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水滸噺 5月(下) [初めての替天行道]

あらすじ
渾名に変身 梁山泊好漢共
入れ替わる 豹子頭矮脚虎 
玉麒麟浪子 住まいは恐懼
小李広神箭 弓矢で語らう

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、  
 あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊(りょうざんぱく)…バカのデパート。例えどれだけ武術や戦の指揮、策の立案果ては内政、個人技能に秀でていたとしても、どこか間抜けでバカな連中が108人と1人集まって、連日やいのやいのやっている愉快な場所。

騎馬隊 

騎馬隊…あまりにもバカと言われることが多すぎる隊長が心配になって、1日のバカと言われた回数を記録した兵の記録は騎馬隊の秘中の秘となり、お蔵入りした。少なくとも名前を呼ばれるより多かったらしい。

人物
・林冲(りんちゅう)…バカ。梁山泊トップクラスの強さを誇り、戦の指揮もピカイチなのに、バカ。きっとそれで有り余る強さとバランスを取っているのだ。
・索超(さくちょう)…騎馬隊の大黒柱。それは林冲殿の役回りではないかって?君はしょっちゅうなくなる大黒柱のある家に、住みたいと思うかい?
・扈三娘(こさんじょう)…美人隊長。愛馬の名前は雪嶺(せつれい)。名前の割に冬が嫌いで、寒い日の遠乗りに駆り出すのに毎回難儀している。
・馬麟(ばりん)…鉄笛が得意な隊長。まともな曲を習おうとレッスンに通ったが、楽譜が全く読めなかった。
・郁保四(いくほうし)…旗手。自分は旗を持つ係だと思っていたのに、いつの間にか旗の修繕やら、旗置き場の確保や掃除やら、はては旗のデザインまで任せられ始めた。

・皇甫端(こうほたん)…獣医。馬同士の関係に日々頭を悩ませているが、彼自身の人間関係については無頓着も甚だしい。
・段景住(だんけいじゅう)…馬の調達担当。馬を調達した帰り道は、必然的に大所帯となるが、ひげの金ぴかさで彼の居場所は一目瞭然。

1.
索超「林冲殿は誰から武術を習ったのですか?」
林冲「子供の頃、伯父上にとことん鍛えられた」
索「どんな人だったので?」
林「あまり思い出したくないな」
索「そんなに厳しい稽古を?」
林「確かに厳しい稽古だったが」
索「はい」
林「まるで獣のような人だった」
索(それは今の林冲殿も、充分…)

林「獣のような人というより、獣そのものと言った方が良いかもしれん」
索「林冲殿にそこまで言わしめるとは」
林「よく山の猪や鹿の悩み事の相談に乗っていたな」
索「え?」
林「俺もよく熊と相撲を取ったり」
索「…」
林「熊にまたがり馬の稽古をさせられたよ」
索(どっかで読んだぞ、そんな話)

林「書見も厳しくやらされたが」
索「はい」
林「山の獣に関する書物ばかりでな」
索「例えば?」
林「獣語の書とかあったな」
索「そんな書が?」
林「会得するまで大変だぞ」
索「それは?」
林「獣に凄く怪訝な顔をされるし」
索「獣もびっくりしますよね」
林「何より恥ずかしい」
索「でしょうね」

・林冲…赤子の頃、叔父が山の獣を集めて見せびらかした。ライオンキングのアレである。
・索超…獣語入門の書を借りてみたが、正気の沙汰とは思えない内容だった。

・林冲の叔父…林冲を鍛えた育ての親。彼の英才教育の結果がご覧の有様ではあるが、宋国全土の猟師達からは伝説の狩人として今なお尊敬を集めているらしい。 

致死軍&飛竜軍 

致死軍&飛竜軍…闇の軍と呼ばれると、中二心を刺激されるかもしれないが、実際のところは地味だし調練もきついし目立たないしの無い無い尽くしなのだけれど、働きがいのある軍隊です。

人物
・公孫勝(こうそんしょう)…致死軍隊長。おもむろに頭倒立をやり始めることがあるが、頭頂のツボが程よく刺激されて気持ちいいらしい。
・劉唐(りゅうとう)…飛竜軍隊長。公孫勝と放浪していた頃のことを思い出すと、かなり間抜けな一面を見せつけられ続けた気がするが、あれも全部俺を試していたのに違いない。
・楊雄(ようゆう)…実は背中に見事な刺青を施しているのだが、地肌の黄色さがコンプレックスなので、あまり見せたくない。
・孔亮(こうりょう)…致死軍の突っ込み担当。突っ込むのは戦のときだけではない。
・樊瑞(はんずい)…幻術が使える気がしてきたが、どうやらMPが足りない。
・鄧飛(とうひ)…魯智深大救出劇の映画化を打診された。
・王英(おうえい)…背がちっちゃい。清風山にいた頃は、よく目の前で王英はどこいった?といじられた。
・楊林(ようりん)…座右の銘は、歩のない将棋は負け将棋。

2.
劉唐「公孫勝殿は?」
楊雄「見つかりません」
劉「致死軍、飛竜軍合同かくれんぼ大会は昨日で終わりだが」
楊「騙すのありにしたのが裏目に出ましたね」
劉「終了時刻は伝達したのか?」
楊「それすら自分を騙す情報だと思ったのでは?」

樊瑞「もういいのではないですか?」
公孫勝「まだだ、樊瑞」

孔亮「もうほっといていいんじゃないか?」
楊「なんて事を、孔亮」
劉「合図の指笛を吹いてみよう」

劉(もう終わりですよ、公孫勝殿〜♪)

公(騙されんぞ、劉唐〜♪)

劉(昨日まででおしまいです〜♪)

公(いいからさっさと私を探せ〜♪)

劉「だめだ。まだ完全にその気だ」
孔「もういいよ」

劉「こうなったら、全員で公孫勝殿を探すぞ」
楊「そうですね」
孔「〜♪」
楊「孔亮?」
孔「まあ見てろ」

公「姑息な真似を」
樊「公孫勝殿、ここは危険です」
公「なに?」
樊「山に移りましょう」

公「!」
劉「!」
楊「公孫勝殿、見つけた!」
公「はめたな、樊瑞」
孔(お手柄だ)
樊(なんの)

・公孫勝…日頃ストイックすぎる分、たまに遊ぶ時の力の入れ具合が尋常ではない。
・劉唐…必然的に鬼。赤髪鬼なもんで。
・楊雄…孔亮に騙されて見つかった。
・孔亮…騙すのありにした張本人。
・樊瑞…こんな事もあろうかと、あらかじめ孔亮と符丁を決めておいて良かった。 

騎馬隊&致死軍・飛竜軍 

騎馬隊&致死軍、飛竜軍…林冲と公孫勝の掛け合いをこっそり記録し、ポッドキャストで配信したら、サーバーを落とす勢いでアクセスが殺到したとかしないとか。

3.
王英「…」
扈三娘「…」
王(会話のない食事が日常化している)
扈「…」
王(せめてもっと賑やかな会話ができる家庭であれば)

張藍「その時私は言ってやったのです」
林冲「…」
張「なんだっけ?」
林(オチのない会話が続く食事が日常化している)
張「それで…」
林(せめてもっと静かな家庭であれば)

林(王)「妙に見える視界が高いな」
張「おはようございます。林冲様」
林(王)「林冲!?」
張「お名前を忘れたのですか?」
林(王)(林冲になってしまった)

王(林)「妙に見える視界が低いな」
扈「…」
王(林)「何故いる、扈三娘」
扈「ここは私の家ですが?」
王(林)(誰だこの不細工なチビは)

張「今日はよく食べますね」
林(王)「当たり前だ。こんなに美味い朝飯は初めてだ」
張「毎日食べているではないですか」
林(王)(なんて羨ましい日常だ、林冲)

扈「…」
王(林)「…」
扈「調練に」
王(林)「後でな」
扈(後で?)
王(林)(俺はこの体躯で百里に乗れるのか?)

林(王)「今日も任務に」
楊林「!?」
林(王)「よう」
楊「何しに来たので?」
林(王)「任務だが?」
楊「…何の?」
林(王)(俺は林冲だった)

王(林)「百里!」
百里風(…)
王(林)「待て!」
扈「王英殿?」
王(林)「配置につけ、扈三娘」
扈「それはあなたでしょう?」
王(林)(王英ってあの?)

林(王)「俺は騎馬隊の調練に行かんといかんのか」

王(林)「飛竜軍って公孫勝の出来損ないの軍か?」

林(王)「…」
王(林)「…」

王(林)(今俺に似た男が走っていたが、見事な体躯だったな)

林(王)(今俺が走り抜けていたが、しばらく無視しよう)

林(王)「待たせた」
索超「珍しいですな、林冲殿」
郁保四「今日の調練は何をするのですか?」
林(王)(何も分からねえ)

王(林)「一体どこへ向かえばいいのだ」
兵「隊長!」
王(林)「話しかけるな」
兵「王英隊長!報告です!」
王(林)「こいつ隊長だったのか」

索「今日の林冲殿は変だ」
扈(あの雰囲気、どこかで…)
林(王)(身体のスペックが高すぎて対応できん)
扈「今日は日差しがきついですね」
林(王)「」
索「林冲殿!?」
扈(あのすけべ顔も、どこかで…)

楊「強すぎんだろ王英」
劉唐「人が変わったようだ」
王(林)(身体が小さすぎて勝手が分からん)

索「林冲殿。今日はどうなされた」
馬麟「いつも以上に支離滅裂ですよ」
林(王)「すまん」
索(らしくない、品のない動きだ)
扈「王英殿」
林(王)「!?」
索(なぜ林冲殿が)
扈「今日の林冲殿は王英殿です」
索「すまん。もう一度」

劉「いつからあんなに強くなったんだ?」
楊「強きゃいいじゃねえか」

林(王)「朝目を覚ましたら、林冲になっていたのだ」
索「はあ」
馬「お前が林冲殿ではないってのはよく分かった」
郁「すると林冲殿は?」
扈「飛竜軍でしょう」
索「王英になってるのか!」

楊「王英、目立ちすぎだ」
劉「隠密行動が公孫勝殿の命令だ」
王(林)「あんな野郎の言う事を聞けるか」

公孫勝「処断するぞ、王英」
王(林)「やってみろ」
劉「!?」
公「いつからお前は林冲のような口の利き方をするようになった?」
王(林)「俺は林冲だ」
劉「ふざけるな、王英」
楊「いや、劉唐。いつもの王英はあそこまで強くはない」
劉「たしかに…」
王(林)「だから言っているではないか」
公「…」

索「というわけで」
劉「交換しよう」

林(王)「…」
王(林)「…」

索「さすが林冲殿の指揮は違う」
馬「王英だけどな」
郁「叱られるとなんか腹立ちますね」
馬「王英だからな」

王(林)(郁保四の腹しか見えん)
百「…」
王(林)「すまんな、百里。足が届かんのだ」

公「林冲」
林(王)「王英です。すみません」
公「…」
楊(俺の中の林冲殿の株が投げ売りされている…)
劉(とんだ風評被害だ)

林(王)「白寿」
白寿「どちら様ですか!?」
林(王)(流石に林冲の身体で行くのはまずかった)

呂牛「…」

宋江「ほう。林冲が王英に。王英が林冲になったか」
呉用「騎馬隊と飛竜軍は大混乱です」
宋「この前の朝、枕元に見覚えのない三巻の天書があってな」
呉「はい?」
宋「書いてある呪文を音読したのがまずかったのかな?」
呉「絶対それです」

