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全ては 匣の中

舞台を終え、お客様をお見送り、
大道具やセット・装置をバラして、
掃除して、朝まで打ち上がった帰り道の電車で
なんだか経験したことのないような虚無感に襲われながら、時折うとうとしながら書き始めましたので支離滅裂だったらすいません。
いやもう確定でとっちらかる。
きっと書きながらでも時間が経ってもまとまらないだろうなとわかるほど、あれもこれも書き留めておきたいような気持ちで、
どうやっても書きこぼすだろうからせめて鮮明なうちにと。
何日かかけてかく。

冒頭に戻りますが、
舞台が終演いたしました。

頭上注意第0回公演 「匣の中」
八幡山ワーサルシアターさんとの提携公演

脚本演出に藤丸亮さん
主宰は中山ヤスカちゃん


大好きなお二人の舞台に私が!?呼んでもらえたの!?私が!!?と半狂乱になりながら所属先に連絡した覚えがあります。笑
オファー頂いたその日から、この公演までは何があっても生き抜かねばと思いましたし、嬉しすぎてちょっと他のことが上の空だった時期もある。すいません、他のことたち。


大人のネガティヴファンタジー絵本

藤丸さんが23歳の時に書き上げた原型を、主軸はそのままに加筆修正変更が都度加えられ、リーディング・舞台などで何度も再演されてきた作品。
ただわたし個人としては観劇したことがなかったのでかなり新鮮に読み、演じさせてもらいました。

ゴミ山と呼ばれる、まさにゴミの中に息をひそめるようにして暮らしている身寄りのない子供達のもとに、裕福な街の有力者の息子が来て
「一緒に遊べないかな」と伝えることで交わっていき、それぞれの世界と関係に亀裂が生じていくようなお話。


物語ベースはめちゃくちゃ暗い。
ストリートチルドレンの話だし、子供達はゴミを漁ってご飯を探して生きてて、必要であれば盗みもやるし。
暗い、のですけど、ゴミ山の子供達は存外楽しく、憧れや愛や希望を持って暮らしていて、
血の繋がりは無くとも、お互いを本当に家族と想って接し、強い絆で結ばれている。


わたしはそのゴミ山に住む、
フィリア、という幼い女の子の役を賜りました。

拾って名前をくれた親代わりのツァールと
優しい兄のようなテナとレイジ

たまに遊びに来るアインパズドラといつものように遊ぶ毎日。(若干の語弊)
フィリアの小さな世界はそれだけあれば幸せでした。

そこにやってくる 街の権力者の息子 ファム。

友達になりたいっていうから、いいよ別に!っていうんですけどめちゃめちゃ反対されるの巻。
でも優しいツァールは葛藤しながらもファムを受け入れるのでした。


ツァールは物心ついてから親に捨てられ、傷ついた心を抱え続けていて、同じく捨てられていた身寄りのない子供に実の妹の名前を付けて育てるようになる。
ファムの寂しそうな顔に誰かの姿をみたり、立場に振り回されず屈託なく友達が増えることを喜ぶフィリアにほだされたのかなあ。
本当はみんなそうありたかったよね。


幼心にフィリアに恋を覚え始めるテナ
敵対しつつもツァールに思い寄せるアイン
アインの気持ちを知ってちょっとまんざらでもないツァール(私的解釈)
愛を「その人のことを考えるとドキドキして夜も眠れなくなるみたいな」ことだとテナに教わったフィリアはファムへの気持ちが愛なのだと思って告白してしまったり。
(おかげでこじれるんだけど、テナの表現可愛すぎるし夜眠れないとこ想像すると凄い尊いからオススメです。私がイラストでもかける人だったらGIF動画にしてるところ。この素敵な台詞を書いた丸さんに静かに拍手を送りたい。)
友情なのか恋なのか、昔 大切な女の子を亡くしてしまったレイジは、街からの人間に対して壁が厚かったり、家族の絆にも敏感だったり。

ファムは家族愛も不確かで、母親は愛してるわbotなのに召使といいかんじで彼を見てくれていないし、父親とはしばらく顔も合わせていない。街にも学校にも友達もいない。

 

愛すること 愛されること

絶妙なバランスで均衡を保っていた家族愛、友愛、恋愛、いろんな形の愛のほとんどがファムの登場によって少しずつ掛け違っていく、そのスピード感とやるせなさが魅力的なお話だなと思います。

ファムがフィリアから告白を受けたあと、
「愛情を押し付けるな」と叫ぶシーンがあります。
アインに対しては、
「人を好きになったらすぐ両想いだなんて無理」
だとも。

まとめるの下手かって感じなんですけど
それぞれがいちばん大切なあの人からいちばん愛されたかったって気付いてしまうことで世界を変えてしまうところ、…フィクションってわかってるのになんとかみんな幸せにできねえもんかなあって思ったりしていました。
てかまずもとは子供の喧嘩なので利用したグリディさんはおに!あくま!

