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cEDH ハパチラ型別解説(2021/02/18)

Hapatra, Vizier of Poisons/毒物の侍臣、ハパチラ

 大分前(2021年2月18日)にmediumに投稿したもの(https://0gnv2hh.medium.com/e03245840bb)をこちらに再投稿します.
 再投稿する理由は(https://note.com/0gnv2hh/n/n3155fca35246

 これらの型では今の高速環境を生き残れないかもしれませんが,当時の環境や僕の考え方が何らかの参考になればいいなと思います.実際,現在でも活躍できるリストはこれらに少し手を加えたもの達です.
 また,カジュアルではありますがSnakebag型という面白いものも開発されているようですので,興味のある方は見てみて下さい(https://www.moxfield.com/decks/tgH-bOErKkiGehCf6B5U9Q/primer).後日暇に任せて紹介したいと思います.(今の最新のリストも)

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1. はじめに

 日本のEDHコミュニティでは,「海外と日本ではcEDHの環境が違いすぎる!」という意見が度々話題に上ります.

 その度に海外と日本では「こんな感じで環境が違うから採用カードが違うんだ」という情報を耳にはしますが,これまでハパチラに関してこういった環境の違いとリストの違いとの関係について体系的に論じた報告は殆どなかったように思います.

 僕自身,ハパチラに関して日本と海外のリストや環境の違いを勉強をしていく中で,そういう理由で採用しとるのね,そういう理念で構築しとるのねということはわかってきてはいましたが,改めて整理をしてこなかったため漠然とこうかなとしか考えていなかった部分が多々ありました.

 そこで今回は脳内を整理すると共に新しい気づきが得られたらなという意味で,そんな様々な環境に最適化されたハパチラを,それぞれのデッキの目指すゴールや環境での立ち位置,戦うレンジなどの視点からまとめようと思います.

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2. 5つの型

 今cで使われているハパチラには大きく分けて3つの型があるようです.それに僕が最近アレンジした2種類を加えた5種類を今回紹介したいと思います.名前がないと紹介しにくいので,今回は勝手に僕が「特化型」「ラザケシュ型」「オレオ型」「レオリオ型」「同族型」と名前を付けて分類しました.

 順番に説明していこうと思います.

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2.1 特化型

ハパチラヨーグモス

まずは海外でも日本でも一番標準的かなと思われる特化型を紹介します.

《デッキリスト》
https://www.moxfield.com/decks/DxCW1W6U90iiVMnixnZcAQ

(他にhttps://tappedout.net/mtg-decks/toxic-relationship-hapatra-edh/など)

 この型はハパチラヨーグモスコンボに特化した型です.隙を見てハパチラヨーグモスコンボを揃え,坊主めくりをしていって勝つデッキです.

 入っているコンボパーツの枚数を考えると,ヨーグモスを打ち消されたり除去されたりしなければドローしていくうちに自然とパーツが揃うため,非常に安定して勝ちに行くことが出来ます.

 豊富なサーチから平均して3~4ターンでコンボを揃えることが出来き,様々な種類の妨害(墓地対策,カステム,判事,トーパーオーブ等)に対する除去や抜け道が多数入っているため,スタックス環境でも比較的戦えるようになっています.
 最近流行りの船殻破りはそもそもハパチラヨーグモスコンボで除去することが出来るので(2マナ与えてしまいますが),そこまで大きな問題にはなりません.

 一方でヨーグモス自体の妨害耐性が低く,コンボのためのゴミも多いため線が細いデッキとも言えます.

 勿論《殴りバエの蔓延》のようなヨーグモスが除去された場合やスタックス戦術で場をガチガチにされている場合のサブプランも入っているため,ヨーグモスコンボが決まらなくても終盤に逆転を狙うことも可能です.

 しかしながら,基本的に相手の隙をみて仕掛ける形になるのでそれ以外に強い動きがし難い構成なのかなと思います.
つまり,今回紹介する5つの型のうち一番勝ちを拾いやすいデッキではありますが,積極的に有利な盤面を作っていくデッキではないのかなと考えています.

《優れている点》
・兎に角速い.

《欠点》
・勝つ以外の強い動きがしにくい.
・ゴミが多い.
・自分より速い相手に対する策が薄い.