王「戻れた」
林「一発殴らせろ、王英」
王「俺だって被害者だ」
宋「すまなかったな、二人とも」

王「帰ったぞ」
扈「戻りましたか」
王「ああ」
扈「良かった」
王「扈三娘?」

林「帰ったぞ」
張「林冲」
林「何事だ、張藍」
張「この文書をご覧なさい」
林「!?」
張「言い残すことは?」
林「やはり殴っておくべきだった」

・林冲…張藍による一月の罰を受け終わった直後、血眼になって王英を探し始めた。
・王英…何かを察知し、遼のあたりの工作に従事している。

・張藍…それにしても、あの文書をポストに入れたお爺さんは何者だったのかしら?
・扈三娘…正直、中身林冲の王英はまんざらでもなかった。

・索超…中身が林冲殿とはいえ、王英に叱責されるのは…
・馬麟…叱責されて、笑いそうになったぞ。
・郁保四…威厳が一ミリもありませんでしたよね。

・公孫勝…私に卑屈な林冲なんて反吐が出そうだった。
・劉唐…戻った林冲に命令しそうになった。
・楊林…戻った林冲騎馬隊の調練を見て安堵の涙を流した。

・百里風…戻るまで索超に乗ってもらってた。

・白寿…王英の密会相手。なぜか自分の名を知っていた男にもう一度会いたい。

・呂牛…真実を伝えるのがジャーナリズムの本懐ではあるが、すげえものを見たな…

・宋江…イオナズン!
・呉用…MPが足りないみたいですな。

本隊

本隊…梁山泊の主力部隊。週に一度は交代制で隊長のオリジナル調練日を設けている。

・関勝(かんしょう)…子供の外遊びのような調練。
・呼延灼(こえんしゃく)…武器を両手に二本持って扱う調練。
・穆弘(ぼくこう)…全員に眼帯を着用させて調練。
・張清(ちょうせい)…野球しようぜ!
・宋万(そうまん)…梁山泊古参。林冲との稽古は日々継続中。
・杜遷(とせん)…梁山泊古参。致死軍入りはできなかったものの、判断力と冷静さに定評がある。
・焦挺(しょうてい)…梁山泊古参。相撲が強すぎる。
・童威(どうい)…玉の気晴らしに、弟の童猛と船でレースをする。
・韓滔(かんとう)…気のいいじっちゃん。代州から季節ごとに送られてくる野菜が励み。
・彭玘(ほうき)…シャープなおっちゃん。韓滔とは長い付き合い。
・李袞(りこん)…友達の項充と飛刀の練習をよくする。スピードは彼の方が速いが、コントロールは項充に分がある。
・丁得孫(ていとくそん)…彼の必殺技は、持っている叉を相手にぶん投げること。でもそれをやったら、必然的に丸腰。

4.
李袞「申し訳ねえ、穆弘殿」
穆弘「気にしなくて良いが、聞いてもいいか?」
李「なんですか?」
穆「謝罪する時のお辞儀の角度だ」
李「はあ」
穆「実に見事な鋭角になっている」
李「そこ褒められたのは初めてです、穆弘殿」
穆「お辞儀の名手だな、李袞」
李「お辞儀の名手」  

・穆弘…弟の穆春と口喧嘩した時は、穆春が悪くてもつい先に謝ってしまう。
・李袞…TPOをわきまえたお辞儀の角度は一度の狂いもない。天性のお辞儀の達人である。

5.
瓊英「張清様」
張清「瓊英!」

呼延灼「あれが噂の瓊英か」
関勝「確かに目の覚めるような美人だ」

張「呼延灼、関勝!俺の妻を紹介させてくれ」
関「大好きが顔から溢れ出ているぞ、張清」
張「俺の妻の瓊英だ」
瓊「瓊英と申します。いつも旦那様がお世話に」
呼「いや、全く」

関「瓊英殿の噂はかねがね」
瓊「まあ」
呼「礫も得意とか」
瓊「旦那様ほどでは」
張「しかし上手いぞ、瓊英は」
関「差し支えなければご披露していただけないか?」
瓊「拙い技ですが…」
呼(眼光が鋭くなった)
瓊「!」
関・呼「!!」
瓊「この程度ですけど」
関「美しいアンダースローだ、瓊英殿」

瓊「僭越ながらお二人に申し上げたいことが」
関「なんでもどうぞ」
瓊「実は父が良い砥石を仕入れておりまして」
関「なんと」
呼「ちょうど探していたのだ」
瓊「お二人は武器が命ですからご入用かと思い、お試し品をお持ちしました」
関「買う!」
呼「素晴らしい奥方だ、張清」
張「だろう?」

張清…瓊英が大好きだが、彼女の素晴らしさは彼が思っているよりもずっと深いところにある。
・瓊英…商人の養父のもとに育つ。彼女の営業成績を抜くのは、張清の礫を避けるよりも難しい。

・関勝…青龍偃月刀の斬れ味が抜群になったので、大喜びで定期購入を始めた。
・呼延灼…鞭の仕上がりに大満足。 

遊撃隊 

遊撃隊…隊長の悪影響でそこらじゅうで服を脱ぐようになった兵の風紀の乱れを心配し、風紀委員長を配属したのに、その風紀委員長まで脱ぎ始めるようになった、と言われたら、呉用の失望感が分かるのではないか。

人物
・史進(ししん)…隊長兼腐ったみかん。彼が脱ぎ散らかして風化した服が、無残な姿で梁山泊の木々の至る所にぶら下がっている。
・杜興(とこう)…風紀委員長。本人的な肌感覚はクールビズだが、明らかに露出度は平均よりも高い。
・陳達(ちんたつ)…史進の昔なじみ。史進は一体どんな爺になるんだろう?
・施恩(しおん)…替天行道マニア。記憶だけでノートに全文書くのを日課にしているが、読点の場所を間違えた日は一日使い物にならなかった。
・穆春(ぼくしゅん)…
遠出調練の時、わざわざ速達飛脚を使って予備のパンツを届けられた時は、送り主の兄を心から恨んだ。
・鄒淵(すうえん)…史進と妓楼でやらかした一件以降、どこの妓楼に行っても少し早めに身支度を整えるようになってしまった。

6.
史進「一度の失敗をあげつらい、しつこくネタにするのは、人として恥ずべき行為ではないか」
杜興「お前の人として恥ずべき行為が滑稽すぎるからネタにされるんじゃ」
史「いつも着物を着てるだろう」
杜「わざわざ言うまでもないことじゃな」
史「公共の場で裸になったのはあの時だけだ」
杜「なるな」

史「杜興の糞爺を黙らせたい」
陳達「俺はあの件では杜興の味方だぞ」
史「裏切るのか、陳達」
陳「俺は厠と体を洗う時と妓楼に行く時しか脱がん」
史「脱ぐではないか、陳達」
陳「脱ぐ時しか脱がん」
史「俺が脱いではいけない時に脱いだと言いたいのか?」
陳「だからネタにされてんだよ」

史「俺は裸で外を駆け回りたいから脱いだ訳ではない」
陳「まだやんのか」
杜「いい加減にしろ、史進」
史「貴様らの分からず屋ぶりにはうんざりだ」
陳「俺の台詞だ」
杜「わしは配属された時からうんざりしているが?」
史「尻でもくらえ」
陳「履いてねえのかよ」
杜「お前の性根のように汚い尻だ」

・史進…見せびらかしたいからではない!ノーパンだと爽やかだから履いてないだけだ!
・杜興…李応殿のぬいぐるみに語りかける夜が多くなった。
・陳達…少華山の時から履いてなかったな。そういえば。 

二竜山 

二竜山…梁山泊の2軍。だいたい2~3年を目途に梁山泊入りを目指す調練プランを立てているが、どうしてもいつまでたっても梁山泊に行けない古参の兵が出てくる。

人物
・楊志(ようし)…隊長。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子自慢が始まる。
・秦明(しんめい)…隊長。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子自慢が始まる。
・解珍(かいちん)…虎の着ぐるみを着ているように見えるが、毛皮100%の代物である。
・郝思文(かくしぶん)…副官。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子・娘自慢が始まる。
・石秀(せきしゅう)…曹正の健康診断結果を肉屋目線で評価した結果、挽肉のカサ増しに使える程度の品質とのこと。
・曹正(そうせい)…何かと下らないギャグを言っては、石秀に肉切り包丁を持って追いかけ回されている。
・蔣敬(しょうけい)…兵站担当。出荷される豚が曹正に見えてきた。
・李立(りりつ)…兵站担当。得意げに料理を振舞ったが、意外と普通だった。
・周通(しゅうとう)…梁山泊かませ犬ランキングトップ3に入る剛の者。それは強いのか?
・黄信(こうしん)…あだ名は鎮三山(ちんさんざん)。二竜、桃花、清風の山々を巧みに馬で駆けさせされて一流だからな!と兵に発破をかけすぎて呼ばれるように。
・郭盛(かくせい)…あだ名は賽仁貴(さいじんき)。古の方天戟の使い手薛仁貴だぞ!なんちゃって!って意味。
・燕順(えんじゅん)…部下の恋愛相談に乗ることも多いが、おおむね結論は妓楼に行け!
・鄭天寿(ていてんじゅ)…彼のプロマイドは熱心な二竜山の奥様方に高値で取引されている。 
・楊春(ようしゅん)…無口だが、見ようによってはまんざら悪い顔ではない。
・鄒潤(すうじゅん)…額のこぶがトレードマーク。頭突きを極める調練は過酷を極めたという。そりゃそうだよ。
・龔旺(きょうおう)…虎の刺青をしている。銭湯に行ったとき、機嫌の悪い巨人ファンの爺にいちゃもんをつけられた。

7.
楊志「令、土産だ」
楊令「曹正殿のソーセージですね!」
志「今なんと言った、令」
令「曹正殿のソーセージ!」
志「面白すぎるだろ、それwww」
令「曹正殿のソーセージ!」
志「曹正のソーセージ!」
済仁美(楊令と同レベルの旦那様も可愛い…)

楊志「曹正」
曹正「なんだ」
楊「やはり楊令は天才だ」
曹(また始まった)
楊「お前の羊の腸詰を見てなんと言ったと思う?」
曹(まさか)
楊「曹正のソーセージだとさ!」
曹「…」
楊「笑った、笑った」
曹「…」

曹「楊志にあそこまで受けるギャグだったとは」
石秀「俺に言ったら、お前の腸を腸詰の皮にするからな」

・楊志…精神年齢は楊令と一緒。下手したら下回ることもしばしば。
・楊令…この頃からすでに武術の才の片鱗を見せ始めており、楊志の痣を増やすこともしばしば。
・済仁美…楊志の妻。楊令はまだしも、楊志の思いがけない幼さにときめくこともしばしば。

・曹正…ならば、俺の人生の一代記をそーせー記というのはどうだ?

・石秀…屠殺包丁を研いでくるから、そこを動くな。

8.
曹正「石秀に構わず、門を閉めろ、周通」
周通「また何か言ったのか?」
曹「俺が双子なら双生児だ、と言っただけだ」
周「本当くだらねえな」
石秀「見つけたぞ、曹正」
曹「!」
石「逆さ吊りにして屠殺してやる」
曹「俺を何だと思っているのだ」
石「くだらん事しか言わん豚だ」
周(こっちも酷え)

石「挽肉になるか、切り落としになるか、好きな方を選べ」
曹「なぜ俺のギャグを憎むのだ」
石「くだらないからだ」
周(否定できん)
曹「もう言わないから許してくれ」
石「…」
周(すぐ言うだろ)
石「確かに、お前の贅肉は脂まみれで使い物にならんか」
曹「お前も俺を肉屋目線で評価するのやめろ」

・石秀…曹正を屠殺したところで、ラードにもならん。
・曹正…俺の贅肉は美味いぞ。バラ肉が三段で三段バラってやつさ。
・周通…今後のために獣の解体を習おうかな。

9.
曹正「今日も暑いな、石秀」
石秀「そうだな」
曹「汗が止まらん」
石「肉汁だろう」
曹「…」
石「あまり肉汁を垂らすと旨味が逃げるぞ、曹正」
曹「そんなに俺を肉屋に卸したいのか」
石「ブーブー言うな」

・石秀…これで部下の人望は厚いんだから不思議だよね。
・曹正…どうして俺は豚を解体する時に複雑な気持ちになるのだ?

