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水滸噺 8月(上) [NO MORE したたか泥棒]

あらすじ
騎馬隊・致死軍 海辺でパリピを騙り
風流喪叫仙浪子 開封の都を揺るがす
フレッシュマン よもやの新機軸出し
九紋竜・鬼臉児 よもやの妓楼裸共闘

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、  
 あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・ご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊 

梁山泊…梁山泊108人の名前を序列順に叫びながら棒を回す芸を披露して入山しようとした男がいたが、燕青にもたどり着かず息を切らしたので不合格にされた。

騎馬隊

騎馬隊…索超の馬も馬麟の馬も揃って名馬。馬同士で語らう内容がエゲツないと皇甫端は言う。

人物
林冲(りんちゅう)…百里風と張藍の三角関係に悩まされているが、はたから見たらただの惚気でしかない。
索超(さくちょう)…塗料の都合上、夏場に青い鎧をほったらかしにするとベタベタになる。
扈三娘(こさんじょう)…どこをどうすればこんな完璧美人になるのかと思うほどの美人。その代償は、男を見る目のなさ。
馬麟(ばりん)…バンド活動の拠点がもっぱら双頭山なので、ぶっつけ本番で参加することもしばしば。
郁保四(いくほうし)…旗と本人がでかすぎるので、乗れる馬がとうとういなくなった。

1.
林冲「海か」
索超「この中で海を見た事がある者は?」
馬麟「皆初めてだろう」
扈三娘「広いものですね」
郁保四(やっぱ凄えな、扈三娘殿)
林「しかし、難点が一つある」
索「それは?」
林「泳いだ事がある者は?」
索「子午山の川なら…」
馬「俺も」
扈「無いです」
郁「俺も」
林「どう遊べばいい?」

索「水軍連中の外出禁止令が災いしましたな」
林「しかし、泳法で自由形という泳ぎがあるのを聞いた事がある」
索「ほう」
林「各自で泳法を編み出して、泳げるようになるのはどうだろう」
馬「溺れた者は?」
林「その時はその時だ」
郁「俺が旗を支えに救出に向かいます」
馬「見事だ郁保四」

林「四刻後に泳法を披露するのだ」
索「承知」
馬「頼むぞ、郁保四」
扈「暑い…」
郁(扈三娘殿、半端ねえ)

索「やはり、林冲殿は凄い」
馬「あの筋肉量なら沈みそうだが」
扈「!」
索「扈三娘!」
馬「出番だ、郁保四」
郁「扈三娘殿!」
扈「…助かりました」
郁「俺の背に」
扈「はい」
郁「!」

林冲…彼の泳法は張順でも真似できなかった。
索超…策士だな、郁保四。
馬麟…こういう場に来ると、やはり際立つな…
扈三娘…何を前のめりになっているのですか、郁保四殿?
郁保四…腹が冷えたんです、扈三娘殿。 

致死軍&飛竜軍 

致死軍&飛竜軍…兵も将校も基本無表情なんだけど、誰かが何かの弾みで笑ったりすると、一気に周囲に伝染して大変。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…牢屋から救出される時に頭倒立していた姿を、魯智深は最初石灯籠と見間違えたという。
劉唐(りゅうとう)…サイコロで出したい目を出せるが、公孫勝への指示は絶対に裏目にでる。
楊雄(ようゆう)…任務でお菓子の振り売りをすることが多いが、売り上げが芳しくないのが悩みのタネ。
孔亮(こうりょう)…たまに兄の孔明と飲む時の悪口のえげつなさは、公孫勝に処断されるレベル。
樊瑞(はんずい)…自身のエクササイズをまとめた本を出版した所、童貫から感想のお手紙が届いた。
鄧飛(とうひ)…自分以外で鎖鎌を使っている男をめっきり見ないんだが、そんなにマイナーな武器なのかな。
王英(おうえい)…狭い所とか、細い道とかはまず真っ先に斥候に出されるが、本人の俊敏性は飛竜軍でも中の下。
楊林(ようりん)…鎖鎌に似てる気がしてヌンチャクを試してみたら、満更でもなかった。

2.
公孫勝「…」
劉唐「海に来ましたが」
楊雄「来たのは良いものの」
孔亮「何をすれば良いのか分からん」
樊瑞「泳げる奴は?」
劉「俺は泳げた」
樊「なぜ過去形なんだ?」
劉「だいぶ前、張順に足を引き摺り下ろされたことがあってな」
樊「なんと」
劉「それ以来、泳げなくなってしまった」

劉「トラウマ克服のため、張順にも全面的に協力してもらったのだが…」
樊「そうか…」
劉「公孫勝殿は?」
樊「あそこに」
劉「妙に盛り上がっているな」

楊林「…」
雄「見事な…」
孔「それはないだろう」
公「…」
劉「何をしているのですか?」
林「棒倒しだ」
雄「楊林の技巧が鮮やかすぎる」

孔「!」
公「倒したな、孔亮」
雄「罰走二刻だ」
劉「水分と塩分は摂取しろよ」

公「…」
林「…」

劉(なんて高度な棒倒しだ)
樊(砂の一掴みが勝負を分けるな)

林「…」
公「!」

劉(楊林が林冲殿と見間違うほどの気を放っている)
樊(公孫勝殿の番だ)

公「!」
林「…」

劉「楊林の勝ちだ…」

公孫勝…夏の足跡をくっきり残して任務に帰った。
劉唐…泳ごうとするも、案の定身が竦んだ。
楊雄…日焼けあとが痒い。
孔亮…罰走中に逆ナンパされた。
樊瑞…泳ごうとするも、案の定沈んだ。
楊林…飛竜軍随一の一人遊びの達人。 

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍
林冲と公孫勝のやり取りを四コママンガにしたある致死軍の兵の連載が、梁山泊でじわりと大人気。

3.
索超(本当にやるのか?)
馬麟(肚を決めろ、索超)
公孫勝「…」

林冲「…」
索(来た!)
公「…」
馬(あいつは!)

郁保四「林冲殿、おはようござ」
林「!?」
郁「!?」

索「お前という奴は…」
公「…」
馬「公孫勝殿」
公「…」
馬「いくつ穴を掘られたのですか?」
公「七つ…」
索(多っ)

郁「助けてください」
林「そういえば、地面から罠の気を感じる…」
索(林冲殿のスイッチが入ってしまった)
馬(厳しい戦になるぞ)
公「…」
林「…」
扈三娘「林冲殿。今日の調練は」
林「…」
扈「!?」
馬(バラエティに出しちゃいけない奴が落ちた)
公「…」
索「公孫勝殿…」
公「肚を決めろ、索超」

扈「…」
馬(扈三娘の怒りの気が…)
林「穴は七つ」
公「…」
林「索超、馬麟…」
索「!」
馬「!」
林「劉唐、楊雄…」
劉唐「!」
楊雄「!」
林「それに、公孫勝の野郎の気か」
公「…」
林「ここにある穴を、全てお前らの墓穴にしてやろう」

扈「林冲殿」
郁「俺たちも含めてませんか?」

林「…」

索「…」
馬「…」
公「寝返るなよ、お前ら」
索「!」
馬「!」

林「気の乱れが…」

索「しまった」
馬「くそっ」
公「!」
索「公孫勝殿!?」
林「貴様ら!」
索「穴に落ちるわけには」
馬「鉄笛を…」
林「遅い!」
索「!?」
馬「!?」
林「裏切り者には血の制裁が必要だ」

劉「俺たちは行間で穴に落ちた」
楊「敵ながら見事だ、林冲殿」

林「…」
公「…」
林「残りの穴は一つ…」
公「…」
林「その穴に落ちるのは」
公「貴様だ林冲」
林「ついに姿を見せたな、ウスノロ」
公「…」
林「この穴の配置を見て気づいたことがある」
公「…」

林「北斗七星の配置になっているな、公孫勝」
公「その穴に落ちるのは」
林「お前だ、公孫勝」
公「なぜかな?」
林「北斗の党の一員ではないか」
公「…」
楊(自爆した…)
劉(ちなみに俺も一員な)
林「木偶の棒め」
公「…」
索(よく分からんが…)
馬(どうやら相当恥ずかしい失敗らしい)

林「顔が赤いな、公孫勝」
公「…」
劉(マジで?)
楊(写メ見せてください)
林「穴があったら入りたいのではないか?」
公「…」
林「俺が叩き落として」
張藍「林冲様、忘れ物」
林「張藍!」
公「!」
林「野郎!」
公「!?」
林「!?」
張「…」
扈「どうなったの、張藍?」
張「ホールインツーです」

張藍…厳しい精査の上、出す人と出さない人を厳選した。

出す人
扈三娘…無言の彼女が何より怖い。
郁保四…ストレッチしたら意外と平気だった。

出さない人
林冲…一体何の企画だ、公孫勝。
公孫勝…思いつきだ。
索超…穴に落ちるのは絵巻だけで十分すぎるのに…
馬麟…鉄笛の大事なところに土が入った。
劉唐…あとは呉用殿に阮三兄弟と白勝だ。
楊雄…こんなお頭つれてやってるんですよ、晁蓋殿… 

本隊 

本隊…始めに剣か槍か戟のどれかを選ぶ。基礎を会得して、下級将校以上になってから、やっと鞭とか青龍偃月刀とか持てるようになる。

人物
関勝(かんしょう)…朝令暮改が多いと言われるが、朝言ったことを本気で忘れているだけだから悪気は全くないがタチが悪い事この上ない。
呼延灼(こえんしゃく)…鞭を習うクラスは厳しいことこの上ないが、会得したらまず並みの将校ではなくなっている。
穆弘(ぼくこう)…身支度で一番時間がかかるのは眼帯を選ぶ時。
張清(ちょうせい)…スライダーの投げすぎで肘を痛め、登録抹消中。戦はストレート一本でいいだろう。
宋万(そうまん)…腕力は梁山泊でも上位。梁山泊ウエイトリフティング銀メダル。
杜遷(とせん)…彼の粘り強さは歩兵を率いるのにぴったり。悩み相談の個人面談も気軽に応じてくれる。
焦挺(しょうてい)…梁山泊相撲番付横綱。梁山泊奉納土俵入りの栄誉を譲る気は無い。
童威(どうい)…童猛と間違われても、何とも思わなくなった。
韓滔(かんとう)…梁山泊の畑で彼が育てる野菜は一味違う。
彭玘(ほうき)…若手将校を引っ張り出しては酒の飲み方をレクチャーしているが、いずれ役に立つんだ、これが。
李袞(りこん)…未だに一世一代の土下座を忘年会で真似される。
丁得孫(ていとくそん)…落ちてる紐を蛇と見間違えて悲鳴をあげたところを扈三娘に見られた。

