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水滸噺 21年6月【弾け飛びし着物】

あらすじ
いちごあかご 豹子頭林冲
シシンデレラ 迫る子の刻の鐘
禁軍元帥童貫 コスパ重視
聚義庁今日も 大会運営は呉用


すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…雨の日だろうと調練!調練!

騎馬隊

騎馬隊…相も変わらず、隊長が滑稽なことになっている。

人物
林冲(りんちゅう)…まともな出番がないのか!
索超(さくちょう)…林冲の奇抜な衣装にも大人の対応。
扈三娘(こさんじょう)…まともでない隊長の振る舞いにとばっちり。
馬麟(ばりん)…張藍に手土産を渡しており難を逃れた。
郁保四(いくほうし)…張藍の旗の手入れを任せられているうちに、裁縫が上手くなった。

1.
林冲「張藍…」
張藍「…」
林「すまなかった…」
張「…」
林「ツンツンしないでくれ」
張「…」
林「この衣装はなんなのだ、張藍」
張「今日はこの衣装ですごすのですよ」
林「しかしこれは…」
張「苺。大好きなんでしょう?」
林「大好きだが…」
張「ならばストロベ林冲におなりなさい」
林「…」

林「苺を食べるのは大好きだが、苺の衣装を身に纏いたいわけではないのだ、張藍」
張「苺の着物を着ていたではありませんか」
林「だが、俺が苺になるなど騎馬隊で示しがつかん…」
張「私もあなたに厳しくしないと示しがつきません」
林「そんな」
張「そろそろ調練に行く時間ですよ?」
林「くそっ」

林「…」
索超「…林冲殿」
馬麟「遠くから百里風に乗った苺がやってきた時は驚いた」
扈三娘「ストロベ林冲殿ですね」
郁保四「www」
林「!」
郁「!?」
索「…始めましょうか」
馬「動きにくくないのか、林冲殿?」
林「余計だ」
馬「子午山の苺のイメージキャラクターにならないか?」
林「ならん」

林冲…張藍の苺を食べすぎてしまった罰。
張藍…実は色々な林冲懲罰用の衣装を用意してある。
索超…機嫌が悪いけど、苺の格好だからな…
馬麟…子午山の苺をPRしたい。
扈三娘…可愛らしいですね。
郁保四…苺になっても、打撃が重い…

2.
扈三娘「お断りします」
林冲「この豹子頭が頭を下げているのだぞ」
扈「だからなんですか?」
林「…」
索超(無敵だな、扈三娘)
馬麟(素の反応なのが恐ろしい)
扈「苺になるのは林冲殿だけで十分でしょう」
林「お前もだ、扈三娘」
扈「お断りします」
林「張藍に言いつけてやる!」
扈「ご勝手に」

扈「…」
索(着せられている…)
馬(真顔の扈三娘だ)
郁保四「かわいいですよ」
扈「!」
郁「!?」
索(機動力が増している)
林「調練始め!」
扈「…」
馬(今日は苺が二つか)
林「黒騎兵!」
扈「突撃!」
索(今日は指揮が冴えている)
馬(苺のおかげなのか?)
林「遅れるな郁保四!」
郁(鳩尾が痛い…)

林冲…ちょっと気にいってきた。
索超…青騎兵を追い越されてびっくり。
馬麟…意表をつかれてびっくり。
扈三娘…苺になったら指揮が冴えたという。
郁保四…褒めたつもりだったのに…

3.
公孫勝「お似合いだな、林冲」
林冲「それがどうした」
公「黒騎兵の将が苺になるなど、示しがつかんではないか」
林「張藍と同じことを言うな!」
公「…」
林「そんなことより公孫勝」
公「…」
林「タイツの代えを持っていないか?」
公「?」
林「伝染したのだ」
公「お前は誰に口を聞いている?」

林冲…結局扈三娘の予備を借りた。
公孫勝…苺になった後ろ姿をしばらく眺めていた。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…めったに遊べない分、たまに遊ぶ時のエネルギーが凄い。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…遊ぶ時のエネルギーは致死軍随一。
劉唐(りゅうとう)…博打場で遊ぶ技を一番持っている。
楊雄(ようゆう)…博打でかもられがちなので、もっぱら見る側。
孔亮(こうりょう)…調子に乗ってかもられがち。
樊瑞(はんずい)…銀がなくなったら、身体を張って賭け始める。
鄧飛(とうひ)…熱くなるようにみせて、実は冷静に場を見ている。
王英(おうえい)…ハニートラップに引っかかってえらい目に合った。
楊林(ようりん)…地味に手堅く勝つタイプ。

4.
劉唐「石勇が情報交換の場で博打場を開いたそうです」
公孫勝「行こうか劉唐」
劉「ずいぶんと早いご決断ですね」
公「石勇の情報は急ぐ」
劉「そうですな」
公「行くぞ」
劉「その前に公孫勝殿」
公「…」
劉「懐いっぱいに入っている銭を俺に預けていただけないでしょうか」
公「…」
劉「公孫勝殿」

公「…」
劉(はんぶんこするまで微動だにしなかった)
石勇「符牒を」
公「石将軍」
石「ようこそ…」
劉「俺たちだけか?」
石「穆弘と阮小二の身ぐるみを剥いだ」
劉「それは厳しい」
石「お前も無事に帰れるか分からんぞ?」
劉「その気はない」
石「もう公孫勝殿は始めてるぞ?」
劉「公孫勝殿!」

劉「もう身ぐるみ剥がれたのですか…」
公「…」
劉「開封府の工作資金も含まれていましたよね」
公「…」
石「取り戻してみろ、赤髪鬼」
劉「…しょうがない」
石「懐の銭程度では返せない額だぞ?」
劉「穆弘と阮小二の命を賭ける!」
石「面白い」
穆弘「何か聞こえたぞ!」
阮小二「待て!劉唐!」

劉唐…辛うじて勝ったが、代償として赤毛を半分失った。
公孫勝…劉唐の勝負を指を咥えてみてただけの役立たず。
石勇…穆弘の眼帯と阮小二のトンカチを質に入れた。

穆弘…お気に入りのお花の眼帯を失った。
阮小二…愛用のとんかちを失った。

遊撃隊

遊撃隊…梁山泊男性下着の読者モデルの写真を撮ったが全員落選した。

人物
史進(ししん)…案の定下腹部がはみ出していて、読モ界から永久追放。
杜興(とこう)…顔が怖すぎて下着が目に入らず落選。
陳達(ちんたつ)…下腹部の形がくっきりしすぎていて落選。
施恩(しおん)…替天行道が書かれたシャツとパンツを履いてる。
穆春(ぼくしゅん)…野営の時にパンツを忘れて大慌て。
鄒淵(すうえん)…ワイルドすぎるパンツの履き方をしていて落選。

5.
史進「朝日を浴びながら着る着物はいいな」
陳達「朝っぱらから何言ってやがる」
史「着物を着る喜びに、目覚めたのだ」
鄒淵「どんな着物だ?」
史「この柄を見てくれ」
陳「九紋竜柄かよ」
鄒「それなら四六時中着てんじゃねえか」
史「俺の竜は着物なのか?」
陳「刺青は着物だろう」
鄒「実質な」

史「刺青は着物なのか」
陳「だから着物を着ようが脱ごうが、変わりはない」
鄒「何のための竜だよ、史進!」
史「…着物を着ていなくても、着物を着ていると思われたいがための竜だった」
陳「初心を思い出したな」
史「着物を着る喜びなど笑止千万!」
鄒「それでいい」
史「これが俺の九紋竜だ!」

陳「今日も見事だ」
鄒「それはそれとして…」
史「なんだ鄒淵」
鄒「!!」
兵「鄒淵殿の咆哮だ!」
兵「史進殿がまた脱いでる!」
史「なんだ兵ども」
杜興「脱いだな小僧」
史「やかましい、老ぼれ!」
杜「今月あと一度脱いだら腐刑になるのを忘れたか」
史「しまった」
杜「連れて行け」
史「!」

史進…また裸で追いかけっこしてた。
陳達…囲め囲め!
鄒淵…山の罠に追い込め!
杜興…今日こそ腐刑にしてくれよう!