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2.2 ラザケシュ型(スタックス)

ラザケシュ

《デッキリスト》
https://www.moxfield.com/decks/gAfWvoj7pkyhnO3DUl-S9Q

 最近の海外cEDH環境ではむかつきぶっぱマンが卓に一人はいて,それを妨害しつつも他の人も並走するという光景がよく見られるようです.(ぶりんさん情報)

 このような環境の中ハパチラは,緑黒という色の性質上相手のむかつきを止めるのは難しいため,自然と相手より先にむかつくかあるいは不快置物で縛るかの2択を迫られます.

 その末に生まれたのがこのラザケシュ型と後述するオレオ型のようです.

 ラザケシュ型はスタックスで相手を縛りつつ,リアニ戦術によりラザケシュを出し,コンボパーツを揃える型です.
単にスタックス型とも言えますが,ラザケシュを中心に据えることが多く海外でもそう呼ばれているようですので今回も同様に呼称します.

 これは海外でも日本でも同じですが,現在の環境の特徴として,オラクルコンボに対して無力であるという理由から墓地に対する警戒が以前より弱まっているということがあります.
そこで墓地利用によりラザケシュを軽いマナで出すこの型が注目を集めたようです.

 スタックスに関しては《根の迷路》《三なる宝球》《からみつく鉄線》といった卓の速度を落とすものや《Chains of Mephistopheles》のようなドロー妨害が入っており,更に《溜め込み屋のアウフ》と《無のロッド》によってマナファクトを許さない構えがとられています.

 またこの型に関しては,リスクラフトを採用しているのが大きな特徴と言えるでしょう.

リスクラフト

 ラザケシュからサーチも可能であることと,《アロサウルス飼い》がいれば打ち消されない緑のカードのみからなるこのコンボは,エンチャントを使用するという性質上スタックス環境でも安定して決めることができます.

 生成した無限トークンは速攻を持っていないためそのターン中にゲームを決めることは難しいですが,スタックスでガチガチに固められているということは相手もこちらの無限トークンへ対処するのが難しいとも言えるため,そのような状況で高い成功率を示すようです.

 上述した理由から,リスクラフトはハパチラヨーグモスコンボが封じられたスタックス環境での優秀なサブプランと言えるでしょう.

 特化型より速度は落ちますが,ラザケシュから相手の妨害に対する回答(《生+死》→《夏の帳》等)をいくらでも持ってくることが出来ることから,
 ラザケシュが出てしまえばその後の安定性は他の型に優ります.

 一方で,このスタックス戦術は自分の抜け道を作らんとするが故に完全に相手を縛ることができるものにはなっていません.また,不快置物達が間に合わないような場合もあるかもしれませんし,特化型のように素早くコンボを揃えるには適していません.

 従って,上手く盤面をコントロールしながら隙を見て勝ちに行くという戦い方になります.

 この型は,今回紹介する5つの型の中でも最も相手を勝ちから遠ざけることのできるデッキと言えるのかなと思います.

《利点》
・相手の行動を縛って自分に有利な状況を作り出し,ゆっくりとゲームを進められる.

《欠点》
・早いターンで勝負を決めるのには向かない.
・スタックスも完璧とは言えない.

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2.3 オレオ型(むかつきぶっぱハルク)

むかつき

《デッキリスト》
https://www.moxfield.com/decks/3jJGHnq1-UO_dHUSXy0lnQ

 ぶっぱ環境に適応したもう一つの型がオレオ型です.

 ざっくり言って,「むかつきを相手が撃ってくるならこっちが先にむかつきを通してしまえば勝てるじゃないか」,というのがこのデッキのコンセプトです.

 ハパチラ学会のHokageOfDabsさんが開発した型らしく,実際この戦術は上手くいっており海外のcの場で結果を残してきているようです.
詳しくはhttps://cedh-decklist-database.com/からHapatraで検索してみて下さい(直にはリンクが上手く貼れないため)

 標準型と比較するとパーツを減らしているためにハパチラヨーグモスコンボに入っても必ずしも決めきれるとは限らないですが,
それでも依然としてサーチやコンボパーツの数が多く,更にデッキ内の平均CMCが低ため,むかつきが通れば確実に勝てるような構成になっています.

 フィニッシャーにはハパチラヨーグモスコンボに加えてハルクからの無限頑強コンボが採用されています.

ハルクコンボ

 サーチが多く採用されているため,妨害が無ければハルクだけでも3ターン目に安定して勝ちに行けるようになっていますし,《金属ミミック》をハパチラヨーグモスコンボでも兼用できることからサブプランとしても優秀です.