4.
関勝「連環馬はどんな戦法なんだ?」
呼延灼「馬に馬甲を付け横つなぎにし、相手を蹂躙する戦法だ」
関「よくそんな戦法を思いついたな」
呼「初めて試した時は大変だった」
関「だろうな」
呼「馬も兵も負傷し、始末書を何枚書かされたことか」
関「よくもう一度挑戦したな」
呼「実は裏があってな」

関「聞こう」
呼「童貫に相談に乗ってもらったのだ」
関「なんと」
呼「とても親身になって聞いてくれてな」
関「珍しい」
呼「色々と助言をくださった恩があるのだ」
関「皮肉なものだな…」
呼「…悪い思い出ばかりではないのだ、官軍にいた頃も」
関「…実は俺もだ、呼延灼」
呼「良い後輩もいた」

関「…たまに思うことがある」
呼「何を?」
関「もしも宋が、俺たちを受け入れられる国だったら、と」
呼「…」
関「そうではないから、今梁山泊にいるのだがな」
呼「俺たちの原点は、宋国だ」
関「ああ」
呼「俺たちは、どこへ行くのかな、関勝」
関「行けるところならどこへでも、ではないかな」

関勝…俺の友も軒並み冷遇されていると聞くしな…梁山泊に呼んでやりたいよ。
呼延灼…趙安とは一度、共に戦ってみたかったな。 

遊撃隊

遊撃隊…遊撃隊が妓楼に来た時は、料金をだいぶ上乗せしている。まぁ隊長が散々やらかしたから仕方ない。

人物
史進(ししん)…最近なぜか「したたか」という言葉が気に食わなくなってきた。
杜興(とこう)…重装備部隊で元気にやってる李応殿を尻目に、また今日も史進の尻を見なければならぬのか。
陳達(ちんたつ)…彼の跳躍からの槍の技は中々防げない。
施恩(しおん)…ノリでスマホトレーディングを始めてみたら、意外と儲けられた。けっこう向いてるかも。
穆春(ぼくしゅん)…商店街の惣菜タイムセールに勇んで出陣するも、近隣のおばちゃんたちに遮られた。
鄒淵(すうえん)…遊撃隊サバゲーでは無敵。まず史進を自滅させるところから始める。

5.
史進「…」
李瑞蘭「…」

〜したたか〜○

史「…」
李「じゃあ、銀5粒ね」
史「値上げしたのか?」
李「追加料金よ」
史「なぜだ」
李「もう相手しないわよ」
史「…分かったよ」
李「…」
史「…」
李「早くしてよ」
史「…財布が」
李「忘れたとは言わせないわよ」
史「…」

李「九紋竜様、お支払い不可能です」
史「コールするな」
用心棒「困りますな」
史「…」
用「九紋竜様のうっかり、という事で間違い無いですな?」
史「…」
用「人間ですからそういう事もありますがね」
史「…」
用「うちにこっそりお越しになるならば、財布くらいキチンとお持ちいただかんと」

用心棒B「おい、もう一人財布忘れた間抜けがいるぞ」
A「どこのどいつだ?」
B「この爺だ」
杜興「…」
史「!?」
杜「!?」
A「お知り合いですかな?」
B「まさかこんな所で、って面してますよ、二人とも」
史「…」
杜「…」
A「二人でどうやって落とし前つけるか、ご相談していただけますね?」

史進…命からがら帰ることはできた。詳細は覚えてないが、服を着ていなかったことだけは覚えている。
杜興…命からがら帰ることはできた。詳細は覚えてないが、話を聞いた時の李応の顔だけは死ぬまで忘れないと思う。

李瑞蘭…安先生来てたのは内緒にしといたわ。いくらでも金持ってたからね。

6.
史進「おい、爺」
杜興「なんじゃ、小僧」
史「双頭山に飛ばされるんだとな」
杜「これでもう貴様の尻を見ずにすむから清々するわい」
史「こちとら老いぼれのカビ臭い吐息と同じ場所で息をするのもうんざりしていたから好都合だ」
杜「最後まで口汚い小僧だ」
史「口内が汚い爺が言うな」

陳達「その白髪頭で双頭山かよ」
杜「黒々とした毛髪が、大バカ供のせいで真っ白だ」
鄒淵「抜けなかっただけましだ、老いぼれ」
杜「史進の三下風情がよくも兵など率いて戦っていたもんじゃ」
陳「さっさと帰れ」
杜「言われんでも帰るわ」
鄒「当分その面見たかねえな」
杜「こっちが願い下げだ」

杜「遊撃隊の屑どもめ…」

杜「さて、双頭山に」

騎兵「!」
騎「!」

杜「なんだ!」

騎「道中くたばるんじゃねえぞ、爺!」
騎「あんたより長生きするのが俺の夢なんだから、死ぬなよ!」

杜「生意気な!」

騎「退け!」

杜「待たんか!」

遊撃隊「達者でな!」
遊「さっさとこのアーチをくぐりやがれ、爺!」
遊「向こうから骸になって帰ってくるんじゃねえぞ!」

杜「屑どもが…」

杜興…やる事が稚拙だぞ、バカども。

史進…こういうのに弱そうだよな、あの爺。
陳達…涙ぐむ顔が眼に浮かぶぜ。
鄒淵…なんだかんだで面白い爺だよな。 

水軍

水軍…船の量に対して船乗りや漕ぎ手の数が慢性的に足りないのが悩みのタネ。交易も始めようと計画中だが、漕ぎ手が足りねえって言ってんだよ。

李俊(りしゅん)…柄じゃないと言う割には、交易で儲ける才能があるのは闇塩商人時代の杵柄か。
張順(ちょうじゅん)…エラのみならず、鱗まで出来始めた気がするのは気のせいか。
阮小七(げんしょうしち)…あだ名は活閻羅(かつえんら)。現世の閻魔様。地元の村では喧嘩が一番強かったが、童猛と引き分けて、李俊にはコテンパン。
童猛(どうもう)…童威と入れ替わったことがあるが、案の定何一つ支障をきたさなかった。
項充(こうじゅう)…メンタルはあまり強く無い。李俊の軽口をめっちゃ根に持つタイプ。
阮小二(げんしょうじ)…博打で最近弟子の趙林にもカモられ始めてきた。船作らせろって。

7.
李俊「晁蓋殿は強火だな」
張順「一気に焼き上げそうだ」
阮小七「フランベしすぎて天井を焦がすこともありそうだ」
李「宋江殿はとろ火だな」
張「じわじわとな」
阮「煮込まれる方もたまったものではないかもな」
李「ところで、何の話だ?」
張「そりゃ李俊殿」
阮「抜き差しならない凹凸の話さ」

李俊…俺はてっきり個々人の火加減の話かと…
張順…白々しいぜ、李俊殿。
阮小七…もっとしたたかにならんと。 

重装備部隊 

重装備部隊…大型機材の作成や攻城兵器を作るのが得意。断金亭の宴会用大道具も担当している。

人物
李応(りおう)…飛刀は項充と同じくらい得意。項充が速さなら、彼の持ち味は命中精度。
解宝(かいほう)…解珍に習った刺又の遣い手。大工仕事でも意外と便利に使える。

8.
李応「まだ駄目か…」
解宝「そろそろ休めよ、李応殿」
李「あと少しなのだが」
解「盧俊義殿の無茶ぶりだろう?」
李「しかし、空を飛べる乗り物は必ず出来るはずだ」
解「そうだろうけど…」
李「!」
解「夜中なのに迷惑な連中だ…」
李「凌振の大砲…」
解「李応殿?」
李「これだ!」

李「協力感謝する。凌振、魏定国」
魏「しかしなあ、李応殿」
李「なんだ」
魏「正気か?」
李「至って」
魏「昨日の睡眠時間は?」
李「二日前に遡るが…」
凌「野暮だぞ、魏定国」
解「李応殿、これは…」
李「人間大砲だ」
凌「砲手の腕がなったぞ、李応」
湯隆「梁山泊の化物は軒並み馬鹿だな」

解「ただ吹っ飛ぶだけじゃねえだろうな?」
李「俺の衣装に秘密がある」
魏「鷲か?」
李「撲天鵰マンだ」
解(一昔前に見たなこんなの)
李「凌振、頼む」
凌「任せろ」
湯「保険は入ったのか?」
李「もしもの時は、故郷の家族に満額振り込まれる」
解(止めらんねえな、これは)
凌「点火!」
魏「…」

凌「発射!」
李「!」
魏「飛んだ!」
解「五体は満足だな」
魏「落ちるぞ!」
湯「見てらんねえよ」
解「空を見ろ!」
魏「鳥だ!」
湯「飛ぶ乗り物だ!」
凌「いや、撲天鵰マンだ!」
李「!」
魏「飛んでいる、だと?」
湯「すげえものを見た」
凌「見事だ、李応」
解「…」
魏「どうした、解宝」

解「水を差すようなことを言っていいか?」
湯「…」
解「李応殿は、むささびの飛び方から着想した」
魏「むささび?」
解「李応殿の様な格好で木々を飛び移る小動物だ」
湯「つまり?」
解「鳥じゃない」
凌「野暮だな、解宝」
解「凄いのは分かる」
魏「…」
解「しかし、どうもしっくりこない…」

李「大成功だ!」
魏「着地まで見事だ、李応殿」
湯「どうなるものかと思ったぜ」
解「李応殿」
李「見たか、解宝」
解「見たぞ、李応殿」
李「飛んでいる時にふと気づいた」
解「…」
李「鳥じゃないな、撲天鵰マン」
解「李応殿!」
魏「熱い抱擁を…」
湯「似た者同士か」
凌「次は俺の番だ」

