」
ーーそれにしてもあの人、結局誰だったんだろう?

それから数週間後、謎のイケメンのことはほとんど忘れかけていた時にまた嵐はやってきた。
「いらっしゃいまー…!?」
「ハーイ、またお会いしましたね、ガール」
いったいどこから来たんだこのイケメンさんは!?ぎこちなくなりながらも私は店員として挨拶をする。
「い、いらっしゃいませ!なにかお探しですか?」
「今日はこれデース!お願いしマース!」
どうやらまた予約商品がお目当てらしい。私はこの前よりは落ち着きながら商品を見つけて差し出す。すると、イケメンの顔がみるみるうちに破顔した。
「Oh!ベリーキュート!!サンクスでーす!!」
そう言ってイケメンはやっぱり嵐の如く去って行った。しかし…今回も予約商品なんて、よっぽど好きなんだなぁ…!え!?あ、いやいやまさかまさか!気づいてしまったような慣れない感情に頭を左右にブンブンと振る。
「ーー私は二次元が好きなんだからッ…」
顔が熱い。そう思いながらも手にしているのは彼が予約していたジャンルの作品だった。
「…見てみようかな」

数日後、自分でも驚くけれど、私は彼が予約していた作品のBlu-rayディスクをレンタルショップで借りてみた。若干ドキドキしながら見てみると、最初はパッケージからも幼児向けかなとも思ったけど、実はなかなか泣ける作品でもあって驚いた。そしてそのまま泣いている自分にもさらに驚いたんだ。
「う〜…なにこれ、泣けるじゃ〜ん」
停止ボタンを押してタオルで目を拭っていたら、いつのまにかテレビの画面に切り替わっていた。ナレーションの声が聴こえてふと画面を見た時、目を見開いた。
「えッえー!?嘘!あのイケメンじゃない!?」
そこには、私の職場に予約商品を求めにやってくるあのイケメンがいたからだ。そのイケメンは画面の中で、確か海外の高級有名ブランド(だったかな)のクララ・ローウェルと一緒に仕事をしたとかで特集されている!…ブランドに疎い私でも名前ぐらいは知ってる!瞬きできない。
「ヤバイ…本当にすごい人だったんだ」
私はタオルを横に置いた。涙なんて驚きで引っ込んだよ。Blu-rayディスクを取り出すこともすっかり忘れている。その特集が終わると、今度はなにやらアイドルのCMが始まった。なんだか元気な人たちだなぁ…今が旬っていうのかなー…って、ええ!?そこでまた私は驚いたんだ。だってそこにはさっきクララと特集されていたイケメンが今度は歌って踊っていたから。そこで私はピンときた。初めて見た時からなんか見覚えあると思ったんだ。
「アイドルだったんだ…」
画面の中では彼らアイドルのCMが何パターンか続いてオンエアされている。私は黄色カラーのイケメンから目が離せなかった…。ーーIDOLiSH7、覚えたよ。

その日は結局、深夜遅くまですっかりハマったIDOLiSH7のことを調べていてあまり寝ていなかった。ハマったら一直線!徹底的に調べる!というのはオタクのサガ、かな。おかげで彼らのことをよく知れたけどね。へへん!別ジャンルとはいえオタクでよかったー!慣れたもんよ!あ、でも正直眠いけど…起きろ私!睡魔と格闘している私に声がかかった。
「Oh〜…そんなに頭を振っては首が痛くなってしまいマスヨ?」
ハッと我に返る。この声は昨夜散々聴いたーー
「ーーハーイ、ガール。お元気ですか?」
振り向くとそこには笑顔のイケメンが手を振っていた。思わず私は叫んでしまった。
「!IDOLiSH7の六弥ナギ!…さん!」
大声で口にしてから店内だったことを思い出して口を押さえる。イケメンこと六弥ナギさんは目を瞬いていた。…やってしまった。超超超有名人の名前を叫ぶなんて!顔が紅潮していってるのが分かる。
「あのッごめんなさい!いきなり名前を叫んでしまって」
おずおずと謝る私に六弥さんはふっと微笑んだ。
「ーー気にしないで下さい。ワタシはなにひとつやましいことはありませんから」
「え、でも」
「ワタシが秋葉原にいることはみんな知ってマース!」
「そ、そうなんですか…」
もはや周知の事実なんだ。この人はイケメンでアイドルだけどオタクであることを隠してないんだ…そのことがなんだかとても気持ちがよくて嬉しかった。六弥さんは言葉を続けた。
「それより、ワタシのことを知っていてくれてとても嬉しいデース!ありがとうございます」
イケメンに極上スマイルをされて今にも私は倒れそうだった。ハッ…いかんいかん!なんとか保って仕事をする。
「いッいえいえ、こちらこそいつもありがとうございます!きょ、今日はどういった御用でしょうか??」
挙動不審なのは許してほしい。だって三次元の、ん?いや二次元?いやいやいや!どっち!?ま、まぁいいや。とにかくイケメンに対応しているのだから!
「Yes!コレです!この予約をしに来ました!お願いしマース」
そう言って六弥さんが差し出したのは、店頭予約限定の商品の申し込み用紙だった。WEB申し込みも多い中、わざわざうちの店に来てくれたんだ…なんだか嬉しいや。私は受け取って内容を確認した。
「はい、大丈夫です。お申し込み受付致しました!」
「サンクス!」
六弥さんはあの嬉しそうな笑顔をしてくれた。私は彼らにハマる人たちの気持ちが分かった気がした。
「では、またお会いしましょうね、ガール」
「!はい、お待ちしています!」
ヒラヒラと笑顔で手を振って去って行く六弥さんを見送る。私の顔はきっと真っ赤だ。
「〜〜〜イケメンのウインク、ズルいでしょッ。あーもー私、二次元しか興味なかったのになー!!」
こう言っている時点で私はもう自分の気持ちに気づいていた。
「こうなったら六弥さんを二次元だと思おう、よし!」
わけのわからない論理で強引にまとめた。

ーーだってあんな絵に描いたような王子様みたいなイケメン、なかなかいないじゃん。出会えたのも奇跡だよ…

私はすっかり六弥ナギさんにハマったようだ。これは手強いぞ。今までの乙女ゲームも通用しなさそうだ。参ったなぁ、なんて思いながらも彼に会えた日はより一層仕事に励めそうな気がしていた。口角が上がる。エレベーターの後方からなにやら賑やかな声が聴こえてくる。新たなお客様のご来店らしい。姿が見えて私は声をかけた。
「いらっしゃいませー!」
まさか張り合おうなんて思っていないけれど、六弥ナギさんに負けないスマイルのつもりだ。

彼がやってくる日が楽しみであり、待ち遠しくなった。

END

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