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水滸噺 7月(下)[渾名で遊ぼう]

あらすじ
豹子頭 愛妻愛馬板挟み
聚義庁 運営全て智多星
青蓮寺 王母の詩に涙し
小旋風 庭に波乱の予感

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにラジオなど電子機器も飛び交う
 し、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界の小噺です。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…聚義庁の前には好漢の名札があり、裏は赤い名になっており、死んだらそうなる。たまに突風が吹いて、しこたま名札を吹き飛ばされることがあるが、良く知らない兵がうっかり宋江を赤い名にしてかけてしまった時は大騒ぎになった。

騎馬隊 

騎馬隊…馬以外の動物に乗るのはどうかと議題になり、柴進に象をおねだりしたが、餌代が馬鹿にならない上にどこで飼えばよいか分からず困り果てている。

人物
・林冲(りんちゅう)…愛妻の張藍は猫好きで、結婚後も飼おうと思っていたが、こいつが猫みたいなもんだから別にどうでも良くなった。
・索超(さくちょう)…川沿いで調練する時は、彼の部下は干物が食える。主食が進む塩加減は定評あり。
・扈三娘(こさんじょう)…女子力皆無美女。ペットで飼うなら犬猫よりも爬虫類の方が性に合った。
・馬麟(ばりん)…女子力満載男子。騎馬隊のねぐらの屑籠がいつも空なのも、水回りがピカピカなのも彼のおかげ。
・郁保四(いくほうし)… 巨人。2m越えの身長は林冲すら見上げるほどになったが、叱られてるときは185cmくらいに見える。十分デカいって。

1.
馬麟「♪〜鉄笛〜♪」
扈三娘「いつ聴いても美しい音色ですね」
馬「適当さ」
扈「私も幼い頃、歌舞音曲を無理やりやらされていたのですが」
馬「そうなのか」
扈「いつのまにかそれが剣になっていました」
馬「扈三娘らしい」
扈「今でも出来るかな」
馬「?」

扈「馬麟殿」
馬「何か?」
扈「鉄笛を貸してもらえませんか?」
馬「…吹くのか?」
扈「昔習った曲を今でも覚えているか試したいのです」
馬「…俺のしかないが?」
扈「他に無いのでしょう?」
馬「…」
扈「…」
馬「…いいのか?」
扈「馬麟殿?」

扈「拙くても笑わないで下さいね」
馬(ファンが見たら卒倒するな)
扈「♪〜鉄笛〜♪」
馬(ほう)
扈「覚えているものですね」
馬「上手いじゃないか、扈三娘」
扈「今の曲を吹けますか、馬麟殿?」
馬「…吹けるが?」
扈「じゃあ今吹いてください」
馬「…今?」
扈「今」
馬「…今?」
扈「馬麟殿?」

・馬麟…飛竜軍との合同作戦の時に、なぜか王英が寄ってきた。
・扈三娘…笛を吹くのは嫌いじゃなかったんですけど、先生が嫌いでした。

2.
林冲「動きが鈍い、郁保四」
郁保四「…」
林「まだ調練は始まったばかりだ」
馬麟「少し待ってくれ、林冲殿」
索超(馬麟が珍しい)
扈三娘(これは訳がありますね)
馬「郁保四、これに乗れ」
郁「…」
林「体重計だと?」
「105Kg」
林「太り過ぎだ」
馬「そうかな」
「1.05%」
索「体脂肪率か!?」

馬「もはや郁保四は筋肉に意思がある生命と言っても過言ではないのだ、林冲殿」
扈(本物の脳筋ですね)
索(俺たちも人のことは言えん)
馬「おまけにこの騎馬隊の旗まで加えたら、馬が持たないのも無理のない話なのだ、林冲殿」
林「…」
馬「郁保四と旗を乗せても問題のない馬は、百里風くらいでは?」

林「確かに、郁保四軽量化のために、左腕をそぎ落とすのは忍びない…」
郁「!?」
林「騎馬の速さと強靭な体力を持ち合わせた生き物」
索「そんな生き物…」
郁「心当たりが」
馬「郁保四?」
郁「暇をください、林冲殿」
林「おう」

郁「捕まえてきました」
険道神「…」
索超「強いな、郁保四」

・郁保四…険道神を見事に乗りこなしているが、単独で戦わせた方がもっと強いと思う。
・林冲…俺の知らぬ間に郁保四も強くなったものだな。
・索超…思ったより体脂肪率が高くてガッカリ。
・扈三娘…食事制限も何もしてないのに、ナイスバディは今なお健在。
・馬麟…険道神を住まわす小屋はどこにしよう… 

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…致死軍の元ネタは三国志の呉にでてくる似たような特殊部隊から。飛竜軍は劉唐がノリで名付けた。名前はかっこいいにこしたことないだろ?

人物
・公孫勝(こうそんしょう)
…頭倒立を部下に伝授しても、誰一人できない現状にイライラしてきた。
・劉唐(りゅうとう)…ばくち打ちをやっていた時にあみ出した技の数々は、飛竜軍の戦闘でも役に立っている。
・楊雄(ようゆう)…公孫勝と出会う前、石秀とタッグを組んでいた時に、李応の家に居候していたことがある。
・孔亮(こうりょう)…ドSイケメン。座右の銘は「勝てばよかろうなのだ」。
・樊瑞(はんずい)…暗殺者。顔が四角く、テトリスの正方形もビックリするレベルで四角い。
・鄧飛(とうひ)…鎖鎌の達人と二刀流の剣士の話を読んで以来、二刀流使いとの出会いを待ちわびていた。
・王英(おうえい)…小っちゃい。燕順が悪ふざけでとんでもない厚底ブーツを履かせてみたが、違和感半端なかった。
・楊林(ようりん)… 鄧飛、孟康と一緒に飲馬川(いんばせん)で賊徒をしていた。孟康とは違う意味でよい鄧飛のサポート役。

3.
公孫勝「劉唐」
劉唐「はい」
公「なぜお前は博打に勝てるのだ?」
劉「そうですね」
公「…」
劉「まず、勝とう勝とうと思いすぎないこと」
公「…」
劉「あとは退き際の見極め、でしょうか」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「…負けたんですか?」
公「…負けたのではない。退いたのだ」

劉(もう少し早く退いていれば、ここまでの犠牲は…)
公「お前は妙にサイコロの出る目を当てたりするではないか」
劉「勘ですよ、公孫勝殿」
公「どの様に鍛えるのだ?」
劉「この銭を弾きますので、表と裏を当ててください」
公「…」
劉「!」
公「…」
劉「どちらでしょうか?」
公「裏」
劉「残念」

公「表」
劉「…残念」
公「もう一度だ」
劉(何連敗目だ?)
公「全く当たらん」
劉(逆にすごいんじゃないか)
公「私をコケにしているのか?」
劉「普通に弾いてます」
公「貸せ」
劉「はい」
公「…」
劉「…」
公「!」
劉「痛っ!」
公「やはり細工していたな」
劉「飛ばすのが下手くそなだけです」

・公孫勝…裏表のないやつだと思っていたが、まさかこんな特技があるとは。
・劉唐…バレなきゃイカサマじゃないんですよ。

4.
公孫勝「樊瑞」
樊瑞「はい」
公「お前の顔は随分と四角いな」
樊「…」
公「だからなんだ、というわけではないんだが」
樊「これを言われたのは108人目です、公孫勝殿」
公「記念品でもくれるのか?」
樊「気にしてるんですよ」
公「だから刺客にスカウトしたんだ」
樊「嘘ですよね?」
公「…」

公「四角い刺客か」
樊「良い加減にしてください」
公「先日の仕事は?」
樊「完璧です」
公「四角い刺客に死角なし、か」
樊「…」
公「四角い刺客は死角がないのが刺客の資格さ」
樊(どうすりゃ良いんだ、俺は)
公「風が」
樊「砂が目に…」
公「…」

公「四角い刺客の視覚を奪う風とは見事だ」
樊「からっ風です」
公「…寒いな」
樊(あんたのギャグがな)
公「たまにはいいな」
樊「公孫勝殿」
公「…」
樊「残念ながら、失格です」
公「刺客失格?」
樊「ですので公孫勝殿」
公「…」
樊「刺客試験に参画してください」
公「この辺で丸く収めよう」

・公孫勝…真顔でボケ倒すことがあるから周りはたまったもんじゃない。
・樊瑞…顔の縦と横の長さの比が黄金比になっているらしい。 

本隊 

本隊…本隊の騎馬隊兵は、林冲の騎馬隊に昇格すると手当がついて俸給が上がる。気苦労もだだ上がりするけどね。

人物
・関勝(かんしょう)
…いまだに赴任していた雄州の商店街のおばちゃんから色々届くほど仲良し。
・呼延灼(こえんしゃく)…たるんでる兵には鞭で一喝するのが恒例行事。皮一枚しか切れないけど、顔面内部の打撃はしばらく持続する。
・穆弘(ぼくこう)…渾名は没遮攔(ぼっしゃらん)。遮るものなし、という意味だが女性やお年寄りにはきちんと道を譲る。
・張清(ちょうせい)…渾名は没羽箭(ぼつうせん)。羽のない矢。すなわち彼の特技、礫投げをたたえた意味。川で水切りをしたら、向こう岸まで石が届いた。
・宋万(そうまん)…林冲との稽古で大化けした古参将校。成長意欲はとても強い。
・杜遷(とせん)…焦挺とは同郷だったから、入山する時の根回しをしてあげた。
・焦挺(しょうてい)…母と一緒にやむなく入山した過去がある。燕青ともう一度相撲で勝負したい。
・童威(どうい)…双子の童猛とは瓜二つ。本隊を率いるとはいえ、彼の操船の腕はいまだ健在。
・韓滔(かんとう)…呼延灼とは開封府で武挙をとる時に知り合った。何の足しにもならん試験だったがの。
・彭玘(ほうき)…代州での顔の広さはピカ一。居酒屋さんとはおおむね友達。
・李袞(りこん)…彼の部下とのつながりの強さや部下を惹きつける能力は、晁蓋ですら目を見張るほど。
・丁得孫(ていとくそん)… 得意技は飛叉という一本しかない叉をぶん投げる技。あえて一本しか持たないのが彼の流儀。