李応…欧鵬にも飛んでほしいな。
解宝…偵察に使えんかな。

凌振…体重制限に引っかかり、必死のダイエット中。
魏定国…絶対に死なないなら、俺もやってみてえな。
湯隆…失敗したことを考えないなんて、考えられん… 

二竜山 

二竜山…楊志時代からの二竜山を知るベテラン兵が二竜山の語り部になりつつあるが、いい加減にお前は本隊に昇格しろよ。

人物
楊志(ようし)…奥さんの済仁美に子どもが九人欲しいと言われたが、それは楊業の子の数ではないかと戦々恐々。
秦明(しんめい)…長男の秦容が可愛すぎるが、すでにその怪力ぶりに手を焼いている。
解珍(かいちん)…郝瑾と郝嬌に大人の手ほどきと称して男女のあれこれを教えているが、限りなくアウトに近いセーフラインギリギリを愉しんでいる。
郝思文(かくしぶん)…将校にしてから郝瑾がよそよそしい気がしてちょっとさみしい。
石秀(せきしゅう)…豚が脱走した時に、「曹正が逃げたぞ!」と叫んだら、怒った曹正が包丁持って追いかけてきたので逃げた。
曹正(そうせい)…曹正のソーセージの着ぐるみが入りきらくなったから無理やり新調させられたが、なぜか実費で負担させられた。
蔣敬(しょうけい)…楊令に算盤を教えている。
李立(りりつ)…出番が少ないが、縁の下の力持ちとは彼らのことを言うのだ。
周通(しゅうとう)…楊志に稽古をつけてもらっているが、なかなか武術は上達しない。肝は座ってきたけどね。
黄信(こうしん)…誰にも教えてない鍵アカウントで愚痴ツイートを量産しているが、謎のフォロワー1が誰なのかすごく気になっている。
郭盛(かくせい)…方天戟につける旗に似顔絵を描いてみたら、真っ先に秦明の旗が裂けて冷や汗をかいた。
燕順(えんじゅん)…ルックスから一緒に酒を飲むのを怖がられるが、相談に乗ってくれるし、会計もスマートだし、女性も上手に口説くし、やたらかっこいい。
鄭天寿(ていてんじゅ)…イケメンの割に意外と短気。でもイケメンすぎるせいであまり怒ってるように見えないと、王英は言う。
楊春(ようしゅん)…二竜山の木々のどこかに、今日の一言を書き付けるのが習慣。知る人ぞ知るお楽しみ。
鄒潤(すうじゅん)…梁山泊頭突き王選手権の初代チャンピオンだが、一人しか出てなかったから実質不戦勝。
龔旺(きょうおう)…虎の刺青のデザインを変えたくて仕方ない。

9.
楊志「曹正のソーセージの売り上げが芳しくない」
曹正「本当か?」
蔣敬「このグラフを見てください」
石秀「伸びが悪いな」
周通「キャラグッズの在庫も増えつつある…」
蔣「購買者の飽きが来てしまったのではないかと」
曹「曹正のソーセージをもう一度弾けさせるには…」
楊「それだ!」
石「…」

曹「俺の一言が、どうしてCM最終回の撮影になるのだ?」
石「さすがに説明してくれ、楊志殿」
楊「100人の敵に襲われた、曹正と石秀」
蔣(縁起でもない…)
楊「縦横無尽に戦うも、ついに力つきる」
曹「…」
楊「そして二人は最後の力を振り絞り」
石「…」
楊「敵を巻き添えにして、弾けるのだ」

曹「…」
石「…それがこの爆薬ですか」
楊「致死量ではないから安心しろ」
石「楊志殿の勘ではありませんな?」
楊「お前らが死域に入れれば問題ない」
曹「爆薬のプロは?」
周「雄州か北京にいる気がする」
石「敵の配役は?」
楊「私と令だ」
曹「…遺書を書いておくか、石秀」
石「そうだな」

楊志…ここまで破裂するとは…
石秀…死域に入っていたから、間一髪回避できた。
曹正…死域に入っていたから、地雷が起動しない場所が分かった。
周通…死域に入ってなかったから、とばっちりを受けた。
蔣敬…今後どうやってソーセージを売るんですか?
楊令…雄州の神火将さんから苦言のお手紙が…

10.
解珍「おい、燕順」
燕順「どうした」
解「どうしてあんなに秦明は鈍臭いのだ?」
燕「それは俺たちの総意だ、解珍」
郭盛「俺と楊令でも手を尽くしたのですが…」
楊令(コクリ)
解「全く爺にもなって」
郭「好機は幾度かあったのですがね」
解「ふむ」
郭「ことごとく花栄殿が無意識に邪魔をされて」

燕「弓以外のあらゆるものが的外れなんだよな」
解「幸い、奴は流花寨だ」
郭「俺たちでなんとか秦明殿の恋路を」
楊「!」
郭「どうした、楊令?」
楊(散れ!)
解「!?」
燕「しまった、小李広か」
郭「まだ引き継ぎ最中だった」
解「弓と地獄耳が健在とは」
燕「悪口を言ってんじゃねえんだが」

解「!?」
燕「解珍!」
解「毛皮が壁に刺さって動けん」
郭「どこから狙撃してるんだ」
楊(あそこだ!)
燕「俺には見えん」
郭「すまん、解珍殿」
燕「死ぬことはないと思うから、借りにしておく」
解「貴様ら!」
楊「…」
解「楊令?」
楊「私は、残ります」
解「…いつもながら泣かせてくれる」

解珍…理を尽くせば分かってくれるではないか。
楊令…(郭盛と燕順殿は早計だったか)

燕順…矢を避ける調練が課されて大変。
郭盛…矢を方天戟で弾く調練が課されて死に物狂い。

11.
薛永「わざわざありがとうございます、燕順殿」
燕順「当たり前のことだ」
薛「ここからは私一人で行きますので」
燕「待て、薛永」
薛「何か?」
燕「無理はするな。必ず縄をつたって降れよ」
薛「本当は縄もいらないのですが」
燕「それは、俺が許さん」
薛「…」
燕「…」
薛「では、ありがたく」

薛「やはり目星をつけた通りの薬草が取れましたよ、燕順殿」
燕「良かったな」
薛「それでは、私は梁山泊に」
燕「薛永」
薛「何か?」
燕「その薬草は、解熱に使うんだよな?」
薛「ええ」
燕「少し、分けてくれないか?」
薛「構いませんが」
燕「恩にきる」
薛「…熱があるんですか?」
燕「いや」

薛「薬効はすぐになくなりますよ?」
燕「構わん。少し分けてくれ」
薛「…どうぞ」
燕「…」
薛「…」
燕「お前のおかげで、二竜山の連中も大助かりだからな」
薛「薬師冥利に尽きます」
燕「…」
薛「それでは失礼します」
燕「薛永」
薛「…」
燕「同志を、頼れよ」
薛「…ありがとうございます」

燕順…良薬は口に苦しってのは、本当だな。無茶してあいつに叱られた時みてえだ。
薛永…私も、私の出来ることをきちんとやるとしますか。 

双頭山 

双頭山…春風山と秋風山という雅な名前の由来は、桜の名所でありもみじの名所だから。

人物
朱仝(しゅどう)…ただの髭かと思ったら、意外とそうでもないらしい。
雷横(らいおう)…岩を両断する剣。奇跡的に一回だけ出来たが、李逵の技を見て自信喪失。
董平(とうへい)…二本槍を地面に刺してからの芸のレパートリーが意外に豊富。
宋清(そうせい)…双頭山のツッコミ。ツッコミ用の扇子と間違えて鉄扇で雷横を突っ込んだ時は本気で謝りたおした。
孟康(もうこう)…久々に鄧飛と飲んだ時、お互いに成長した実感を噛み締めた。
李忠(りちゅう)…弱いと言われても、日々の棒の素振りはかかさない。継続は力なりを背中で見せる。
孫立(そんりつ)…嫁のクレジットカード明細に唖然としたが、なあなあにされた挙句に小遣いまで渡してしまった。
鮑旭(ほうきょく)…顔や身体の傷は盗人時代の名残。うずくこともなくなった。
単廷珪(たんていけい)… 水筒を作りすぎて、自分用と下水用の水を飲み間違えてエラいことになった。
楽和(がくわ)…めんどくさいお姉ちゃんが悩みのタネ。

12.
朱仝「!」
雷横「!」
朱「!」
雷「!?」
朱「…とったぞ、雷横」
雷「くそっ」
朱「今日はお前の奢りだ」
雷「…負けた男の戯言を一言だけ言わせてくれ」
朱「…」
雷「髭で撹乱するのは無しではないか?」
朱「…なんのことかな」
雷「野郎…」

朱「俺はこの髭でハンデを背負った立ち合いをしていると言っても過言ではない」
雷「なぜそんなリスクを…」
朱「そのリスクと引き換えに得た技の数々を、お前は卑怯だと言いたいのか、雷横」
雷「たしかに、暗器に精通したものを卑怯だとは言いたくない」
朱「ならば」
雷「だが、髭なんだろう?」

朱「髭も暗器だが?」
雷「何言ってやがる」
朱「…お前なら、見せても良いか」
雷「何をだ?」
朱「俺の髭の中の小宇宙を…」
雷「何を馬鹿な」
朱「…」
雷「!?」
朱「…どうだ?」
雷「…おう」
朱「言わずもがなだが」
雷「誰にも言わん、いや、言えん」
朱「ならばいい」
雷(…すげえものを見た)

朱仝…髭を剃るときは細心の注意を払わないと色々大変だという。
雷横…髭の中に一体何を収納してやがる…

13.
扈三娘「鮑旭殿」
鮑旭「扈三娘殿、先日は助かりました」
扈「鮑旭殿のご決断のおかげです」
鮑「扈三娘殿の機動力があったおかげでできた策ですから」
馬麟「扈三娘、林冲殿が」
扈「馬麟殿」
鮑「馬麟じゃないか」
馬「鮑旭か」
扈(心なしか嬉しそう…)
鮑「そうか、馬麟は林冲殿の騎馬隊だもんな」

