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冬でも半袖半ズボンの子供

 今年の冬から寝る時にもエアコンを付けっぱなしにするようにしたら肌の乾燥が激減した。風呂上がりに身体中にボディクリームを塗りたくる必要はなくなり、口の周辺がカサつくことも失くなった。肌の弱い僕にとっては世紀の大発見だった。湯たんぽや電気毛布なんて要らないし、足元専用の小さなヒーターも要らないのである。
 これまでは暖房を付けっぱなしで寝るのは逆に乾燥の原因になりうると信じて絶対に避けてきたのだけれど、それは間違った固定観念だったようだ。どうも寝ている時に体を冷やしてしまう方がより乾燥に繋がるらしい。もちろん住環境や生活習慣、それから体質にもよるだろうから一概に誰にでも共通するとは言えないが、少なくとも僕の場合はそうだった。
 僕の部屋のエアコンの設定には弱風の下に静音があり、そのさらに下に自然風というモードがある。本当に作動しているのか疑わしいくらいの微々たる風量なのだけれど、これの設定温度を26度にしておくと「暖かい」というよりは「寒くない」という状態になり、快適に一晩を過ごせる。ちなみに平均的な暖房の温度設定を調べてみたら20度が目安らしかったので、26度は結構攻めている数字のようだ。しかし肌の調子は良いし、喉にもなんの影響もなくhihiAも歌える。

 どこの小学校でも同じだと想像するのだけれど、冬でも半袖半ズボンの子供は一定数存在する。大人がそれを褒めるからだ。新陳代謝が活発な子供には体が冷えているという状態を上手く認識するのは難しく、外的な評価を基準にしてしまうわけである。おそらく子供のうちはそれで大丈夫なのだろうけれど、幼少期に身につけてしまった温度調節の感覚が尾を引き、大人になるに従って問題が徐々に顕在化するケースは多いに違いない。
 僕は別に常日頃から薄着の少年ではなかったが、ずっとサッカーをやっていて真冬でも試合の際には半袖半ズボンになっていた。勢いのついたボールが露出した太腿に「ビシッ」と当たる痛みは筆舌に尽くしがたく、経験者なら首がもげるくらい頷いてくれるだろう。その頃の経験のせいで僕は寒さに対する諦念みたいなものを身につけてしまい、ある程度は我慢するものだと思い込んで生きていた。ゆえに対策を怠ってきた。日本人としてはおそらくかなり遅咲きになるが、僕がユニクロのヒートテックの偉大さに気付いて本格的に導入したのは23歳くらいになってからである。それまではずっと真冬でもインナーに半袖Tシャツを採用していた。それが一因となって体が冷えて肌が乾燥しているということを理解できていないまま、僕は化粧水やニベアを一生懸命塗りたくった。基本ができていないのに応用を実践していたわけだ。そういうことは学校では教えてもらえないので、自分の経験を通して学ぶしかない。

 冷えに対する対策をいわば完遂させた僕が次に対峙するのは、おそらく紫外線の問題である。僕はこれまでの人生において日焼け止めをほとんど一切使ってこなかったし、皮膚癌大国のオーストラリアで二年ほどを過ごした負債はいずれ可視化されるだろう。まあ基本的にはインドア派なのであまり心配はしていないのだけど。
 なんだか美容に関心の高いK-POPっぽいルックスのインフルエンサーが書く文章みたいになった。しかし僕は単に原因と結果を正しく認識して、問題を解決したいだけである。


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