10.
楊志「二竜山相撲大会決勝だ」
蒋敬「石秀と曹正の因縁の取組になるとは」
楊「既に凄まじい気がぶつかり合っている」
蒋「見ものですね」
周通「見合って見合って」
石秀「…」
曹正「…」
周「はっけよい」
楊「…」
蒋「…」
周「のこった!」
石「!」
曹「!」
楊「これは」
蒋「曹正のまわしが」

楊令「母上。曹正殿のソーセージ、小さいですね」
済仁美「厚い皮に包まれてるわね」

周「のこった!のこった!」
志「全く気にしてない」
蒋「本気だ」

令「私はもっと太いのが好きです」
済「小ぶりだと物足りないわね」

石「」
曹「」

済「楊令。汁が垂れてるわ」
令「たくさん出てきました」

志「いかん、石秀のまわしまで!」
蒋「大惨事だ」

令「熱い!」
済「大きいから気をつけて口に運びなさい」
令「…」
済「舐めてはいけません」

石「」
曹「」

令「」
済「頬張りすぎ、楊令」

蒋「殴り合いになった」
周「ブレイク!」

令「ごちそうさまでした!」
済「美味しいおかずだったこと!」

・楊志…相撲大会から総合格闘技にルール変更し、替えのパンツを用意させた。
・蒋敬…二竜山の簿記担当、基、兵站担当。
・周通…行事からレフェリーにチェンジした。
・石秀…太くて硬い。信念の話である。
・曹正…彼のソーセージは小ぶりでも絶品。さっきから何かを連想している者は、心が汚れているのだ。

・楊令…曹正のソーセージが大好物。口いっぱいに頬張るのが何よりの幸せ。
・済仁美…男たちの浅ましい大乱闘をしり目に、母子水入らずの時を過ごした。

11.
郭盛「楊令。お前がこれからしようとすることのリスクを教えてやる」
楊令「…」
郭「あの人は不正を許さない」
楊「…」
郭「これもある意味不正といえるだろう?」
楊(フルフル)
郭「確かに動機は俺たちの純粋な善意だが…」
楊「…」
郭「俺たちが拾った公淑殿の小物入れを秦明殿に届けさせるなど」

郭「まず、俺たちで秦明殿に拾わせる策を練ろう」
楊(コクリ)
郭「と思ったら、秦明殿と花栄殿が歩いてきたぞ!」
楊(!)
郭「楊令!?」

楊「…」
秦明「どうした、楊令」
楊つ小物入れ
秦「これは?」
花栄「ご婦人の小物入れですな」
楊「…」
秦「私に、どうしろと?」

郭(花栄殿!)
花(!)

郭(誰の物か分かってますよね?)
花(あの人のだろう?)
郭(秦明殿に届けさせてください)
花(任せろ)

秦「花栄?」
郭(隠れろ!)
花「秦明殿がお届けになられては?」
郭(いいぞ!)
秦「誰に?」
花「李立の妻に」
秦「李立の妻?」
花「」
秦「楊令!?」
楊「…」

郭(俺でも殴るぞ、花栄殿)

楊「…」
秦「公淑殿の物ではないか!」
花「なんと」
楊「…」
秦「私が、届けるのか?」
郭(分かりやすいなあ)
花「照れ臭いなら私が」
楊「!」
花「」
郭(いい加減にしろ、花栄殿)
秦「…」
楊「…」
秦「…引き受けよう」
花「一人で大丈夫ですか?」
楊「!」
花「」
郭(楊令の顔も三度までだ)

・郭盛…楊令の度胸は見習わねばならんな。
・楊令…(郭盛のアシストがありがたかったな)

・秦明…右手右足が同時に出るほど緊張したが、心から感謝され、一歩近づいた。
・花栄…楊令の突きは効いた… しかし、私はなぜ殴られたのだ…

12.
秦明「今帰った、公淑」
公淑「おかえりなさいませ、旦那様」
秦「容は?」
公「あなたの作った狼牙棒を握りながら寝ていますよ」
秦「つい棘まで再現して作ってしまったが」
公「寝る時はきちんと専用のキャップを付けてあります」
秦「さすが公淑」

公「あなたの使っている狼牙棒にも興味津々ですよ」
秦「あれは鍛錬用だが、若い頃に使っていたものに比べたら随分軽くなってしまってな」
公「あの押入れの奥にしまってあるやつですか?」
秦「よく見つけたな」
公「この間ゴキブリを退治するのに使いました」
秦「あれ使ったのか?」

・秦明…若い頃は騎乗で狼牙棒を振り回して一騎当千。今でも素振り千本を欠かさない。
・公淑…秦明の奥さん。悲しい過去を克服して梁山泊にやってきた。土壇場に超強い。
・秦容…秦明お手製の狼牙棒がお気に入りでどこに行くのも持って歩く。イタズラで解珍の尻を叩いたら絶叫した。

双頭山 

双頭山…標高はそこそこあるらしく、イルミネーションを施したら中々見どころがあったという。イルミネーションとは別の不自然な光は符牒だから解読しないように。

人物
朱仝(しゅどう)…隊長。懐いた子供を抱っこして髭を愛でてもらったが、なぜかその子の未来が心配になり、不安で眠れなくなった。
・雷横(らいおう)…隊長。気まぐれで見に行った演劇の美人女優が、生理的に無理だった。
・董平(とうへい)…隊長。上司の娘に付きまとわれた過去がある。無論、今なおも。
・宋清(そうせい)…兵站担当。兵のフードロス削減に邁進中。
・孟康(もうこう)…兵隊担当。朱仝の次にデカい。
・李忠(りちゅう)…副官。強くはないが、弱くもない。弱くはないが、強くもない。
・孫立(そんりつ)…顔が黄色い。楊雄と出会った瞬間通じ合う何かがあった。
・鮑旭(ほうきょく)…真面目一徹かと思いきや、大喜利センスはまんざらでもない。
単廷珪(たんていけい)…水攻めがしたかったが、呉用に土木工事に必要な見積もりを出した結果、即却下。
・楽和(がくわ)…歌がうますぎる将校として、バラエティー番組の取材を受けた。

13.
雷横「双頭山は個性に乏しくないか?」
朱仝「俺もそう思っていた」
宋清「中途半端だよな」
雷「二竜山のような育成をするわけでもないし」
宋「生産をする現場でもないし」
朱「軍も梁山泊の兵より少し弱いし」
雷「Bクラスだな、俺ら」
朱「コアなファンが付いてきそうなチームだ」

雷「双頭山をAクラスにするにはどうすれば良いだろうか」
朱「将校を補充してもらう」
雷「なぜか俺に会う事はなさそうな気がする」
宋「双頭山近辺を梁山泊の領土にする」
雷「遠い未来にやってのける気がするな」
朱「お前の意見は、雷横?」
雷「兵を鍛えぬく」
宋「雷横らしい」

孟康「なんですかこれは」
雷「双頭山のマスコットだ」
朱「背がでかいからぴったりだな」
孟「あんたの方がでかいだろう」
宋「確かに、双頭山のマスコットがピンなのはおかしいな」
雷「言い得て妙だ」
朱「やらんぞ」
雷「俺がやろう」
宋「私がやる」
朱「ならば俺が」
雷・宋「決まりだ」
朱「」

・朱仝…双頭山マスコットの春くん。引くほどデカいから子供が寄ってこない。
・雷横…マスコットのコンビ芸を考案したが悉く滑った。
・宋清…マスコットが双頭山のイメージダウンに繋がらないかとても心配。
・孟康…双頭山マスコットの秋くん。やっぱりデカイから、並び立つと圧迫感が凄い。

14.
董平「なるほど。Bクラスの系譜か」
宋清「はい」
鮑旭「双頭山の悩みですね」
孫立「どことは言えないのだが、確かにそんなもどかしさがあるんだよな」
楽和「それでAクラスを目指しているのですね」
董「気にする必要はないと思うが」
宋「しかし、際立った個性がないのは事実です」
董「個性か」

董「俺は二本槍の遣い手だ」
宋「双槍将ですね」
董「鮑旭のビフォーアフターは、異次元だ」
鮑「確かに」
董「孫立は嫁のエッジが効いている」
孫「お恥ずかしい」
董「楽和は歌なのは周知の事実だろ」
楽「はい」
董「じゃあ、宋清は?」
宋「!」
孫「お前の個性が薄いだけなのではないか?」

宋「…」
董「…」
宋「鉄扇を武器にしています」
董「手前味噌だが二本槍の方がパンチは効いている」
宋「兄が宋江です」
孫「それはお前自身の個性ではないな」
宋「…」
鮑「皆さん」
董「何かな、鮑旭」
鮑「この食料は誰が調達してきたものでしょうか?」
董「!」
宋「愛してるぞ、鮑旭」

・董平…忘れてはいけないことを忘れてしまった。
・宋清…鉄扇のツッコミを会得しよう。
・孫立…嫁は楽和の姉ちゃん。おもむろに彼女の事を思い出してにやける癖がある。
・鮑旭…私たちが食べることができるのも、農家の方々、運ぶ人、調理する人のおかげですよね。
・楽和…姉ちゃんに甘やかされてたから、野菜はあまり好きではない。 

流花寨 

流花寨…宋国首都を攻める拠点の最前線。隊長の悪い噂をするものは、どこからともなく矢が飛んでくる。

人物
・花栄(かえい)…家族がいる。妻に真顔で、あなたは弓矢しか触らないでください、と怒られた。
・朱武(しゅぶ)…軍師。策を説明するプレゼンスキルや資料のまとめ方はさすが。字が読めないものには少し難しい。
・孔明(こうめい)…副官。休暇で五丈原に遊びに行ったとき、やたら星が降ってきた。
・魏定国(ぎていこく)…火攻めが上手い。ただ、やり終えた後のことはあまり考えてない。
・欧鵬(おうほう)…
李逵の弟分。李逵の独自言語は妙に肌に合った。
・呂方(りょほう)…
索超の弟分。索超の抱えるスキルはもっと天下のために役立つと思っている。
・陶宗旺(とうそうおう)…
李逵と欧鵬の弟分。鉄の鍬を武器に戦うので、鉄の鎗を使う欧鵬の技はとても参考になる。

15.
花栄「やれやれ」
朱武「どうした、花栄」
花「飛麟が、息子が反抗期らしい」
朱「息子がいるんだったな、花栄は」
花「流花寨にいては、家族も呼べん」
朱「帰ってやれよ、花栄」
花「俺だけそんな訳にはいかん」
朱「花栄」
花「どうした」
朱「神機軍師が守る流花寨は心配か?」
花「朱武」

花「会ったらすぐに戻る」
魏定国「そういうのを野暮って言うんですよ」
花「すまん」
朱「さっさと帰れ」
花「そうさせてもらう」

魏「家族か」
朱「お前は、魏定国?」
魏「天涯孤独って訳じゃねえが、もう会えんだろうな」
朱「そうか」
魏「お前はどうなんだ?」
朱「家族はいないが兄弟がいる」

花「なにもかもが懐かしい」

妻「…」
花「なんと言って会えばいいかな」
妹「兄上!」
花「お前がいたのを忘れていた」
妹「相変わらずね」
花「そう言うな」
妻「花栄様!」
花「変わりないか?」
妻「誰かのおかげで身も細る思いです」
花「誰のせいかな?」
妻「…」
花「すまん」

花「飛麟は?」
妻「最近ずっと山に一人きりでいます」
花「そうか」
妻「私にはどうすることも出来なくて」
花「お前にも、飛麟にも、寂しい思いをさせているな」
妻「そんな」
花「たまには父親らしいことをさせてくれ」
妻「お願いします。花栄様」

花「山の中というと…」
花飛麟「…」
花「やはりな」
飛「!」
花(上手くなったものだ)
飛「!」
花(力が有り余っているのだな)
飛「!」
花「!」
飛「!?」
花「力を抜け、飛麟」
飛「父上!」
花「それでは10年経っても岩は貫けんぞ」

飛「!」
花(今の飛麟に言葉はいらんな)
飛「!」
花(俺も弓で付き合うとしよう)
飛「!」
花「!」

花(まだやるつもりか)
飛「!」
花(嬉しそうな顔をしやがる)
飛「!」
花「飛麟」
飛「はい!」
花「今日はここまでだ」
飛「父上」
花「おう」
飛「ありがとうございました」

花「飛麟」
飛「はい」
花「私は今から流花寨に帰る」
飛「そんな」
花「母上と叔母さんによろしくな」
飛「私も一緒に」
花「ならん」
飛「なぜです」
花「お前が子どもだからだ」
飛「子どもでも矢を射ることはできます」
花「その矢で何を射るつもりだ?」
飛「敵を」
花「敵とは、人のことか?」

飛「人でも、敵です」
花「敵にも家族がいる」
飛「!」
花「友もいる、愛する人もいる」
飛「…」
花「お前のような息子がいる敵も、必ずいる」
飛「…」
花「それを痛いほど分かっていても、私は敵を射殺すのだ」
飛「どうして?」
花「それが私の選んだ道だから、かな」

飛「…」
花「次に会う時までに、私はお前の問いの答えを探しておくよ」
飛「いつ、会えますか?」
花「それは分からない」
飛「必ず会えますよね」
花「全力を尽くす」
飛「約束ですよ」
花「当たり前だ」
飛「父上は破ってばかりだ」
花「そうだったかな?」

花「元気でな」
飛「手紙を書きます」
花「読んだら、必ず返す」
飛「父上の返事は、いつも遅いからな」
花「忙しいんだ。必ず返すから、勘弁してくれ」
飛「…」
花「…」
飛「…」
花「またな」
飛「…」

花(私は、何人の敵を射殺し、彼らの家族を悲しませたのかな)