 サクリ台の豊富さからシナジーのあるカードも多く採用されており,太く戦える構成にもなっています.

 ラザケシュ型でも採用されていましたが,サクリ台の多さからこの型では《再誕のパターン》が輝きます.

 他の型でもハパチラの殴りで自分の1/1クリーチャーに-1/-1カウンターを置くことで生け贄要員の蛇トークンとヨーグモスが同時に揃う優秀なカードと言えますが,このデッキではサクり台からも誘発できるという点が美しいですね.

 サクり台は標準的なものが多い中,特徴的なものとしてはいぶし銀カード《陰謀団式療法》が採用されており,墓地から0マナで使えるサクり台かつ前方確認にもできるまさにぶっぱ環境に適したカードと言えるでしょう.

 また,ピン除去がサクり台としての役目も果たすことができるため,特化型よりはゴミを少なくできるという点もいいのかなと思います.

 以上の理由から,このデッキは海外の環境に最も適した型ではないかなと思います.
 一方で日本の構え環境では必ずしも活躍できるデッキとは言えないのではないかと思います.

 なによりシナジー重視のカード選択は,使っていて楽しいなというのが個人的な感想です.

 欠点としては,やはり速さを大事にしているため太い動きはないなというところです.

《優れている点》
・むかつきが通れば安定して勝ちに行ける.
・サクり台との兼ね役としてインスタント除去を無理なく採用できる.(結果として特化型よりもゴミを少なくできる)

《欠点》
・特化型よりは遅い.
・相手にプレッシャーをかけるような動きは難しい.

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2.4 レオリオ型(ハルクのみ)

変幻の大男

《デッキリスト》
https://www.moxfield.com/decks/TPokezUTtkuCOVIPWgUV2w

 ここからは上述した国内外でよくみられる型を僕がアレンジしたものを紹介したいと思います.

 先ずは,オレオ型からむかつきを抜いた型です.

 日本は海外と比較すると,ぶっぱ環境というよりも寧ろ構え環境であるように思います.

 そこで,むかつきでぶっぱするよりは太い動き(太いクリーチャーを展開してプレッシャーを与えるなど)をすることで妨害を吐き出させながら戦うのが良いのではないかと考え構築しました.

 大前提として3ターン目までに安定して勝ちに行けることがcの場では必須であるため,オレオ型からそれを崩すことなく構築しています.
加えて相手の勝ちを妨害するインスタント除去なども減らすことなく,あるカード群を部分的に太いクリーチャーに差し替えることで中~長期戦でも常に強い動きが出来るようなデッキになっています.

 今回採用した太いクリーチャー達は《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》,《約束された終末、エムラクール》,そして《 穢れた血、ラザケシュ》です.

ポルクラエムララザ

 ポルクラノスは《船殻破り》や《敵対工作員》のような不快なクリーチャー達を薙ぎ払うこともできますし,最悪12/12でビートすることも可能かもしれません.

 エムラクールはオレオ型では採用が難しいカードのうちの一つですが,どうしようもないような状況から打破できるという点で優れているのかなと思います.
 特化型などに比べて比較的墓地が肥えやすいため,凡そ9マナぐらいでのキャストが可能です.これが重すぎるという話もありますが体感で試合が長引けばこのぐらいのマナは出ることが多いように感じます.

 ラザケシュはラザケシュ型で言及しているため改めて紹介する必要もないかと思いますが,ここでは8/8飛行という太さが相手のライフにプレッシャーをかけることもできるということを述べておきましょう.(ターンが返ってくれば勝っているのではないかとも思いますが)

 これらのクリーチャーはすべて伝説のクリーチャーであるため,ヨーグモスも持ってくることが出来る《緊急時》で持ってくることが出来ます.

緊急時

 特化型でも勝ちに行くためのヨーグモスや《落葉の道三》,ドローの《秘密を知るもの、トスキ》とサーチ先には選択肢がありますが,
 この型では除去のできるポルクラノスや状況をひっくり返せるかもしれないエムラクール,勝ちに行けるラザケシュもいるため,サーチの幅は更に広いものになっています.(ToN→エムラは流石に重すぎる感じがありますが)

 このようなクリーチャーを採用するためにオレオ型にあった《頭蓋骨締め》や《森の知恵》といった恒久的に使用できるドロー関係のカードは抜いてあります.

