【みやまる】電車映画のようなもの その42-バンクーバーの朝日

バットがボールを叩く音もスパイクの歯が土を蹴る音もグラブにボールが収まる音も、野球の音は乾いた響きばかりた。この野球映画はカナダのバンクーバーが舞台。土地の持つ涼しく澄んだ空気の中に乾いた球音が心地よく溶け込んだ映画である。

20世紀初頭、バンクーバーの日系移民で構成された「朝日軍」の選手は日系人コミュニティからも冷ややかな態度を取られていた。主に「こんな貧しいの中で野球なんて」という理由で。しかし厳しい冬を越し野球のシーズンがやってくると一転して選手達に声援を送るようになる。なんだかんだいってみな野球が楽しみだったのだ。頼りない表情が続いていた選手たちも顔を引き締め、大迫力の試合シーンへ。それもそのはず上地雄輔は横浜高校時代には松坂大輔の球を受けていた捕手だし、亀梨和也も小学校時代に野球の国際試合に出場していた選手だ。俳優のプレーがぎごちないという野球映画につきまとう難題を、ハイレベルな野球経験を持った役者に演じてもらうという方法でクリアしている。

列車のシーンは最終盤、真珠湾攻撃により敵性国民となった彼らはそれぞれが汽車に乗り込み収容所へ行くという別れの場面。朝日軍の爽やかなプレーとのコントラストになり、より素晴らしい野球シーンを際立たせている。高畑充希の美声による「私を野球に連れてって」も聴ける美しい”球画”。

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