朱「どうだった」
花「見ての通りだ」
朱「お前のためのとっておきを用意してある」
花「その山積みの書類だな」
朱「ご明察」
花「朱武」
朱「なんだ」
花「恩にきる」
朱「ならとっとと仕事を片付けろ」
花「昼飯後でいいか?」
朱「お前なら、朝飯前だろう?」
花「腹が減っては、戦はできんよ」

・花栄…実は帰り道で迷い、一日ロスしていた。
・朱武…久しぶりに陳達、楊春に手紙を書こうと思ったが、字が読めなかったな、あいつら。史進は、別にいいか。
・魏定国…郝思文の家族といる姿が微笑ましかったな。特に末息子のでかいおっさんがいる時の。

・花栄の妹…実は彼女も弓の名手。実家で教室を開いている。
・花栄の妻…見合い結婚だった。第一印象は最高だったが、一緒に暮らせば暮らすほど、諸々の鈍臭さに呆気にとられた。
・花飛麟…10歳くらい。顔が良く弓が上手いこと以外鈍臭いところまで父に似ている。 

聚義庁

聚義庁…梁山泊の頭が二つに頭脳が備わった司令塔。慢性的な人員不足に悩まされているのは、水軍だけではないのだ、李俊。

人物
・晁蓋(ちょうがい)…頭の片っぽ。中身はスカスカ。
・宋江(そうこう)…頭のもう片っぽ。中身はポワポワ。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…会議で苦言を呈することが多い。彼の苦言は妙にしょっぱい。
・呉用(ごよう)…頭脳。聚義庁大喜利で彼が手を挙げると、客席は妙な緊張感に包まれる。
・柴進(さいしん)…兵站トップ。ガチセレブである彼の節約している!という弁解を鵜呑みにするほど、呉用は間抜けではなかった。 
・阮小五(げんしょうご)…頭脳。元漁師。その頃の彼の斬新すぎる発想は、他の漁師たちにまるで理解されなかった。
・宣賛(せんさん)…頭脳。彼のプレゼンはとても感情を揺さぶられるのだが、いかんせん本人の顔は頭巾に包まれている。

16.
施恩「宋江様」
宋江「何かな、施恩」
施「替天行道の85Pについての解釈なのですが…」
宋「…うむ」
施「〜と書かれていましたが、私は〜と考えておりまして…」
宋「…うむ」
施「宋江様はきっと〜の項でおっしゃりたいことは〜という…」
宋(もう中身をほぼ忘れてるなんて言えんよな、絶対)

・宋江…感情に任せた義憤を魯智深にぶちまけたらその日はスッキリよく眠れた。言ったこともスッキリ忘れた。
・施恩…全108P、36章72項の内容を完コピしている。彼の替天行道考察ブログを見て入山した者もチラホラ。

・替天行道…宋江がぶちまけた義憤を魯智深がノリで書き留め、晁蓋がノリでタイトルつけて冊子にして出版したらまさかのミリオンセラー。梁山泊の志の源で、これを読んで入山した者は数えきれない。ここだけの話、本当はたいてんこうどうが正しい読みらしい。

17.
宋江「魯達」
魯達「はい」
宋「この書物の」
魯「替天行道ではないですか」
宋「この内容」
魯「…」
宋「本当に私が言ったことなのか?」
魯「宋江殿?」
宋「冊子になってから初めて読んだのだが」
魯(初めて?)
宋「泣きながら一気に読んでしまった」
魯「世界の中心で志を説かれた方が?」

宋「早い話が内容を全く覚えてなかった」
魯「聞きたくもない話ですな」
宋「冊子になって初めて読んだから、とても新鮮な気持ちで読むことができた」
魯「…」
宋「私も今すぐ梁山泊に一人の兵として加わりたいと胸が震えるほど感動したぞ、魯達」
魯「ここが梁山泊で、あなたは頭領です、宋江殿」

宋「しかし、この諸悪の根源が私を悩ませているのだ」
魯「原作者と思えない暴言だ」
宋「施恩を知っているな?」
魯「替天行道マニアの」
宋「彼の同好の士のオフ会に招待されたのだ」
魯「彼らにとって宋江殿は神ですからな」
宋「私も読者として参加できたらどれ程良かったか」
魯(ツッコミきれん)

・宋江…彼の発言は全て、誠心誠意、真心を込めて言っている。ボケているつもりは全くない。
・魯達…改めて替天行道を読んでみたら号泣した。この冊子の内容は、本当に俺が書き留めたんだっけ?

18.
呉用「戴宗」
戴宗「…」
呉「宋江殿が私に漏らした神行法は、多大な貢献をしている」
宋江「言ったらまずかったのか?」
戴「…」
呉「今まで十日の行程が、神行法を使えば計算上二日で済む」
戴「…」
呉「しかし、お前の報告書を精査すると空白の一日が見つかった」
戴「…」
呉「説明を要求する」

戴「実は二竜山中継所の者が体調を崩し」
呉「…」
戴「代わりの者の手配や引き継ぎで、遅れました」
呉「なら聞こう」
戴「…」
呉「欠勤した者の名は?」
戴「!」
呉「代わりの者はどこで手配した?」
戴「…」
呉「二竜山の中継所は一箇所ではないはずだが?」
宋(どこかでやったようなやり取りだ)

呉「白状しろ」
戴「酒と肉食ったら足が止まらなくなって、一日暴走してました!」
宋「それは大変だ」
李逵「嘘はいけねえよ、戴宗」

・戴宗…罰として三ヶ月分の神行法手当をカットされた。
・呉用…神行法使用に関するガイドラインを各拠点に配布した。
・宋江…嫌な夢を見た。戴宗と並んで首を斬られそうになる夢だった。
・李逵…酒と肉くらい我慢しなよ、戴宗。

・神行法…戴宗のみが使える、足にお札を貼ると一日400km走れるチート技。食べれる物は高級精進料理オンリーで、肉や酒を摂取したら足が止まらなくなり、死ぬまで走り続けることになる恐ろしい術。

19.
戴宗「今回は何としても呉用殿を誑かさねばならん」
張横「蕭譲、金大堅の手を借りては?」
戴「それだ!」

呉用「なるほど。今回の遅れの理由については、全く異論はない」
戴(しめた)
呉「しかし、戴宗」
戴「…」
呉「判子が違うぞ」
戴「しまった」
宋(…このやり取りも、どこかで)

・戴宗…神行法で用事を済ませ、ホッとした反動でついつい酒を飲んでしまう。
・張横…普通に届けた方が早いんじゃないかな。

・蕭譲…わしは書けと言われれば書くが、用途については全く知らんぞ。
・金大…わしも掘れと言われれば掘るが、デザインについては言われたものしか掘らんぞ。

・呉用…判子を間違えるなんて、どこの迂闊者だ!
・宋江…手当の削減程度で済んで良かったのではないかな。 

三兄弟

三兄弟…武力90オーバーの武術の達人三人衆。知力は別の世界だと全員1桁。

人物
・魯達(ろたつ)…隻腕になっても錫杖の鍛錬は怠っていない。
・武松(ぶしょう)…もっと手ごたえのあるパンチングマシーンは無いか?
・李逵(りき)…石切り用、調理用、戦用、断罪用の板斧を使い分けている。

20.
賊「有り金全部置いてきな」
宋江「待て」
賊「待てだと、誰に言っているのだ、色黒」
宋「まだ堪えろ」
賊「何を堪えるのだ、小便か?」
賊「糞かもしれんぞ」
宋「そろそろかな」
賊「さっさと出し」
宋「よし、行け!」
武松「」
李逵「」

賊「すみませんでした」
李「すみませんで済むと思うのか、おめえよ」
賊「板斧が近い」
李「近いとなんなんだ、おめえよ」
賊「怖いっていうか」
李「板斧の何が怖いんだ、おめえよ」
賊「首を飛ばされそう」
李「お前の首は身体から離れたがってるぜ?」
宋「これは怖いな」
武「弟でよかった」

・宋江…あの時鯉を渡しておいて本当に良かった。
・武松…俺よりも容赦しない時は容赦しないからな。
・李逵…宋江様、兄貴、終わったぜ。

・賊…無事帰ることが出来ました。土に。 

養生所&薬方所 

養生所&薬方所…呉用から勤務時間の見直しを図るよう指示を受け、所定の時間で実践してみた結果、あまりにも物足りなかったので勤務時間の延長を直訴した。

人物
・安道全(あんどうぜん)
…白勝や薛永と雑談しながら、最難度の手術を軽々とやってのける様は、神医(しんい)のあだ名にふさわしい。
・薛永(せつえい)…良薬は口に苦しですよ、と言いながら渡す薬は、気持ち苦めに処方している。
・白勝(はくしょう)…元々盗人で、二度と盗みをしないことを自分と約束したが、そのスキルはいまだ健在。
・文祥(ぶんしょう)…何とか安道全の独自言語を会得しようと奮闘中。
・馬雲(ばうん)…(@_@)

21.
薛永「人格を入れ替える薬を作れてしまった」
安道全「ほう」
薛「厄介ごとが起きるのは重々承知している」
安「…」
薛「だが、この薬を一度も使わないで捨てるのは、あまりにも惜しい」
安「…」
薛「一緒に飲んでくれ、安道全」
安「当たり前だ、薛永」
薛「ありがとう!」
安「死ぬときは一緒だ」

白勝「そういう経緯で入れ替わったわけだな、お前ら」
薛(安)「そうだ、白勝」
安(薛)「実験は成功しました」
白「お前らのことだから当然対策は取れているのだろうが」
薛(安)「なんの?」
白「元に戻る薬も出来てるんだろうな、薛永?」
薛(安)「薛永?」
安(薛)「…」
白「目をそらすな」

安(薛)「作り方の記録は残してないか、馬雲?」
馬雲「( ;´Д`)」
安(薛)「私の記憶では…」
馬「_φ(・_・」
安(薛)「どれももう一度採取するのが大変な薬草ばかりだ」
馬「(._.)」
安(薛)「しかし、やるしかないよな」
馬「( ´Д`)y━・~~」
安(薛)「協力してくれ、馬雲」
馬「ʅ(◞‿◟)ʃ」

薛(安)「…」
白「顔色が悪いぞ、薛永」
薛(安)「薛永の顔色が悪いのはいつもの事だが」
白「そうだった」
薛(安)「いつも薛永はこんな体調で生きていたのか」
白「そんなにしんどいのか?」
薛(安)「血圧、体温といった諸々の数値で健全なものが一つもない」
白「ステータス異常が日常化してんのか」

林冲「入れ替わったのか」
薛(安)「まあな」
林「もし自分がそうなるとしたら」
薛(安)「ふむ」
林「双方の合意を必ず取った上で入れ替わり」
薛(安)「問題ない」
林「入れ替わった相手の行動を、逐一把握するな」
薛(安)「参考になるな」
林「薛永はどこへ?」
白「薬草取りにどっか行きやがった」

‎安(薛)「ファイト〜!」
‎馬「\\\٩(๑`^´๑)۶////」
‎安(薛)「これで崖に生えている薬草は全部だ」
‎馬「(・∀・)」
‎安(薛)「あとは、採取する日が限られているもので全て揃う」
‎馬「(._.)」
‎安(薛)「満月の時にしか生えない薬草だが、次の満月はいつだ?」
‎馬「∑(゚Д゚)」
‎安(薛)「しまった、昨日か」

安(薛)「しかし、だいぶ深い所に来てしまったな」
馬「Σ(-᷅_-᷄๑)」
安(薛)「こんな所に庵が」
馬「( ゚д゚)」
安(薛)「人がいるなら宿を乞おう」

安(薛)「ごめんください」
老師「…」
安(薛)「宿を乞いたいのですが…」
老「薬草探しに来たのかな?」
安(薛)「何故それを!?」
馬「(・・?)」

老「地霊星と入れ替わり、元に戻る薬に足りない薬草があるのだね?」
安(薛)「…」
馬「(゚ω゚)」
老「少し待っていなさい」
安(薛)「…」
馬「( ゚д゚)」
老「これだろう?」
安(薛)「完璧だ!」
馬「(°_°)」
老「梁山泊に帰るのだね?」
安(薛)「あなたは一体…」

老「目を閉じなさい」
安(薛)「…」
馬「(_ _)」
老「一清に、公孫勝によろしくな」
安(薛)(公孫勝?)

