ねこじゃらしを食べると言うことについて考える
爽やかな陽気の日曜日の昼下がり、皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕はと言うと、ねこじゃらしを食べるということについて考えています。
本noteをお読みの方はおそらく、タイトルを見た上で入っていると思いますから、ねこじゃらしを食べるということについて多少なりと興味がおありかと思います。
私もごく最近知ったのですが、ねこじゃらし(エノコログサ)はどうやら可食らしいです。
というのも、この頃、植物図鑑を持って街を徘徊するのが趣味でして、エノコログサの項を読んでおりましたところ、実はあの穀物、粟(AWA)の親戚であるということでした。
粟といえば、歴史の教科書で「あわ、ひえ」と必ずセットの並びで登場するのが印象深い、現代人であれば一度も食べたことはない人が大半であろう、幻想に包まれた魅惑の穀物です。
魅惑の、などと枕詞をつけてヨイショしてみたものの、歴史の中で主食の座を米に奪われているところをみると、たいして美味しくないものと推察されます。
そんな身もふたもない話はおいといて、粟というのはどうやらエノコログサを品種改良した植物なんだそうで。
実際に画像を検索してみると、なるほど好みが分かれそうなウワッキモチワリィなヘヴィ級の外見でありつつも、どこか慣れ親しんだ猫じゃらしの面影を残しています。
インターネットとは不思議なもので、YouTube等を検索すると、これまで実際にねこじゃらしを食べた人の挑戦を垣間見ることができます。
しかしながら、炒って食べただとか意外と粟と同様に炊いて食べてみた、というひとはなかなかいません。
おそらく、炊飯に値する量のねこじゃらしの実を集めるのが大変だからでしょう。炊飯は少量の調理法には不適です。
なんせ、1房に含まれる量が量ですからね。茎一本から取れる実の量は米や粟とは比べるべくなく、まさに雀の涙といったところでしょうか。
さてここからは十分量のねこじゃらしが収穫できるという前提で話をすすめますが、収穫後から食卓に並ぶまでのプロセスは、一体どのようなものになるでしょうか。
まずは脱穀です。
粟の脱穀を参考に、同様の手法で脱穀できると仮定すると、茎を束ねて持ち、上からバシバシと棒などで叩くという脱穀方法になりそうです。
これは黒豆の収穫等でみたことのある光景ですね。
しかし黒豆はもちろん、粟と比較してもねこじゃらしの実は相当に小粒ですから、叩き落とすというのはなかなかに効率が悪く、苦心しそうであります。
また、多くの穀物がそうであるように、脱穀の前には1~2週間ほど全体を乾燥させるというプロセスがはさまるはずですが、小粒であるがゆえに、その時点で大半が落実してしまう可能性も考えられます。
苦労の多そうな脱穀ですね。
脱穀が終わったら、次は実の選別です。
未成熟な実や、中空の実を選り分け、品質を一定以上にする必要があります。
粟の場合だと、水の中につけ、かき混ぜて浮いてきたものを排除するという方法があるようです。
ねこじゃらしの場合、基本的には野生のものを使うことになりますから、栄養状態が十分とは考えづらく、かなりの割合の実が脱落してしまう可能性が考えられます。この点を加味して、多めに収穫しておくほうが良さそうだなと思います。
そして、ここまでくるとようやく炊飯です。
おいおい脱穀の後は精米じゃないのかと声がいくつか聞こえてきますが、1m四方程度のこれほど小さい穀物を精米して一体どうしようというのでしょうか。僕の調べた限りでは粟も精米はしないようなので、玄米ならぬ玄じゃらしの状態で炊いてしまって問題ないでしょう。
ここまでくれば食卓まであと一歩なのですが、逆にここが最大の課題でもあります。
なぜかと言うと、そう、水量の加減がわからないのです。
ねこじゃらしは可食であったとしても食べられていない、非効率的な食物です。このような地点には人類の英知は蓄積されておらず、参照すべき先がありません。
適当に米や粟と同僚の水加減で炊こうものなら、失敗は目に見えています。
そして失敗した場合はここまでのプロセスを再度繰り返すことになり、絶望的な道行きです。
この試み自体、ねこじゃらしの食材としてのポテンシャルを図りたいという意図がありますがから、水が多くても少なくてもダメ、無論焦げたり生煮えでも本懐は遂げられません。
ある程度はベストな調理法を通過した上で判断したいというのが人情というものでしょう。
ここまであれこれと考えてきましたが、どうやら、ねこじゃらしを正しく食べる、というのは非常に難易度が高いぞということがわかってきました。
ちょうど今が結実のシーズンかと思いますが、この検証に走り出すには季節はあまりにも短く、また都心のアスファルトからたくましく生えるねこじゃらしを拝借する程度の収穫量では、遥かに不足しています。
よって、大変に無念ではありますが、断腸の思いでねこじゃらしを食す試みを諦めることにしました。
かわりに、この胸に秘める思いをここに綴り、後進に道を譲ることにしました。
どなたか僕よりもふさわしい人物が、ねこじゃらしを正しく食してくれることを切に願い、このあたりで筆を置かせていただきたいと思います。にゃんにゃん。
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