扈「お二人は知り合いですか?」
鮑「子午山で一緒だったのですよ」
馬「まあな」
扈「どんな暮らしを?」
鮑「王進先生に武術を習い、母上、王進先生のご母堂に文字を習ったりしていました」
馬「あとは、農耕や焼き物をしたり」
扈「素敵ですね」
馬「バンドを組んだな」
扈「バンド?」
鮑「!」

鮑「よせ、馬麟」
馬「ここまで聞いたら仕舞いまで聞きたいだろう、扈三娘?」
扈「是非とも詳細を」
鮑「扈三娘殿…」
馬「これが活動時の写真だ」
扈(鮑旭殿が、中指を立てている…)
鮑「恥ずかしい…」
扈「このロックなお婆さんは…」
馬「王母様だ」
鮑「私たちの母上です」
扈(やはり中指を…)

鮑旭…その写真は捨ててくれ、馬麟。
馬麟…色々な意味でプレミア物だから、そういうわけにはいかん。
扈三娘…風流喪叫仙も悪くないですが、私は喪門仙時代の方が好みですね。琴の音が荒々しくもどこか雅なので…

14.
楽和「酒に対してはまさに歌うべし」
董平「短歌行か」
鮑旭「楽和の歌声だと、澄んだ酒を連想しますね」
董「風流だな、鮑旭」
馬麟「二人で初めて演奏した詩だよな、鮑旭」
楽「鮑旭が歌ったのか?」
馬「そりゃそうだ」
鮑「…私の歌声など、楽和に比べたら田舎仕込みの濁酒です」
董「濁酒には濁酒の良さがあるさ」

楽「次は鮑旭が歌うのはどうでしょう?」
董「俺も同じことを考えていた」
鮑「そんな」
馬「楽和、楽器は?」
楽「なんでもいけます」
董「決まりだな、鮑旭」
鮑「そんな…」

鮑「お前を人肉饅頭にしてやろうか!」
董(また凄い方向性になってしまった)
楽(姉が見たらなんというか)
馬(流石だ、鮑旭)

董平…風流喪叫仙の裏の顔ということで、宋清がプロモーションを始めた。
楽和…やってはいけないことをやっている背徳感から、ギター演奏もより過激に。
鮑旭…顔に血化粧を施すと、昔に戻れるんです。
馬麟…王母様の歌のアレンジもしてみよう。

15.
董平「俺たちも売れに売れてここまできたのだと、感慨深い思いはあるのだが」
鮑旭「うっかり自分たちが叛徒であることを忘れてしまいそうになりますね」
楽和「手引きをありがとう、燕青」
燕青「当然だ」
馬麟「まさか開封府でライブをするなど、夢にも思わなかった」
燕「しかし、違和感がある」

董「それは?」
燕「我々の顔は割れているはずなのに」
鮑「はい」
燕「青蓮寺が動きを見せないどころか、我らを護衛するかのような動きを見せているのだ」
楽「なぜ?」
燕「検討も付かん」

聞煥章「なぜ梁山泊の者の活動を許可するのですか」
袁明「風流喪叫仙に手を出す事は禁ずる」
洪清「…」

侯健「万一の逃げる手筈は、手を打ってある」
董「助かるよ」
燕「今回は私も笛で混ぜてくれ」
馬「無論だ、燕青」
鮑「馬麟とは違う笛の名手と聞いているから、合わせるのが楽しみです」
董「一体何人入ったのだ?」
楽「双頭山の兵より多そうですね」
董「少し、複雑だな」
鮑「では、行きますか」

董(なんという熱気)
楽(生きていてよかった)
鮑(母上に届けたい…)
燕(!?)
馬(燕青?)
燕(あれは、袁明と洪清)

袁「…」
洪「…」

燕(まるで何かを懐かしむような顔だ)
馬(お前のソロだぞ、燕青)
燕(任せろ)

女性「…」

董(誰だ?)
鮑(ステージに?)
楽(仮面をしていても、美しさが分かる)
馬(…)

燕(そういう事か)
李師師「…」
燕(ならば私の全力の笛で応えよう)

燕「♪〜竹笛〜♪」
李「♪〜舞踏〜♪」

董(なんだこれは…)
鮑(言葉にならない…)
楽(今はこの二人の世界を届けよう)
馬(…)

燕「…」
李「…」

燕(…返すぞ)
董(任せろ)
鮑(見ていてください、母上)
楽(行きます)
馬(…)

董「…終わった」
鮑「しかし…」
楽「私たちは帰れるのですか?」
燕「心配ない」
馬「燕青」
燕「…」
馬「あの女は誰だ?」
燕「…」
董「気にするな、馬麟」
燕「…彼女のおかげで、私たちはここから出られる」
馬「…」

袁「李師師様」
洪「お戯れが過ぎます」
李「つい…」
聞(訳が分からん)

董平…東平府の太守の娘もいた気がした。
鮑旭…ファンサービスもしたいところですが、今回はそうもいきませんよね。
楽和…女性人気ナンバーワン。
馬麟…本当に聴かせたい友を思いながら吹いていた。

燕青…李師師から玉の腕輪を貰っていた。
侯健…衣装でも力になれて何よりだ。

袁明…次は無いですよ、李師師様。
洪清…玉の腕輪はどこへ?
李師師…舞に夢中で失くしてしまったようです。

聞煥章…音楽など何がいいのかさっぱり分からん。
呂牛…お前のそういうところは嫌いだ。 

聚義庁

聚義庁…梁山泊首脳陣。夏休みにラジオ体操を企画したが、皆勤賞は呉用だけ。

人物
晁蓋(ちょうがい)…夏男。暑苦しいが、湿度は高くないカラッとした雰囲気。
宋江(そうこう)…晁蓋に比べると、じっとりした湿度の高そうなところが無きにしもあらず。
盧俊義(ろしゅんぎ)…夏場は大変。かいた汗の数だけ強くなれたら林冲より強くなれる自信がある。
呉用(ごよう)…晁蓋に扇風機を全開にされたら重要書類を軒並み吹き飛ばされキレた。
柴進(さいしん)…冷房18度の常習犯。猛暑日に電気代の節約など不要だ。
阮小五(げんしょうご)…暑いときは気軽に泳げる格好で出仕して来る。
宣賛(せんさん)… 金翠蓮と結婚してから頭巾の通風性が段違いに良くなった。

16.
呉用「最近不規則ですな、晁蓋殿」
晁蓋「すまぬ」
呉「昨日の定例会議の晁蓋殿は見てられませんでしたよ」
晁「寝起きから、直接来たからな」
呉「潔すぎます」
晁「その潔さがあるから、梁山泊でも困難な決断ができるというものだ、呉用」
呉「褒めてません」
晁「それで、なんの話だ、呉用?」

呉「頭領として示しがつかないので、キチンとした生活習慣を身につけるプログラムを、安道全に組んでもらいました」
晁「こんなに早く寝たら、ラジオが聞けぬではないか」
呉「録画したのを聞けばよいでしょう」
晁「ライブ感が大事なのだ、呉用」
呉「そのせいで会議をサボられては堪りません」

晁「そういうお前はどうなのだ、呉用」
呉「私?」
晁「お前の生活習慣こそ不規則の極みではないか」
呉「…」
晁「もっと寝るのだ、呉用」
呉「…」
晁「早く寝て、早く起きて、梁山泊に登る朝日を共に見あげよう」
呉「…それはいいですな」
晁「だろう?」
呉「では明日から」
晁「分かった!」

晁蓋…始めの3日は気持ちよかったが、だんだん飽きてきたなど、呉用には言えん。
呉用…ワクワクして結局眠れなかった。 

三兄弟 

三兄弟…李逵に魯智深時代の写真を見せたら爆笑した。どこでツボった?

人物
魯達(ろたつ)…いつもの癖で、うっかり散髪屋で坊主にしてしまった。
武松(ぶしょう)…殴られ続けた木が復讐しに来る夢を見た。
李逵(りき)… 砕かれ続けた石が復讐しに来る夢を見た。

17.
李逵「駄目だ!」
宋江「李逵?」
李「すまねえ、宋江様。俺が納得できねえ」
宋「…」
李「次は美味いもん作るから、もうちょっと待ってくれやな」
宋「…」
武松「どうしたのでしょう?」
宋「私たちに食べさせるものを妥協したくないのだろうな」
武「腹は減りますが」
宋「今日は空腹を愉しもう」

李「!」
宋「李逵?」
李「俺はどうしちまったんだ…」
宋「どうしたのだ、お前らしくない」
李「俺の納得のいく味にならねえんだよ、宋江様」
宋「そうか」
李「でももう、材料がねえんだ」
武「それならば」
宋「その飯を食わせてくれ、李逵」
李「それは、宋江様と兄貴に申し訳ねえ」
武「李逵」

宋「李逵の飯が不味かったことなんかあるか、武松?」
武「文句言う奴は俺が殴ります、宋江様」
李「…」
宋「三人で食べよう、李逵」
武「いつもありがとうな、李逵」
李「…文句言わねえでくれよ」
宋「誰が言うものか」
武「文句言う奴には食わすな」
李「…」
武「その時は俺が取り上げる」

宋江…美味いぞ、李逵。
武松…俺の舌が肥えてないだけかもしれんが、いつもよりも美味いぞ、李逵。
李逵…まず、作って味わってもらうのが大事なのかもしれねえな。

18.
武松「…」
李逵「もう一度だ、兄貴」
武「…」
李「…」
武「!」
李「…そこからか」
武「…」
李「兄貴の気持ちはとてもありがたいんだがな」
武「…」
李「何本も包丁の持ち手から粉砕されちまったら、俺が困るんだよ」
武「…」
李「もっと自分の握力を制御できねえのか、兄貴?」
武「…」