5.
関勝「…」
呼延灼「…」

彭玘「豪華な立ち合いだのう」
宣賛「どんな結果になるのでしょうか」

関「!」
呼「!!」

彭「見事な技量だ」
宣「私には凄いことしか分かりません」

関「!」
呼「!!」

彭「今妙な音がしなかったか、宣賛?」
宣「何かが裂けるような…」

呼「!!」
関「!?」

彭「呼延灼の尻が」
宣「軍袍が裂けた音か」

呼「!!」
関「!」

宣「やめ!」
彭「呼延灼!尻が!」

呼「!!」
関「!?」

宣「なぜやめないのでしょう…」
彭「…あの衣装を纏っているからでは」
宣「あの衣装?」
彭「フレッシュマンの衣装だ」
宣「はい?」

呼「!!」
関「やめだ、呼延灼」

呼「いかん」
関「取り憑かれたように闘っていたぞ」
呼「…」
関「何かあったのか、呼延灼?」
呼「…この衣装を纏っていたのだ」
関「!?」
宣「まさか、開封府にいた頃度々目にしていたフレッシュマンとは」
呼「俺のことさ、宣賛」
宣「呼延灼殿」
呼「なんだ」
宣「大ファンでした」
彭(マジかよ)

・関勝…そういえば禁軍時代にあったなそんな衣装。
・呼延灼…芸能活動は嫌いだったのだが、衣装とフレッマンの歴史だけは嫌いになれなくてな。

・宣賛…私衣装のレプリカ持ってました!
・彭玘…世間は狭いんだか、広いんだか… 

遊撃隊

遊撃隊…初めのうちは水浴びの時に下腹部を隠していた兵も、一週間もすれば裸で鬼ごっこするレベルで羞恥心をかなぐり捨てることができる。

人物
・史進(ししん)…「ありのままに」をスローガンに掲げた張本人。悪くないけど、せめて股間は隠せ。
・杜興(とこう)…遊撃隊の副官から双頭山の副官に回る時の兵たちの仕返しはすごかった。
・陳達(ちんたつ)…槍の名手。史進との稽古も日々欠かしていないのでかなりの腕前。
・施恩(しおん)…彼の替天行道メソッドは、文字を読めない者から上級者が満足するものまで完備されている。
・穆春(ぼくしゅん)…あだ名は小遮攔(しょうしゃらん)。兄の穆弘にあやかってつけた。だけどみんなこいつの前を平気で遮る。
・鄒淵(すうえん)…あだ名は出林竜(しゅつりんりゅう)。林から出てきた竜って意味。猟師は天職だったらしく、メキメキ腕を上げていった。

6.
杜興「また裸になりおって」
史進「身体を洗うのだから当然だろう」
杜「それにしても、着脱する時間が速すぎやせんか?」
史「お前がノロマなのだ、老いぼれ」
杜「なんじゃと」
史「よくそんなヨボヨボな肉体で戦ができるな、老いぼれ」
杜「貴様もよくそんな汚い尻で妓楼に行けるな」
史「糞爺め」

杜「しかし、貴様の尻はまだマシだ」
史「なんだと?」
杜「お前の面と性根のどちらが汚いか、妓楼でアンケートでも取ってみろ」
史「俺を怒らせたな、老いぼれ」
杜「身体を洗うぞ、史進」
史「…言うまでもない」
杜「もっとも、水浴び程度でお前の穢れまで落ちるとは到底思えんがな」
史「野郎」

杜「!?」
史「冷や水でも浴びろ、老いぼれ」
杜「年寄りを労らんか、小僧」
史「お前の身体の頑固なシミはクリーニング屋でも落とせんだろうな」
杜「貴様も身体を洗ったところで、性根が腐っとるから意味がないの」
史「野郎」

索超「林冲殿と公孫勝殿とは違う趣があるな」
劉唐「いいコンビだ」

・史進…口汚いが、兵の気持ちを掴むのが妙に上手いのが癪に触る。
・杜興…尻が汚すぎるが、調練と戦の時の指揮ぶりは認めてやらんこともない。

・索超…喧嘩するほど仲がいいのだろうな。
・劉唐…じゃれあってるだけさ、あの二人と同様にな。 

騎馬隊&遊撃隊

騎馬隊&遊撃隊…よく合同調練を行うので、割とみんな仲良し。遊撃隊の兵は毎度命がけで扈三娘の着替えを覗くが、腕一本で済むならましな方。

7.
史進「…」
林冲「どうした、史進」
陳達「何を黙ってやがる」
鄒淵「らしくねえぞ」
史「…父上の命日だったことを思い出してな」
林「そうか…」
陳「そういえば、俺は遠目で見たことがあるかもしれないぞ」
史「なんだと?」
陳「俺たちが頭になる前に、少華山で下っぱやってた時のことだ」

史「まだ王進先生にも出会ってない頃だ」
陳「棒を持ったくそ生意気な小僧と手を繋いでいたおっさんがいた」
林「絶対史進だろ、そいつ」
鄒「それで?」
陳「棒を持った小僧がしきりに文句を言っていたな」
史「あの時は色々やらかしてたからな」
林「今はやらかしてないとは言わせんからな、史進」

陳「文句垂れながら親父と手を繋いで歩いて…」
史「それは触れないでくれ、陳達」
陳「…すまん」
鄒「らしくねえが、悪くねえな」
林「人は死ぬ」
史「林冲殿?」
林「俺たちも、死ぬ」
陳「…」
林「死んだらどうなると思う?」
鄒「その時考えるな、俺は」
陳「俺も」

史「…」
侯真「史進殿?」

・史進…何も言えん。

・林冲…俺は白い世界があると思うんだ。
・陳達…俺は暴れるしか脳がねえからな。病になろうとも槍を振り回してやるさ。
・鄒淵…俺は散々獣を殺したからな、その俺が最後は獣の餌になるなら本望だ。

・侯真…酒です、史進殿。 

二竜山

二竜山…入山窓口。兵に適さない者は鍛冶屋や大工に回されることも多々あるが、その人が困らないようにきちんとマニュアル化されているのは、どっかの智多星のおかげ。

人物
・楊志(ようし)…断金亭の飲み会の演目で、黄泥岡の一件を晁蓋たちにやられたときはさすがにキレた。
・秦明(しんめい)…狼牙棒の手入れは大変だが、損傷の一つ一つに思いをはせながら手入れしているので、本人にとってはとても大事な時間。
・解珍(かいちん)…メシウマ頭領の一角を担うが、めったに食わせない。美味いもんは出し惜しみしてなんぼだろう?
・郝思文(かくしぶん)…妻の陳娥(ちんが)が事務職で大活躍している。
・石秀(せきしゅう)…豚小屋の豚は全部見分けがつく。曹正と名前を付けるのは豚に失礼だな。
・曹正(そうせい)…曹正のソーセージが売れに売れて左うちわ。
・蔣敬(しょうけい)…渾名は神算子(しんさんし)。暗算上手。武芸コンプレックス解消のため、楊志に稽古をつけてもらっている。
・李立(りりつ)…渾名は催命判官(さいめいはんがん)。冥府の裁判官のこと。人を見る目があり、現世の裁判官の裴宣も頼りにするほど。
・周通(しゅうとう)…弱い弱いネタ扱いされてるが、一般兵からすれば十二分に強い。自分の弱さを自覚しているだけ強くなってるよ。
・黄信(こうしん)…うっかり愚痴ノートを燕順に見つかってしまい、それ以降頭が上がらなくなった。
・郭盛(かくせい)…楊令から字を習ったおかげで、渾名の賽仁貴(さいじんき)の元ネタの唐の英雄薛仁貴の物語が読めるようになった。
・燕順(えんじゅん)…渾名は錦毛虎(きんもうこ)。毛並みの良い虎。若いころは派手な着物の伊達男。最近解珍から虎の毛皮のジャケットをもらった。
・鄭天寿(ていてんじゅ)…イケメン。薬草の知識も意外に豊富。
・楊春(ようしゅん)…渾名は白花蛇(はっかだ)。毒蛇のこと。渾名を聞いた丁得孫がめっちゃ嫌な顔したのが忘れられない。
・鄒潤(すうじゅん)…渾名は独角竜(どっかくりゅう)。トレードマークの瘤からつけられた。瓦30枚は余裕で砕ける。
・龔旺(きょうおう)… 飽き性なのが玉に瑕。投げやりになりがちな投げ槍の名手。

8.
楊志「曹正」
曹正「なんだ」
楊「また太ったのではないか?」
曹「曹正のソーセージが売れに売れて、使いきれんほどの銭があるからな」
蔣敬「それをもっと二竜山の予算に回しても…」
曹「ならばCM契約を打ち切らせてもらうぞ?」
楊「…」
周通「悔しいが、俺たちでは…」
曹「銭こそ力よ」

石秀「俺のいぬ間に随分と丸々肥えたものだ、曹正」
曹「石秀」
石「これではラードと曹正の区別がつかんではないか」
曹「野郎」
石「ラードならまだ使い道はあるが…」
曹「まるで俺が使えんような物言いだな」
石「曹正の豚小屋への移住を前向きに検討する時期ですな、楊志殿」
曹「剣を抜け石秀」

石「豚は剣を振るわれる側だぞ?」
曹「この日のために研ぎに研いだ包丁がある」
石「ならばそのなまくらで俺を刺してみろ」
曹「舐めるな!」
石「お前の脂汗を舐める物好きがどこにいる」
曹「!」
楊「石秀!」
曹「」
石「銭と欲に溺れた豚め」
楊「…」
石「冷蔵庫にぶち込んで頭を冷やせ」

・楊志…銭は人を変えるな…
・蔣敬…これで二竜山の財政もだいぶゆとりを持てますが…
・周通…しかし曹正の増長ぶりは見てられなかったな。
・石秀…豚は豚らしく豚箱に入っていろ。
・曹正…冷蔵庫の中でソーセージを作り始めた時の気持ちを思い出した。

9.
郝嬌「秦明様」
秦明「…何かな、郝嬌様?」
郝「秦明様は公淑様のどこが好きなんですか?」
秦「そうだな…」
郝「…」
秦「人に優しく、思いやりがあり、芯が強いところ、かな」
郝「意外…」
秦「意外とは?」
郝「解珍様は、どうせおっぱいが大きいからだろうって言ってました」
秦「糞爺め」

秦「もう解珍のスケベ爺にものを尋ねてはならん、郝嬌様」
郝「ですが、すごく貴重な事を教えていただきましたよ?」
秦「どんな?」
郝「秦明様が好きな女性を前にするとどうなるか、とか」
秦「…」
郝「秦明様が公淑様を奥様にする時にいかに鈍臭かった、とか」
秦「狼牙棒はないか、公淑」

解珍「待て、秦明」
秦「幼気な女子に何を教えているのだ、解珍」
解「戯れだ」
秦「不健全な青少年育成を聚義庁に告発するぞ」
解「悪かった」
郝瑾「解珍殿」
秦「大人の話をしているから待て」
瑾「麓の妓楼の話ですか?」
秦「!?」
解「…」
秦「保護者を交えて面談を行うから首を洗って待っていろ、解珍」