あとファムの台詞って真意をめっちゃついててとても耳がいたいよね。


別の意味で アム を大切に想う2人。

アイン・パズとヘイトのシーン、私は次のシーン入りのため幕裏にいて、帰ってくるヘイトのために幕を開ける係をしてたんですけど…聞いてるのほんとにつらかった…。

ヘイトはどこにぶちまけても収まらない永遠の怒りがあって、パズはドラを守りたくて。
いちばん悲しいのはアムの死に対して引き金を引いた人はあのシーンのどこにもいないこと。


ゴミ山の人間も、街の人間も、
ヤベー奴はヤベーし、小さな幸せを守って生きてる優しい人もいる。
そこに生まれや育ちは関係ないんですよね。
これは現代にも通じることだなって。

あと、こはちゃんとも話したけど、アムとフィリアは多分仲良くなれたと思う。劇中で出会いたかったな。


物語の制汗剤!笑

制汗剤といいつつ、後半めっちゃ拘束してくるし殴るし、怖いんだけど…!

にしてもメイドダンサーズ可愛すぎる!!!
ロングメイド尊い…………(合掌)
ゆっこメイドちゃんとは意外と絡みが多くて楽しかったです!
いっぱい殴られました♡笑


アインパズドラ!(ガンホー!)

バランス抜群 息ぴったりの助で、3人のシーンはついニコニコしちゃう!
フィリア的にはアインパズドラはみんな好きです。
チョココロネとかレーズンパンとかお弁当を掲げあって、まぶしーー!をやるのも多分毎回のことだし、なんやかんやみんなが楽しそうだから楽しい。
ファムにも裏芝居で、登場はいつもこのポーズやんの!って真似してみせたりしてましたw

3人のお互いを想う愛情の深さに、また何も出来なかった…のパズの叫びに、後半へのジェットコースターのような悲しみがグンと加速していきました。

テナの独白のようなシーン
ゆうくんの迫真。幕裏でも休憩中もずっと向き合ってました。
家族、友達、特別な女の子との変わってしまった関係と幸せな暮らし
レイジにこんな気持ちも持たずに済んだ…っていうところは特にいつも幕裏で泣きそうになったなあ…(もう私はテナ失恋したくらいからずっと泣きそう)

あと高確率で帽子を落として帰ってくる()



これは体感と私の解釈ですが、フィリアはまだ少し混乱したまま死んでしまう感覚がすこしあります。
目の前でアインが自殺しようとするのとか、ツァールが血を流して倒れているとか、テナや自分が縛り付けられているのとか、怖いことではあるんだけどまだその先に何があるかとか実感は追いつかない中で火に巻かれていくかんじというか。

わかってるのは、まだみんなと生きていたいってことだけ。

この世には取り返しのつかないことなんてなくて、間違えたらやり直せばいいし、誠心誠意謝ればいい。そういう精神的な無敵感があったりしました。(演じ手としてのフィリアは、ですが)

人のせいじゃない、人を責めるな、ってラスト間際のツァールのセリフにもあるんですけど
誰かのせいにするような言葉が一つも出てこないんです、フィリア。
まっすぐ純粋無垢な女の子に育ててくれてありがとうツァール。
その心を守ってくれてありがとうテナ、レイジ。
ゴミなんかじゃなくて、大事な友達だっていってくれてありがとうファム。

家族が一緒だったらなんとでもなったとおもう。
新しい場所に飛び出して、逃げて、
生きて、生きて、
また4人で笑っていて、アインたちともまた会える世界があったらなあ。