武「握ったそばから粉砕してしまうのだ」
李「力加減だ、兄貴」
武「加減…」
李「強いだけが男じゃねえだろう?」
武「俺は、弱い」
李「そっち行くな、兄貴」
武「李逵の料理を手伝いたいだけだったのに、包丁を三本も壊してしまった」
李「それは台詞より、地の文で言った方が味が出るぜ、兄貴」

武「…土と話してくる」
李「…分かった」
武「…」
李(自分探し拗らせた学生みたいな所あるんだよな、兄貴は)
武「…」
李(自分なんて、今ここにしかいねえだろうが)
武「李逵」
李「おう、この器は」
武「これが、俺の器だ」
李「デカくて壊れやすいってか?」
武「…」
李「…悪かったよ、兄貴」

武松…子午山の焼き物の倉から5日出てこなかった。
李逵…土は生きてるってのは分かるぜ。だけど、土と喋るってのはピンとこねえな。 

養生所&薬方所

養生所&薬方所…弟子入り志願者はそこそこいなくもないが、大概初日で挫折する。残っている弟子もやっぱりどっか狂ってるのかもしれないね。

人物
安道全(あんどうぜん)…白勝の送別会の時に泣いているのを林冲に見つかった。
薛永(せつえい)…物騒な薬の作り方の本を、掘り出し物市で見つけた。マンドラゴラ?
白勝(はくしょう)…二竜山の医者になったが彼を超える事務局長はいない。 

19.
戴宗「薛永」
薛永「なにか?」
戴「人の記憶を無くす薬を作ることはできんか?」
薛「…なぜそんな物騒なものを?」
戴「俺のこの仕事リストを見てくれ」
薛「…この移動距離は一体」
戴「呉用殿に、俺が神行法を使えることを忘れさせたいのだ」
薛「…」

薛「しかし、戴宗殿」
戴「なんだ」
薛「呉用殿以外の皆さんも、あなたが神行法を使えるのを知っているのでは?」
戴「ならば、全員に忘れさせてくれ」
薛「そんな無茶な」
戴「ヘリでも使って梁山泊中に飛散させればいいだろう?」
薛「農薬じゃないんだから…」
戴「頼む、薛永」
薛「お断りします」

戴「そう言うな」
薛「無差別テロの片棒を担ぐわけにいきません」
戴「諦めんぞ、俺は」
薛「…」
戴「…」
薛「戴宗殿、後ろに呉用殿が」
戴「何!」
馬雲「(=゚ω゚)ノ」
薛「」
戴「!」
馬「-_- b 」
薛「…今日は寝かせてやろう」
馬「( ˘ω˘ )」

戴宗…久しぶりによく眠れたが、神行法ってどうやって使うんだっけ?
薛永…年々丸太の抜き打ちが上達しているな…
馬雲…(・Д・)

20.
安道全「夏場の日中の調練は、兵の熱中症予防に心を砕いてもらわんと困る」
林冲「…」
安「お前ら隊長は問題なかろうが、兵の一人一人はそうはいかん」
史進「…」
安「したがってこの夏場の調練は、養生所と薬方所から、調練に関わる掟を定めさせてもらう」
呼延灼「…」
関勝「…」
穆弘「…」

安「この夏の調練期間中、熱中症で搬送された患者が一番多い部隊に罰を課すことにした」
林「…」
安「この掟は呉用殿にもご快諾いただき、提案した次第だ」
史「…」
安「熱中症防止の調練文書は、白勝の資料が出ているので必ず目を通しておくように」
呼「…」
関「…」
穆「…」
安「質疑のある者は?」

白勝「どうだった?」
安「皆神妙な顔をして聞いていたよ」
薛永「対策を知らないことには、どうしたら良いか分からないでしょうからね」
白「燕青との連携で、塩分補給のタブレットも充分用意してあるぜ」
薛「水の量も質も問題ありません」
安「あんたの手柄だぞ、呉用殿」
呉用「…」
白「寝てら」

安道全…やればできるではないか、隊長供。
薛永…この事例は他の拠点とも共有しましょう。
白勝…文書の増刷を蕭譲と金大堅に頼んできたぜ。

呉用…安道全の施術に呉用コースができた。

林冲…チーム一丸となって、馬のコンディションにも気を配るようになった。
史進…裸でやるだけが暑さ対策ではないのだな。
呼延灼…暑すぎる日の調練は潔く休むのも手だな。
関勝…戦の実戦ではそうも言えぬが、この程度で兵は軟弱にはならぬだろう。
穆弘…俺たちも集中して調練に臨めるな。 

練兵場 

練兵場…サンドバックや技をかけるための木偶が、どことなく王倫に似ているのはきっと気のせい。

人物
徐寧(じょねい)…うるさすぎるのでとうとう賽唐猊着用禁止区域を設けられてしまった。 

21.
王倫「畜生、楽しそうにしやがって」
宋万「まだいやがったのか、クソ首領」
杜遷「さっさと成仏しろ」
王「お前らナチュラルに見えすぎではないか?」
焦挺「うわ、首領だ」
李雲「マジかよ…」
湯隆「見たくねえもんを…」
王「見えすぎだろ…」
朱貴「潔くさっさと消えてくれ、王倫」
王「お前ら」

朱「元友人として最後の忠告だぞ」
王「死んでから言うな」
焦「!」
王「!?」
李「すり抜けた!」
杜「やるな、焦挺」
湯「俺も行くぞ!」
王「貴様ら、俺が生きていた時は腑抜けていたくせに」
宋「死人に口なしだ」
杜「嫌がらせされるのが嫌ならとっとと消えろ」
焦「生前の報いだ、馬鹿首領」

林冲「…」
王「!?」
宋「お、林冲だ」
杜「林冲、ここに王倫がいるぞ!」
王「呼ぶな、馬鹿」
林「王倫?」
王「離せ、李雲」
李「お前、霊になっても雑魚だな」
林「王倫って誰だ、杜遷?」
王「」
焦「さすが林冲殿」
宋「過去を振り返らない主義だな」
林「?」
王「」
李「泡食って気絶してら」

杜遷…実は一番王倫を殺したかった。
宋万…王倫のデベソを全力で弄る所存。
焦挺…一番えげつない嫌がらせをしれっとやってのける。
李雲…俺に捕まる霊ってなんだよ?
湯隆…その手で触るな、李雲。
朱貴…古参全員の変貌ぶりに驚きつつも、王倫なら仕方ないと思った。

林冲…案の定見えない。

王倫…存在そのものを抹消されし、初代首領。霊界でも御察しの小者扱い。

22.
徐寧「暑過ぎるな」
史進「クソやかましい鎧を脱げよ」
徐「お前に脱げと言われると、謂れのない非難を浴びている気がしてならん」
史「なんだと」
徐「しかし、いくら暑くても脱ぐわけにはいかんのだ」
史「なぜだ?」
徐「徐家の家訓があってな」
史「ほう」
徐「賽唐猊を授かったら脱いだらいかん」

史「面倒な家だな」
徐「というか、脱げない」
史「それは?」
徐「触ってみろ」
史「!?」
徐「熱くて触れん」
史「鎧で肉が焼けるぞ、徐寧」
徐「どうしたものか」
史「水でも浴びろよ」
徐「焼け石に水だった」
史「焼け鎧だろう」
徐「そろそろ本格的にやばくなってきた」
史「まずいな」

史「?」
徐「どうした?」
史「お前の背中のスイッチはなんだ?」
徐「スイッチだと?」
史「背中にボタンが搭載されているぞ」
徐「気づかなかった…」
史「押していいか?」
徐「押すな!」
史「ポチッとな」
徐「フリではない!」
史「風?」
徐「当たりだ、史進」
史「…」
徐「送風機だ」

史進…隣のボタンは賽唐猊緊急着脱ボタンで、徐寧に怒鳴り散らされた。
徐寧…マニュアルが不親切すぎるところも、つくづく俺の先祖だと思うぜ。 

朱貴&朱富の店

朱貴&朱富の店 …春夏秋冬の梁山湖の絶景を見ながら一息つけるスペースを設けたら大人気。傍らにはもちろん魚肉饅頭。

人物
朱貴(しゅき)…違う世界に行った時に習ったカクテルが大人気。オリジナルカクテルも模索中。
朱富(しゅふう)… バーテン修行中。どっちかというと、小料理屋の雰囲気のほうがしっくり来る。

23.
宋江「梁山泊酒乱好漢突撃クイズ!」
呉用(なぜそんな企画を…)
宋「閉店時刻をとうに過ぎているはずなのに、乱痴気騒ぎが終わらない朱富の店からお送りしよう」
呉(そしてなぜ私まで付いてきてしまったのか…)
宋「伏魔殿の扉を開けるぞ、呉用」
呉「何が飛び出してくるやら…」

宋「御機嫌よう!」
呉「!?」

顧大嫂「おい、李俊」
李俊「…」
孫二娘「あたしらに勘定払わせて先に帰ろうなんて、随分偉い身分になったもんだね」
顧「そんなのはお前が暹羅国の王にでもなってからやるんだね」
孫「返事は、李俊」
李「…はい」

宋「兵法三十六の計」
呉「逃げるに如かず」

孫「面白い旦那がご来店だよ、李俊」
顧「挨拶しないか」
李「…いらっしゃいませ」
宋「すげえものを見た」
呉「私は仕事があるのでこの辺で」
孫「嘘をつけない男だね、呉用殿」
顧「あんたが仕事まみれなのはよく知っている」
孫「だから」
顧「鬱憤晴らしにきたんだろう?」
呉「…はい」
宋「」

宋江…恐怖とはこの感情のことを言うのだな…
呉用…泥酔したのに目覚めが異様に良かったのは何故だろう?