・秦明…この日の二竜山は霹靂火が鳴り止まなかった。
・郝思文…この日の二竜山は井木犴怒涛の流星群が降ってきた。
・陳娥…真顔で理詰めで詰問する様は秦明にして、背にじわりと汗をかいた。

・解珍…青少年へのセクハラ案件として始末書と反省文を書かされた。

・郝嬌…秦明様って純情なのね、兄上。
・郝瑾…俺もお前も将来どんな人を好きになるのかな。 

双頭山

双頭山…ノッポとチビのスキンヘッド漫才コンビがコンビ名を双頭山にするために入山してきた。面白いかといえば…

人物
・朱仝(しゅどう)…あることがあって髭を全剃りしたが、その翌日元に戻っていたのは本人だけの秘密。
・雷横(らいおう)…剣が強い。若いころは鍛冶屋でバイトしていた。
・董平(とうへい)…二本槍の名手はドラムスティックの名手でもあった。
・宋清(そうせい)…みんな彼に物資の調達で無茶ぶりするから、彼も無茶ぶりをやり返すこともしばしば。だってフェアじゃないだろう?
・孟康(もうこう)…渾名は玉旛竿(ぎょくはんかん)。玉の旗竿のことだが、本人も色白ノッポで心なしか旗竿っぽい。
・李忠(りちゅう)…渾名は打虎将(だこしょう)。経歴詐称ではないぞ!断じて!
・孫立(そんりつ)…たまにそんりゅうと呼ばれることがある。本人的にはどっちでもいいよ。
・鮑旭(ほうきょく)…一度だけ飲み会で前後不覚になった時は盗人モードになったらしい。その時のことは同席者そろって口をつぐむ。
・楽和(がくわ)…渾名は鉄叫子(てっきょうし)。叫子は喉の中に入れる笛の一種。歌うま男。
・単廷珪(たんていけい)…たまにぜんていけいと呼ばれることがある。本人的にはどっちでもいいよ。

10.
鄧飛「…」
裴宣「…」

朱仝「これはどういうことだ、孟康」
孟康「裴宣が二刀流の遣い手だと知った兄貴が立ち合いを所望してな」
雷横「二刀流と鎖鎌の立ち合いとは」
楊林「顔はいかついとはいえ、文官だろ?兄貴の相手になるのか?」
孟「見ていよう…」

鄧「!」
裴「!!」

楊「やはり技量の差が…」
朱「よく見ろ、楊林」
雷「小手試しの分銅を巧みに跳ね除けているぞ」
朱「動きも無駄がない」
孟「やるではないか、裴宣」

鄧「!」
裴「!!」

楊「兄貴が鎖で裴宣の片腕の剣を奪った!」
孟「勝負あったか」
朱「いや待て、裴宣が」
雷「これは」

裴「!」
鄧「!?」

朱「一気に裴宣が間合いを詰めた」
雷「完全に意表を突いた動きだ」

鄧「!」
裴「!」

楊「兄貴もかろうじて鎌で弾いたが…」
朱「やめ!」

裴「ありがとうございました」
鄧「…見事だった、裴宣」
雷「良い立ち合いを見せてもらった」
鄧「飲馬川の頭になれるぜ、裴宣」

・裴宣…不思議と気が合いますな。鄧飛と孟康とは。
・鄧飛…俺たちもお前みたいな頭脳派が頭領だったらだいぶ違ったかもな。
・孟康…堅物そうな顔してるが、話せる奴だよ。

・朱仝…遠くの山は馬が川で水を飲んでいるように見えるな。
・雷横…裴宣もきっと将校になれる器だぞ。
・楊林…強え文官も悪くねえな。

11.
董平「風流喪叫仙が売れすぎて大変だ」
鮑旭「調練もままならなくなってきましたからね」
馬麟「林冲殿にどう言い訳したらいいか」
楽和「そんな中、ニューアルバムを拵えねばならなくなりました」
董「宋清め」
鮑「我々で双頭山が潤うなら」
董「俺たちの懐も潤うが」
鮑「平日は調練ですからね」

董「しかし困った事が一つある」
鮑「それは?」
董「作詞家がいない」
楽「確かに」
馬「今まで古の名詩のカバーで済ませていたものな」
董「ニューアルバム作成にあたり、俺たちのオリジナル楽曲を作る必要があるのだ」
鮑「梁山泊に詩の名手は?」
馬「…」
楽「…」
董「いないのだ、それが」

鮑「蕭譲殿?」
董「字は上手いが、オリジナティはない」
楽「呉用殿?」
董「呉用殿がロック?」
楽「柴進殿!」
董「厨ニ病臭すぎた」
馬「李逵は?」
董「童謡になりそうだ」
鮑「…母上が」
馬「王母様が?」
鮑「活動に困ったらこの袋を開けろと」
董「それは?」
鮑「この袋です」
董「開けてくれ」
楽「この詩は!」
鮑「なんと…」

・董平…美男バンド風流喪叫仙ドラム。あの詩のもつエネルギーは一体…
・鮑旭…ギター。母上の作風とはまた違う詩ですね。
・楽和…ボーカル。ここまで心地よいシャウトができる歌は初めてです。
・馬麟…鉄笛。この心の熱さ、替天行道を読んだ時と同じだ… 

流花寨

流花寨…水辺が近いので、兵はみんな泳ぎが得意。一番最後に泳げるようになったのは花栄。

人物
・花栄(かえい)…ボーリングをした時、球を隣のレーンにぶん投げてしまった時は皆が頭を抱えた。
・朱武(しゅぶ)…彼の陣形ノウハウは、梁山泊にきちんと残されている。
・孔明(こうめい)…強面に似合わぬ優しさから、本人の知らないところで青州の女性から人気があった。
・魏定国(ぎていこく)…瓢箪矢という着火する矢を初めて作れた時は大喜びしたが、二本目がなかなか作れなくて大変だった。
・欧鵬(おうほう)…梁山泊ではすげえものを見た時の単位が1欧鵬になった。
・呂方(りょほう)…索超の弟分だが、騎馬隊に配属されて以来の運気が伸び悩んでいるのが心配でならない。
・陶宗旺(とうそうおう)… 梁山泊一の石積みとパズルゲーの名手。でも仕事は積み残さない。

12.
欧鵬「すげえものを見た」
孔明「何を見た、欧鵬」
欧「花栄殿が外すところを見た」
孔「それはすげえものだ」
欧「スランプかな」
孔「聞いてみよう」

花栄「的を外した?」
欧「花栄殿らしくないかと」
花「矢の矛先を良く見るんだ」
孔「こいつは…」
花「毛虫を射たんだ」
欧「すげえものを見た」

・花栄…だって素手で触るわけにはいかないだろう?
・欧鵬…花栄殿は手が命ですからな。
・孔明…後ろの岩ごと貫通してるとは… 

聚義庁 

聚義庁…平時は頻繁にレクリエーションを開催するが、会場準備とか日程調整をするのはおおむね呉用。

人物
・晁蓋(ちょうがい)…渾名は托塔天王(たくとうてんのう)。東渓村の保正時代に、岩灯篭を背負って川を渡ったことが由来。首領になっても身体づくりと武芸の稽古は怠らないが、もうちょっと書類仕事して。
・宋江(そうこう)…渾名は及時雨(きゅうじう)、所により呼保義(こほうぎ)。恵みの雨、義に厚い男という意味。役人時代によく民に施しをしていたことから。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…梁山泊の資金源である闇塩の道の統括者。安道全から塩分を控えるよう警告を受けた。
・呉用(ごよう)…梁山泊一のワーカホリック。睡眠不足や酔っ払い極まると、晁蓋が震え上がるレベルの説教をする。
・柴進(さいしん)…渾名は小旋風(しょうせんぷう)。小さなつむじ風。誰彼構わず食客にしてしまった結果、武力や知力のスキルが20未満の連中がうじゃうじゃ。
・阮小五(げんしょうご)…渾名は短命二郎(たんめいじろう)。命知らずの次男坊。軍師になって以来、穏やかになった印象を受けるが怒らせたらヤバいのは昔から変わらない。
・宣賛(せんさん)…渾名は醜郡馬(しゅうぐんば)。郡馬は貴族の地位のことだから、不細工貴族って嫌味。顔を壊されて以来、妻帯しては嫁が自殺する悪夢に悩まされていた。

13.
晁蓋「梁山泊にジムを作った」
阮小五「設備も充実してますな」
呉用「…」
晁「呉用?」
阮「文治省で問題が?」
呉「…体験に」
晁「おう、それは」
阮「いいことですな」
呉「ですが、すでに心が折れそうで…」
晁「なぜだ?」
呉「あれを見ると…」

林冲「…」
焦挺「…」

晁「人ではないな」

阮「彼らを比較対象にしてはなりません」
呉「しかし、彼女も…」

陳麗「…」

晁「あれは私にも分からん」
阮「朱貴も不思議がってました」
呉「…」
晁「心配するな、呉用」
阮「初めての人を対象にした筋肉調練も用意してあります」
呉「…よろしくお願いします」
晁「早速始めるぞ」

呉「…」
晁「あと3回だ、呉用」
阮「呼吸を止めないで」
呉「!」
晁「やったな、呉用」
呉「箸と筆より重い物を持ったことがないのでね」
晁「お前の筆の力は林冲のバーベルより強いだろう?」
阮「始めたことが大事です」
呉「二人とも…」

焦「!?」
陳「焦挺殿?」
林「重すぎるぞ、陳麗殿…」

・晁蓋…週に一度は来るといいぞ、呉用。
・阮小五…俺もたまには鍛えないとな。
・呉用…翌日の筋肉痛が心地よかった。

・林冲…ベンチプレス300Kgは余裕。
・焦挺…突っ張りができる柱があるのはありがたいです。
・陳麗…色々あって白血病が治った結果、梁山泊力自慢ランキングにランクインした。

14.
白勝「コミュ障のお前らにコミュ力アップセミナーを開催するよう、宋江殿に依頼されたが…」

安道全「その鉄屑をどけろ、凌振」
凌振「俺の大砲になんと言った、貴様」
徐寧「机と椅子の間隔が狭すぎるぞ」
林冲「ならばそのクソやかましい鎧を脱げ、徐寧」

白「開講前から既に心が毀れそうだ」

白「…配布資料を」
徐「聞こえん」
林「貴様の鎧の音だ」
安「火薬の匂いがするぞ」
凌「俺のポケットだ」
林「火薬臭いし、やかましいし、何だこの空間は」
安「頭痛薬と耳栓を持ってくる」
白「俺の分も頼む」
徐「換気するぞ」
凌「やめろ、徐寧」
徐「!」
林「火薬が飛散した…」
白「解散!」

白「…」
宋江「すっかりやつれたな、白勝」
白「セミナーを始めることすらできませんでした、宋江殿」
宋「それは大変だったな」
白(宋江殿の情けが沁みるぜ…)
宋「では、次の開催日程を決めようか、白勝」
白(…情けはあるが、容赦はないのな)

・白勝…第2回は自己紹介まで進んだ所で養生所に搬送された。

・凌振…大砲は遠足の荷物に含まれるよな?
・安道全…大砲なんて作らないで、鍼を作ってくれ。
・徐寧…禁軍時代の林冲と同僚。その頃から賽唐猊はやかましかった。
・林冲…自分勝手な輩ばかりだな、誰とは言わんが。

・宋江…第3回はいつできる?