水軍

水軍…しょっちゅう呉用に命令されてるが、予算を振りわけないのはなぜだ。

人物
李俊(りしゅん)…呉用悪口選手権殿堂入り。
張順(ちょうじゅん)…10日潜るのは無理なのか、と言われた。
阮小七(げんしょうしち)…阮小五に比較されがちでイラっと来る。
童猛(どうもう)…何度言っても童威と間違えられがち。
項充(こうじゅう)…飛刀の的が呉用に似てるのは気のせい。
阮小二(げんしょうじ)…博打でいかさました趙林を懲らしめた。

6.
李俊「頭の悪い呉用殿」
童猛「…」
阮小七「…」
張順「…」
李「阮小五が二人いたら阮小十だな」
張「実際言われたんじゃないか?」
童「次は俺だ」
李「よし」
童「頭の悪い呉用殿」
阮「…」
童「童威の同意を得られなかった」
李「シャレ大会じゃねえぞ」
張「無意識に言いそうだ」
阮「あれは」

呉用「李俊」
李「げえっ!呉用殿」
呉「阮小九はいないのか?」
阮「…誰ですか?」
呉「阮小七と阮小二を合わせたのだが」
李「…」
阮「…兄貴は造船所で趙林しごいてます」
呉「そうか」
李「で、なんの用ですか?」
呉「水軍の兵の増強について」
李「本当か!」
呉「ではなく、交易の」
李「…」

呉「それではな、李俊」
李(塩撒いとけ)
阮「…結局何しに来たんだよ」
張「まさか本当に言うとは」
李「冗談のつもりなのか?」
童「いちいち癪に触るな」
李「次は舟の上で尻を蹴飛ばしてやろう」
呉「李俊」
李「げえっ!呉用殿」
童(懲りねえな)
呉「言い忘れたが、水軍の補強は冗談だ」
李「…」

李俊…呉用嫌いに拍車がかかった。
童猛…悪意のない悪意ってやつかい?
阮小七…つまらねえ奴の冗談は本当につまらねえ。
張順…もう少し俺らの立場になれねえもんかな。

呉用…機嫌が良いといらん冗談を言ってしまいがち。

7.
李俊「湿度が高いな」
童猛「ジメジメしてるのは苦手だぜ」
阮小七「張順は調子が良さそうだな」
張順「こんな日は不思議と調子が良いんだ」
李「蛙じゃあるまいし」
張「浪裏白跳だ」
項充「泳ぐのは気持ちいい時期だな」
李「じゃあ泳ぐとするか!」
童「梁山湖を往復だ」
阮「主に挨拶してくる」

李「…待ってくれ」
童「まだ半分も行ってないぞ、李俊殿」
張「よくその体力で戦ができるな」
項「泳ぎってのも不思議なもんだな」
張「それは?」
項「ある日突然できるようになるだろ?」
童「そういうもんだ」
張「李逵も泳げるようになりゃいいのにな」
項「よほどな目にあったのか?」
李「…」

李「…待ってくれ」
童「戦じゃ待てはねえだろ」
張「追いついてこいよ」
阮「やべえ!みんな逃げろ!」
張「阮小七?」
阮「主を怒らせちまった!」
童「何したんだよ!」
阮「分からねえ!」
李「!」
童「李俊殿!」
項「こんな時だけは速えのな」
張「俺が交渉に行く!」
阮「頼む!」
李「!?」

李俊…急に泳ぎすぎて足を吊ってしまった。
童猛…銀二粒で李俊を引きずっていった。
阮小七…李俊殿が供物を怠ったからだと!
張順…厳しく言っておくぞ、主。
項充…水中で飛刀を投げられないか模索中。

重装備部隊

重装備部隊…ゆくゆくは空軍になれるポテンシャルを秘めているらしい。

人物
李応(りおう)…空を飛ぶ乗り物の運転手になる夢を見た。
解宝(かいほう)…凌振の大砲の球でお手玉ができるようになった。やめろって。

8.
凌振「今度はお前が大砲の弾になれ、解宝」
解宝「李応殿がいるではないか」
李応「私以外にも凌振の大砲で飛べる者がいた方がいい」
解「せめて練習させてくれ」
凌「何を甘いことを言っている」
李「墜落しない限り死にはせんよ」
解「練習もなしで引き受けられるか!」
凌「死ねばそこまでの命だ」

解「なんだこの施設は」
李「お前がわがままを言うから凌振の大砲で飛ぶ練習施設を作った」
解「なんと大掛かりな」
李「ここまでやったのだから」
解「仕方ねえ」
李「この衣装を着用しろ」
解「デザインが気に入らねえが」
李「つべこべ言わずに大砲に入れ!」
解「…それで」
凌「発射!」
解「!?」

李「まだ飛び方の説明をしてないぞ、凌振!」
凌「どうでもいい」
李「もうあんな空高くに…」

解「とりあえず身体を開けば…」

李「いいぞ!解宝!」

解「…どうやって降りれば良いのだ?」

李「風に乗りすぎだ」
凌「撃墜するぞ」
李「死なんよな?」
凌「発射!」

解「!?」

李「墜落した…」

李応…梁山湖が広くて助かった…
解宝…二度と空なんか飛ぶものか。
凌振…梁山泊の撃墜王。

二竜山

二竜山…大将の将兵への目配りはさすがのものがある。

人物
楊志(ようし)…人望の厚さに定評あり。嫁もべたぼれ。
秦明(しんめい)…二竜山の雷親父。恐いけど頼もしい。
解珍(かいちん)…タレの管理日記を書いてみたらすごくめんどくさかった。
郝思文(かくしぶん)…郝瑾が頼もしくなってびっくり。大黒柱交換の時か。
石秀(せきしゅう)…曹正のソーセージを会得したが、今までの関係上作るに作れない。
周通(しゅうとう)小覇王は項羽の小さいやつか、孫策のどっちか兵の間で投票をすることになった。
曹正(そうせい)…新商品を作れずここまで来てしまった。はよなんか作れ。
蔣敬(しょうけい)…算盤の球をはじく指は目視できないレベルで早い。
李立(りりつ)…顧大嫂と孫二娘に頭が上がらない。二度と。
黄信(こうしん)…喪門剣を研ぐときに死神が見えたらしい。嘘だろ?
燕順(えんじゅん)錦毛虎の毛並みはいぶし銀。
鄭天寿(ていてんじゅ)…銀細工は安売りしない。クオリティ重視。
郭盛(かくせい)…方天戟の小旗のバリエーションに凝りたい。
楊春(ようしゅん)白花蛇を飼ってみたい。爬虫類に似てる。
鄒潤(すうじゅん)…瘤の硬度はこれ以上硬くなる用がないところまで極めた。
龔旺(きょうおう)…虎の刺青を入れなおそうとしたが、思ったより痛くて断念。

9.
楊志「石秀はなぜ拚命三郎なのだ?」
石秀「劉唐殿につけられました」
楊「兄が二人いるのか?」
石「いた、ですがね」
楊「そうか…」
石「うちはいい肉屋でしたよ」
楊「…」
石「どうしようもない役人が、やって来るまでは」
楊「それで公孫勝と共に?」
石「まあそんなところです」
楊「なるほど」

楊「確かにお前の戦は命知らずの戦かもしれん」
石「よく言われました」
楊「それで拚命三郎か」
石「公孫勝殿から一度だけ、暗殺を頼まれた事があるのですよ」
楊「そうなのか?」
石「相手は評判のいい役人です」
楊「…皮肉なものだ」
石「ただ、そいつがいたら俺たちが活動できなくなりますから」

楊「苦悩したのか?」
石「それが、自分でも意外なほど苦悩しませんでした」
楊「それは?」
石「そいつが、人ではなく仕事の対象だと、思えたんです」
楊「…」
石「自分でもあまりいい事だと思いませんが、致死軍では必要な事ですから」
楊「覚えておく」
石「ええ」
楊「…少し剣でも振らないか?」