顧大嫂…本気の呉用殿には敵わんね…
孫二娘…まだ第二形態がある予感がしたよ…

李俊…隙をついて厠の窓からなんとか逃げ出した。

朱富…惨状の一部始終を記録し、文治省相談窓口に行った。 

断金亭 

断金亭…大宴会場兼宿泊スペース。枕投げ専用の部屋もきちんとあるが、参加する時はメンツに注意しろよ。

24.
楊志「何が始まるんだ?」
杜遷「晁蓋殿とその仲間たちが演劇をやるらしい」
楊「演目は?」
焦挺「智取生辰綱とか」
楊「!?」
宋万「楊志?」
焦「始まりました」

林冲「…」

杜「!」
宋(顔を青塗りに…)
焦(もしかして、この演目…)
楊「…」
焦(楊志殿が生辰綱を取られた話では)
楊「…」

林「この生辰綱を届けて、俺も禁軍に復帰してやるぜ」

杜(酷い演技だ)
楊「…」
焦(吹毛剣の柄に手を…)

孔明「楊志殿!」
孔亮「これで俺たちも禁軍将校ですな!」

宋(そんな馬鹿な…)
楊「…」
焦(楊志殿の顔色が…)

白勝「助けてくれ」
亮「うるせえ盗人」
白「腐れ軍人め!恥を知れ!」

呉用「…」
公孫勝「…」

阮小二「酒か水はいかがかな、軍人殿」
阮小五「喉が乾くだろ?」
阮小七「今なら棗もつけるぜ」
明「ありがたい…」
林「待て!粗忽者!」
亮「何故ですか、楊志殿」
林「毒が入っていたらどうするのだ」
明「そんな馬鹿な…」
亮「我々官軍を酔い潰す輩などいませんよ」

林「俺たちを酔い潰す者はあるか!」
?「ここにいるぞ!」
林「なに!?」
晁蓋「我ら北斗の党!悪徳軍人を懲らしめるため、酒にしこたま毒を盛ってやったのだ」

宋(バラすなよ)
杜(こんな話のわけないよな)
焦(当たり前です)
楊「…」

林「小癪な。孔明、孔亮。ひっ捕らえろ!」
明「…」
亮「…」

林「何をしている、自称名軍師兄弟」
明「北斗の党、毛頭星」
亮「同じく独火星」
林「貴様ら裏切り者か!」
晁「悪運尽きたな、楊志!」
林「おのれ!」
晁「成敗してくれる!」
林「!」
晁「我らの勝利だ!」

宋(斬り捨てちまった…)
楊「…」
杜「楊志?」
焦「行かせてあげましょう…」

楊「…」
晁「楊志が第二形態に変化したぞ!」
明「…」
亮「…」
晁「どうした?」
楊「!」
晁「!?」

宋「吹毛剣の抜き打ちだ!」
杜「見えなかったな、焦挺」
焦「ここからが本番ですよ」

晁「待て、楊志」
呉(だからやめようと言ったのに…)
公(助けてやれ、死に損ない)
林(今死んでるから断る)

楊志…今宵の吹毛剣もよく斬れる…

宋万…悪ノリにも限度はあるな。
杜遷…強いな、楊志。
焦挺…めっちゃ笑いながら見てた。

晁蓋…なぜ誰も助けない!

呉用…商人ですから。
公孫勝…病人ですから。
林冲…死人ですから。
阮小二…酒屋ですから。
阮小五…漁師ですから。
阮小七…棗売りですから。

孔明…あそこまで怒るんだな、楊志殿。
孔亮…無理ねえよ、兄貴。
白勝…実際あったのって、俺が蹴っ飛ばされるところだけだよな。

劉唐…用意したセットが台無しだがやむなしか… 

間者

間者…間者たちによる仮装パーティーは、入場前の掃除のおじさんが時遷だったり、受付のお姉さんが孫二娘だったりするので、気が抜けない。

人物
時遷(じせん)…泥棒時代、開封府にしょっちゅう自分を追いかけてくる役人がいた。捕まったことはないが、なんだかんだで嫌いじゃなかった。
石勇(せきゆう)…あだ名は石将軍(せきしょうぐん)。時遷がノリでつけたあだ名。本人的には将軍より参謀のほうが好み。
侯健(こうけん)…腕が長いからあだ名は通臂猿(つうびえん)。リーチを生かした突きを燕青に習ったら、中々の破壊力。
孫新(そんしん)…あだ名は小尉遅(しょううつち)。兄の孫立の病尉遅(びょううつち)をもじった穆春パターン。尉遅とは、尉遅恭、尉遅敬徳と呼ばれる唐の軍人。民間では守り神。門に貼るとご利益ありとされているよ!
顧大嫂(こだいそう)…試しに自分のウエストを扈三娘くらいまで絞ったシミュレーションをしてみたら驚くほど美人になったが、なる気はさらさらない。
張青(ちょうせい)…あだ名は菜園子(さいえんし)。お寺の畑の管理人をやっていたが、暇すぎてさぼりまくっていた。
孫二娘(そんじじょう)…山賊の娘。今思えばどうして張青と結婚したのかよく覚えてない。ノリってやつかね。

25.
石勇「…」
公孫勝「どうしたのだ、石勇」
石「実は、最近開封府の諜報が芳しくなくて…」
公「ふむ」
石「どうも新鮮組などという、開封府の治安維持を任される部隊が躍動しているらしいのですが」
公「新鮮組か…」
石「主要な幹部の名前すら掴めないのです…」
公「聞き込みに行くぞ、石勇」

呼延灼「新鮮組だと?」
石「何かご存知で?」
呼「将は間違いなく趙安だ」
石「禁軍の?」
呼「趙安が蘇らせたか…」
石「どういう事ですか?」
呼「俺がフレッシュマンの時、唯一やり残した仕事だ」
公「それは?」
呼「フレッシュマンは新法党だが、開封府の治安維持にも目を光らせていた」

呼「青蓮寺の軍とは異なり、軍人から市井の者で結成される治安維持組織だ」
石「そんな組織が」
呼「フレッシュ法度という鉄の掟があってな」
石「…」
呼「フレッシュマンであることを怠ったり、新鮮組を抜ける事を企てた者には」
石「…」
呼「死が待っている」
石「!」
公「致死軍並みの厳しさだ」

公孫勝…青蓮寺の軍でも気の狂ったやつがいるのか。
石勇…俺一人の諜報の技なら負ける気はしないが、部下達には荷が重いかもしれん。
呼延灼…良い友が一人いたのだがな。殴り合いの果てに道が別れてしまったのが心残りだ。 

街道を行く

街道を行く…梁山泊結成前夜、意外なところで好漢同士は会っていたのかもしれない…

26.
李忠「腹が減った…」
薛永「…」
李(なんだあの緑色をぶちまけたような皿は)
薛「…」
李(食い物なのか?)
薛「…」
李(背に腹はかえられん)
薛「…」
李「そこの武芸者の方」
薛「何か?」
李「その食べ物を分けていただけませぬか?」
薛「喜んで!」

李「これは粥ですか?」
薛「野草をふんだんに使った薬効満点のお粥です」
李「そうでしたか」
薛「この野草は〜」
李(口調が早い)
薛「〜」
李「ありがたくいただきます」
薛「〜」
李「…」
薛「〜」
李「苦味が不思議と美味い粥ですな」
薛「〜」
李「五臓六腑に染み渡りました」
薛「〜」

李「ごちそうさまでした」
薛「何よりです」
李「銭を」
薛「私の話を聞いていただけたのがお代ですよ」
李(右から左だったが)
薛「あなたとはまた会えそうです」
李「実は、私もそんな気がしています」
薛「では、その時に名乗ることにしましょう」
李「いいですな」
薛「お達者で」
李「また会いましょう」

李忠…この後我流で同じ粥を作って食べてえらい目にあった。
薛永…梁山泊の散歩中、たまたま出会った時に名乗りあった。

柴進屋敷 

柴進屋敷…くっそ役に立たない食客だらけのお屋敷。もうちょっと人を選べよ。

27.
柴進「…」
安道全「なんだこの集まりは?」
柴「林冲にリベンジをしたい洪師範と、その他諸々の武芸自慢が集まって、林冲と戦わせろと言ってきた」
安「見立てでは、武力40足らずでもマシな輩しかおらん」
柴「無知ほど恐ろしいことはないな、安道全」
安「多分この中で一番強いのは…」
柴「私さ」

柴「皆、槍を頭上に構えろ」
安「…」
柴「この中で一番長時間回すことが出来た者に、林冲への挑戦権を与える」
安「ほう」
柴「始め!」

男「…」
柴「あの男は…」
安「どうした?」
柴「いつも100回回せると大口を叩いていた男だ」
安「60も回せていないぞ?」
柴「回数の過大申告とは、情けない」

安「林冲が乱入した!」
柴「入っただけで、腰を抜かした者が」
安「文字通りの腰抜けだ」
洪「!」
柴「洪師範まで…」
安「あれで師範?」
柴「林冲が回し始めた」
安「それだけで、気絶した者ばかり」
柴「立っている者は?」
安「一人」
柴「…家の下働きではないか」
安「見る目がないな、柴進」

柴進…下働きの男が林冲との稽古でみるみる強くなり、今や柴進護衛リーダー。
安道全…この程度で気絶だの筋肉痛だの訴える雑魚の治療などせん。

100回回せる男…今日はコンディションが悪かったのだ。いつもならば100回。少なくとも85回は回せるが、今日は60以上というスコアに終わってしまったのは悔しいが、コンディションが悪かったのがいけない。悪いのはコンディションだ。

洪師範…いきなり林冲が出てくるとは思わなかった。予め言ってくれない柴進殿も意地が悪すぎる。うっかり厠に行き忘れていたせいで、着物に汗をかいてしまったが、股間からも滝のような汗を掻くものなのだな。 

雄州 

雄州…城から徒歩30分以上のどこかに、科挙合格も夢ではないカリキュラムを組んだ学習塾があるらしい。知りたければ関勝に聞いてみよう。

28.
宣賛「金翠蓮殿」
金翠蓮「なにか?」
宣「いつも思っていたことを、お伝えしてもよろしいかな?」
金「…どうぞ」
宣「なぜ、私の家なんぞに足しげく通われるのだ?」
金「それは…」
宣「…」
金「お部屋に散らかった本が可哀想だから、お掃除して差し上げないといけないし…」
宣「ふむ」
金「…」

宣「他にもあったりするのか?」
金「…宣賛様があまりにも粗末なお食事をされていると、関勝様に耳打ちされたので」
宣「野草の粥は食ってるぞ」
金「あれは関勝殿だから食べれる代物です」
宣「そうなのか?」
金「あれ食べた郝思文殿が一日腹を下していたと、郝瑾君が」
宣「そんなにだったか」