15.
宋江「梁山泊飛び道具使い選手権だ」
盧俊義「飛刀の部は接戦だったが項充が勝ち上がったか」
呉用「選手入場!」

花栄「…」
張清「…」
項充「…」
龔旺「…」
丁得孫「…」

盧「各自の得意距離が違いそうだが」
呉「裴宣、蔣敬による綿密な計算で各人の公平で適切な距離を設定しています」

宋「花栄と丁得孫はずいぶん遠いな」
呉「弓と飛叉ですからね」
盧「それぞれの的の大きさが違うのはそういうわけか」
宋「第一投、構え!」

花「…」
張「…」
項「…」
龔「…」
丁「…」

宋「狙撃!」

花「!」
張「!」
項「!」
龔「!」
丁「!」

盧「凄い…」
呉「命中は当然ですね」

宋「花栄と張清と項充の勝負か」
盧「龔旺が途中から投げやりになってしまったのが惜しまれる」
呉「丁得孫も飛叉を一本しか用意していなかったそうです」
宋「その代わり第一投の点数は一番だったぞ」
盧「その一投に全てをかけて、二投目を辞退するとは潔い」
呉「個人技の部に移りましょう」

花「!」

宋「岩を貫くか」
呉「あり得ないことなんですよね」
盧「そうらしい…」

花「!!!!!!!!!!」

宋「10連射して全て同じ所に…」
盧「もう花栄が優勝ではないか?」
呉「次は馬からそっくり返って10連射すると…」
宋「もう花栄はお腹いっぱいだ」
盧「張清に移ろう」

花「!」

張「…」

宋「9つの的当てか」
盧「呉用、それは?」
呉「スピードガンです」

張「3番」

呉「158km!」
宋「インハイのストレートか」
盧「強気だ」

張「9番」

呉「スライダー!」
宋「膝下から曲がるとは」
盧「堪らん」

張「8番」

呉「フォーク!」
宋「これは三振だ」
盧「配球も巧みだ」

項「…」

宋「あの二人の後か…」
盧「項充は?」
呉「全方位の的を全て貫くと」

項「!!!!!!!!」

宋「8つの的を瞬時に…」
盧「八臂哪吒か」

項「!!!!!!!!」

呉「左右の的を交互に!」
盧「舞っているようだ」

項「!!!!!!!!」

宋「上の的まで…」
呉「同率優勝ですな」

・宋江…何かを投げるのも技量がいるのだな。
・盧俊義…燕青も弩の名手だぞ。
・呉用…実は私も若い頃は鎖を飛ばす武器を愛用してました。

・裴宣…名アンパイア。
・蔣敬…名スコアラー。

・花栄…馬からそっくり返って10連射をイナバウアーと呼んでいる。
・張清…瓊英にもやらせたら、あっさりパーフェクト。
・項充…飛刀は最大24本まで携帯可能。
・龔旺…槍を投げる時のルーチンがある。
・丁得孫…あえて一本しか持ち歩かないので、結果には大満足。

16.
宋江「梁山泊クロスカントリーリレーだ」
盧俊義「走る、駆ける、泳ぐの三人でチームを組むのだな」
呉「戴宗、馬麟、阮小七」
宋「王定六、索超、童猛」
盧「石勇、林冲、張順の三チームか」
宋「史進は?」
呉「代わりに馬麟が入りました」
盧「駆けている途中で着物が脱げる不正が発覚したのだ」
宋「ただリレーをして終わるわけではなかろうな?」
呉「もちろん梁山泊精鋭による妨害が入ります」

戴宗「…」
王定六「…」
石勇「…」
盧「石勇の勝ち目が見えんが…」
呉「他の二人が速すぎるんです」
宋「始め!」
戴「!!」
王「!」
宋「戴宗が神行法を」
呉「禁止はしていませんからね」
盧「勝負になるか?」
石「…」

孫二娘「給水だよ」
戴「…」
孫「…」
戴「!?」
孫「ハズレ引いたね」

宋「戴宗が止まれなくなった?」
盧「給水で酒を盛られたらしい」
呉「馬麟に襷を託す隙もなかったとか」
盧「騎馬の部は?」
呉「妨害を志願した者が手の込んだ罠を仕掛けていますよ」
宋「誰だ?」
盧「決まっているではないか、宋江殿」

公孫勝「…」
孔亮「そろそろですな」
劉唐「それにしても」

張藍「私も混ぜていただき光栄です」
劉「まさか志願されるとは」
孔「馬を傷つけるわけにはいかんが」
公「乗り手への容赦は不要だ」
張「無論です、公孫勝殿」
孔(普通旦那の応援するもんじゃねえのかな)

索「!」
林「!」

宋「さすが百里風は速い…」
盧「おや?」
呉「百里風の様子が?」

林「どうした、百里?」
百里風「!」
林「こいつは!」
百(喜)

宋「百里風が道草を食い始めた」
盧「信じられん」
呉「どんな罠が?」

劉「何をしたのですか、張藍殿?」
張「百里は甘党なのです、劉唐殿」
劉「はあ」
張「主が滅多に食わせない分、こうなったらテコでも動きませんよ」

林「百里!蜜付きの草など食っている場合ではない!」
百(大喜)
索(今のうちだ)
林「頼む百里、今は駆ける時間…」

劉(降りたぞ)
公(やれ)
孔「!」
林「貴様ら!」

宋「致死軍の総攻撃か…」
盧「しかし林冲相手に勝算はあるのか?」
呉「そこは公孫勝ですから」

林「木偶の群れに俺が負けるわけ」

林「!?」
公「お前の動きなど手に取るように分かる」

宋「落とし穴か」
盧「定番だな」
呉「掘らされた陶宗旺がぼやいてました」

林「襷を渡せんではないか!」
公「穴を這い登ってこそのお前だろう、馬鹿」
張「御機嫌よう、林冲様!」
林「張藍!?」
張「公孫勝殿に志願しました」
林「なんと…」

張「林冲様」
林「…」
張「林冲様のチームが勝ったら、一週間林冲様の言いなりになる、と言ったら?」
林「!!」

劉(今跳躍だけで出てこなかったか?)
孔(思考するだけ無駄だからやめよう)
公「…」

林「百里」
百(!)
林「行くぞ」
百(怖)

宋「凄まじい疾駆だ…」
盧「一体どんなやりとりが」

索「頼んだ」
童猛「任せろ」

林「!」
張順(やべえ勢いだ)
林「張順」
張「おう…」
林「負けたら八つ裂きにするからな」
張「まあ任せておけ」

戴「止まれん!」
阮小七「戴宗の馬鹿野郎め…」
戴「!」
阮「!?」
馬麟「戴宗、これを」

宋「戴宗が…」
盧「水面を走っている…」
呉「波紋が…」

盧「ありか、宋江殿?」
宋「見ていよう」

童(張順も速いが、速さなら俺も自信はある)
張(浪裏白跳に敵うと思うな)
戴「こうなりゃヤケだ!」

李俊「出番だな」
項充「普通ならあんたが選手だろう、李俊殿」
李「部下に花を持たせてやったのさ」
項(こういうところが鼻持ちならねえ)

単廷珪「激流を起こす装置はいつ起動する?」
李「まだ待て」
項「お前どうして水軍にこないんだ、単廷珪?」
単「どうしても船が駄目なんだ」
李「惜しいな」
単「水流の事ならいつでも聞いてくれ」
項「奴らが来た!」
単「いつでもいけるぞ、李俊」
李「よし、いけ!」

宋「激流が!」
盧「これは堪らん」
呉「戴宗が…」

戴「!」

宋「なんと!」
盧「これは見事な」
呉「すごい…」

李「誂えたような板が…」
項「波に乗ってやがる」
単「誰が用意したんだ?」

阮「準備良すぎるぞ、馬麟」
馬「たまたまさ」

童(くそ!)
張(翻江蜃の限界さ)

宋「童猛が苦戦しているが」
盧「さすが張順」
呉「戴宗と張順の勝負ですね」

戴「このまま波に乗れれば…」
張「!」
戴「なんだ!?」

宋「張順の魚部隊か」
盧「勝負あったな」
呉「やはり梁山湖は張順の縄張りですね」

林「勝ったぞ、張藍」
張「…お手柔らかに」

・宋江…戴宗はどこへ?
・盧俊義…走るついでに北の蔡福たちの遣いに出した。
・呉用…相変わらず無駄がありませんね、盧俊義殿

・戴宗…盧俊義殿は気前がいいからな。
・王定六…普通に走って一番ならいいだろ?
・石勇…孫二娘の元から来た間諜は使える奴が多いんだ。

・孫二娘…結局全部酒なんだけどね。

・馬麟…湖の罠ならそんな事だろうと思ってな。
・索超…林冲殿にも百里風にもどうしても一歩及ばんのが口惜しい…

・林冲…覚悟しろ張藍。
・張藍…獣にならないでくださいね。

・公孫勝…もっと深く掘らせればよかったかな。
・劉唐…深さの問題ではないかと。
・孔亮…邪魔しながら応援するってのも高度な技だ。

・陶宗旺…落とし穴を掘ってばれないよう隠すのは大変なんですからね。

・童猛…蛤じゃ魚には勝てねえのか…
・張順…貝には貝の良さがあるじゃねえか。
・阮小七…出番取られちまった…

・李俊…童猛も不甲斐ねえな。
・項充…出てないあんたが言うな。
・単廷珪…水流も味方につけろ、李俊。

・史進…罰として一人で走って駆けて泳ぐ事になったが、誰にも相手されなかった。

18.
瓊英「…」
林冲「…」

宋江「梁山泊野球大会で騎馬隊と本隊が当たるとは…」
盧俊義「呼延灼の巧打で本隊が一点勝ち越したが」
呉用「九回裏ツーアウト満塁で林冲」
宋「三塁走者は俊足の索超だ」
盧「張清は気が気ではないな」
呉「しかし、瓊英殿のアンダースローは林冲とはいえ容易くは打てません」