楊志…石秀は致死軍より二竜山の指揮の方が向いてると思うな。
石秀…暗殺に向いているかもしれない。ただ、自分の意図しない者を殺すのを躊躇うところがある。

10.
秦明「解珍!!」
解珍「…」
秦「また貴様は郝嬌様に、不埒なことを吹き込んだな!」
解「…」
郝思文「解珍殿。なにを教えたのですか?」
解「…とても言えぬ」
秦「言わぬか!!」
解「霹靂火め…」
郝「嬌に聞いてみます」
解「…よしておけ」
郝「親なのでそういうわけには参りません」
解「…」

郝「…」
秦「どうだった、郝思文?」
郝「私もとても口に出して言うことはできません…」
解「だから言ったろうが」
秦「なんだというのだ!!」
解「そろそろこの建物も崩れるのではないか?」
郝「李雲に点検してもらいましょう」
秦「余計なことを言うな!!」
解「…麓の石積みが崩れたぞ」

秦「結局口を割らなかったぞ、あの二人は」
公淑「旦那様!」
秦「公淑。郝嬌様のことについて話しが…」
公「郝嬌さんから文が届いてますよ?」
秦「なんと!」
公「…」
秦「行ってくる」

秦「一体何が」
郝嬌「秦明様!」
秦「郝嬌様!一体なにを…」
嬌「今日は二竜山頭領記念日よ!」
秦「!!」

秦明…当分怒鳴ることを自分に禁じた。
解珍…肉はお前らで食え、楊春。
郝思文…一家で食べる分も分けてください。

公淑…こっそりお祝いの支度をしていた。
郝嬌…兄上が石積みの下敷きになりかけたって!

双頭山

双頭山…山対抗野球大会の負けが込んできて、またBクラスに落ち気味。

人物
朱仝(しゅどう)…長身を生かしたオーバースローからの直球は重い。
雷横(らいおう)…跳躍力を活かした脚力と守備力に定評あり。
董平(とうへい)双槍将は両打ち。巧打に長けている。
宋清(そうせい)…タフな中継ぎ。鉄扇で汗を流す。
孟康(もうこう)…長身だがやや打たれ弱い技巧派。
李忠(りちゅう)…粘り強さに定評のある代打の切り札。
孫立(そんりつ)…長打力に定評あり。守備力が課題。
鮑旭(ほうきょく)…内外野こなせるオールラウンダー。
単廷珪(たんていけい)… 意外性のあるバッター。水攻めみたい。
楽和(がくわ)…応援歌担当。サヨナラの場面で効力を発揮。

11.
朱仝「髭寝ぐせがついてしまった」
雷横「どうやって収拾をつけるのだ?」
朱「髭を洗う」
雷「手入れが大変だな。美髭公も」
朱「水をよく絞る」
雷「お前の髭で雑巾が作れそうだぞ」
朱「あとはドライヤーで乾かせば…」
雷「いつの時代なのだろう。ここは」
朱「どうだ雷横」
雷「癖がついてるな」

朱「なんということだ」
雷「髭にもパーマってかかるんだな」
朱「頭の方も天然パーマだから、やむなしだろう」
雷「そうなのか朱仝」
朱「髭だけは直毛になってほしかったが…」
雷「気持ちは分からんでもない」
朱「くそ!くしが巻き取られる!」
雷「潔く剃っちまえばいいのに」
朱「それはない!」

宋清「朱仝!」
朱「どうした宋清」
宋「お前にあつらえた様な書物があったぞ」
雷「…関羽による髭ケア?」
宋「髭でおしゃれもできるらしい」
朱「参考にしよう」
宋「ワックスならしこたま仕入れてある」
雷「どこから?」
朱「美髭公のイメチェンだ」

朱「…固まってしまった」
雷「槍より鋭い」

朱仝…ワックス二缶使ったら髭がカチカチになってしまった。
雷横…このどんな攻撃でも守る盾と立合ったらどうなる?
宋清…もはや凶器だな。朱仝の髭は。

流花寨

流花寨…弓はすごいんだけど…と言われることに不満はあるが、じゃあ他に何があるんだよ。

人物
花栄(かえい)…私の良い所を弓と顔以外でひとつずつ言え!
朱武(しゅぶ)…面の皮の熱さ!
孔明(こうめい)…なんだかんだで結婚できた女運!
欧鵬(おうほう)…すげえものを見せてくれるポテンシャル!
呂方(りょほう)…戦のときめきを感じさせる予感!
魏定国(ぎていこく)…ついて行きたいと思わせる背中!
陶宗旺(とうそうおう)…石積みを手伝ってくれる甲斐性!

12.
李逵「花栄は弓で岩をぶち抜けるんだろ?」
花栄「そうだ」
李「すげえ事なんだと思うんだけどな」
欧鵬「なんだよ兄貴?」
李「それがなんの役にたつんだ?」
花「それは」
欧「それを言ったら役に立たねえ特技を持ってる奴なんか梁山泊にごまんといるじゃねえか」
李「本当にそうか?」
欧「兄貴?」

李「役に立たねえ特技で誰を思い出した?」
欧「施恩の替天行道暗唱の逆再生とか」
李「…」
欧「呂方の厠にいる奴を予知する特技とか」
花「そんな特技持ってるのか?」
欧「朱武の陣形の知識もここじゃ宝の持ち腐れだぜ?」
李「発言を撤回する、花栄」
花「そうだ!」
李「同じくらい役にたたねえ」

花「明らかに私の弓よりも役に立たないではないか!」
朱武「聞き捨てならんぞ、花栄!」
呂方「そうだ!」
李「言ってやれ」
朱「俺の陣形の知識は防衛戦で威力を発揮する!」
欧「攻めの陣形は?」
呂「俺の予感もよく当たるぞ!」
欧「厠にいる奴はどうでもいいな」
花「さっきから随分だな、欧鵬」

李逵…口が過ぎた欧鵬に説教した。
花栄…腹いせに弓をいたら、岩が木っ端微塵になった。
欧鵬…すげえものを見る目が厳しくて辛口になりがち。
朱武…攻めの陣形を試したくて仕方がない。
呂方…占いのコラムの締切が迫っているらしい。

聚義庁

聚義庁…なんだかんだで負けず嫌いが多いから勝負になり勝ち。

人物
晁蓋(ちょうがい)…マッスル勝負で敵なし。
宋江(そうこう)…あまり勝てる者はないけど、忖度して相手が負けてくれる。
盧俊義(ろしゅんぎ)…頭を使うゲームでは敵なし。
呉用(ごよう)…あまり乗り気ではないが、やると強い。
柴進(さいしん)…なんだかんだで詰めが甘い。
阮小五(げんしょうご)…どのゲームもそつなく要点を掴む達人。
宣賛(せんさん)…ポーカーフェイス。頭巾的な意味で。

13.
晁蓋「釣りで勝負だ、宋江」
宋江「受けてたとう」
晁「私は阮兄弟の力を借りる」
宋「ならば私は張順と童猛の力を借りよう」
晁「その二人の力は卑怯ではないか!」
宋「お前だって最初から他力本願だろう!」
晁「ならば釣るのは我らだけということにしよう」
宋「なるほど」
晁「尋常に勝負だ!」

阮小二「梁山湖ならこの水域が一番です」
阮小七「ガキの頃からこの水で生きてきた俺らの言うことですからね」
晁「頼もしい」

童猛「この湖底に大物がいますぜ」
張順「確かにいました」
宋「さすが翻江蜃と浪裏白跳」

晁「釣れんな」
七「それは晁蓋殿が…」

宋「釣れんな」
童「もう逃げてます」

晁「坊主だった」
宋「同じく」
晁「だから引き分けにするというのは釈然とせん」
宋「言う通りだ」
晁「ならば我らの組の者の釣った結果で勝敗を決めよう」
宋「乗った」

二「大漁でした」
七「数なら俺たち!」
張「大物でした」
童「質なら俺たちですな」
晁「…どちらにしろ」
宋「釈然とせんな」

晁蓋…せっかちすぎて当たりを逃す。
宋江…のんびりすぎて当たりを逃す。
阮小二…数を釣る釣りに定評あり。
阮小七…湖底を潜って捕まえる漁が得意。
張順…水中戦で浪裏白跳に勝てる魚はいない。
童猛…湖底探索力で翻江蜃の右に出るものはいない。