金「だから、陳娥殿に習ってお料理を会得しましたので…」
宣「ふむ」
金「今日、宣賛様のお夕飯を作っても差し支えないですか?」
宣「それは有難い」
金「では早速…」
宣「しかし、一人で食わせてくれ」
金「なぜ?」
宣「この面だからな」

金「宣賛様」
宣「なんだ」
金「仮の話です」
宣「聞こう」
金「あなたは好きな女性と、一つ屋根の下にいます」
宣「ほう」
金「その女性を振り向かせるために、色々な技を会得しました」
宣「うむ」
金「その女性に、今の自分が一番自信のある技を見せる機会に恵まれました」
宣「全力を尽くすな」

金「なのに、あなたはその技術を見せることは出来るのですが、真の目的を果たすことができません」
宣「…」
金「それは、どう思いますか?」
宣「そうだな…」
金「…」
宣「それにしても、今日は暑いな」
金「はい」
宣「暑くて、頭巾が鬱陶しくなってきたよ」
金「ならば、脱いでしまいましょう」

宣「…」
金「…」
宣「そうだな、暑い日は頭巾を脱ぐか」
金「むしろ、よくこの暑い日に頭巾などされていますね」
宣「じゃあ、脱ぐとするか」
金「はい、心置きなく」
宣「!」
金「…」
宣「…」
金「…じゃあ、お夕飯の支度をさせていただきますね」
宣「翠蓮殿」
金「はい」
宣「一緒に食べよう」

宣賛…美味いな、翠蓮殿。
金翠蓮…食べる相手が良いのですよ、宣賛様。 

爺三人衆 

爺三人衆…平均年齢45歳以上の爺たちだが、話す話題は恋愛の噂話や将校のゴシップだったりするらしい。女子高生か。

人物
李忠(りちゅう)…双頭山の兵の色恋にも興味津々だが、本人の経験値不足がいかんせんネック。
杜興(とこう)…李応の執事時代のノウハウをフル動員すれば、いくらでも噂話を聞きつけられる。
韓滔(かんとう)…代州時代の彼の畑で働く男女の結婚率が異様に高かった。婚活パーティー司会の名手。

29.
李忠「扈三娘は晁蓋殿を好いていると思わんか?」
杜興「思うが…」
韓滔「なぜお前がそこまで執心するのかよく分からぬぞ、李忠」
李「それは」
杜「扈三娘に惚れたか?」
李「…」
韓「それとも身内に娘か姪がいるのか?」
李「…すごいな、韓滔」
杜「なるほどな」
李「いるではなく、いた、だが」

韓「話したくないなら、話さなくてもよいぞ」
李「…爺どもなら構わんか」
杜「…」
李「昔、それはそれは可愛い姪がいてな」
韓「…」
李「目に入れても痛くないとはこの事だと思うほどだ」
杜「眼に浮かぶな」
李「…私がいない時、賊に攫われてな」
韓「…」
李「それっきりさ」
杜「…だが、李忠」

杜「死んだと決まったわけではないだろう?」
李「こんな酷い世だ。死んだに決まっている」
韓「諦めが早すぎるのう、李忠」
李「韓滔?」
韓「姪のためなら足のもう一本は捨てられるじゃろう?」
李「足どころか命だっていくらでもくれてやる」
杜「その覚悟がありながら、なぜ諦める」
李「…友よ」

李忠…まずは石勇に依頼してみるよ。
杜興…何のための梁山泊だ、李忠。
韓滔…こんな世でも信じられる人間がいるのは幸せな事だのう。 

梁山泊の嫁

梁山泊の嫁…戦っているのは好漢だけではない。嫁部隊の精鋭は林冲騎馬隊ですら完敗させられるかもしれない。

人物
張藍(ちょうらん)…林冲の嫁。色々あったが、今なお元気に梁山泊で活躍中。
金翠蓮(きんすいれん)…宣賛の嫁。色々あったが、自分を助けた時の宣賛の顔ほどのイケメンは見たことがなかった。
瓊英(けいえい)…張清の嫁。求婚相手は何人もいたが、養父の鄔梨の試練を乗り越えられたのは張清だけ。

30.
瓊英「お待たせしました」
張藍「相変わらずご多用ね」
金翠蓮「梁山泊でこんなお友達ができるなんて、思ってもいませんでした」
張「たまには私たちも羽目を外しましょう」
瓊「いただきます」
張「本当に所作が雅ね、瓊英は」
金「憧れちゃいます」
瓊「いえ、そんな」
張「旦那様はどんな人なの?」

瓊「張清様は、元気な人ですね」
張「どれくらい?」
瓊「朝からキャッチボールするくらい…」
金「瓊英も上手なのよね」
張「この間、打てなかった林冲様が悔しがってたわ」
瓊「張清様のご指導の賜物です」
張「もっと力抜いて、瓊英」
金「私たちが相手なんだから、もっと砕けていいのよ?」

張「じゃあ飲みましょう!」
金「そうね」
張「林冲様なら女三人家に運ぶくらい朝飯前だから、潰れても問題ないわよ!」
瓊「林冲殿をそんな扱いされていいのですか?」
張「…秘蔵写真見る?」
金「見せて!」
瓊「私も…」
張「これ」
金「うわ〜」
瓊「酷いw」
張「その笑顔は私も惚れるわ、瓊英」

張藍…実家が商家だったから、柴進の兵站部門の経理担当に配属され、なかなかの活躍ぶり。職場では女子が惚れるイケメン女子。
瓊英…梁山泊商人元締めの鄔梨の秘書。超優秀だが、張藍のトレンドを見る目も頼りにしている。
金翠蓮…宣賛の指導のおかげで、梁山泊の子供たちの字の先生になり大人気。 

北の大地 

北の大地…後の金国。盛り上がる兆しがあるかもしれないが、波乱もこれでもかというほどありそう。

阿骨打(あぐだ)…女真族のリーダー。チャラ男とは思えぬ、戦の腕前と気配りや根回し力をもったナイスガイ。
蔡福(さいふく)…冬が厳しいから腹部に燃料をさらにチャージしようと思う。
蔡慶(さいけい)…まだ足りねえのかよ。その太鼓腹で。

31.
蔡福「くだらん会合だったな、慶」
蔡慶「全くだ、兄貴」
福「連中は参加したことに意義があると思っているかも分からんが」
慶「己が力で得たわけでない権力に酔って、自身の能力を驚くほど見誤っている」
福「虎の威を借る狐に罹患するエキノコックスのような寄生虫どもだ」
慶「愚かで見てられん」

蔡福…くだらん会合に参加したら鬱憤の一つや二つ晴らさんとやってられん。
蔡慶…女真族の長老会議もとんだ茶番だ。

阿骨打…(理不尽な不利益を被った時の容赦のなさは兄弟だと思うぜ…)

32.
阿骨打「蔡福、蔡慶」
蔡福「…」
蔡慶「…」
阿「昨日の長老会議が心底くだらなかったことは理解している」
福「…」
阿「しかし、その会議でお前らの提案について、今日吟味することは決まっていたではないか」
慶「…」
阿「なぜ来なかった?」

福「あの後、慶とやけ酒を決め込み、妓楼に行った後の記憶がございません」
慶「気がついたら家にいたのですが、しこたま銀もなくなっており、目を覚ましたら、会議が終わっていました」
阿「…」
福「…長老一人一人に頭を下げに行きます」
阿「もう俺が根回ししてある」
慶「…面目無い、阿骨打殿」

阿「…誰だってやらかすことはあるさ」
福「…」
阿「俺が被害を被らないところで、思い切りやらかして欲しいのだがな」
慶「…」
阿「憎まれ口の名手は、もっと憎らしい顔をしていろ」
福「…」
阿「お前の贅肉と面の皮、どっちが厚い?」
福「… 贅肉の方が厚く、引火の恐れもありますな」
阿「www」

阿骨打…この兄弟も色々たまるところはあったのだろうな。

蔡福…どこかで誰かに馬に乗せてもらったような…
蔡慶…なぜ家に帰ることができたのだろう。 

開封府

開封府…宋の都。一見華やかだが、その裏では何が起きているのか分からない、魑魅魍魎も跋扈する都でもある。

33.
高俅「蹴鞠は路上でやってこそ愉しい」
通行人(迷惑な)
高「おっと、鞠が」

高「貴様、俺の鞠を棒で…」

高「許さん!」

高「!?」

高(いつの間に背後に…)

王母「…」
高「!」
母「道行く人の邪魔ですよ」
高「…」
母「蹴鞠は決められた場でやりなさい」
高(糞婆め)
母「…進」
高「!」

王母…久しぶりにドス黒い嫌な気持ちになりましたね、進…
王進…母の意を組むだけで死域。

高俅…この恨み必ず晴らしてくれる… 

青蓮寺

青蓮寺…働き方改革の一環で夏休みを導入して職員は大喜びしたが、袁明と洪清と沈機は当然のごとくいるし、李富にいたっては青蓮寺に住みついているから全く関係なかった。

人物
袁明(えんめい)…若いころからつけ続けている日記は100冊を超えた。毎月8月は絵日記になる。
李富(りふ)…青蓮寺の座敷童と揶揄されているが、そこに住み着いた地縛霊みたいなもんだから、もっとたちが悪い。
聞煥章(ぶんかんしょう)…金に任せて開封府でリア充を気どるも、ぼったくりにあってしょんぼり。
洪清(こうせい)…体術道場での稽古がいいリフレッシュになっている。
呂牛(りょぎゅう)…夏場で浮かれた連中の懐はゆるいな。いいボーナス期間だ。

34.
聞煥章「暇だな、李富」
李富「暇とはなんだ、聞煥章?」
聞「…する事がないという意味だが」
李「する事などいくらでもあるではないか」
聞「今は?」
李「開封府の塩の価格の推移を地域ごとに追う仕事か」
聞「…」
李「梁山泊の事務職を担当している者の筆跡を覚える仕事とか」
聞「目眩がするな」