瓊「!」
林「!」

宋「初球から林冲の内角を突くとは」
呉「本当に只者ではないですな、瓊英殿は」
盧「関勝のサインに首を振っていたからな」

瓊「!」
林「!?」

宋「ここで緩いカーブ…」
盧「林冲は完全に直球を意識していたな」
呉「コースは甘かったですが、見事に読みを外しましたな」

瓊「…」
林「…」

宋「林冲も流石だ」
盧「粘ってフルカウントだ」
呉「四球でも同点ですが…」
宋「瓊英は林冲を打ち取る気だぞ」
盧「運命の一球だな」

瓊「!!」
林「!?」

呉「…」
盧「…なんだ、今の浮く球は」
宋「ライズボール…」

瓊「ありがとうございました」
林「完敗だ、瓊英殿」

・瓊英…クローザー。必殺技は最後の最後まで見せない主義ですの。
・林冲
…エースで四番。最後にソフトボール投げで来るとは、参ったよ。

・宋江…扈三娘と馬麟は両打ちなんだな。
・盧俊義…林冲は野手の方が向いているのではないか。
・呉用…郁保四は捕手向きではない気が…

・張清…先発。ベンチで座りながら目を見開いて気絶していた。
・関勝…キャッチャー。投手の長所を引き出すリードが持ち味。
・呼延灼…サード。林冲の速球を逆方向にもっていく巧打はさすが。

・索超…センター。急先鋒の名に恥じぬ俊足。
・馬麟…セカンド。チームバッティングの名手。
・扈三娘…ショート。サイン無視して打つけど結果は残す。
・郁保四…キャッチャー。デカイから。 

三兄弟 

三兄弟…作戦担当長兄。実戦担当次兄。家事担当末弟。

人物
・魯達(ろたつ)…魏定国にリベンジマッチを求められたがまたしても瞬殺した。
・武松(ぶしょう)…ゲーセンのパンチングマシンを壊しすぎて、宋国のゲーセンから出禁になった。
・李逵(りき)…大兄貴も兄貴も強えけど、俺がいねえとなんもできねえからな。

19.
李逵「兄貴に出来なくて俺が出来ることの割合が多すぎる」
武松「…」
李「俺が出来なくて兄貴が出来ることを挙げるだけ挙げてくれ」
武「文字の読み書き」
李「一つ」
武「泳げる」
李「二つ」
武「拳で石を砕く」
李「俺は板斧で砕けるからダメだ」
武「…」
李「それだけとは言わせねえぞ、兄貴」

武「替天行道の暗唱」
李「俺も覚えたぜ」
武「いつの間に?」
李「施恩が繰り返し教えてくれた」
武「…」
李「なら俺も、二つだけしか兄貴ができねえことをやらないぞ」
武「…」
魯達「どうした、二人とも」
李「兄貴が出来て俺が出来ねえ事が二つしかねえんだよ、大兄貴」
魯「なるほどな」

魯「李逵が出来なくて、俺が出来ることか…」
李「大兄貴は?」
魯「文字の読み書き」
李「…一つ」
魯「泳げる」
李「…二つ」
魯「替天行道の暗唱」
李「…俺も出来る」
魯「いつの間に?」
李「施恩が…」

武(無間地獄か?)

・李逵…なまじっか戦闘力は魯達、武松と同じくらいなので、彼らが戦闘面で出来ることはほとんど出来る。 
・武松…ご飯と起こしてもらうの二つを選択した。
・魯達…ご飯と洗濯の二つを選択した。 

養生所&薬方所

養生所&薬方所…明らかに不健康な生活している医者と不健康そうな薬師が元気に働いている不思議な職場。事務職が一番しんどいともっぱらの噂。

人物
・安道全(あんどうぜん)…李応や項充の指導もあり、メス投げもだいぶ上達した。湯隆に投げる用のメスを作ってもらう予定。
・薛永(せつえい)…渾名は病大虫(びょうだいちゅう)。病気の虎。病気というか、むしろ自分から不健康になりに行っている感が強いのは気のせいか。
・白勝(はくしょう)… 渾名は白日鼠(はくじつそ)。昼間からちょろちょろしているズルいやつとは、盗人時代によく言われたもんさ。

20.
林冲「安道全!大変だ」
安道全「何事だ」
林「張藍が!」
安「…」
林「腹痛を訴えている」
張藍「…」
林「このままでは張藍が!」
安「死んでも死なないタフな奥方がその程度で死ぬわけがない、馬鹿林冲」
林「なんだと!」
安「…張藍殿」
張「…」
安「何を食べていた?」
張「…」
林「安道全?」

張「麗しの女性に聞くことではありませんよ、安先生」
林「そうだ、藪医者!」
安「私は年齢や体重や性癖を聞いたわけではない」
張「林冲様は猫耳が…」
林「やめろ張藍」
安「聞いてない、張藍殿」
張「それで、なんの話でしたっけ?」
安「帰っていいぞ、バカップルども」
林「貴様!」
張「クレームのお手紙を書きますよ」

安「それで、腹痛はどうなったんだ、張藍殿?」
張「そういえば…」
安「…」
張「…アイスの食べ過ぎ、ですかね?」
林「俺の分まで食ったのか!」
安「頭が痛む」
張「アイスの食べすぎです、安先生」
林「食ったのは貴様か、藪医者!」
安「とっとと帰れ」

・林冲…張藍にイチゴ味を食われてしまった…
・張藍…あなただって私のとっておきのプリンを食べたではありませんか!

・安道全…頭も痛くなる上に目の毒とは、なんてタチが悪い患者だ。

21.
薛永「ここが開封府か」
白勝「俺は盗人時代にいたことがあるぜ」
薛「薬屋はあるかな」
白「相国寺の市場とか見所は多いぞ」
薛「人が多すぎるところは得意じゃないんだ」
白「まあそうだろうな」
薛「それにしてもこの地域だけ見ると、宋国は豊かに見えるな、白勝」
白「ハッタリだけどな」

薛「凄い薬屋だ」
白「見事な門構えだな」
薛「行くぞ」
白「待て、薛永」
薛「なんだ?」
白「客層を見ろ」
薛「?」
白「着てる着物が高級だろう?」
薛「確かに」
白「今の俺らじゃ、門前払されるのは目に見えている」
薛「そういう店か」
白「…確か開封府にはあいつがいたはずだ」
薛「あいつ?」

侯健「中々似合ってるじゃないか」
薛「こんな高級な服着たことがない…」
白「俺もだ…」
侯「開封府の老舗では所作や言葉遣いも気を使うんだぞ」
白「合点だ」
侯「そういうのが良くない」
白「…分かりました」
薛「ありがとうございます、侯健殿」

薛「!」
白「店主と話して止まらねえでやんの」

・薛永…店主に気に入られ、半額で売ってくれた。
・白勝…落ちている財布を真面目に仕事してる役人に届けた。
・侯健…コーディネートのセンスも一流。 

文治省 

文治省… 梁山泊の事務所。定時上がりを推奨しているが、推奨した当の本人は深夜残業常習犯。

人物
・蕭譲(しょうじょう)…李逵が名前を書けるようになった時の喜びようが忘れられない。
・金大堅(きんだいけん)…判子作りの名手だが、朱肉をよく忘れる。
・裴宣(はいせん)…梁山泊の領土で博打を解禁した際のルールブックは、劉唐や石勇もうなるほどの完成度。

22.
金大堅「なあ、蕭譲」
蕭譲「どうした?」
金「わしが言うのはとてもおかしいと、我ながら思うことを言ってもよいか?」
蕭「…よいぞ」
金「判子っていらんよな」
蕭「」
金「…今お前が思考回路をフル稼働してツッコミを探しているのはよく分かる」
蕭「ショート寸前だ」
金「だってな」

金「手続きの本人確認になぜ判子なのだ?」
蕭「私怨の気を感じる」
金「忘れた場合は、秘密の質問で良いのではないか?」
蕭「お前の秘密が文治省の者にだだ漏れになっても良いのか?」
金「筆跡でも良いと思う」
蕭「わしの前でよくそれを言えたものだな」
金「…お前のせいか」
蕭「何が?」

金「お前がおるから、筆跡鑑定をしても本人確認にならんのではないか?」
蕭「顔写真で一発だが」
金「判子はいらん!」
蕭「すると、金大堅」
金「なんだ」
蕭「お前の仕事は?」
金「…」
蕭「…」
金「…仕事に戻るか」
蕭「懸命だ」
金(この宛名にこの印はおかしいと思うが知ったこっちゃない)

・蕭譲…この時のハンコが戴宗を窮地に陥れる事をまだ知らない。
・金大堅…この時のハンコのせいで戴宗から三ヶ月分の神行法の飲食代を負担させられることになる事をまだ知らない。 

工房

工房…梁山泊の朝は大砲の音から始まる。

人物
・凌振(りょうしん)…大砲フェチを拗らせに拗らせた。実は北京に嫁と娘がいる。よく結婚できたな、お前。
・湯隆(とうりゅう)…鍛冶屋。独自の鉄の配合を書いた帳面には、独自基準の部下の査定表も書かれている。
・李雲(りうん)…大工。重装備部隊の李応や解宝とは仲が良い。彼の作る木のおもちゃは子供たちの想像力を鍛えると評判。

23.
李雲「伐り倒せ!」
呉用「精が出るな李雲」
李「誰かに兵舎の増設を依頼されたんでね」
呉「誰のことかな?」
李「もっとも、木材運搬の手配や根回し、保管先確保の手際の良さには感心してるがな」
呉「誰のことかな?」
李「木材の保管もきちんと俺のいう事を守ってくれているのも助かっている」

呉「自分が知らないことについては、知っている者の言うことを聞く方が賢いだろう?」
李「違いないが、中々できることじゃないぞ」
呉「そうかな?」
李「しかしな、呉用殿」
呉「何かな」
李「あんただから言うことだが、もっとあんたはやるべき仕事があるんじゃないか?」
呉「…」

李「あんたのおかげで、俺たちが好き勝手できるのは良く分かっている」
呉「…」
李「しかし、木材の運搬なんてあんたがわざわざやる仕事じゃないと思うんだ」
呉「…性分でな」
李「それは俺たちの仕事を信用してないって意味になるぜ」
呉「李雲…」
李「任せてくれよ、呉用殿」
呉「…覚えておく」

・呉用…皆の仕事が一流なことは良く分かっているはずなのに…
・李雲…呉用殿に説教する日が来るとはな。 

梁山湖 

梁山湖…主なんているわけねえだろ!といったやつが、翌日顔色を真っ青にしているのをよく見かける。

24.
宋江「釣れんな、盧俊義」
盧俊義「おう」
宋「張順の部下を釣るわけにはいかんが、この水域はあまり釣れないのではないかな」
盧「おう」
趙林「場所を変えますか?」
宋「良い場所があるのか?」
趙「俺の秘密の場所です」
宋「ぜひ連れてってくれ、趙林」
盧「おう!」
趙「承知しました」

