17歳から突然23歳になった。

いや、そんなことはないはずなんだけど。
随分と長いこと、17歳をやっていたような気がする。
いや、そんなことはないはずなんだけど。

先日、誕生日を迎えた。
23歳になった。

去年と一昨年は諸般の事情で17歳をやっていたので、やっぱり人より長いこと17歳はやっていたらしい。 
というのもわたしが17歳がいいと強くお願いしたので、彼らも必然的に17歳でいてくれたのだ。友だちに恵まれているのがわたしの唯一自慢できることだ。あとはかわいいことかな。

なんでそんなに17歳にこだわっていたのかというと
あの年は最強だったような気がしていたからだった。

既に5年経ったということなので、もう記憶が曖昧である。
完全に美化。囚われすぎ。過去を閉じ込めて愛でるのが好きなんだよ人間っていうのは。しかたがない、だってあの時つくっていたものの全てがあまりにも美しいのだから。
絵も、写真も、言葉も、拙いけどのめり込んで表現しようと藻掻いていて、そうしないと生きていけない、と本当に信じていた。
作り上げたものに、雑音が混じっていなかった。

雑音というのは、説明しようとすると大変むずかしいもので、わたしにとっては、たとえば、"生活"だったり、"評価"だったりする。

孤独を埋めるためにものをつくり始めた人間にとって、つくることは、慰めであり、他者とのコミュニケーションツールであったので、あまりたくさんの"結果"を付随したり期待したりすると重みになってしまう。
なってしまったことがあった。
その頃自分が描いた絵は今見てもまあひどいもので、そりゃあ描かなくもなるよな、というかんじで。

でもその雑音は他人から投げられたりするものではなく、大抵は自分の内から鳴り響いているものだったりする。

全然知らなかったんだけど。
誰も教えてくれなかったし。
まあそもそも絵の描き方だって誰にも教えて貰ってないんだからそりゃそうだ。
 
17歳のわたしは、世界から全てを受け止めようとしていた。
通りすがった知らない人の訃報に黙祷を捧げるような様子で(比喩でなく。田舎なので国道沿いに斎場がある)、ちょっとそこまで受け止めなくてもいいんじゃない? というくらいだった。
18歳になるとき、少しの寂寞を抱えて胸を踊らせた。
知らない世界にいけると思っていたから。

19歳。苦しかった。もう戻れないんだと思った。様々な焦りと無力感を覚えていた。もっともつよく、大人になりたくないと願っていたのはこのときかもしれない。

20歳。足掻いていたかった。

21歳。絶望した。


22歳になるとき、やっと終わりが見えてきた。思春期の終わりだ。すこしだけ、肩の荷が降りたように思えた。何を背負っていたのかわからないまま。


誰に言ったって伝わらない、理解はされたくない、でもとっておきに大事にしたい、なにかが、終わるのだ。と、思った。

いや全然「これ思春期じゃん」ていうのあったけどねこの1年でも。そんなカーテンの裾切るみたく一気に落ちてくれたりはしないのよ。残念ながら。

人より早く思春期に入った実感があり、体感だと12歳くらいで17歳に入ったので、10年くらい17歳をやっていた。

やっと時が進んで、色んな理由をつけて逃げてきたものの姿かたちが少しずつわかるようになってきて、自分がどうだったのか、どう感じるのかの輪郭をさわれるようになってきた感覚。
逃げることはわるくない。そう言い続けてきて、今もそう思っている。
生きるために。
逃げ疲れて、怒りを感じて、自分を愛せて、強い感情を持てたら、新しい道を歩いてみてもいいかもしれない。

そう気付いた時に、
たくさん伝えたいことがあった。
たくさん記したいことがあった。
たくさん憶えたいことがあった。
たくさん知りたいことがあった。
たくさん遺したいことがあった。

誰に届くのかはわからない、まだ知らない。
今見てくれているひとかもしれないし、かつて見てくれていたひとかもしれないし、これから生まれてくるひとかもしれないし、あのころのわたしかもしれなかった。


そしていま、
ものをつくることが、また慰めになり、楽しい。
大丈夫な気がする。
なんの根拠もないけれど、根拠のない自信っていうのはちょっとした魔法みたいなもので、魔法学校を卒業したわりに魔法が使えるようにはならなかったわたしには、都合のいいお守りになるのだ。

わたしが恵まれていたことは、一番苦しいときにたくさんの運命がつながったこと。
地続きに光があったこと。
つまり今わたしがここにいるということ。
今になって言えるけど、神様、もしいるなら、結構わたしのこと好きなんじゃない? ね
だから信じられる。たくさんの愛を。


常に高く飛び続けられるわけでもない、すぐに休憩したくなるし愛されたくなるし全て投げ出したくもなる。
マジでメンタルだけはどうにもならん。でも自分と一生一緒に生きるのは自分なんだ。かわいがってやりたい。かわいがられたい。あわよくばあいしてしにたい。

どうしたって苦しいことはある。
でもその傷もあとから見たら美しいと思えるように人間はできている。
過去を閉じ込めて愛でるのが好きなんだよ人間っていうのは。
なにかをつくる者はなおのこと。


これから人生かけて思春期のエピローグやってやるつもりなんで、まあ、気が向いたら見といてくださいよ。じゃあまた。


2021.01.31 あとり依和
(浮遊信号pixivFANBOXより再掲)

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