白「もう帰ったのか、薛永?」
安(薛)「いつの間に!」
馬「(@_@)」
薛(安)「簡単な薬草ではなかっただろう?」
安(薛)「信じられないと思うが…」

薛(安)「なんと」
安(薛)「すぐに薬を作る」

薛「良かった」
安「戻れた」
白「薛永の会った爺さんって何者だ?」
薛「正直婆さんにも見えた」
馬「( *`ω´)」
薛「別れ際に、公孫勝によろしく、と言っていたな」
白「公孫勝に?」
安「縁があるのか?」
薛「聞いてみる」

公孫勝「師匠に?」
薛「公孫勝によろしく、と」
公「まだ生きてるのか」

薛「確かにお爺さんでしたが」
公「婆さんにも見えたろう?」
薛「確かに」
公「そんな老人だったんだ」
薛「はあ」
公「私が子供の頃からな」
薛「え!」
公「仙人みたいな爺か婆だったよ」
薛「どっちですか?」
公「別れるまで分からなかった」
薛「はあ」
公「心底、どうでもいいがな」

薛「公孫勝殿は一体そこで何を?」
公「修行さ」
薛「…どうして?」
公「あまり軽率に人の過去を詮索するものではないぞ、薛永」
薛「失礼しました」
公「ではな」
薛「ありがとうございました」
公「…凄いな、薛永は」
薛「何がですか?」
公「あの庵を自力で見つけた者は初めてだと思うぞ」

・薛永…久々の自分の身体はやけに重くてしんどかった。
・安道全…薛永のコンディションに気を配るようになった。
・白勝…もしも入れ替わるなら?劉唐になって博打の技を盗みたいね。
・馬雲…(^-^)v

・林冲…与えられたお題に対して冷静に考えることができれば、それなりの意見は出せるのだぞ。

・羅真人…公孫勝の師匠。謎の多すぎる老人。
・公孫勝…修行時代のことはあまり思い出したくない。彼の過去もひっくるめて。 

文治省 

文治省…文書が飛び交う部署。きちんと区分けしないと、智多星怒涛の流星群をもろに食らうことになる。

人物
・蕭譲(しょうじょう)
…文字のまねっこが得意。李逵に文字を教えようとしたが、文字通り筆を折る結果となった。
・金大堅(きんだいけん)
…判子作りの名手。彫刻の腕も中々のもの。
・裴宣(はいせん)
…法務や地域行政担当。替天行道の無断転載や違法利用は見つけられ次第、彼からの警告書類がどこにいても届くから気をつけよう。

22.
蕭譲「恋文の代筆?」
李逵「…」
蕭(誰に?とか字が読めんだろう?と聞くのは無粋じゃな)
李「…」
蕭「喜んで引き受けるぞ、李逵」
李「本当か!」
蕭「なんて書けばいいのかな?」
李「俺の言う通りに書いてくれ」
蕭「よしきた」

蕭(なんて微笑ましい恋文だ)
李「蕭譲」
蕭「誰にも言わんよ」
李「…」
蕭「届けるのはお前がやるのだろう?」
李「考えてなかった…」
蕭「わしが届けたら、意味が変わってしまうぞ?」
李「…」
蕭「…」
李「…分かった」
蕭「まあこの手の事には渡す勇気ってのは必要じゃな」
李「…やってみる」

李「蕭譲!」
蕭「どうだった?」
李「大成功だ!」
蕭「返事はその両手の大荷物じゃな?」
李「お前のおかげだ、蕭譲」
蕭「わしはお前のやりたかった事の手伝いをしただけじゃよ」
李「お前のところの皆んなで食ってくれ!」
蕭(いつも買い物で世話になってる店へのお礼状が、李逵の恋文か)

・李逵…いつも行く、素晴らしい食料品や香辛料を揃えるお店にどうしても日頃のお礼を言いたかった。
・蕭譲…たまにはこんな仕事もいいもんじゃな。 

練兵場 

練兵場…早い話がグラウンド。殺伐さにそぐわないアスレチックが置いてあるが、そこで本気で遊べるようになって、初めて一流の梁山泊の兵士なのだ。

人物
・徐寧(じょねい)…調練の教官。彼の叱声よりも、鎧の音がうるさいのが兵たちの悩みの種。

23.
龔旺「やい、九紋竜」
史進「なんだ、花項虎」
龔「貴様は全身の龍の刺青が自慢らしいが」
史「む!」
龔「俺の虎だって負けてはいない」
史「そこまで言うなら見せてみろ!」
龔「見て驚け!」
史「こいつは…」
龔「…」
史「驚いた!」
龔「だろう?」
史「違う意味で」
龔「だよな」

史「限りなくアウトなデザインだ」
龔「かつて鼠の国の裁判にかけられたことがある」
史「なぜこんな刺青を」
龔「ファンとはいえ、原作へのリスペクトを感じられなかったそうだ」
史「リスペクトの塊でないと、そこまで身体は張らんぞ?」
龔「両目を乳首で間に合わせたのがまずかった」
史「それは」

・史進…俺はそんなバカなことはしないぞ!全部脱がないと全部見えないがな!
・龔旺…あだ名は花項虎。刺青を入れた虎という意味だが、煽てられてつい調子に乗ってしまった。鼠の国の入国を永久に禁じられている。 

梁山湖 

梁山湖…一見のどかで美しい湖だが、そこで暮らす主だけは怒らせてはならない。

24.
丁得孫「蛇だ!」
張清「本当に苦手なんだな、丁得孫」
龔旺「張清殿が苦手なものは?」
張「怒った瓊英」
丁「張清殿など、指先一つでダウンさせるだろうな」
張「お前は、龔旺?」
龔「魚肉の入った饅頭だ」
丁「その手は食わねえ」
張「そんな物が怖いのか、龔旺?」
龔(もの知らねえな、張清殿)

張「という訳で、龔旺を怖がらせるためにありったけの魚肉を用意して、朱富に作らせるぞ」
丁(こういうところあるんだよな、張清殿)
趙林「まだ釣りを始めないでください」
張「なぜだ?」
趙「まだここは張順殿の領湖です」
丁「どういう意味だ?」
趙「縄張りです、張順殿の」
張「知った事か」

趙「張清殿」
張「なんだ」
趙「今すぐ釣りをやめてください」
丁「だから、なぜだ趙林」
趙「警告しましたからね」
張「構うもんか」
丁「凶々しい気がしないか?」
趙「御免」
張「趙林!」
丁「やべえんじゃねえか、張清殿?」
張「」

龔「食わねえのか、二人とも」
張「今は魚肉の饅頭怖い」

・張清…注文の多い梁山湖にて、ご注文通りのリアクションを見せた。
・龔旺…丁得孫と共に、梁山タイガース新メンバー入りを果たす。槍投げで鍛えたレーザービームが自慢。
・丁得孫…蛇嫌いにもほどがあり、麺類が食えない。

・趙林…始めに言われたこと以上の仕事をさせるなら銭を払いなよ。 

朱貴・朱富のお店 

朱貴・朱富のお店…とりあえず、魚肉饅頭。言ったら出てくる。言わなくても出てくる。

人物
・朱貴(しゅき)…魚肉饅頭のできるまでは、原作公式ホームページのやつらに詳しいのでぜひともご一読のほどを。
・朱富(しゅふう)…携帯用や冷凍食品でも美味しく食べられるような工夫を凝らし始めた。

25.
朱貴「いらっしゃい」
陳麗「いらっしゃいませ」
宋万「恐ろしかった」
杜遷「大変だったな、宋万」
朱「何事だ?」
宋「巡検使を襲撃したら、返り討ちにあったのだ」
焦挺「顔に青痣のある凄腕の剣客でした」
陳「宋万殿も梁山泊一の武芸を誇ったではありませんか?」
宋「話にならなかったよ」

宋「首領に報告するのが憂鬱だ」
焦「罰を受けるかもしれませんね」
杜「なんとか回避する知恵はないか、朱貴?」
朱「あいつは弱みを見せたら強気になるからな」
陳「盛るのはどうでしょうか?」
宋「盛る?」
杜「首領に一服盛るのか、奥方?」
焦「杜遷殿、本音が」
陳「話を盛るのです、杜遷殿」

陳「巡検使が百人斬りした使い手とか」
宋「ふむ」
陳「二人で賊の討伐に乗り込み制圧したとか、そんな武勇伝を盛りこむのです」
焦「つまり、巡検使について調べたことを盛って報告すれば良いのですね」
陳「そうです、焦挺殿」
宋「策士だな、陳麗殿」
朱「初回相談料はまけとくよ」
杜「やり手め」

・朱貴…歴代のバイトの中で一番だったのが陳麗だった。
・陳麗…朱貴の若奥様。店の看板娘で兵の癒しだが、馴れ馴れしくすると容赦なく勘定に反映される。
・杜遷…陳麗殿は良い策士になりそうだ。
・宋万…後日巡検使と再会したが、忘れられてた。
・焦挺…後日巡検使と再会したが、マスコットだと思われてた。

26.
宋江「ついにこの日が来てしまったか…」

施恩「皆、今回は特別ゲストをお招きしている」
魯達「誰だ?」

宋「今この瞬間、朱貴の店に青蓮寺の軍でも襲いに来ないかな」

朱貴(今すごい殺気が!)

宋「行かぬわけには、いかぬか…」

魯「誰が来るのだ?」
施「そろそろお見えになります」

宋「待たせた、施恩」
施「替天行道の生みの親、宋江様です」
魯「なんと!」
宋(なぜいる、魯達)
同志A「マジかよ施恩!」
B「いかん、涙が」
魯「俺も…」
宋(なぜお前まで)
C「」
D「こいつ感動のあまり失神したぞ」
宋(そこまで!?)
施「それでは宋江様を囲んで、オフ会を始めましょう!」
宋(死ぬ)

施「替天行道暗唱ゲーム!」
宋(早速敗北必至のゲームが始まった)
施「魯達殿、13Pの2段落目から!」
宋(刻みすぎだろう)
魯「〜」
施「クリア!」
宋(即答した)
施「A、45Pの3行目から」
A「〜」
施「惜しい。読点の間が一呼吸ズレた」
宋(気が狂いそうだ)
施「宋江様の番です!」
宋(終わった)

B「施恩、それは宋江様に失礼ではないか?」
宋(いいぞ、B)
施「申し訳ございません、宋江様」
B「宋江様には全文暗唱タイムアタックに挑戦してもらわないと」
C「施恩のハイスコアを塗り替えてくださいね」
宋(またすごい企画が用意されている)
施「宋江様はそちらでよろしいですか?」
宋「ああ…」

宋(この冊子一冊でここまで楽しめるものなのか?)
A「魯達殿が書き留められたのですか?」
魯「いかにも」
D「すごい!」
C「書きながら泣きませんでした?」
魯「泣かぬわけないだろう、C」
C「そうですよね」
宋(私の義憤がここまで人の心を動かすとは)
B「それでは始めましょうか」
宋「…」

宋「皆」
施「?」
宋「今日この場に替天行道の同志の中でも選りすぐりの精鋭たちが集う場に招いてもらった事を、心から感謝する」
施「宋江様…」
魯「涙が…」
宋「私もこの場に来て、改めてこの書が生まれるきっかけになった想いが、熱く蘇ってきたのを感じている。施恩のおかげだ」
施「宋江様…」

宋「この感謝の想いを、オフ会の締めの挨拶に変えさせていただきたい」
施「…」
魯「…」
宋(決まった…)
B「…宋江様」
宋「どうした、B」
B「感激のあまり、涙が止まらないのですが、どうしても申し上げたい事がございます」
宋「何でも言え、B」
B「まだ会が終わる時刻まで、四刻あります」
宋「」

・宋江…タイムアタックは泣き真似をしながら、つっかえるのを誤魔化し続けた。
・魯達…施恩が発行している替天行道有料メルマガを全部購入して来た。
・施恩…梁山泊一の替天行道マスター。宋江からの感謝の言葉に涙が止まらなかったが、オフ会はキチンと定刻通り続けた。
・朱貴…オフ会コースも充実!