宋「梁山湖にこんなところがあるとは」
盧「おう…」
趙「綺麗な場所でしょう?」
宋「美しい…」
趙「しかもここはよく釣れるんですよ」
宋「釣るか、盧俊義」
盧「おう!」

宋「…ここでも釣れんな」
盧「おう」
趙(おかしいな)
宋「小さな鯉が釣れただけだ」
盧「おう」
趙「帰りましょうか」

宋「小さな鯉か」
趙「…」
宋「趙林は恋をしているか?」
趙「!?」
宋「その顔はしているな」
盧「おう!」
宋「相手は誰だ?」
趙「…」
宋「この場所のことと含めて、三人の秘密にすることを約束する」
盧「おう」
趙「実は…」
盧「おう」
趙「済州の妓楼の潘姐さんに…」
宋「!?」
盧「…おう」

・宋江…もっと甘酸っぱい恋話をされるかと思ったら、随分な馴れ初めを聞かされたな盧俊義。
・盧俊義…おう…

・趙林…妓楼の姐さんに本気で惚れちまいました… 

女傑三人衆 

女傑三人衆…強さのベクトルは三者三様。彼女たちの女子会に混ざってしまった男の生存率は… 

人物
・扈三娘(こさんじょう)…武術と兵の指揮が強い。
・顧大嫂(こだいそう)…武術と腕力が強い。
・孫二娘(そんじじょう)… 酒とからめ手が強い。

25.
馬麟「…」
孫二娘「騙してすまないね、馬麟」
顧大嫂「どうしても、あんたの力を借りないといけないんだ」
扈三娘「…本当に、やるのですか?」
孫「あんたの空気の読めなさに、こちとら辟易してるんだ」
顧「扈三娘の花嫁修行を手伝ってくれ」
馬「…なぜ、俺が?」
孫「私が嫁に欲しいからさ」

孫「この阮家の鍋を私たちに配膳してごらん、扈三娘」
扈「はい…」
馬「…」
顧「…」
孫「…」

扈 馬 顧 孫

扈「できました」
孫「馬麟、判定は?」
馬「…キツイな」
扈「そんな!?」
顧「無知ほど罪なものってのはないね」
馬「自分の分を一番最初にしてしまう時点で、ちょっと…」
扈「…」

顧「プロの技を見せてもらいな」
扈「お願いします」
馬「…」
孫「…」
馬「孫二娘は、魚介とネギだな?」
孫「よく覚えてるね」
馬「顧大嫂は…」
扈「お肉が…」
馬「言わずもがなだ、扈三娘」
扈「!」
馬「口に出すのはデリカシーがない」
顧(分かってるね)
馬「扈三娘」
扈「私の好物ばかり…」

・馬麟…食事は人となりが出るところだから意識しろよ。
・扈三娘…お行儀は習っても、配膳はしてもらってばかりだったので…
・顧大嫂…私も嫁に欲しくなったよ、馬麟。
・孫二娘…馬麟の旦那はどんな奴がなるのかねえ、顧大嫂。

林冲さん家 

林冲さん家…別名バカップルの巣窟。最近百里風までめんどくさくなってきたと林冲はこぼす。

人物
・張藍(ちょうらん)…今まで痩せ型だったが、お腹まわりが気になってきた。
・林冲(バカ)…張藍と百里の板挟みではないか…
・百里風(ひゃくりふう)…林冲が他の馬の面倒を見てるだけで露骨にすねる。

26.
林冲「帰ったぞ、張藍」
張藍「遅かったですね、林冲様」
林「百里の世話をしていたら、遅くなってしまった」
張「私と百里、どちらが大切なのですか?」
林「それは勿論…」
百里風「…」
林「!」
張「勿論?」
百「…」
林「…」
張「林冲」
林「猶予を…」
張「なりません」
百(怒)
林「…」

林「張藍も百里風も大切だ」
張「私はどちらが、と尋ねました」
百「…」
林「張…」
百「!?」
林「百…」
張「酷い!」
林「…」
張「…」
百「…」
林「愛してるぞ!張藍!百里!」
張「私もです!林冲様!」
百里風「♪」
安道全「帰るぞ、白勝」
白勝「だから行きたくなかったんだよ、俺は」

・林冲…二人で百里に乗って食事に行こうか。
・張藍…何かを忘れているような気がしますが、どうでもいいですね!
・百里風…(太ったな、張藍様)

・安道全…なぜ林冲の家にいたのかすら忘れてしまったな。
・白勝…一緒に飯食う約束してただろ? 

山中 

山中…梁山泊メンバーの知識を総動員したら、宋国全土の山の地図がおおむねできあがった。

27.
魯智深「…」
薛永「…」
魯「まだか、薛永」
薛「…」
魯「…」
薛「…」
魯「同志の会合に間に合わん」
薛「黙っていてくれ、魯智深」
魯「…」
薛「この薬草の選別が終わったら行くから先に行っていろ」
魯「迷子になっても知らんぞ」

魯(薬師として優秀だと思ったが、ここまで狷介な男だったとは)
薛「待たせた」
魯「もう追いついたのか?」
薛「山歩きは日課だからな」
魯「満足そうだな」
薛「良い薬が作れるからな」
魯「それは良かった」
薛「ただ、中々使わせてもらえない薬なんだ」
魯「何の薬だ?」
薛「痔の薬だ」
魯「痔」

魯「痔というと?」
薛「他にどんな痔がある?」
魯「王羲之とか」
薛「字ではない」
魯「…切れたり、イボができたりする」
薛「それだ」
魯「貴様、俺の尻を」
薛「痔意識過剰だ、魯智深」
魯「痔エンドだな」
薛「こんなハゲ連れてやってるんだ」
魯「ハゲにつける薬はあるか?」
薛「刺す薬なら」

・魯智深…これは中に注入する薬か?
・薛永…外側には塗ることもできる。 

青州軍

青州軍…不遇のわりに、戦は頻発する厳しい地域。それが秦明や花栄の基盤になっているが、黄信は愚痴りっぱなしだった。

28.
花栄「黄信はなんでも文句を言うよな」
黄信「いい加減なことを言うな、花栄」
孔明(早速言ってる)
花「お題をやるから、それに対して文句を言ってみろ」
黄「大喜利みたいなまねはやめろ」
花「今日の調練はどうだった?」
黄「走らせすぎだろう、俺の部隊は走る必要がないほど走らせてある」

花「秦明殿の調練に異議があるのか?」
黄「異議はない。しかし俺の兵が精鋭なのをあまり理解していただけてないとは思う」
孔(それを文句ってんだよ)
花「秦明殿については?」
黄「指揮もお人柄も文句はない」
花「そうだよな」
黄「ただ、女性に弱すぎるところはどうかと思うな」
花「それは?」

黄「先日見た光景だが」
花「おう」
黄「秦明殿がご婦人の落し物を届けた」
花「ふむ」
黄「その折、手と手が触れたようなのだ」
花「そしたら?」
黄「顔を真っ赤にして」
花「…」
秦「鼻血を出していた」
花「本当か?」
黄「戦に出た後だと言われても信じる量の血だった」
花「よく死ななかったな」

・花栄…私については?
・黄信…弓以外の取り柄をいい加減作れ。
・孔明…女性に弱すぎるのは、亮も同じかもしれんな。 

柴進の庭 

柴進の庭…渾名の力が発動される不思議なお庭。みんなの渾名アビリティのアイデアを募集しているぞ!

29.
柴進「叔父上?」
叔父「おう、進。見よ、この庭を」
柴「…いつ来ても見事な庭ですね」
叔「丹精込めたからな」
柴「しかし、叔父上」
叔「どうした?」
柴「なぜ私はこの庭に来ると、風を操れるようになるのでしょうか?」
叔「風?」
柴「小旋風!」
叔「なんと…」

柴「いつもこの庭に来るとこんな具合でして」
叔「しかし、ダメージは少なさそうだな」
柴「私もそう思います」
叔「そのうち大旋風が使えるようになるとよいな」
柴「全くです」
叔「!」
柴「叔父上?」
叔「急いで身を隠せ、進」
柴「なぜ?」
叔「あの風を見よ」
柴「黒い…」
叔「黒旋風だ」

柴「あらゆる物がなぎ倒されていった…」
叔「一体なぜこんな不思議な庭になったのかな?」
柴「叔父上!遠くにいる幻獣はもしや…」
叔「玉麒麟か…」
柴「滅多に見られないという」
叔「伝説の渾名モンスターの1匹だ」
柴「略して?」
叔「コンモン」
柴「それは…」

・柴進…食客に渾名モンスターの略称を募集したが、アダモンとかメイモンとかそんなしか来なかった。
・柴進の叔父…今は亡き、柴進の育ての親。彼の庭造りの美しさは見るもの全てを圧倒する。でも変なモンスターやら現象やらには辟易気味。

30.
樊瑞「梁山泊入山前にある庭に来たが」
項充「広い」
李袞「美しい」
樊「なんだか不思議な力が湧いてきたぞ」
項「お前、変に黒い気を纏ってないか?」
樊「妙な気持ちだ」
李「まさか混世魔王?」
項「!!!!!!!!」
李「八臂哪吒!」
樊「するとお前は…」
李「すごい機敏に動ける!」
項「飛天大聖!」

項「こんなに速く正確に飛刀を投げれるなんて」
李「残数に気を使えよ」
樊「李袞、宙返り」
李「!!」
項「すげえ跳躍力」
李「樊瑞、風を起こせ」
樊「疾!」
項「!?」
李「なんだよこの庭は…」
樊「俺が一番驚いている…」
李「梁山泊に行く前に冒険しよう」
項「よしきた」
樊「楽しそうだ」

九紋竜「!」
神機軍師「…」
跳澗虎「!」
白花蛇「!」

樊「敵だ!」
項「!」
神「!」
李「奇襲は失敗か」
樊「疾!」

竜「!」
神「!」

樊「破られたか」
虎「!」
蛇「!」
項「厄介な軍師に虎と蛇の連携が巧みだ」
李「おまけに竜も相当強い」
樊「暗!」
項「樊瑞?」
虎「?」
蛇「?」

李「虎と蛇の視界を奪ったのか」
神「!」
項「兵を集めてきたぞ」
樊「兵!」
兵「!」
李「お前もできるのか、樊瑞」
項「無敵か?」
樊「いや、もう妖術は使えん気がする」
李「魔力切れか」
項「ならば俺たちが」
李「竜と軍師を」
樊「俺の流星鎚を忘れてないか」
項「あったなそんな武器」