14.
施恩「…」
宋江「どうした施恩?」
施「宋江様!」
宋「そんな改まらなくてよい」
施「そういうわけには参りません!」
宋「よい。私もお前と同じところに座ろう」
施「ならば私は立ちます!」
宋「施恩」
施「はい!」
宋「私は、お前と座って話がしたいな」
施「…」
宋「心を柔らかくして話そう」

施「心を柔らかく、ですか?」
宋「李逵を見習うといい」
施「私はあんなに強くは…」
宋「李逵の強さは板斧ではない。心の柔らかさだよ」
施「そうなのですか?」
宋「李逵は笑いたい時には笑い、泣きたい時には心から泣く」
施「…」
宋「そうやって心のままに、生きているのだ」
施「心のままに…」

宋「お前は自分に厳しい」
施「…そう思いますか?」
宋「厳しさも時に必要だ。しかし、自分に厳しくすることと、自分を苛むことは違う」
施「…考えてみます」
宋「施恩」
施「はい」
宋「今、お前の心は何をしたがっている?」
施「私の心?」
宋「心のままにだよ、施恩」
施「…少し泣きたいです」

宋江…泣きたい時は泣いていい。
施恩…しばらく泣いた後、兵のもとに帰っていった。

15.
宋江「梁山泊ウエイトリフティング大会を行う」
盧俊義「おう」
呉用「バーベルはどこへ?」
宋「担ぐのは」
呉「担ぐ?」
盧「この大きなぬいぐるみは?」
宋「等身大盧俊義のぬいぐるみを担ぐのだ」
盧「異議がある。宋江殿」
宋「意義はあるが?」
盧「意義などない!」
宋「ならばよい」
盧「!」

宋「一人目は蔡福だ」
蔡福「…」
呉「鉄臂膊ですね?」
盧「鉄腕ではなく、鉄面のように面の皮が厚いだけだ」
蔡「!」
宋「担いだ!」
蔡「…!」
盧「…」
宋「よろめいた」
呉「落としたら失格です」
蔡「!!」
宋「持ち上げた!」
呉「さすが鉄臂膊!」
盧「そのまま担いで北京に帰れ」
蔡「!?」

宋「ここで燕青か」
燕青「…」
呉「魯達が持ち上げられたことがあるそうで」
盧「私を担げるからな」
燕「!!」
宋「あの体躯で軽々と…」
呉「全身筋肉なのでしょうか」
盧「二人担げ!燕青!」
燕「…」
宋「盧俊義を二人だと?」
燕「…」
呉「両脇に抱え込むとは…」
盧「首が締まっているぞ!」

宋江…参考までに東渓村の塔は盧俊義三人分だそうだ。
盧俊義…等身大盧俊義ぬいぐるみは侯健の力作。
呉用…私ではびくともしません。
燕青…実は襟首を掴むのが一番担ぎやすい。誰にも言わないけど。

蔡福…誰もが忘れた時に、ぬいぐるみを担いで北京に帰ってきた。

16.
宋江「梁山泊ボーリング大会を行う」
盧俊義「ほう」
呉用「なにか捻りはないのですか?」
宋「ピンに遊撃隊が紛れている」
盧「また何をやらかしたのだ」
呉「杜興まで…」
宋「各々の得意武器でストライクを狙え!」
呉「得意武器?」
盧「一人目!」
花栄「…」
呉「弓矢?」
花「!!」
陳達「!?」

宋「弓矢では二本止まりか」

呉「遊撃隊ピンは避けられないのですか?」
宋「足枷をつけてあるぞ」
盧「厳罰ではないか」
宋「二人目!」
秦明「…」
呉「大きな球だ」
盧「何ポンドあるのだ」
秦「!」
鄒淵「!?」
杜興「!?」
史進「…」
宋「惜しい…」
盧「打撲ですめばいいが…」
宋「二投目!」

林冲「…」
盧「遊撃隊が打ち身だらけになっている…」
呉「まだ史進が倒れていないのでは?」
宋「ほう」
林「!!」
陳「!?」
杜「!?」
鄒「!?」
史「…」
宋「史進だけ残った!」
林「!!」
史「!?」
宋「スペア!」
盧「いや、史進が立ち上がったぞ」
林「!!」
宋「三投目!」
呉「無慈悲な…」

宋江…優勝は李応だ!
盧俊義…誰も遊撃隊に容赦しなかったな。
呉用…何をしたのですか。

花栄…弓では一ピンしか倒せなかった。
秦明…李逵の作った球だった。
林冲…やたら速い。

史進…三投目で撃沈。
陳達…花栄の矢を見切れなかった。
杜興…李応の球に当たりにいった。
鄒淵…ただ痛かった。

17.
晁蓋「梁山泊アームレスリング大会を行う」
宋江「早速顧大嫂が陶宗旺を破る番狂わせだ」
呉用「何という腕力」
晁「次は史進と秦明か」
宋「双方構え」
史進「…」
秦明「…」
宋「始め!」
史「!」
秦「!」
呉「卓が粉砕されそうだ」
秦「喝!!」
史「!?」
晁「着物が弾け飛んだぞ!」
宋「退場」

宋「よもや秦明が一瞬の隙を突かれて敗退するとは…」
晁「林冲と顧大嫂の決勝になるとは思わなかった」
呉「孫新はなぜ旦那になれたのだろう…」
林冲「…」
顧大嫂「…」
宋「双方構え」
林「加減せんぞ」
顧「いらないよ」
宋「始め!」
林「!」
顧「!」
晁「膠着している!」
呉「何という力だ」

林「!」
顧「!」
晁「さすがに体力差が出てきたか」
宋「粘れ!顧大嫂!」
顧「!!」
林「!?」
晁「なんだ!」
宋「卓が真っ二つになったぞ」
呉「それほどの力だったのですか?」
顧「負けたよ、林冲」
林「いや、引き分けだ」
顧「そういうのはいい」
林「ならば何を競う?」
顧「飲み比べだ!」

晁蓋…托塔天王もなかなかの強さだったが、郁保四に敗れた。
宋江…史進の着物を精査している。
呉用…これくらいの力があったら楽しいだろうな。

史進…力むと裂ける着物を着てきた。
秦明…顧大嫂の奇襲に敗れた。
顧大嫂…飲み比べと食べ比べは圧勝。
林冲…翌日は調練にならなかった。

三兄弟

三兄弟…李逵のご飯が美味しすぎて、開封府の料亭の料理が食えなくなっていた。

人物
魯達(ろたつ)…李逵に聞いたら、腕料理のレパートリーが意外とあったらしい。
武松(ぶしょう)…食べるのはゆっくり。味わっているわけではなく、単に遅いだけ。
李逵(りき)…料亭の料理長を呼び出して説教したら、弟子入りを志願された。

18.
魯達「おう、鄧飛か」
鄧飛「久しぶりだな!魯達殿!」
魯「相変わらず眼が赤いな」
鄧「火眼狻猊さ」
魯「飛竜軍が合っているらしいな」
鄧「そうさ!またとっ捕まった奴がいたら、俺が命がけで助けてやるよ」
魯「頼もしい」
鄧「…ところで、魯達殿」
魯「どうした?」
鄧「肉を持ってねえかな?」

魯「旅で食べる干し肉ならあるが…」
鄧「そういうんじゃねえんだ」
魯「羊か?牛か?」
鄧「…あまりでかい声じゃ言えねえ」
魯「よく分からんぞ」
鄧「林冲と魯達殿と俺で食った…」
魯「ああ!俺の右腕!」
鄧「それだよ!魯達殿!」
魯「あるわけないだろう」
鄧「だよな」
魯「味をしめたのか?」

鄧「…引かないで聞いてくれるか?」
魯「同じ肉を食った仲だ」
鄧「生涯食った肉で一番美味かった」
魯「…さすがに少し引くぞ」
鄧「俺の眼も、魯達殿の肉を食ったから赤くなったと、劉唐が言いやがる」
魯「塩でやられたのだろう?」
鄧「飛竜軍で魯達殿の肉の美味さを力説しすぎたんだ」
魯「…」

魯達…鄧飛の残っている腕を見る眼が怖い。
鄧飛…あの時しか食ってねえぞ!本当だからな!