 もともと長期的なドローエンジンは早いターンでの勝利には貢献しにくいですし,ヨーグモスコンボを採用したうえで《森の知恵》で更にライフを減らしていくのは危険だなと感じたからです.
中長期戦を見込むのであれば,いっそ太いクリーチャーに変えたほうが安定性があると考えています.

 この型はオレオ型程の爆発力も特化型程の速さもなくラザケシュ型のようなスタックス戦術も採用していないため,どっちつかずな印象を受けますが,
 オールレンジで戦えるため色んな状況で戦える,そういった意味で最も丸い,あるいは丸すぎる構築なのかなと思います.

《優れた点》
・基本的には速攻で勝負を決めにいくスタイルを踏襲しつつも長期戦を見ることも可能.

《欠点》
・特化型ほど速くはないがスタックス戦術もない等,どの型にも大きく勝つ部分がない.

(注:レオリオ型という名前の理由は僕がオレオ型を改造したリストなので似た名前にした方がいいかなと考えたためです.滅茶苦茶適当ですみません.)

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2.5 同族型

同族の召喚

《デッキリスト》
https://www.moxfield.com/decks/LrH5ZzjinEqvMf0BDZow6g

 最後にインスタントタイミングで勝つことに特化した型,同族型を紹介します.

 ハパチラとヨーグモスはどちらも人間かつクレリックです.従って,デッキの中身を調整することで《同族の召喚》1枚で確実にコンボパーツを揃えることが可能であり,その1枚コンボを狙ったデッキが同族型です.

 例えばハパチラが出ている状態でデッキにヨーグモスしかクレリックがいない場合,クレリックを指定することで確実にヨーグモスを持ってくることが出来ます.
 また,デッキの人間を《ズーラポートの殺し屋》と《ラムホルトの勇者》,《スランの医師、ヨーグモス》だけにすることで,何れか1体とハパチラが出ている状態で人間を指定することで確実に残りのパーツを揃え,そのまま勝つことが出来ます.(勿論もう1体最初のサクりクリーチャーが必要ですが)

コンボ

 この型は妨害を吐き出させるというよりは,誰かが勝ちに行くのに合わせて同族の召喚を打ち込むことでインスタントタイミングで勝つということに特化した,「特化型をインスタントタイミングで勝つのに特化させたデッキ」です.

 もともとハパチラには《召喚の調べ》や《出現領域》が入っているということもあり,インスタントタイミングで勝つことは出来ましたがそれ以外の選択肢は少なく,インスタントウィンにそこまで優れたデッキではありませんでした.
 一方同族型では盤面に人間がハパチラを除いて1体でもいれば,インスタントタイミングで勝ちに行くことが可能であり,比較的容易にインスタントウィンできる型であると言えます.

 ただし同族型では《闇の腹心》や《敵対工作員》,《森を護る者》といった優れた人間を採用できないというのが大きな欠点です.

《優れている点》
・上手くすれば同族の召喚1枚で勝てる.
・同族の召喚がなくても特化型と似た動きが出来る.
・速度は実質特化型と同じ.

《欠点》
・優れた人間を採用できないという自分で勝手に縛りプレイをしているような形になってしまう.
・他には特化型と同じ欠点を持つ(太くない,ゴミが多いなど).

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3. まとめ

 海外ではむかつきぶっぱが多いため,むかつきをするかスタックスをするかという選択肢が良いということから,「オレオ型」と「ラザケシュ型」が適していますが,日本では構えることが多いため,コンボに特化して隙を見て勝ちに行く「特化型」「同族型」や,早い段階で勝ちに行けるようにしつつ自分も妨害やそのほかの強い動きをしていくことが出来る「レオリオ型」が適しているように思います.
 また,今回はラザケシュ型としてスタックスの多い型を紹介しましたが,スタックスを積みつつハルクに行くこともできるなど組み合わせ次第でいろんな構築が考えられますし,
紹介したもの以外にも,昇天を使ったビート型というのもあり,cでも試されているようです.

 結局のところJon Finkelの言うように「すべてはメタゲームさ」,それぞれの環境に合わせた型を模索していくのがいいのかなと思いますし,実際それがマジックの楽しみの一つでもありますね.

 以上です.

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謝辞

同族型を気づかせて下さったぷさん,ハパチラに関して議論をさせて下さっておりますハパチラ学会のHokageOfDabsさんをはじめとする皆様とTappedOutにリストを載せられているDaedalus19876さん,twitterで情報を交換させて頂いておりますぶりんさんやにとりさんをはじめとする皆様に,ここに記して御礼申し上げます.

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