・速読のA…本隊騎兵
・暗唱のB…致死軍
・記憶のC…文治省
・修繕のD…大工

郵便屋さん 

郵便屋さん…神行法で必須の高級精進料理のため、ここぞとばかりに経費を吹っ掛ける戴宗と、それを防ぐ呉用の戦いは永遠に続く。

人物
・戴宗(たいそう)…生涯使わないつもりだった神行法もすっかり解禁してしまった。 全部呉用にチクった宋江のせい。
・張横(ちょうおう)…初めのうちは神行法を使ってみたいと思ったが、戴宗の振り回されっぷりを見てやめた。
・王定六(おうていろく)… こっそり使ったら、戴宗でも800里(400km)なのに、1000里(500km)走れてしまった。絶対に言わないでおこう。

27.
王定六「こんな夢を見た」
張横「どんな?」
王「飛脚がいらない夢だ」
張「ほう」
王「飛脚ではなく、乗り物が幅を利かせて荷物を届けていた」
張「手紙は?」
王「いつでもどこでも、一瞬で送ることができる代物があった」
張「一瞬か」
王「それはそれで気苦労が多い世界だったが」
張「複雑だな」

王「即座に返事がないと不満を言われる世界だ」
張「五日も待てんのか?」
王「便利さゆえの面倒くささみたいな夢だったな」
戴宗「畜生、また神行法を使わんといかんとは」
王「速い」
張「流石に一日八百里(400km)は走れんだろ?」
王「人は走れんが、乗り物は二刻で八百里だ」
張「意味ねぇな、戴宗殿」

・王定六…神行法ねぇ。個人的には使いたいけど、仕事じゃ使いたくねぇな。絶対もっとこき使われるだろ?
・張横…神行法を使った後の戴宗は、いつもやつれていて気の毒だ。
・戴宗…神行法は生臭物を食べてはいけなかったり、お札を作らなくちゃいけなかったり、細かなルールが多い。 

間者 

間者…スパイ、密偵のセクション。スパイものの小説や映画を語り合う会では、各自の生々しい実体験も伴うので毎回白熱する。

人物
・時遷(じせん)
…凄腕の泥棒。若いころ、開封府の禁軍師範が持つ超一級品の鎧を盗もうとしたが、運ぶ音がうるさすぎて断念したのが心残り。
・石勇(せきゆう)
…若手。寝床よりも天井裏の方が落ち着く。
・侯健(こうけん)
…仕立屋さんとの二足の草鞋。本業の仕立ての腕は超一流で、繁忙期は梁山泊から仕立ての依頼が殺到する。
・孫新(そんしん)
…口が達者。実は笛もそこそこできる。
・顧大嫂(こだいそう)
…強すぎる孫新の女房。真っ向勝負にはめっぽう強いがからめ手に弱い。
・張青(ちょうせい)
…返り討ちにあうのを分かりきっているのに、孫二娘にケンカを売っては泣きを見る。
・孫二娘(そんじじょう)
…ボンドガールみたいだって?みたいなんてヤワなもんじゃないよ。

・馬桂(ばけい)…亡くなった旦那から受け継いだ芸人の一座を率いている。一行空いてるスペースで色々察してね。

28.
時遷「間者たるもの、身体の手入れを欠かすなよ、石勇」
石勇「ですが、どうにも身体が硬くて」
時「270度開脚も出来んと、梁山泊の間者は務まらんぞ」
石「頭領の股関節は柔らかすぎます」
時「関節も外せればより高度なストレッチができる」
石「戻せなくなって大変だったから、二度とやりません」

・時遷…元泥棒の間者のお頭。人体の構造の概念を根底から覆す柔軟性。
・石勇…時遷の弟子。既に身体は十分すぎるほど柔らかいのだが、時遷の柔軟性を追い求める姿は、決して追いつかない陽炎を追いかける姿に似ている。
 
29.
馬桂「この手品はお客様にお手伝いしていただきたいのです」
客「…」
馬「そこの方、壇上までお願いできますか?」
公孫勝「…」

馬「この箱の中に入っていただけますか?」
公「…」
馬「この箱に、剣を刺します」
芸人「覚悟!」
客「!」
芸「もう一本!」
客「!」
芸「とどめだ!」
客「!」
馬「中に入ったお客様の運命は!」
公「…」
客「凄え!」
客「頭で倒立してやがる」
客「妖術師だ!」
馬(一体どうやってるのかしら)

・馬桂…芸人の一座を率いて各地を回りながら情報収集をするのが仕事。ジャグリングが得意。
・公孫勝…妖術と勘違いされるが、そんなの出来るわけないだろう。

女傑三人衆 

女傑三人衆…3/108でしかないものの、その存在感はゆうに過半数を軽く超えていく。

人物
・扈三娘(こさんじょう)
…何で旦那が王英なの?
・顧大嫂(こだいそう)…何でそんなに強いの?
・孫二娘(そんじじょう)…何で厨房から変なにおいがするの?

30.
扈三娘「梁山泊で一番の変態は誰だと思いますか?」
孫二娘「あんたからそんな話題が出てくるとは」
顧大嫂「本気で相手してやろうじゃないか」
扈「ありがとうございます」
孫「史進は違うね」
顧「単なる裸ん坊の小僧だ」
扈「あれはお粗末で見てられません」
顧「よく見てるじゃないか、扈三娘」

扈「裸になるからと言って、必ずしも変態ではないと思うんです」
孫「史進はただ馬鹿なだけだね」
顧「あれでエグい性癖持ってたら只者じゃないね」
扈「失礼、通知が」
孫「また義足のBさんかい?」
扈「またです」
顧「そんな変態、さっさと足切りしちまいなよ」

扈「今変態というキーワードが出ましたね」
顧「そりゃそうじゃないか」
孫「よく相手する気になるね」
扈「彼の妄想ツイートはエグいですよ」
顧「真性の変態だ」
孫「あんたもその気があるんじゃないか、扈三娘?」
扈「どうでしょうね」
顧「否定しなよ、そこは」

・扈三娘…騎馬隊でも脱ぐのにはさほど抵抗はありませんよ?見たら殺しますが。
・顧大嫂…あたしはシンデレラストーリーってやつに憧れてたのよ。
・孫二娘…今の旦那は真っ直ぐすぎて、こっちが照れ臭くなっちまうよ。昔の旦那?小賢しい搦め手が得意だったね。それも嫌いじゃなかったけどさ。

・義足のB…異様に扈三娘に付きまとう、謎のど変態。うっかり青蓮寺公式アカウントから妄想をダダ漏れさせてしまった時のことは、絶対に言うなよ。

青蓮寺[公式]@ seirenzi
蓮の花が見頃を迎えました!観光客の皆様にはどうぞマナーと譲り合いを持って、ご観覧ください! (担当K)

青蓮寺[公式]@ seirenzi
落し物の連絡です!替天行道の服を着たぬいぐるみを無くされた方はいらっしゃいませんか?青蓮寺落し物窓口までお越しください!(担当K)

青蓮寺[公式]@ seirenzi
深夜残業の捌け口を求めて

青蓮寺[公式]@ seirenzi
変態の皆さんお待ちかね。扈三娘妄想シリーズ。食事編

青蓮寺[公式]@ seirenzi
熱々の竹輪を食う扈三娘はエロい。
汁を垂らすとなおエロい。

口口牛 @ bisfool
FF外から失礼します。アカウントを間違えてませんか? 

林冲さん家 

林冲さん家…バカップルの巣窟。彼の家から帰る連中の顔は軒並み渋い。

人物
・張藍(ちょうらん)
…すっかりレギュラーに定着したねぇ、あんたも。
・林冲(バカ)…力関係からしてこの順序じゃないと絶対おかしいよね。

31.
張藍「こっちを向きなさい、林冲」
林冲「勘弁してくれ、張藍」
張「私の誕生日を忘れた罰です」
林「ハムスターの格好をする罰など聞いたことがないぞ」
張「ハムスターではありません。林ちゅーです」
林「くそっ」
張「語尾にちゅーをつけなさい」
林「こんな所を誰かに見られたら…」
公孫勝「…」

林「埋め合わせは必ずする」
張「ちゅーを、つけなさい」
林「埋め合わせは必ずする、ちゅー」
公「…」
劉唐「…」
林「許してくれちゅー、張藍」
張「そこまで言うなら」
公「…」
劉「…」
索超「…」
馬麟「…」
扈三娘「…」
郁保四「…」
魯達「…」
安道全「…」
白勝「…」
百里風「…」

張「窓を開けて、私への愛を、絶叫しなさい」
林「…」
張「…」
林「張藍」
張「…」
林「愛しているちゅー!」
公「…」
劉「…」
索「…」
馬「…」
扈「…」
郁「…」
安「…」
白「…」
魯「…」
百「…」
林「」
張「ちゅーはいりません。林冲様」
公「…」
林「一思いに殺してくれ、お前ら」

・張藍…怒ってませんよ?全然。

・公孫勝…何も言えんよ。何もな。
・劉唐…ノーコメントです。
・索超…いい思い出じゃないですか?
・扈三娘…ああはなりたくないです。
・馬麟…笛の音が乱れる…
・郁保四…できれば見たくなかったですね。
・魯達…あの可憐な奥方が怒るとこうなるのか。
・安道全…薛永に頼んでバカにつける薬を二人分定期購入させよう。
・白勝…話題にもしたくねえやな。
・百里風…張藍様を主にしよう。

・林冲(バカ)…あれだけうるさいと思っていた連中の無言があんなに堪えるとは。 

盧俊義屋敷 

盧俊義屋敷…豪邸ではあるものの質素な佇まいを感じさせる外観は評価されているが、その内装は…

人物
・盧俊義(ろしゅんぎ)
…大工さんたちにも闇塩の仕事と同じ仕事量と質を追求した結果、当初の見積額からゼロが2つ増えた。
・燕青(えんせい)
…イケメンだけどとっつきづらい心の壁を感じるが、やっぱり人間なんだな、と思うところは多々ある。
・蔡福(さいふく)
…憎まれ口と屁理屈の名手。リアクション芸に定評あり。
・蔡慶(さいけい)
…何かと衝突する盧俊義と蔡福の間を取り持つことが多い。その様相はさながらコント。

32.
蒋敬「蒋敬という」
燕青「燕青です」
蒋「これから盧俊義殿の元で世話になる」
燕「屋敷を案内します」
蒋「頼みます」
燕「事前に注意しておくことがいくつか」
蒋「はい」
燕「押したくなるスイッチが各部屋に点在していますが、絶対押さないように」
蒋「つかみからもってくるな、燕青」

燕「押すと後悔しますよ」
蒋「そういう言葉はかえって逆効果になるのを知らないのか?」
燕「引き出しに盧俊義様からの指令が入っていることがありますが、必ず従うように」
蒋「バラエティ番組のルール説明になってないか、燕青?」

蒋「早速気になるスイッチが」
燕「…」
蒋「覚悟はいいか?」
燕「…」
蒋「俺はできてる」
燕「…」
蒋「!」
燕「だから押すなと」
蒋「盥は想定内だ」
燕「命に関わるものもありますよ」
蒋「なぜ知っているのだ、燕青?」
燕「…」
蒋「全部押したな?」
燕「私だって人間ですから」

・蒋敬…落とし穴も想定内だったが、竹槍を仕込む必要はないではないか!
・燕青
…絶対に入ってはいけない部屋に入った先輩が消息を絶った。

33.
盧俊義「我が家の仕掛けを全て新しくした」
燕青「…」
盧「リニューアルしてから初めてのお客様にお渡しするチケットを、厳正な審査で選んだ結果」
蔡福「…」
盧「見事に蔡兄弟が当選した」
蔡慶「…」
盧「仕掛けだらけの玉麒麟ハウスにようこそ!」
福「応募した覚えがないのだが」
慶「生贄だな」

福「厳正な審査の結果が、ここまで恣意的なのはなぜでしょうか?」
盧「企業秘密だ」
福「…」
盧「私の家を娯楽施設として開放しようと思う」
福「ならば入口に、昨日の事故件数の掲示板も用意しましょう」
慶「死にませんよね?」
盧「企業秘密だ」
福「大至急青蓮寺に通報するぞ、慶」
盧「裏切者」

燕「さすがにそれをさせるわけにはいかない」
福「じゃあお前も来い、燕青!」
盧「それは困る」
福「私たちはいなくても困らないのですか?」
盧「勿論お前たちも欠かせない人材だ」
慶「ならばなぜ私たちに?」
盧「お前たちの反応を確かめたいのだ」
福「我らはリアクション芸人ではありません」

慶「観念しよう、兄貴」
盧「さすが蔡慶はノリが良い」
福「…」
盧「地図を渡そう」
慶「…」
盧「各地点のチェックポイントで108つの好漢スタンプを集めて帰ってこい」
福「多すぎませんか?」
盧「同志を仲間外れにするつもりか!」
福「我らが欠けてもよろしいので?」
慶「もう行くぞ、兄貴」

福「玄関を開ける前から凶々しい気を放っている」
慶「行くぞ、兄貴」
福「!」
慶「静電気か」
福「やる事が女々しい」
慶「!」
福「お前もか」
慶「開けるぞ」
福「!」
慶「矢が飛んできた…」
福「入るぞ…!」
慶「落とし穴が」
福「デブで良かった」