養生所&薬方所

養生所&薬方所…思わぬ薬ができた時はいつも一大事。

人物
安道全(あんどうぜん)…医術以外に興味関心が無いと思っていたが?
薛永(せつえい)…薬草担当兼麻酔担当。薬草での麻酔はまだ模索中。
白勝(はくしょう)…コミュ力の高い事務局長。友達も多い。

19.
薛永「丸太の調練だ。馬雲」
馬雲「(`_´)ゞ」
薛「的確に後頭部に決めないと、患者の命を落とすぞ」
馬「ᕦ(ò_óˇ)ᕤ」
白勝「また物騒な丸太を振り回してやがるな、薛永」
薛「白勝!迂闊に間合いに入るな!」
白「は?」
馬「∑(゚Д゚)」
白「」
薛「的確に入れることはできたか…」
馬「\(^ω^)/」

薛「白勝が記憶を無くしただと?」
安道全「何も覚えていない」
馬「(´⊙ω⊙`)」
白「誰だお前らは?」
薛「私だ白勝!」
白「…俺の名は白勝というのか?」
安「それすら忘れてしまったか…」
薛「記憶を取り戻す薬を作ってこよう」
馬「ヽ( ̄д ̄;)ノ=3」
白「ここはどこだ?」
安「梁山泊だ、白勝」

 白「梁山泊?」
安「私たちの居場所だよ」
林冲「ヤブ医者!」
安「ちょうど良かった。白勝が記憶を無くしてな」
林「どういうことだ?」
白「お前は?」
林「俺を忘れるとはいい度胸だな、白勝」
白「?」
林「腹の傷のことも忘れたのか」
白「腹の傷?」
安「…雪の中で私が治療したんだ」
白「!」

薛永…大急ぎで記憶を取り戻す薬を作成中。
馬雲…_(:3」z)_
安道全…思い出したか、白勝?
林冲…腹の傷を触ってみろ。

白勝…少しだけ思い出が蘇ったような…

20.
薛永「記憶を取り戻す薬ができた!」
馬雲「\(^ω^)/」
安道全「さっそく白勝に飲ませよう」

白勝「嫌だ」
安「なぜだ、白勝」
薛「記憶を取り戻したくないのか?」
白「記憶があろうがなかろうが、こんなおどろおどろしい薬は飲みたくねえ!」
安「色を綺麗にできなかったのか?」
白「飲まねえ!」

安「分かった、白勝」
白「なんだよ」
安「まず私が先に飲む」
薛「安道全?」
安「友達のためだ」
白「…」
安「私が飲んでなんともなかったら、お前も飲んでくれよ」
白「…」
安「!」
薛「さすが安道全。潔い」
安「…たまらん不味さだ」
白「効果は?」
安「…何か思い出してきた」
薛「何を?」

安「李巧奴はいないか?」
薛「…彼女なら今養生所の事務をしていると思うが」
安「私は巧奴と一緒に下山して建康で暮らす!」
薛「どうしたのだ、安道全?」
安「いや、その前に…」
薛「どこへ行く!」

安「史進!」
史進「…安道全?」
安「妓楼に行くぞ!」
史「!?」

薛「一体どうしたのだ?」

薛永…星の記憶を呼び起こす薬を作ってしまったかもしれない…
馬雲…∑(゚Д゚)

安道全…顔がいやらしくなってきた。
白勝…なんなんだよ、こいつら?

21.
安道全「…私はいったい何を」
薛永「正気に戻ってよかった」
白勝「…」
薛「お前の記憶は?」
白「やっとこさ、いつも通りさ…」
馬雲「\(^ω^)/」
安「かつてないほど、いやらしい気持ちになってしまった…」
白「史進に比べりゃ可愛いもんさ」
安「だが、こんな私もいたかもしれない気がするな」

白「まあいいんじゃねえか?」
安「そうか?」
白「どっちにしろ俺らは友達になれそうな気がするよ」
薛「…本当にお前の記憶が戻ってよかったよ、白勝」
馬「m(_ _)m」
白「薛永の記憶を取り戻す薬は、いったいどこの記憶を取り戻すんだろうな?」
薛「元に戻す薬ができるまで迂闊に試すなよ、白勝」

白「違う世界にも俺たちが、梁山泊が、あるのかもしれねえな」
薛「そうかもな」
安「私はそこでも医者なのかな?」
白「お前は医者だろうよ」
薛「白日鼠は?」
白「博打でもうってんじゃねえかな?」
薛「私は旅の武芸者でもしてたのかもしれん」
馬「(´-`).。oO」
薛「お前は出番があるのかな?」

安道全…無事に正気に戻った。史進の妓楼の誘いを無碍なく断るようになった。

薛永…この薬は封印しておこう…
白勝…お腹の傷を触ってたら不意に思い出したらしい。
馬雲…(´⊙ω⊙`)

塩の道

塩の道…数少ない暇な時間はもっぱらゲームしてるらしい。

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…いつゲームしてるかって?激務の合間をぬってに決まっているだろう。
燕青(えんせい)…ゲームは万能。テーブルもカードもTVもなんでもござれ。
蔡福(さいふく)…負け惜しみの強さでは右に出る者がいない。
蔡慶(さいけい)…エンジョイ勢だから、勝ち負けはあまり根に持たない。

22.
燕青「チェックメイト」
蔡福「くそっ!」
蔡慶「…俺たちはなんなら燕青に勝てるんだ?」
福「体脂肪量」
慶「勝って嬉しいもんかよ」
燕「私がお前たちに勝てないものならいくらでもあるぞ」
慶「たとえば?」
燕「憎まれ口の語彙とか」
福「…」
燕「咄嗟の憎まれ口の瞬発力とか」
福「しばくぞ」

燕「私も咄嗟の切り返しで気の利いたことを言えるようになりたいのだ」
福「その綺麗な面があれば、気の利いたことなど言えなくていいだろう」
慶「言えたらかえって嫌味になるぞ?」
燕「そうなのか?」
慶「この肉の塊にうっかり目鼻がついちまったような面だから、憎まれ口が映えるんだ」
福「慶」

福「憎まれ口を言えたところで、盧俊義様に言えなければなんの利もないぞ?」
燕「育ててもらった恩があるではないか」
福「その恩を無尽蔵に吸収されているではないか」
慶「脂肪も吸収できればいいのにな」
福「貴様を鉄臂膊と呼ばれた腕で絞め殺してやろう」
慶「やってみやがれ」
燕「羨ましい…」

燕青…気軽に憎まれ口を叩けあえる相手がいるのが羨ましい。
蔡福…鉄臂膊の腕力を侮るな!
蔡慶…黙れ!一枝花のような洒落たあだ名もねえくせに!

間者

間者…間者でも目立ちたいときはある。

人物
時遷(じせん)…目立ちたいときは、とびっきりの女装をして読モになる。
石勇(せきゆう)…目立ちたいときは、渋い着物を着て街に繰り出す。
侯健(こうけん)…目立ちたいときは、とっておきの着物を自分で仕立てて開封府に繰り出す。
孫新(そんしん)…目立ちたいときは笛の選曲も派手になる。
顧大嫂(こだいそう)…目立ちたいもなにもめっちゃ目立ってる。
張青(ちょうせい)…目立ちたいときは博打で稼いだ金で豪遊っぽいことをする。
孫二娘(そんじじょう)…目立ちたいときはそこそこの化粧をするだけで、男からナンパされる。

23.
顧大嫂「おい」
阮小七「豚の耳!揚げてくれ!」
孫二娘「…足りねえな」
李立「一番いい酒を壺で頼む!」
顧「遅い…」
李俊「豚の耳と酒!お持ちいたしました!」
孫「遅えぞ!混江竜!」
顧「宋江の耳は豚の耳と大声で言ってみろ!」
俊「それは…」
孫「呉用なら言うのか!」
俊「呉用の耳は豚の」

呉用「そうか。私の耳は豚の耳なのか」
俊「」
孫「南瓜の頭に豚の耳だとさ!」
顧「李俊も嫌な奴だねえ!」
呉「…私も飲んでいいか?」
顧「勿論だよ。呉用の旦那」
孫「智多星もたまには私らと飲みたい長い夜があるんだねえ」
呉「まあな」
俊「」
顧「判断が遅い!」
俊「!」
孫「酒だ!混江竜」

俊「酒。お持ちしました…」
呉「酒なんてこの世に無ければこんなことにはならなかったのにな、李俊」
俊「…」
呉「お前らが何をやったのか知らんが、この二人の賄い担当なんて死んでもごめんだぞ」
顧「…」
孫「…」
立「…」
阮「…」
呉「一杯飲んだら帰るから軽くつまめるものを持ってきてくれ」

顧大嫂…呉用が嫌われる理由がよく分かったよ。
孫二娘…私らが満足する呉用の悪口を言った奴は解放してやる。

李俊…南瓜頭呉用!
阮小七…陰険なんちゃって軍師呉用!
李立…しまった野郎呉用!