李富…ところで、今日は遅かったな聞煥章。
聞煥章…今日は、朝から暫く、物になっていたのだ… 

禁軍

禁軍…腐っている軍は本当に腐っているし、ヤバい軍は本当にヤバいしで、中間がないのがネック。

人物
童貫(どうかん)…禁軍元帥。1日1回は調練と言わないとおそらく死ぬか、見る影もなく弱くなる気がする。
趙安(ちょうあん)…フレッシュマン。よもやの新機軸表明には、作者も驚いた。

35.
趙安「我々の新機軸を発表する」
公順「…」
何信「…」
趙「この羽織を着るのだ」
公「羽織?」
何「今の着物は?」
趙「もちろん脱ぐ」
公「…脱ぐんですか?」
趙「異論が?」
公「…寒くないですか?」
何「甘えるな、公順」
趙「我々の新しいグループ名を発表する」
公「…」
何「…」

趙「新鮮組だ」
公「背中にフレッシュの文字が…」
何「旗印もフレッシュの一文字…」
趙「鮮やかな水色が栄えるだろう?」
何「美しいです、趙安殿」
公「…」
趙「公順?」
何「まだ不服なのか?」
公「大好きなんです、こういうの」
趙「ならば良し」
何「局長は趙安殿ですな」
公「局趙安殿」

趙「なんだその趙安撫みたいな渾名は」
何「お前は副長か、公順?」
公「鬼になって見せます」
何「私は…」
趙「一番隊隊長か?」
公「総長ですか?」
何「昔は参謀に憧れていたのだが…」
趙「ところで公順、肌艶がいいな」
公「油に麹を混ぜたものを塗っています」
何「それは変だ」

趙安…拳は口の中に入らないが、オレンジは一口で食べれる。
公順…意外としょうもない漢詩をノリノリで書く。
何信…イケメンだし、学問もあるし、武芸も強い自負があるけど、体臭で台無し。

36.
公順「何信殿は総長ですか」
何信「学識を買われた」
趙安「隊士を募ってきた」
公「…」
何「…」
趙「なんと十人もの強者が入隊することとなった」
公「十人!?」
何「ずいぶん集まりましたな」
趙「集え!十名のフレッシュマン!」

!!!!!!!!!!

公「面構えが…」
何「只者ではないぞ」

王煥「…」
趙「彼は王煥。美男でありながら、武芸の腕も並ではない」
公「一番隊隊長ですな」
韓存保「…」
何「韓存保殿が!?」
公「すごい方なのですか?」
趙「かつてフレッシュマンの座をかけて、呼延灼と死闘を繰り広げた御仁だ」
公「なんと…」
趙「二番隊隊長を希望された」
公「謙虚な…」

楊温「…」
趙「楊温は傍流ながら、楊家の血を引くという」
何「楊志の親戚ですか?」
趙「面識はない。彼は武芸の他、潜入も得意としている」
公「三番隊隊長にしましょう」
王文徳「…」
公(なんか嫌な感じだ)
趙「王文徳は高俅の元にいたが、学識豊かで親孝行な男だ」
何「彼が参謀ですか…」

項元鎮「…」
趙「項元鎮は、弓の名手でありながら、大砲も扱えるナイスミドルなフレッシュマンだ」
公「元さんと呼ばせてください」
李従吉「…」
趙「李従吉は風水に詳しいが、先陣を切って飛び込むのを得意とするフレッシュマンだ」
何「魁フレッシュと呼ぼう」

梅展「…」
趙「梅展は水軍の将だが、見事な槍の使い手でもある」
公「頼もしい殿になりそうですな」
荊忠「…」
何(こいつはやばそうだ)
趙「荊忠はもともと青蓮寺の軍の隊長だったが、この度新鮮組の入隊を希望した」
公(人斬り荊忠って奴がいると聞いた覚えが…)

張開「…」
公「見上げるほどの巨漢ですな」
趙「張開も高俅の元にいたが、巨躯に似合わぬ細やかな仕事を得意としている」
何「我々の密偵となる監察にしましょう」
徐京「…」
趙「徐京は眼医者の倅だが、気配を消すのが誰よりも得意だ」
公「彼も監察にしましょう」

趙「以上十名を十フレッシュマンズと名付ける」
公「見事な面々です」
趙「主な任務は開封府の治安を守る事だが、戦に出る者もいると思う」
何「中でも韓存保殿の戦歴は確かですからな」
公「王煥は私よりも年下ですね」
趙「今日この日を、フレッシュの旗の元に集った新鮮組の旗揚げの日とする!」

趙安…もっと剣の稽古を積んだ方が良さそうだ。
公順…王煥とすぐ仲良くなった。
何信…王文徳に対して複雑。

王煥…女性ファン多数の色男。彼の三段突きはまず防げない。
韓存保…無骨な軍人。武芸の腕も一二を争う。
楊温…必殺技は牙突。
王文徳…フレッシュマンとは少し肌が合わない気がした。
項元鎮…いつもニコニコしている優しいおっちゃんだが、弓は超一流。
李従吉…恵方の方角にすぐ突っ込みたがる。
梅展…水軍の将と兼務。賊の中にも顔が効く。
荊忠…王和はまだしも高廉と合わなかった。とにかく単独行動がしたい。
張開…強面ででかいが、下戸で甘党。
徐京…実は鍼治療もできる。

十フレッシュマンズについて…水滸伝の原典では、108人集まった梁山泊を討伐しに10人の節度使という地方軍閥がやってくるんだよ!原典では単なるかませ犬だけど、絵巻水滸伝の十節度使編はすごいよ!108人集まるまでの第一部と併せて読んでね!

絵巻水滸伝 ←ご購入はこちらのサイト推奨!HP連載中の分は絶対に読まないでね!泣くほど後悔することになるよ!

37.
公順「…」
何信「どうした、公順」
公「新鮮組のフレッシュ法度を読んでいたのですが」
何「おう」
公「ここまで厳しい掟だとは思っていませんでした」
何「お前がその掟を守らせる立場なのだぞ、公順」
公「…私も心を鬼にします」
何「その意気だ」

王煥「公順殿!」
公「どうした、王煥?」
王「武術の稽古の時間ですよ」
公「…私も行くのか?」
王「約束したでしょう?」
何「行くぞ、鬼の公順」
王「鬼?」
何「新鮮組副長の定めなのだ、王煥」
王「へ〜」
何「総長に対して、その口の聞き方はなんだ、王煥」

王「まずかったっすか?」
公「口を慎め、王煥!」
王「知ったこっちゃねえっす」
何「剣を取れ、王煥」
王「…」
公(雰囲気が一変した…)
何「…」
王「…」
公(身動きが…)
王「…申し訳ございませんでした」
何「どうした、王煥」
王「剣術は一流ですな、何信殿」
何「分かればいい」
公(何て男だ)

公順…鬼のフレッシュ。武芸の才はそれほどでもなく、指揮の方が断然得意。
何信…新鮮組に入ってから、体臭が無くなりつつあると思っている節がある。
王煥…最年少でも、剣の腕は新鮮組でも一二を争う。立ち合いとはいえ、本気出したら何信殿と殺し合いになりかねない予感がしたっす。

38.
鄷美「畢勝!」
畢勝「李明!」
李明「許貫忠殿!」
許貫忠「周信!」
周信「あ!」
鄷「周信…」
畢「あと三回だったのに…」
周「…申し訳ございません」
童貫「…」
鄷「また高俅の軍と蹴鞠で戦をするからとはいえ」
畢「軍の調練からの蹴鞠の調練のダブルヘッダーは堪える…」
童「…」

畢「周信!」
周「…申し訳ございません」
鄷「すぐに我らと呼吸を合わせるのは大変なことだと思うが、それができぬ限り兵にもなれんからな」
周「…はい」
許「少し、よろしいでしょうか」
鄷「許貫忠殿?」
許「周信は鞠の扱いは不得手ですが」
畢「ふむ」
許「足の速さは禁軍でも随一かと」

鄷「確かに」
畢「それは私も認めている」
許「無論周信も鞠の扱いに習熟する必要はありますが、彼の良さを活かす起用をご検討いただきたく」
鄷「おう、それは」
畢「試合までにリフティングを1000出来るようになれよ」
周「はい!」
鄷「俺もお前のポジショニングは認めていてな…」
童「…」

童貫…監督兼MF。司令塔としてやはり超一流。
鄷美…FW。畢勝とのタッグ技を練習している。
畢勝…FW。鄷美との息が更に合うようになった。
李明…DF。後輩ができてウキウキしている。
許貫忠…コーチ。周信のゴールへの嗅覚と速さを活かしたい。
周信…新米禁軍将校。童貫に閃きを評価されて将校に。

39.
童貫「離島調練は無理があったか」
鄷美「まさか嵐で船が転覆するとは」
畢勝「我々三人生き残っただけでも奇跡ですな」
童「しかし、この緊急事態は我らにとって格好の調練となるのは違いない」
鄷(元帥にとってだよな)
畢(とりあえず枝でHELPの文字は作っておいた)
童「さて、どんな調練をしようか」

鄷「この極限状態で生き抜くだけで、立派な調練では」
畢「不要な調練は命を縮めますぞ、元帥」
童「命がけの調練で命を落とすならそこまでの命よ」
鄷「しかし、元帥」
童「…」
鄷「三人で三日食い繋ごうとした食糧を、お一人で、しかも一回の食事で食べられてしまわれたら…」
畢「我らが死にます」

童「不覚…」
鄷「それよりも、助けを呼ぶ調練を行いませんか?」
童「国を守る我ら禁軍が助けを求めるだと?」
畢「今我らのいない開封府は、梁山泊格好の標的では?」
童「…」
鄷「…船だ!」
畢「火を炊きましょう、元帥」
童「それよりも早い方法がある」
鄷「それは?」
童「泳ぐぞ」
畢「…」

童貫…梅展の船だったか、助かったぞ。
鄷美…足つったけど、ガッツで漂着した。
畢勝…鄷美を引きずりながら、這々の体で生還。

元ネタ!

twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今月号も、長々とお読みいただきありがとうございました!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!