盧「まだ玄関にいるのか」
燕「…」

慶「李忠と周通のスタンプはチョロかった」
福「奴らはその程度だ」
慶「兄貴」
福「なんだ」
慶「燕青から攻略メモを貰っている」
福「なんだと?」
慶「これを見ればスタンプの場所は一目瞭然」
福「梁山泊の緊急相談窓口Twitterで拡散するぞ」
慶「!?」
福「飛刀で切り裂かれた」
慶「項充…」

燕「メモを渡した罰で私も参戦だ」
福「ざまあないな」
慶「兄貴。燕青は俺たちのためを思って」
福「甘いぞ、慶」
慶「!?」
福「あのメモはフェイクだったかも知れん」
燕「…」
福「我らを更に貶めるために参戦するふりをしているのではないか?」
慶「酷いぞ、兄貴」
燕「身の潔白を証明しよう」

燕「最難関の一つ。李逵ゾーンを私だけでクリアしたら認めてくれるか?」
福「どんなゾーンだ?」
燕「あれだ」
福「」
慶「板斧が乱れ飛んでいる…」
福「スプラッター映画でも見たことがない…」
燕「このスタンプを、私だけで取ってくる」
福「…」
慶「そこまでしなくても…」
燕「やらせてくれ」

燕「!」
慶「見事な身のこなしで板斧を躱している」
福「力士の人形が!」
燕「焦挺」
慶「かわした!」
福「バーサーカーのような人形も来たぞ!」
燕「鮑旭」
慶「美しい…」
福「危ない、燕青!李逵が後ろから!」
燕「李逵!」
慶「クリアした…」
福「…」
燕「スタンプは3つだ」

慶「見事だった、燕青」
福「…」
燕「…」
福「軽率に疑って本当にすまなかった、燕青」
慶「兄貴」
燕「私たち三人の力でクリアしよう」

盧「助けてくれ!」

燕「盧俊義様の声が」
慶「なんだ?」
福「盧俊義様を助ける前に、我らの命と身の安全を保障させる事を忘れるな」

盧「助けて!」

燕「盧俊義様!」
慶「ここは…」
福「我らのゾーンではないか」

盧「蔡兄弟のからくり人形の力を見誤って捕まってしまった」
福「なんて悪意に満ちあふれたデザイン」
慶「盧俊義様。もういいでしょう」
燕「我らも一緒に脱出させてください」
盧「やむなしか」

盧「一番安全なルートでも死にかけるのだな」
福「石秀ゾーンは助けとなると思ったのですが」
慶「楊雄ゾーンを疎かにしたら豹変しやがった」
燕「一体何を参考にされて屋敷を作ったのですか?」
盧「水滸伝という書物だ」
福「これは駒田信二先生の書物ですな」
慶「宣伝する本を間違えてないか?」

・盧俊義…難易度を下げ、梁山パークと名を変えた結果、連日行列が絶えない超人気スポットになった。
・燕青…自分のゾーンなのに何故かしっくりこなかった。
・蔡福…柴進ゾーンで肝を冷やした。
・蔡慶…関勝ゾーンの居心地が良かった。 

雄州 

雄州…商店街のイメージキャラクターは関勝のゆるキャラ。着ぐるみの中身は案の定関勝。

人物
・関勝(かんしょう)
…真面目になればかっこいい男なんだがなぁ。
・宣賛(せんさん)…雄州から持ってきた関勝を嵌める策のノウハウは、今では致死軍の力となっている。
・郝思文(かくしぶん)…親子水入らずの時を過ごしたいときに限って、息子と娘と一緒に泥だらけになって帰ってくる上官にいつもため息をつく。
・単廷珪(たんていけい)…持ちネタは水も滴る良い男。全然そんなことない。
・魏定国(ぎていこく)…熱血キャラを期待されがちだが、本人の熱さはやや中火くらい。

34.
郝瑾「関勝殿、早く来てください」
郝嬌「置いてっちゃうよ」
関勝「待て、郝瑾、郝嬌様」
瑾「私たちの秘密基地はまだまだ先ですよ」
嬌「あのお山のてっぺんにあるのよ」
関「その前に、この谷間を飛び越えなくてはならんのか?」
瑾「慣れたら簡単ですよ」
関「足がすくむ」
嬌「弱虫!」

瑾「着きました」
嬌「久しぶりね、兄上」
関「俺の部下でもたどり着けるのは100人に満たないかもしれん」
瑾「関勝殿の青龍偃月刀の出番です」
嬌「大刀関勝殿!」
関「何に使えばいいのかな?」
瑾「この繁茂したツタを除去してください」
嬌「基地の大掃除をして、関勝殿」
関「郝嬌様のためなら」

関「若い頃の武術の稽古よりも厳しい」
嬌「まだやり残してるわよ、関勝殿」
関「すまん、郝嬌様」
瑾「俺たちの基地もだいぶ古びてきたな、嬌」
嬌「ビンテージね、兄上」
関「それで、何して遊ぶんだ?」
瑾「今日は基地の大掃除に来ただけですよ?」
嬌「私たちだけじゃ無理だもの」
関「お前ら」

・郝瑾…関勝殿も意外と体力ないんだな。
・郝嬌…関勝殿より兄上の方が足が速いのね。
・関勝…次に秘密基地に行くときのために、己を鍛える調練を倍厳しくした。 

子午山 

子午山…人里離れた一軒家に、人間離れした連中が一つ屋根の下に暮らしている。

人物
・王母(おうぼ)…開封府に住んでいた頃から、度が過ぎる悪ガキを更生させていた。今なお突然の出奔を惜しむ声は強い。
・王進(おうしん)…行間から皆を見守る、作中最強師匠。

35.
史進「鮑旭。早く水浴びに行くぞ」
鮑旭「脱ぐのが早すぎます、史進」
史「夏を先取りしているだけだ」
鮑「すぐ脱ぎたがりますよね、史進は」
史「俺の竜がそう囁くのだ」
鮑「それにしても、見事な刺青ですね」
史「実家の近くに住んでいた彫り師の爺さんの、最期の仕事だったんだ」

鮑「そうだったんですね」
史「悔いのない人生だったと言っていたよ」
鮑「よく見せてください」
史「惚れるなよ」
鮑「…ん?」

竜1「右肩の竜を見よ」
竜2「へその下の竜を見よ」

鮑「…」
史「何を凝視している」

竜5「左肩の竜を見よ」
竜6「右乳首の竜を見よ」
竜7「背中の竜を見よ」

鮑「…」
史「気持ち悪いぞ、鮑旭」

竜8「尻の竜を見よ」

鮑「…」
史「なんなんだよ」

竜9「うんこ排出口」

鮑「wwwww」
史「?」

・史進…俺に死角などない!
・鮑旭…いつか史進の友達に会ったら教えてやろう。

・彫り師の爺さん…史進が自身では絶対に見ることの出来ない位置に、様々な仕掛けを施して逝った。

36.
楊令「張平」
張平「はい」
楊「今ここで私の物を何でもいいから盗んでみろ」
張「もう盗みました」
楊「何!」
張「気づいてなかったのですか?」
楊「何を盗んだのだ?」
張「今私はどんどん楊令殿の大事な物を盗んでますよ」
楊「…私の時間か」
張「ご名答」
楊「そういうのはいい、張平」

楊「テイク2だ、張平」
張「しからば」
楊「…」
張「…」
楊「面と向かってなら容易くは盗まれないぞ」
張「王進先生!」
楊「!」
張「…」
楊「いらっしゃらないではないか」
張「私の勝ちです。楊令殿」
楊「何!」
張「楊令殿の目を盗みました」
楊「まいった」

・楊令…張平のとんちには敵わん。
・張平…搦め手に弱いんだよな、楊令殿。 

変身 

変身…ある朝目を覚ました好漢たちは、何に変身したのだろうか…

37.
林ちゅー「ある朝俺が目を覚ましたら、ネズミになっていた」
張藍「まあ」
林「どうしたものか」
張「カゴと滑車を用意しましょう」
林「飼うな」
張「生身で大丈夫ですか?」
林「俺を誰だと思っている」
張「林ちゅー様です」
林「ならば何も言うな」
張「私も何を言ったら良いのか分かりません」

林「調練に行ってくる」
張「一人、一匹で行けますか?」
林「言い直すな、張藍」
張「私も行った方が良いのでは?」
林「子供ではない」
張(ネズミですけど)
林「ではな」
張「お気をつけて」

張「…」
林「張藍」
張「お早いお帰りですね」
林「肩に乗せてくれ」
張「なぜです?」
林「一里がこんなに遠いとは思わなかった」
張「千里の道も一歩からですよ」

・林ちゅー…ねずみ。滑車を回すのがこんなに良い調練になるとは思わなかった。
・張藍…頼み事をするときは、語尾にちゅーをつけることを条件に合意した。

38.
劉唐「ある朝俺が目を覚ましたら、公孫勝殿が猫になっていた」
ね公孫勝「…」
楊雄「警戒されてますね」
孔亮「なだめろ、楊雄」
楊「猫アレルギーなんだ」
孔「使えねえな」
公「!」
劉「逃げた!」
楊「追いましょう」

劉「もともと獣のようだった公孫勝殿が獣になったら追いつけるわけもないか」
楊「良くも悪くも人間ですね、俺たち」
孔「すると致死軍隊長は劉唐殿だな」
劉「公孫勝殿がいるではないか」
孔「猫に致死軍の隊長が務まるので?」
劉「それは」
孔「!?」
劉「猫が孔亮の喉笛に」
楊「公孫勝殿だ!」

公「…」
劉「ご無事で何よりです、公孫勝殿」
孔(無事なのか?)
公「…」
孔(まさか猫に本気で跪く日が来るとは)
劉「公孫勝殿」
公「…」
劉「撫でてもよろしいでしょうか」
公「…」
劉「…」
公「!」
劉「逃げた!」
楊「追いましょう」
孔「何回やるんだよ、この茶番」

・ね公孫勝…猫。勝手気ままさに拍車がかかった。
・劉唐…肉球を愛でたくて愛でたくて仕方がない。
・楊雄…くしゃみと痒みが止まらなくなった。
・孔亮…ね公孫勝が襲いかかるときは、本気で殺しにかかっている事に気づいた。

39.
孫新「ある朝俺が目を覚ましたら、嫁が虎になっていた」
顧大嫂「…」
孫「とりあえずありったけの食い物は用意した」
顧「!」
孫「もう食い終わったのか?」
顧「!!!」
孫「恐ろしい咆哮だ」
顧「!!!」
孫「虎退治のプロを呼ぼう」

李忠「待たせたな」
孫「武松じゃねえのかよ!」
李「打虎将の李忠とは私のことだ」
孫「経歴詐称じゃねえだろうな」
李「失礼な」
孫「いいから虎になった嫁をなんとかしてくれ」
李「顧大嫂か」
孫「早くしろ」
李「勝てる気がしない」
孫「打虎将やめろ!」

李「お前の兄に頼むのは?」
孫「二人で騙した前科があるから、断られた」
李「自業自得だ」
顧「!!」
孫二娘「騒がしいね」
顧「!!」
娘「その声は、私の友、顧大嫂ではないかい?」
顧「!」
娘「肉が有り余ってるから食いにおいでよ」
顧「♪」
孫「虎と夜叉がタッグを組んだ」
李「地獄だな」

・顧大嫂…あだ名は母大虫。大虫は虎のことだよ!
・孫二娘…あだ名は母夜叉。有り余ってる肉の原料?どうしても知りたかったら厨房までおいでよ。 

・孫新…兄の孫立の信用回復に努めることを決めた。
・李忠…あだ名は打虎将。虎と戦った結果?負けたのではない。戦略的撤退だ。負けたのではないということは、私が勝ったということだろ?