呉用…何も知らずいい気分で帰っていった。

断金亭

断金亭…なんだかんだで梁山泊の誰もが楽しみにしているとは口が裂けても言えない。

24.
晁蓋「夏の盛りの隠し芸大会を行う」
呉用「一番。遊撃隊将校による…」
宋江「…」
呉「シシンデレラ」

史進「義母上!俺もお城の武闘会に行きたい!」
施恩「何を言っているシシンデレラ!」
陳達「貴様など武闘会の前座にもならん」
穆春「せいぜい床の埃を舐めるように掃除しろ」
史「おのれ…」

史「お城には武芸に秀でた王子がいると聞く。俺の腕があれば…」
朱武「哭くのはやめよ。シシンデレラ」
史「何奴!」
朱「貴様の武を見込んで頼みがある」
史「頼みとは?」
朱「城に忍び込んで、王子を暗殺してもらいたい」
史「刺客になれと?」
朱「俺が策を授ける」
史「面白い。その話乗ったぞ」

朱「かぼちゃを馬にしてやろう」
史「おう」
乱雲「!」
朱「子の刻のドラが鳴る前に帰らねばならぬぞ」
史「心得た」
朱「行け!シシンデレラ!」
史「!」

陳「王子強え」
穆「とても敵わん」
施「私たちでは無理なのか」
林冲「口ほどにもない」
史「槍を取れ王子」
林「何奴!」
史「俺と立合え」

林「面白い。名を名乗れ」
史「俺の名は、シシンデレラ!」
林「得物は?」
史「この棒だ!」
林「行くぞ、シシンデレラ!」
史「おう!」
林「…」
史「…」

施「王子とシシンデレラが一歩も動かなくなった」
陳「息ができん…」
穆「何という気だ」

林「!」
史「!」

!!

史「子の刻のドラ!」

史「勝負は預けた!」
林「逃げるか!シシンデレラ!」
史「事情があるのだ!」
林「逃がさん!」
史「くそっ、ドレスが…」

施「美しいシシンデレラのドレスが!」
陳「みるみる脱げていくぞ!」
穆「魔法が解けたかのようだ」

史「かぼちゃ!」
乱「!」
林「百里!」
百里風「!」
史「しつこい」

林「命をもらうぞ」
史「ここまでか!」
林「む!」
史「蛇が!」
林「なんだ!」
朱「白花蛇!」
楊春「!」
林「!?」
史「王子?」
朱「でかした、シシンデレラ」
史「魔法軍師の」
朱「これでこの国は私のものだ」
史「おのれ!計ったな!」
朱「裸のシシンデレラなど赤子同然!」
史「闇が深く!」

史「何も見えん!」
朱「私に従え、シシンデレラ」
史「断る!」
朱「ならば死ね」
史(せめて死ぬ前に、光が見たかった…)
朱「闇に葬られよ」
史「…」

林「待て!俺はまだ死んでいない!」
朱「なに!」
林「白花蛇の毒ごときで、死ぬ俺ではない」
朱「足元も覚束ぬではないか」
林「だが闘える」

朱「小癪な!」
林「…」

史(どこかに光はないのか!)
施「シシンデレラ!」
陳「俺たちの光だ!」
穆「受け取れ!」
史「義姉上!」
施「とっておきだ!」
史「これは、替天行道と書かれた旗!」
穆「その旗が、お前に光を与える!」
史「受け取ったぞ、義姉上!」
陳「黒々としたものの中に光を!」

史「この旗で、俺の光を溜める!」

晁(どうやって?)

史「旗で尻を摩擦すれば!」

呉(宋江殿?)
宋(芸の後に処断しろ)

史「光あれ!」

朱「馬鹿な!」
林「黒々としたものの中に、光があった!」
史「くたばれ!魔法軍師!」
朱「おのれ」
史「!」
朱「…俺を滅しても、戦いの輪廻は続くだろう」

史「王子!」
林「白花蛇の毒が、回ったようだ…」
史「俺が毒を吸い取ってくれる!」
林「…」
史「!!」
林「…」

晁(凄まじい接吻だ)
呉(張藍殿がすごい顔をしている)

林「みるみる毒が失われていく」
史「俺と誓いのキスをしたからな」
林「誓うしかないか」
史「おう」
林「立合うことをな!」

史進…シシンデレラ。宋江の厳命で厳しい罰を受けた。
陳達…意地悪な義姉。跳躍自慢。
穆春…意地悪な義姉。見事な噛ませ芸。
施恩…意地悪な義母。替天行道を穢すのは許し難い。

林冲…王子。台本は読まない。

朱武…魔法軍師。高額オファーに目が眩んだ。
楊春…白花蛇。蛇の着ぐるみが似合う。

晁蓋…史進の尻の輝きに目を見張った。
宋江…宋江の罰も含めてワンセットな感がある。
呉用…台本の完成度に感心した。

林冲さん家

林冲さん家…結局こういう関係性が夫婦円満の秘訣なのである。

25.
林冲「バッタを捕まえてきた」
張藍「まあ」
林「大きいだろう」
張「大きいですね」
林「…」
張「…」
林「他に何かないか、張藍」
張「…いえ、別に」
林「そうか…」
張(このお顔は、しょんぼ林冲様…)
林「…」
張「よく捕まえましたね!林冲様!」
林「そうだろう、張藍!」
張(ちょろい…)

林冲…今日一日機嫌が良かった。
張藍…ここまでちょろいと今後が心配になってきた。

26.
林冲「赤子になってしまった」
張藍「まあ!」
林「どうしたものだろうか、張藍」
張「可愛い!」
林「!」
張「赤子の林冲様がここまで可愛らしいとは思いませんでした!」
林「そこまでか、張藍?」
張「はい!」
魯達「寝顔も可愛いからな」
張「!」
魯「!?」
張「失せろ、元色坊主」
林「張藍…」

張「たっちの調練をしましょう!」
林「容易い」
張「やってみせて!」
林「む!」
コロリン
張「!」
林「くそっ!」
コロリン
張「林冲」
林「!」
張「…」
林「張藍?」
張「私を悶え殺すおつもりですか?」
林「…危うく泣き叫ぶところだったぞ、張藍」
張「可愛いが詰まりすぎて窒息しました!」

林「張藍…」
張「なんですか?」
林「このベビーウェアは…」
張「私に赤子ができたら着せたいと思っていたものですが?」
林「ならば俺に着せなくても…」
張「じゃあ今誰に着せればよろしいのですか?」
林「…俺しかいないか」
張「分かればよろしい」
林「調練用はないか?」
張「お安い御用!」

林冲…赤子になったが百里風には乗れた。
張藍…可愛すぎる赤子林冲にぞっこん。

魯達…張藍の飛刀で額を割られた。

27.
林冲「ようやく歩むことができるようになったぞ」

張藍「あんよの調練の成果ですね」
林「次は駆けられるようにならなければ」
張「槍を使うのは?」
林「問題ない」
公孫勝「苺の次は赤子か」
林「何の用だウスノロ!」
公「…」
林「用がないなら帰れ!」
公「奥方におしめを代えられながら言うな」

林冲…厠にも行けるようにならなければ。
張藍…厠に行く調練をプランニング中。
公孫勝…赤子なのにふてぶてしさが変わらんな。

滄州

滄州…滄州使えない食客ランキングというゴシップ雑誌が売れた。

28.
柴進「私の家で増えに増えすぎた食客を減らそうと思う」
食客A「そんな!」
B「こんな寒い日に!」
C「この寒さでは、槍を百回も回せませんぞ!」
安道全「どうやって減らすのですかな、柴進殿?」
柴「今から半刻後に鬼がやってくる」
洪師範「鬼?」
柴「一日逃げ切った者のみ、残ることができるぞ」