フライヤーに使われたこの写真が、生まれ変わった4人だったら…っていうifをお客様のツイートで見て、それは胸熱だな…と思いました……


どうか皆さんの心の中で永遠に。


個人的な振り返り

歌は毎回 吐くかと思うくらい緊張しました………お聞き苦しかったらごめんなさい。

大切な人を想って歌えることがとても幸せでした。


「あぁ 私生きてるんだなあって」

あの台詞は、なんだか個人的にも言いながら染みていて、
生きてるんだ、生きてれば何か、変わるかもしれないんだ。生きてれば許したり誰かを認めたりまた誰かに認めてもらえたり喜んだり希望を探したり出来る。
けど死んだら何もないんだ、って。
続けていればいつでも辞められる、じゃないけど、そういう実感がすごくこみあげてくるシーンでした。
やべー時期が結構最近あったので、妙な行動力を発揮して死ななくてよかったなっておもいました。笑

実際、見に来てくれてお話しできた何人かのお客様にもそういう響き方をしてたようでしたし、酷いことを言ってしまって疎遠になった友達に連絡して謝りたくなったとか、腐ってたけどちゃんと生きたいとおもったとか、その芽生えがめちゃくちゃ嬉しかったな。伝えてくれたことも。

自分の根源も変えるような作品に出会えたことにも改めて感謝尽きません。演劇ってすごい…!

個人的にやってて一番好きだったシーンは、レイジの背中をそっと押してテナとハプニングチューするところです。
この辺平和でほんといいよね。客席で見たかったです。悔しい。。
稽古場ではしてなかったのに、いつの間にかちゃんとしてた。びっくりした。(わたしは腐っていません。)


フィリア という名前は
ギリシャ語で愛、友情、親愛 を意味する言葉でもあるそうで。
人間同士の間に生まれる愛である、とも。
(お客様の方が詳しくてほわわわとなったやつ!)

そして小道具で使っていた
てんとう虫のバック
これはヤスちゃんが、できればてんとう虫のデザインがよくて…と言ってくれて作ったものです!
本がピッタリ入るサイズ!!
たまにチョコをそのままいれたり、食べかけのパンもつっこんだりします。亜空間です。笑

「てんとう虫が体にとまると幸せになる」
「結婚できる」「体から病気をもってってくれる」
(括弧にまとめると謎のうさんくささはあるけど)
こんな不思議なジンクスや言い伝えが多い虫でもあり、そんな願いもこもってたのかなって……胸に来ちゃう………


本はもともとこちらでした。
表紙の4匹が、ツァール一家みたいだったから、とこれもヤスちゃんが探してきてくれたもの。
お話の内容もすごくすごく暖かくて、繋がるものを感じます。
ぜひ、出会えたら読んでみてください…!!!


さて、そろそろこの長い振り返りも終わりにしようかなと思います。いつまでもかけちゃうから。

直前まで別本番に立たせてもらっていて、ほぼ作品の構築段階には居られなかった私。
自分で決めたことでしたが申し訳なさと、あとやはり受け入れられないんじゃないか的な怖さもあって、心臓ばくばくで再合流した稽古場で、
その最初の稽古で、
あ、私(フィリア)の立ち位置はここだ。ここにいていいんだ。
って感じがして、そこからはめちゃくちゃ好き勝手に幸せに生きることができました。

申し合わせても突然でも、思いつくままやってみたこと全部にキャラクターで返してくれた家族、ファムに、本当に本当にありがとうなのです。
もともと歳の離れた姉兄がいるから妹って割と得意なのかもしれないけど、優しくて頼もしい兄たち姉たちで大家族みたいだった。
ありがとうがすぎる。
お芝居の楽しさをすごく感じて、嬉しくてすごかった。この内側から溢れる幸福感をなんと言葉にしていいかわかんないんだけどとにかく最高のきもちだったのです。
何をすれば恩返しになるんだろう…なんでもやる…体で返す……!!!

しばらくそこはかとなくひとしれず、
匣の中ロスをしてしまうのだと思います。
後悔があるわけではないのだけど、合流遅かったからか終わるのも早い感じがして。
まだ抱きしめていたいってかんじです。
すごくすごくたまにそう言う舞台がある。それです。そのすごいやつ。(語彙力がもうだめ)

ヤスちゃんのツイートで見てハッとしましたけど、今日で終演から1週間らしいです。
はやい。
でもこれまとめるのにそんなにかかったんか。まじか。



お芝居をしていてよかった。

この作品を作ってくださった藤丸さん、呼んでくださったヤスカちゃん、見てくださった・応援してくださった全ての関係者の皆様に心から感謝と敬愛を。



またあえますように。



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