40.
石秀「ある朝俺が目を覚ましたら、周通が項羽になっていた」
周通「…」
楊志「凄く強そうだ」
曹正「逞しくなったな、周通」
周「…」
蒋敬「しかし、あれですね」
曹「言いたいことは分かるぞ、蒋敬」
周「…」
楊「小さいな、周通」
石「小をつけた慎ましさが裏目に出たな」

石「身長はいくつだ?」
周「162cm」
曹「中途半端な」
蒋「項羽と言えば、名馬の騅と虞美人ですよね」
楊「騅に相応しい駿馬はいないか?」
曹「解体用の牛ならいるぞ」
石「虞美人は?」
周「済仁美殿に」
楊「」
周「!?」
曹「吹毛剣の抜打ちか?」
石「小覇王の四面楚歌だ」
蒋「汝を如何せん」

石「わざわざご足労いただきありがとうございます」
済仁美「虞美人様とは光栄です」
楊「」
楊令「父上怖い」
済(嫉妬しまくってる旦那様も可愛い)
曹「騅は牛で勘弁してくれ」
周「なんだかな」
蒋「項羽が牛に乗って人妻とツーショットか」
周「周って国を作ってやるぜ」
柴進「今なんと言った?」

・周通…あだ名は小覇王。反省会の様相はさながら鴻門の会。
・楊志…たとえ大ピンチだろうと、済仁美と楊令を車から投げ捨てる輩ではない。
・曹正…楊志は俺の事を我が子房って言ってくれたぜ。
・石秀…お前は脂肪だ。人豚にするぞ。
・蒋敬
…二竜山の蕭何になってみせます!

・柴進…かつて宋に取って代わられた、周って国があったんだ。私の先祖が興した国なんだけどな。

・済仁美…もしも私が死んだ時には、そこに一輪の花が咲いたら嬉しいな。
・楊令…初めてのおつかいの時は、さながら背水の陣の心持ちだったという。

41.
石勇「ある朝俺が目を覚ましたら、頭領が蚤になっていた」
時遷「」
石「出オチにもほどがありますよ、頭領」
時「」
石「太鼓を並べましたよ、頭領」
時「」
石「だめだ、やっぱり聞こえない」
時「」
石「蚤のみのネタじゃ無理ですよ頭領」
時「」
石「刺された!」

・石勇…俺のあだ名は石将軍だが、変身したら石になってしまうのか?
・時遷…あだ名は鼓上蚤。太鼓の上で飛び跳ねても、音がしないくらい軽い身のこなしを評価されて付けられたあだ名。蚤じゃなくて良くね?

42.
燕青「ある朝私が目を覚ましたら、旦那様が麒麟になっていた」
盧俊義「…」
蔡福「もうちょっとスリムだとかっこいいですがな」
蔡慶「兄貴、鏡」
盧「!」
燕「盧俊義様?」
慶「追いかけよう」

福「麒麟はもっと足が速いイメージだったのだが」
盧「」
福「!」
燕「角で貫かれた…」
慶「兄貴!」
福「案ずるな。こんな時のための皮下脂肪だ」
慶(ドヤるな)
盧「!」
燕「何かに導かれるように走っているな」
慶「この先に何があるのだろうか?」
福「酒屋か醸造所ではないか?」

盧「」
燕「梁山泊のど真ん中だ」
福「俺たちの移動距離は目をつぶってくれ」
慶「北から誰か来るぞ!」
燕「李逵が亀を抱えている」
李逵「陶宗旺が亀になっちまった」
燕「玄武だ…」
慶「東から竜が!」
童猛「待て李俊殿」
燕「青龍…」
慶「南から朱雀…」
杜興「李応殿」
燕「西から来るのは…」

慶「白虎だ!」
燕「一体誰が…」
福「燕順か?」
慶「陳達では?」
燕「薛永かも」
孔亮「待て、兄貴!」
孔明「!」
燕「なるほど」
慶「四獣に麒麟が揃った」
燕「光に包まれた!」
福「何が起きるというのだ?」
盧「…」
燕「全員元に戻った」
慶「…そんだけ?」
福「オチが弱い」

・盧俊義…あだ名は玉麒麟。彼の立派さをなぞらえた意味。帰りはヘリをチャーターし、燕青と蔡慶を乗せて帰った。
・燕青…北京から梁山泊まで歩いたのもあの時以来か…
・蔡慶…まぁ置いていかれても仕方ないよな。
・蔡福(デブふく)…腹の傷の治療もそこそこに、盧俊義の指定した期日内に何とか歩いて帰ってきた。

・陶宗旺…あだ名は九尾亀。伝説の亀のこと。どっしりとした安定感あふれる足腰は確かに亀っぽい。
・李逵…スッポンかと思って鍋にぶちこむところだったよ。

・李俊…あだ名は混江竜。地元の長江(揚子江)をかき乱す竜。他の竜の奴に比べたら妥当なところだろ?
・童猛…遠くの方で独角竜が飛んでた気がする…

・李応…あだ名は撲天鵰。天を打つ鷲。本人はホークスファン。
・杜興…李応殿の朱雀が美しすぎて、ガラケーの画像フォルダが一杯になった。

・孔明…あだ名は毛頭星。星の昴のこと。虎ではないけど白虎なのには理由がある。
・孔亮…あだ名は独火星。火星のこと。青州軍に入ってなかったら、兄貴と山賊になってたかもな。 

青蓮寺

青蓮寺…どこかの変態バカが引き起こしたTwitter炎上騒動は、高級官僚数名分の血で鎮火させることになった。

・袁明(えんめい)…青蓮寺総帥。その勉強熱心な姿勢は、スマホの説明書に引かれた丁寧な赤い下線にも表れている。
・李富(りふ)…働くことしか考えてないから、空き時間では仕事を作る仕事に従事する。
・聞煥章(ぶんかんしょう)
…洪清と目が合うと、ろれつが回らなくなる。何やったんだよ、お前。
・洪清(こうせい)…体術道場やお寺の管理人さんの時の顔は穏やかなおじいちゃん。一たび袁明の護衛になったら雰囲気は一変する。
・高廉(こうれん)…闇の軍指揮官。一度でいいから公孫勝に罵られたい。
・殷天錫(いんてんしゃく)…高廉の副官。林冲のサインがどうしても欲しい。
・呂牛(りょぎゅう)…聞煥章の何か。一度だけ洪清にお灸をすえられたことがあるが、その時のことは…
・沈機(しんき)
…李富の年上の部下。李富のOJTを任されたときからの付き合いなので、幹部になった時の感慨もひとしおだった。

43.
馬桂「李富様」
李富「…」
馬「また私の家まで来て仕事ですか」
李「…」
馬「働く時と休む時をもっと切り替えては?」
李「…」
馬「李富様」
李「…」
馬「筆が逆さですよ」
李「!?」
馬「…そんなわけないではないですか」
李「…馬桂」
馬「なんですか?」
李「…なんでもない」
馬(照れすぎだろ)

・李富…馬桂とのLINEでは饒舌で絵文字もスタンプも多用しまくるが、面と向かって会った途端に伏し目がちになり口数も激減する。
・馬桂…李富の愛人。最初は、なぜか足しげく家にやってくる暇人だと思っていた。今は愛する対象というより、興味深い観察対象。家に働きに来るアサガオみたいなもんね。

44.
聞煥章「李富、まだ仕事か?」
李富「仕事ではない。開封府の塩商人の名簿を作り直していたところだ」
聞「たまには外出に付き合ってくれ」
李「分かった。支度をする」
聞「適当な部屋着だな」
李「ここは私の執務室兼自宅だ」
聞「衣類をしまう場所はあるのか?」
李「書類棚の隙間にしまってある」

李「待たせた」
聞「そういえば、李富」
李「なんだ?」
聞「いつ見ても同じ仕事着ではないか」
李「そうだが?」
聞「まさか一着しかないのか?」
李「馬鹿を言うな。同じ着物を十着持っている」
聞「…なぜ一種類しかないのだ?」
李「毎日選ぶのが面倒なのだ」
聞(そんな起業家がいた気がする)

李「外に出るのも久しぶりだ」
聞「前に出たのはいつだ?」
李「その時もお前と外出した時だな」
聞「しれっと聞き捨てならん事を言ったな、李富」
李「聞煥章?」
聞「あれは確か二ヶ月前ではなかったか?」
李「そんなになるのか」
聞「今日まで一歩も外に出なかったのか?」
李「気にもしなかった」

・李富…今日も仕事、明日も仕事。本文でも仕事、行間でも仕事。出番がなくても、仕事。
・聞煥章…二週に一回は李富を外出に誘うようにしよう。

45.
聞煥章「宋国で一番の変態は誰だと思う?」
呂牛「お前からそんな話題が出てくるとは」
沈機「本気で相手してやろう」
聞「よろしく頼む」
呂「趙安は違うな」
沈「単なるキャラ作りの一環だな」
聞「お粗末で見てられん」
呂「よく会っているではないか、聞煥章」

聞「フレッシュマンだからと言って、必ずしも変態ではないよな」
呂「趙安はただ馬鹿なだけだな」
沈「あれでエグい性癖持ってたら只者じゃないな」
聞「失礼、返事が」
呂「また扈三娘か?」
聞「まただ」
沈「そんな変態を相手に、お前は股間を噛みちぎられるぞ」

聞「今変態というキーワードが出たな」
呂「そりゃそうだろう」
沈「よく相手にされてるな」
聞「扈三娘の返信もエグいぞ」
呂「真性の変態だ」
沈「お前に気があるんじゃないか、聞煥章」
聞「当たり前だろう」
呂「肯定するなよ、そこは」

・聞煥章…変態。生粋のストーカー気質。
・呂牛…変態。覗き常習犯。
・沈機…変態。粘着質。

46.
高廉「盧俊義が、呑気な商売を始めた」
殷天錫「梁山パークですな」
高「殷天錫」
殷「はい」
高「我らは間違っても遊びに来たのではない」
殷「…」
高「闇塩の痕跡や記録を持ち帰り、青蓮寺の土産にするのが目的だからな」
殷(ならば全ての公孫勝に丸がつけてある物販リストは一体…)

殷「柴進エリアで写真撮ってください、高廉殿」
高「どうなっても知らんぞ」

殷「痛え…」
高「李逵の板斧を思い切り食らったな」

高「やられた…」
殷「楊林の矢を受けるとは、不覚をとりましたな」

高「いよいよ本番だ」
殷「盧俊義ですか?」
高「満を持して公孫勝エリアに入る」
殷(だよね)

高「すげえ!」
殷「なんてリアルな妖術!」
高「俺もこんな術が使えたら」
殷「風も雨も魔神も本物のようですな」

高「愉しかったな、高廉」
殷「もう帰りません?」
高「そう言う訳にはいかん」
殷「じゃあ任務に…」
高「!」
殷「…」
高「なんだあの雷横は」
殷「戦なら死んでましたな、高廉殿」

・高廉…殷天錫ですら気がつかないほどの早さで、公孫勝グッズをコンプリートした様はさながら妖術。
・殷天錫…夢に李逵が現れ絶叫した。 

禁軍

禁軍…童貫元帥一味は調練でお休み。

人物
・趙安(ちょうあん)
…フレッシュ!そろそろキャラにテコ入れしないときついんじゃないかな。
・公順(こうじゅん)…副官。フレッシュマンですから鮮度の劣化が見られると早いですね…

47.
呼延灼「8代目フレッシュマンによるフレッシュマンセミナーだ」
趙安(何だこの格好)
呼「返事はフレッシュだ、うら若き果実たちよ」
参加者「フレッシュ!」
趙(何言ってんだこいつら)
呼「腐臭がした」
趙「…」
呼「立て、不貞腐れた果実よ」
趙「!」
呼「返事は?」
趙「はい」
呼「!」
趙「!?」

呼「返事はフレッシュと言った」
趙(鞭で殴られたのに、皮一枚しか切れてない)
呼「俺の鞭は、これから収穫を迎える果実たちを傷つけることはしない」
趙「…」
呼「しかし、少しでも腐る兆しを見つけた者には容赦はせん」
趙「…」

呼「返事は?」
趙「…フレッシュ」
呼「声が小さい!」
趙「フレッシュ」
呼「肚から声を出せ!」
趙「フレッシュ!」
呼「これでお前の臭気はぬぐわれた」
趙(なんだこの高揚感は…)

趙「…」
公順「趙安殿?」
趙「…」
公「呼延灼軍が出てきました」
趙「作戦は打ち合わせた通りだ」
公「はい」
趙「俺達には何信もついている」
公「匂いますね」
趙「最後の戦の匂いだ」
公「趙安殿」
趙「公順」
趙・公「フレッシュ」

・呼延灼…見事に成長した後輩との邂逅を心から喜びながらも、運命の残酷さを思った。

・趙安…フレッシュマンもすっかりドライフルーツになった。それは劣化ではなく、彼が立派に人間として熟成された証である。
・公順…戦が終わった後の打ち上げ会場には、誰も来ることができなかった。

元ネタ!

twitterにて連載中!
ご意見ご感想(クレーム)、リクエスト等、こちらまで!

今月号も長々とお読みいただきありがとうございました!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!