A「えらい事になった」
B「鬼って一体誰だ?」
C「私も今日ばかりは百回回さないといけないようだ」
洪「お前は本当にそれしかないんだな」
C「なんだと!」
洪「俺と弟子は曲がりなりにも、豹子頭と立合ったからな」
A「確かに」
B「失禁したとはいえナイスファイトだった」
洪「黙れ!」
C「銅鑼!」

A「もう始まったのか」
B「支度一つできてないぞ」
C「こんなだから俺たちダメなんじゃないか」
洪「棒があればいい」
C「その意気だな!」
鬼「!!」
A「鬼が出たぞ!」
B「百回将!」
C「心得た!」
鬼「…」
C「一…」
鬼「…」
C「一…」
鬼「…」
C
洪「一度も回せず失神しやがった」
鬼「!!」

柴進…ごっそり減ったな。
安道全…百人のうち、九十人は減ったな。

A…失神から醒めないふりをしているがバレバレ。
B…捻挫で歩けないふりをしたが、バレバレ。
C…おなじみ槍を百回回せる男。一度も回せなかった。
洪師範…弟子ともども失禁したが、変えの下着を持ってなかった。

…案の定豹子頭。

山中

山中…某所へ連れて行くときの山中のお話。

29.
魯智深「九紋竜の刺青か」
史進「おう!俺の自慢だ!」
魯「脱がなくていい」
史「魯智深殿の牡丹の刺青は見せないのか?」
魯「…そういえば、あまり見せたことはないな」
史「なぜだ?」
魯「見せびらかすものではないのだ」
史「見事な刺青ではないか」
魯「俺の刺青は、そういうものではないんだ」

史「花和尚なのにな」
魯「お前のような、人に見せるための刺青を入れてみたかったよ」
史「よく分からんな」
魯「…いつか分かるようになってくれ」
史「どういう意味だ?」
魯「人の言葉の裏を思いやることができる男になれれば、良い将になれる」
史「俺は良い将ではないのか?」
魯「まだまだな」

史「そういえば、魯智深殿の母上は」
魯「…」
史「魯智深殿の父上の死を嘆かれて亡くなったんだよな」
魯「ああ、そうだ」
史「今思い出したんだけどな」
魯「なにを?」
史「俺の母上は、牡丹が好きだったそうだ」
魯「…」
史「ふと思い出したよ」
魯「奇遇だな、史進」
史「?」
魯「俺の母もさ」

史進…魯智深の過去を少しだけ察した。
魯智深…花和尚の由来は背中の牡丹。入れた理由は?

雄州

雄州…将軍よりも強い副官の嫁と娘がいる州なのだ。

30.
韓滔「すまぬ。道を尋ねたいのだが」
関勝「おう」
韓「この近辺に宿はござらんかのう」
関「宿ならばこの者が宿をやっている」
韓「おう、それは助かる」
郝思文「!?」
関「私もちょうど商談を終えて宿に帰るところなのだ」
韓「それは奇遇だのう」
関「共に宿に行こうではないか、旅の人」
郝「…」

韓「…どう見てもこの人のご自宅ではないかのう」
関「いや、今宵の私の宿だ」
郝嬌「関勝殿!また母上のご飯食べに来たの!」
関「そうだ。文句あるか?」
陳娥「うちに来るならば、事前に言ってください」
関「そうだった」
陳「手も洗って!」
関「今やろうとしたところだ!」
韓「お子さんかの?」

郝「狭い我が家で…」
韓「とんでもない。心が豊かになるお食事でした」
関「名は?」
韓「韓滔と申す。代州から旅をして参った」
関「代州は呼延灼だな」
韓「やはりご存知か、関勝殿」
関「おう。いつか共に戦いたいな」
陳「関勝殿。寝床は外でお願いします」
関「そんな!」
嬌「入らないもの!」

韓滔…思わぬ寄宿先で一晩過ごすことになった。

関勝…無理やり郝瑾の部屋で一緒に寝た。
郝思文…また関勝の無茶振りで陳娥に文句を言われてしまった。
陳娥…なんだかんだで、関勝が来る日の予感がしていた。
郝嬌…関勝が来るとご飯がさらに美味しくて嬉しい。

青蓮寺

青蓮寺…未知のものに対しても積極的にトライする風潮があるという。

人物
袁明(えんめい)…フラフープを試してみた。意外と回せた。
李富(りふ)…ヘリウムを吸ってみた。かつてない変な声。
聞煥章(ぶんかんしょう)…義足にばねを入れてみた。すっごく速く走れた。
洪清(こうせい)…VR調練器具を試してみた。1000人倒せた。
呂牛(りょぎゅう)…透明になれる着物を試してみた。聞煥章気づかないでやんの。

31.
袁明「朝に飲む茶は美味いな、洪清」
洪清「…殿」
袁「どうした」
洪「こちらの飲物をお飲みになりませんか」
袁「黒いな」
洪「…」
袁「しかし香りが良い」
洪「…」
袁「…」
洪「…」
袁「引き締まった苦味が冴えている」
洪「…」
袁「なんという飲み物だ?」
洪「珈琲です。殿」
袁「洪清」

袁「珈琲はどうやって手に入れた?」
洪「知り合いの商人に分けてもらいました」
袁「新たな宋国の専売品になりうる可能性を秘めているのではないか」
洪「…」
袁「すると闇で取扱う闇珈琲の道が梁山泊の資金源となりうる」
洪「…」
袁「洪清」
洪「はい」
袁「青蓮寺の専売品とせよ」
洪「御意」

袁明…すっかりお気に入りになった。
洪清…すっかり珈琲淹れの達人となった。

32.
聞煥章「呂牛」
呂牛「何かな?」
聞「なぜ私のしたたかを覗いているのだ?」
呂「好きで覗いている訳はない」
聞「ならばなぜ覗く?」
呂「俺が仕事の報告に来た時に限って、お前がしたたかに熱心なだけだ」
聞「覗く必要性は?」
呂「覗いたのではない。たまたまだ」
聞「たまたま目に入るものか?」

呂「そんな事より仕事の報告だが」
聞「待て。したたかを覗く理由を話してから話せ」
呂「お前はそんなに自分のしたたかを覗かれる理由を知りたいのか?」
聞「…」
呂「…」
聞「…それほどでもない。むしろ知りたくない」
呂「ならば黙っていろ」
聞「たしかに、もう慣れたからなんとも思わんがな」

呂「待て、聞煥章」
聞「なんだ」
呂「今なんと言った?」
聞「もう一度聞きたいのか?」
呂「…」
聞「…」
呂「別にいい。二度と聞きたくない」
聞「ならばさっさと仕事の報告をしろ」
呂「…心を落ち着けてからでいいか」
聞「なぜ動揺している?」
呂「…」
聞「…」
呂「変態め」
聞「お前もな」

聞煥章…青蓮寺変態番付表の横綱。
呂牛…青蓮寺変態番付裏の横綱。

禁軍

禁軍…カタカナ語を連発しているが、果たしてここは北宋時代なのだろうか。

人物
童貫(どうかん)…自己啓発本を読んでインスパイアされた。誰の本だよ。
趙安(ちょうあん)…フレッシュがそもそもの事の発端。なんの?