神「!」
竜「!」
項「飛刀の残りが…」
樊「パワーアップできんのか、李袞」
李「生憎地球人だ」
神「!」
竜「!」
項「竜と軍師の折り合いが悪そうだぞ」
樊「好機!」
李「この豆を食え、樊瑞」
樊「体力と魔力が全回復した気分だ」
項「もしやこれは?」
李「仙豆だ」
樊「お前ら武器を貸せ」

項「おう、お前の妖術で飛刀に炎が」
李「棒に雷が」
樊「いくぞ!」

神「!」
竜「!」
虎「!」
白「!」

項「飛刀の炎で竜の鱗がとれたぞ」
李「まるで裸になったような勢いで飛んで行ったな」
項「軍師も虎と蛇を率いて退いていった」
樊「もう術も使えん」
李「なんだったのかな、この庭は」

・樊瑞…あだ名は混世魔王。妖術使いの気持ちはこんなものなのか…
・項充…あだ名は八臂哪吒。哪吒の腕は6本だけど俺はもう2本多いから哪吒より強いぜ!って意味。
・李袞…あだ名は飛天大聖。孫悟空のことだがサイヤ人ではないし、元気を集めてみたが特に何も起きなかった。

31.
関勝「ここが柴進の庭か」
宣賛「綺麗な庭だ」
郝思文「我々が集うのも久しぶりだな」
魏定国「皆バラバラですもんね」
単廷珪「大所帯だ」
金翠蓮「私も呼ばれました」
郝瑾「…」
魏「随分デカくなったな、郝瑾」
思「最近将校になったばかりだ」
瑾「渾名もありますので…」
関「楽しみだ」

関「渾名アビリティは?」
魏「神火将」
単「聖水将」
関「お前らは分かる」
思「大刀関勝殿は武器能力の上乗せですな」
関「井木犴は?」
思「星座の名です」
宣「星を操る呪文かな?」
関「醜郡馬?」
宣「郡馬とは王の位を意味する官職です」
関「ほう」
宣「嫌味でしたが」
関「馬が出るかもな」

金「私は渾名はありませんよ?」
宣「歌が上手いではないか、翠蓮」
関「回復役かな?」
瑾「…」
思「お前の渾名は?」
瑾「叩頭蟲…」
関「コメツキバッタ!?」
瑾「いつの間にかそんな渾名を…」
宣「いじめか、郝瑾?」
思「まあ、どんな能力かは冒険の楽しみにしようか」
関「よし、行こう!」

馬「…」
関「なんだか不細工な馬が」
宣「…」
金「もしかして醜郡馬では?」
思「なるほど」
魏「捕まえてみましょう」
単「俺たちのスキルを」
魏「神火将!」
単「聖水将!」
宣「早まるな!」
魏「!」
単「!」
関「順序が逆だろう、お前ら」
思「井木犴!」
金「!」
宣「翠蓮?」

金「私に郝思文殿の星の力が…」
宣「とっておこう、翠蓮」
関「俺は単純な能力だが」
思「一番頼もしいですな」
関「戦ってくる」
瑾「…」
思「お前のスキルは?」
瑾「あの虫の群れは…」
単「コメツキバッタの大群だ!」
宣「二人で撃退しろ魏定国、単廷珪」
魏「草むらが根こそぎ食われちまう」

関「捕まえてきたぞ」
醜郡馬「…」
魏(不細工だな)
金「かわいい!」
単(マジかよ)
宣「乗るのか、翠蓮」
金「ぜひ乗せてください」
醜「…」
思「泣いているぞ?」
瑾「嬉しそうですね」
宣「女性に乗るのを嫌がられていたのかな」
関「醜さを嫌って自殺していたりして」
宣「それは酷い」

双鞭「!」
船火児「!」
活閻羅「!」
一丈青「!」

関「敵だ!」
宣「まずは船火児と活閻羅を倒しましょう」
単「聖水将は相手を有利にしてしまう予感が…」
思「ならば魏定国」
魏「神火将!」

船「…」
活「…」

関「今ひとつか」
思「私は一丈青を」
関「双鞭は俺だ」
宣「用心しろ、関勝殿」

瑾「私の能力が…」
魏「大丈夫だ、郝瑾」
瑾「魏定国殿?」
魏「瓢箪矢に神火将を唱えて…」
瑾「草原を焼け野原に?」
単「聖水将!」
瑾「泥濘が!」

船「!」
活「!」

魏「今だ郝僅!」
瑾「叩頭蟲!」

蟲「!」

魏「凄え数だ」
瑾「撹乱されてますね」
単「これで倒せそうだ」

思「!」
一「!」
瑾「父上!」
魏「バッタ食って回復しやがった」
単「食物連鎖か」
金「〜♪〜」
宣「翠蓮、その歌は!」
魏「身体に力が」
思「体力も戻ったぞ」
金「星の力でパワーアップしました」
思「四人で一丈青を倒すぞ」
魏「普通に戦えますもんね、俺ら」
思「行くぞ、瑾」
瑾「はい!」

魏「倒せた」
宣「李逵がいたら蛇料理にしてもらえそうだ」

関「!」
双「!」

轟天雷「!」

魏「仲間呼びやがった」
単「あの馬群は!」

百勝将「!」
天目将「!」
連環馬「!」

宣「これはまずいぞ」
醜「…」
金「あなた、醜郡馬が」
宣「どうした?」
醜「…」
宣「なるほど!」

宣「郝瑾、叩頭蟲を連環馬に」
郝「撹乱ですね」
宣「魏定国の火で左右の進路を塞げ」
魏「承知」
単「最後は俺の…」
宣「ご明察」

百「!」
天「!」
単「泥濘は進めまい」
轟「!」
単「聖水将!」
轟「…」
単「これで火薬も使えん」
魏「大活躍だな、単廷珪」
思「シンプルな分、応用が効くな」

関「!」
双「!」

宣「関勝殿!こっちは片付いた」
思「援護に…」
関「ここは俺だけで戦わせてくれ」
双「!」
思「互角だ」
魏「俺たちでは敵わん…」
金「〜♩〜」
宣「翠蓮?」

関「!」
双「…」

郝「関勝殿の動きが…」
単「別人のように…」
魏「髯が生えてないか?」
宣「関羽になった!」

関「!」
双「」

宣「見事だ、関勝殿」
関「翠蓮殿の歌にこんな力が…」
金「この子が教えてくれたんです」
醜「やるじゃねえか」
思「喋った!」
宣「味方にしておいてよかった」
金「可愛いですもんね」
醜「姉さん、俺の嫁に来ないか?」
宣「私の嫁だ、醜郡馬」
関「醜郡馬同士、仲良くしろ」

・関勝…関羽になってから、髭がやたら濃くなった。
・宣賛…醜郡馬とは憎まれ口を叩き合う中だが、なぜかほっておけない。
・郝思文…私が生まれる時に母がお腹に井木犴が入る夢を見たらしい。
・魏定国…シンプルな火属性使い。パーティーに一人は欲しい。
・単廷珪…貴重な水属性使い。水軍との相性は抜群。 
・金翠蓮
…もともと芸妓で歌が得意だった。楽和とのデュエットも大人気。
・郝瑾…よく頭をペコペコするから叩頭蟲らしいですが、もっとかっこいいあだ名がほしいです…

32.
花栄「私たちが柴進の庭に来るとは」
花飛麟「父上とともに冒険できるなんて」
呂方「相棒が俺たちコンビとは」
郭盛「分かっているな、花栄殿」
栄「連携を見せてくれ」
呂「おう!」
郭「!」
呂「いかん、方天戟が絡まった」
郭「解いてくれ、花栄殿」
花「!」
呂「また弓で!」
飛(さすが父上)

栄「渾名アビリティだ」
呂「しかし俺たちは皆、古の英雄の渾名だろう?」
栄「小李広」
郭「賽仁貴」
呂「小温侯」
飛「…」
栄「お前は、飛麟?」
呂「小李陵か?」
飛「それも考えたのですが…」
郭「他にも候補が?」
飛「神箭…」
呂「強気な渾名だ」
栄「新鮮?」
趙安「フレッシュ?」

栄「何者だ!」
趙「禁軍フレッシュマン趙安。ここに見参」
栄(こいつとは生涯あい入れない匂いがする)
呂「なんて臭気だ」
郭「鼻が曲がる」
趙「そこのフレッシュボーイ」
飛「…」
趙「今、新鮮と言わなかったか?」
飛「言いましたが…」
趙「禁軍志望か?」
栄「ふざけるな!」
呂「花栄殿?」

郭「怒りで身体が大きく…」
呂「まさか」
郭「大李広か」
飛(父上強そう)
趙「フレッシュマンズ!」
公順「趙安殿!」
何信「何事ですか?」
呂(こいつらが来ただけでダメージが)
郭(嗅覚が死ぬ)
栄「…」
趙「なんで巨大な弓だ」
何「渾名はないのですか、趙安殿?」
趙「…趙安撫」
公「しょぼ」

公「ここは我々に」
何「お任せあれ」
郭「渾名があるのか?」
公「陥陣営公順」
何「大将軍何信」
趙「凄いぞ、お前ら」
呂「…」
郭「呂方?」
呂「おい、陥陣営」
公「なんだ」
呂「俺の渾名を教えてやろう」
公「なんだというのだ」
呂「小温侯」
公「なんだと!?」

呂「高順が呂布を裏切るわけにはいかんよな?」
公「おのれ!」

郭「…薛仁貴って知ってるか?」
飛「方天戟がとても強い事しか」
何「ジューシー大将軍何信が相手してやる」
郭(酷え匂いだ)
飛(肉が腐った匂いです)
栄「!」
何「!!」
郭「恐ろしい破壊力だ」
飛「父上かっこいい…」
趙「退け!」

栄「逃がさん!」
趙「…ここまでか」
栄「!?」
郭「花栄殿?」
呂「力を使いすぎたのか」
飛「父上!」
趙「好機!」
公「また会うぞ、小温侯」
何「覚えてろ!」
郭(二度と忘れられん匂いだ)
栄「…」
郭「花栄殿の体力を回復させねば」
呂「こんな時、戦闘特化パーティーで来たのを後悔するぜ」

飛「私に任せてください」
呂「花飛麟?」
飛「山の暮らしが長く、野草の知識には自信があります」
郭「助かる」
呂「俺と共に行こう、花飛麟」
郭「花栄殿の護衛は俺が」