33.
童貫「李明」
李明「はい」
童「私の調練はコスパが悪くないだろうか」
李「…調練の、コスパでございますか?」
童「そうだ」
李「なんと申し上げたらよいのか分かりませぬが…」
童「…」
李「この世の中で、戦ほどコスパの悪い政はないのではないでしょうか」
童「軍人が言うことではない、李明」

童「コスパを上げる調練を行う」
馬万里「どういう意味だ?」
韓天麟「分からん」
童「戦でかかるコストを述べてみよ」
段鵬挙「我らの命」
陳翥「馬の命」
王義「武器の損傷や兵站」
童「お前らの命は別にしても、戦とはコストがかかるものだな」
鄷美「元帥!」
童「戦をするのが愚かに思えてくる」

畢勝「我ら軍人がそれを言っては」
童「…陛下がやたらコスパという言葉を使うようになられてな」
鄷「それは」
童「私も影響を受けていたようだ」
畢「花石綱ほどコスパの悪い道楽はございませんぞ…」
童「まあな」
鄷「コスパを上げる調練…」
童「要するに、兵一人当たりの質を上げればよいのだ」

童貫…花石綱のコスパの悪さに卒倒した。
鄷美…結局いつも通りの調練が質を伸ばすのだな。
畢勝…花石綱などやめればよいのに。
李明…元帥からコスパという言葉が出て驚いた。
・その他将校…コスパが悪いため割愛。

34.
童貫「…」
鄷美「何を読まれているのですか、元帥?」
童「禁軍の課題解決のソリューションを模索している」
畢勝「元帥」
童「…」
畢「禁軍もドラスティックな調練を導入するフェーズでは」
童「調練PDCAサイクルを回すことを怠るな」
畢「KPIは禁軍へのロイヤルティ向上率で」
童「うむ」
鄷「…」

童貫…調練アジェンダをフィックスさせてこい。
畢勝…禁軍のビッグイシューをエビデンスを持ってご報告いたします。

鄷美…とってつけたようなカタカナ語を…

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…シシハラ被害者の会急展開!

人物
班光(はんこう)…シシハラ被害者の会事務局長。史進との関係性を日々模索している。
鄭応(ていおう)…シシハラ被害者の会準会員。会費を払うのがめんどくさい。
葉敬(しょうけい)…シシハラ被害者の会に入りたくなってきた。

35.
史進「班光!貴様を打ち乳首の刑に処す」
班光「打ち乳首の刑!?」
史「略して打ち首の刑だ」
班「斬首されるようなことはしておりませんぞ!」
史「斬首ではない。斬乳首だ」
班「ええい!」
史「つれていけ!」
班「離せ!」
鄭応「…」
葉敬「…」
班「一体なにをするつもりですか!」
史「これだ」

班「その鋭い刃は…」
史「動くな」
班「…」
史「斬乳首!」
班「…」
史「…」
班「あっ」
史「…」
班「やっ…」
史「…」
班「らめ…」
史「こいつの口を塞げ!」
班「!!」
鄭「…」
葉「…」
史「乳首周りの毛がみるみる落ちてきたな」
班「!」
史「…なぜ乳首周りの毛だけ濃いのだ、班光」

花飛麟「…また史進殿たちが」
呼延凌「あれは班光か?」

史「随分と隆起しているではないか、班光」
班「!」
史「猿轡を外してやろう」
班「花飛麟殿!助けて!」
史「来い、花飛麟!呼延凌!」
花「…一体なにを?」
史「打乳首の刑だ」
班「どうせやられるなら、花飛麟殿に!」
花「…」
呼「…」

史進…班光の乳毛が目に余った。
班光…だんだん求めるようになってきた。

鄭応…ノーコメントだ。
葉敬…ちょっとやられたい。

花飛麟…矢の的になるか?
呼延凌…史進殿も相変わらずだな。

36.
史進「シシハラ被害者の会による被害者の会を設立した」
班光「なんという暴挙を!」
史「俺はシシハラ被害者の会による被害者だ」
班「シシハラの元凶が言わないでください!」
史「俺だってシシハラという言葉に被害を被っているのだ」
班「我らもシシハラによる被害を被った末に決起したのです!」

史「つまりそれはシシハラという言葉ができたことに起因するのではないか?」
班「ややこしくしないでください!」
史「シシハラという言葉を生み出したことにより、事の本質を見失ってしまったのではないか?」
班「シシハラの本質…」
史「言葉を作り出すということは、便利な反面不測の事態も招く」

班「それは?」
史「例えば自己肯定感という言葉だ」
班「はい」
史「この言葉が出来たことにより、心の健康を図る指標はできたかもしれぬが、この言葉に縛られ自己を肯定する事から遠ざかってしまう者もいる」
班「たしかに…」
史「ありのままに生きる事の難しさだな…」
班「なんの話でしたっけ?」

史進…シシハラから矛先を逸らそうと必死。
班光…言葉を作ることの功罪について考え始めた。

37.
史進「シシハラ被害者の会による被害者の会の名称を、ハンハラ被害者の会に改名する!」
班光「聞き捨てなりませんぞ、史進殿!」
史「お前がシシハラという言葉を作り出した事による仇花が咲いたな、班光」
班「よもや史進殿がシシハラアンチテーゼを唱え始めるとは…」
鄭応「意味を教えてください」

班「私たちがシシハラという言葉を生み出したことは誤りだったのか…」
史「どうだかな」
班「…しかし、シシハラ被害者は依然として存在します!」
史「ハンハラの被害者も被害を主張し始めると思うがな?」
班「ハンハラの被害者など、史進殿だけではないですか!」
史「本当かな?」
花飛麟「…」

班「花飛麟殿!?」
史「お前はハンハラの被害者だよな?」
花「確かに、班光の破廉恥で私は辱めを受けました」
班「そんな馬鹿な!」
史「ならばハンハラ被害者の会会長に…」
花「しかし私はシシハラの被害も受けています」
史「!」
班「史進殿」
史「班光」
班「アウフヘーベンの模索を」
史「うむ」

史進…班光と白熱した議論を始めた。
班光…シシハラとハンハラのアウフヘーベンを模索中。
鄭応…諦めて帰って寝た。
花飛麟…ここぞとなると結託するだよな…

38.
史進「シシハラ被害者の会はハンハラ被害者の会と和睦をすることとなった」
班光「…不本意だ」
花飛麟「私に被害を及ぼさなければどうでもいいです、史進殿」
史「和睦の象徴として、花飛麟を像にした」
花「どういう意味ですか!」
史「この花飛麟の像があるかぎり、我らは争わぬ誓いを立てたのだ」

花「…もしも私が史進殿と班光を文治省相談窓口にセクハラで訴えたらどうなりますか?」
史「それは」
班「待ってください花飛麟殿!」
花「初めからこうすればよかった」
史「分かった花飛麟!この像に下着を纏わせる!」
花「そういう問題ではありません!」
班「ならばこの像は私が持ち帰ります!」

花「だからそういう問題でもない!」
史「よもやセクハラで訴えられるとは…」
班「不覚でしたね、史進殿」
花「それでは文治省に参りますので」
史「待ってくれ!」
班「我らに慈悲と猶予を!」
花「…考えないこともありませんが」
史「なんでもする!」
花「分かりました」
史「班光が!」
班「!?」

史進…すんでのとこで、班光に責任をなすりつけて逃げた。
班光…花飛麟に与えられそうな罰に少しだけときめいている。
花飛麟…良い加減落とし前をつけないと…

北の精鋭

北の精鋭…戦と日常の落差が激しい面々が揃っている。

39.
蕭珪材「耶律大石殿の判断力はどこで培われたのですか?」
耶律大石「私の判断力など、部族の小競り合い程度のものでしかありませんよ」
蕭「しかし、耶律大石殿の判断は的確です」
耶律被機「私もそれを認めているぞ」
大「恐縮です…」
蕭「その判断力を見込んで、頼みがあるのですが」
大「何か?」

蕭「羊にするか、牛にするか、決めていただけますか?」
被「まだ迷っているのか、蕭珪材」
大「昼食の肉の話ですか、それは?」
蕭「私には如何ともしがたく…」
大「いつもの果断な蕭珪材殿はどこへ?」
被「こいつ、こういうものの判断はてんで出来んのだ」
大「どっちでもよいのではありませんか」

蕭「しかし今日の私の気分に関わります」
大「ならば尚のこと自分で決めた方が良いのでは」
蕭「だからこそ決められぬのです」
大「しかし、私の判断が誤って蕭珪材殿の気分を害してしまったら」
蕭「だから耶律大石殿に選んでいただきたく」
被「魚にしてくれ!」
蕭「!?」
大「その手で来ましたか」

蕭珪材…すごくムスッとしながら完食した。
耶律被機…わしらまで飯を頼めないではないか!
耶律大石…私は羊が良かった…

twitterにて連載中!

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今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました! 

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!