呂「山では跳澗虎と白花蛇が出てきた」
郭「霹靂火が降り注ぎそうな天気だから、早く引き上げよう」
飛「父上…」
栄「…」

栄「助かった、飛麟」
飛「よかったです」
郭「しかしなぜ、禁軍の連中が…」
呂「宋の連中もこの庭を狙っているのかな?」
飛「考えられそうです」
栄「この庭の生き物が解き放たれたら一大事だからな」
郭「よほどの手練れでない限り、襲いはしませんよ」
呂「違いない」

高廉「…」
殷天釈「…」

・花栄…柴進の庭の道中で迷いまくる姿はさながら李広。
・花飛麟神箭と名乗るからには、もっと弓の稽古を続けないと。
・呂方…妙な気配を感じ取り、厄介ごとを回避する様はさながら呂布。
・郭盛…薛仁貴も弓の名手だったそうな…

・趙安趙安撫なんて、相手を撫でたら体力がちょっと回復するだけのスキルではないか!
・公順…渾名は陥陣営。彼の歩兵が攻めると陣を必ず陥とすから。
・何信…渾名は大将軍。彼には誰も敵わない。体臭が。

・高廉…良い庭だな、殷天釈…
・殷天釈…私も気に入りましたよ… 

子午山 

子午山…子午山メンバーはいつか必ず一度は帰りたいと思う心の故郷。

人物
・王母(おうぼ)…彼女の若いころは秘中の秘。でも何かあったのは間違いない。
・王進(おうしん)…厳しく育てられたが、恨んだことは一度もない、と回想しながら死域。 

33.
楊令「待て、張平!」
張平「待てと言われて待つ馬鹿はいません」
楊「減らず口を!」
張「口は一つしかありませんよ」
楊「ならばその舌、引っこ抜いてやる」
張「楊令殿は鬼ですか、魔神ですか?」
楊「私は今から人ではなくなる」
張「人ではあんな事出来ませんもんね!」
楊「この!」

楊「まさか妓楼の女に張平が突撃取材をしていたとは」
張「真実を追求するのがジャーナリズムです」
楊「お前がやっているのは、下世話なネタばかり嗅ぎ回る男とも言えない所業だぞ、張平」
張「私が楊令殿の男を証明できれば良いのです」
楊「その怪文書を燃やせ!」
張「怪文書ではなく真実です」

魯達「賑やかだな」
楊「魯達殿、申し訳ございません。すぐに懲らしめます」
張「私が死んだらこの書は魯達殿に託します」
魯「どれ」
楊「!」
張「もう今生に悔いはありません」
楊「覚悟しろ、張平」
魯「子供か」
楊「魯達殿?」
魯「大したことをしてないな、楊令」
楊「私たち18歳未満ですが」

・楊令…子供も何も未成年です。
・張平…確かに、なぜ入れてもらえたのでしょうか?

・魯達…ついに俺も抜き差しならぬ時期が来たようだ。ギャグではないぞ。 

青蓮寺

青蓮寺…仕事は厳しいにもほどがあるが、本気で覚悟をした者にはこれほどの職場はない。

人物
・袁明(えんめい)
…始めた時は下手くそだった蹴鞠も、いまや高俅も驚くほど上手くなった。いつ練習したんだ?
・李富(りふ)…仕事を作るための仕事をするための仕事ってどうすればいいんだ?
・聞煥章(ぶんかんしょう)…定時上がり常習犯。それの何が悪いんだ?
・洪清(こうせい)…袁明に付き合って蹴鞠の稽古をした結果、コンビネーション技までできるようになった。
・高廉(こうれん)…闇の軍指揮官。公孫勝アンチを極めた大ファン。
・殷天錫(いんてんしゃく)…闇の軍副官。色黒の男が反吐が出るほど嫌い。
・沈機(しんき)…連続フルタイム出勤宋国記録保持者。だから帰ろうよ。
・呂牛(りょぎゅう)…聞煥章の仕事後の遊び相手。卑怯な手の達人だが、オンラインゲームの切断やファングッズの転売は仁義に反するので絶対にやらない。

34.
沈機「李富殿、何をされているのですか?」
李富「相国寺で売られている骨董品の相場を昨年度の値と比較していたのです」
沈「良い休息ですな」
李「そろそろ仕事に戻りますよ」
沈「私は五台山の住職の名を暗記していました」
李「それはリラックスできますね」

聞煥章(どういう世界だ)

・李富…陛下の器は美しいのですが脆くて小さいんですよね。
・沈機…歴代住職の名を並べると、盧俊義反となるのですよ。北京にそんな商人がおりますな。

・聞煥章…こいつらの会話は変な方向に弾むから嫌いだ。

35.
袁明「…」
洪清「殿…」
袁「お前から話すとは珍しいな、洪清」
洪「ご無礼を」
袁「よい」
洪「その、音楽は」
袁「風流喪叫仙という梁山泊の者どもの歌だが」
洪「この詩は…」
袁「…思い出すな、洪清」
洪「なぜ、梁山泊の者が…」
袁「あの詩を託された者が、他にもいるのではないかな?」

王母「…」
楊令「王母様?」
母「…今は一人にしてもらえますか、楊令」
楊「失礼いたしました」

母「あなたにも聞こえていますか、王安石様?」

・袁明…宋にもこれほどの歌手はいないな。
・洪清…生涯で二度と涙を流すことなどないと…

・王母…さて、お夕飯の支度をしますか。
・楊令…あんな懐かしいような、哀しいようなお顔は初めて見ました…

・王安石…民に優しい施策を掲げる新法党を率いたが、富裕層の反感を買い旧法党の反撃にあって失脚した。 

妓楼 

妓楼…開封府一の妓楼で、明瞭会計が売り。万が一ここでやらかしたら、全裸になっても逃げられないからな。

人物
・李師師(りしし)…生涯年齢不詳の美女中の美女。歌舞音曲、歴史や詩に政、はては男女間の馴れ初めまで何でも知ってる。 

36.
李師師「燕青様はもともと愛などないと言われましたが、私には、女の思いがあったかもしれません」
燕青「私もさ、李師師。ただ、気持ちを抑え、封じ込める修練は積んできた」
李「…燕青様」
燕「…」
李「後学の為に教えていただきたいのですが」
燕「…」
李「気持ちを抑え、封じ込める修練とは?」

燕「…」
李「…」
燕「ご主人様の取引先でもてなされたお菓子を、あえて食べなかったり」
李「先方が気にされてしまうのでは?」
燕「散髪で思ったのと全然違う髪型にされても、大丈夫です、と言ったりすることかな」
李「そこは毅然と異議を唱えましょう、浪子燕青様」

燕「たしかにここまで前髪を切られるとは思わなかったが…」
李「色男が台無しです」
燕「これが気持ちを抑え、封じ込める修練さ、李師師」
李「…自分を厳しく律せられるのは良いことだと思いますが」
燕「…」
李「その理容師には気持ちを抑える必要はありません」
燕「やはり酷かったのか…」

・燕青…髪なんて短ければそれでいいんだがな。
・李師師…それは私が許しません。 

禁軍

禁軍…青蓮寺がワーカホリックなら、禁軍は調練ホリック。調練は厳しいにもほどがあるが、本気で覚悟をした者にはこれほどの軍隊はない。

人物
・童貫(どうかん)…禁軍元帥。調練以外のことを考える調練を実践したが、それはすでに調練なのではないか…
・鄷美(ほうび)…禁軍副官。かつて部下に董平がいたが、あまり良い関係になれなかったのが心残り。
・畢勝(ひつしょう)…禁軍副官。どうしても勝ちたいときは、畢勝に必勝祈願してもらうと必ず勝てるという噂をたてられた。
・李明(りめい)…禁軍将校。最年少禁軍将校の栄誉を得るも、それはかなりのいばらの道である。
・趙安(ちょうあん)…フレッシュマン。最近鮮度がめっきり落ちたのは否めない。
・公順(こうじゅん)…フレッシュマン副官。いい加減私たちも新機軸をうち立てないと…
・何信(かしん)… フレッシュマン親衛隊長。武芸の腕は禁軍でもトップクラスだが、体臭で相手がひるんでいるように見えるのは気のせいだ。

37.
李明「…」
公順「どうしたのだ、李明?」
李「禁軍将校になったものの、やれる自信が全くないのだ」
公「しかし、歴代の禁軍で将校になった者の中でも最年少なのではないのか?」
李「そんな事は大したことでは」
公「何を言っている、李明」
李「公順?」

公「お前の次に若い将校の年齢は?」
李「…一回りは違うな」
公「お前と同じ年齢の者の現在地は?」
李「…良くて100人隊長だな」
公「そんな中でお前は禁軍将校になったのだ」
李「…」
公「それのどこが、大したことないというのだ?」
李「…ありがとう、友よ」
公「事実を言ったまでさ」

李「お前はどうなのだ?」
公「俺も自信なんてあるわけないさ」
李「では俺も、お前が俺にした質問をそのまま返すぞ?」
公「…ありがとう、友よ」
李「事実を言ったまでさ」
何信「臭いな、お前らの友情は」
公「…」
李(気が遠く…)
何「なんだその顔は」
公「…」
李「」
何「事実を言ったまでだ」

・李明…朝起きたら自宅の床に公順の手紙があった。
・公順…念入りに身体を洗うようにしているが、自分も臭い始めた気がしてならない。
・何信…若者らしい青臭い台詞は嫌いではないがな。

38.
童貫「調練」
鄷美「…」
畢勝「元帥…」
童「つい、ちで始まる言葉では、調練が出てしまう…」
鄷「我々も、ちで終わる単語を使わない調練をするべきでしょうか?」
童「情けは無用だ」
畢「調練の他に、ちで始まる言葉は何を連想されますか、元帥」
童「調練」
鄷「元帥…」

畢「ちで始まる言葉を5つあげる調練です、元帥」
童「調練」
鄷(本気か?)
童「…」
畢「…」
童「趙安」
畢「んで終わってます、元帥」
童「趙安の調練」
鄷「…」
童「趙安の副官」
畢「…」
童「趙安の副官公順」
鄷「…」
童「趙安の腹心何信」
畢「元帥」
鄷「しりとりの調練から始めましょう」

畢「んで終わったら、んの前の言葉も含めた言葉でつなぐルールにしましょう」
童「名案だ、畢勝」
鄷「それでは、元帥」
童「調練」
畢「連環馬」
鄷「博打」
童「調練」
畢「…煉瓦」
鄷「額縁」
童「調練」
畢「…恋愛音痴」
鄷「調練」
童「鄷美の負けだ」
畢「元帥…」
鄷「どの口で…」

・童貫…語彙はあっても調練が思考を妨げるのだ。
・鄷美…ならば調練から離れる調練をなさるのは?
・畢勝…明日は調練を忘れる調練という事で部下に通達を出しておきます。

元ネタ!

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!