見出し画像

水滸噺 6月(下)&7月(上)[洒落にならないソーセージ]

〜あらすじ〜
売れ売れか 曹正のソーセージ
モテモテは 白面郎君と鉄笛仙
双頭山にて 風流喪叫仙始動し
小旋風の庭 梁山泊頭領躍動す

【水滸噺 注意書き】
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器に異国語も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・ご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまでお寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

異様なまでにダジャレネタが続いたり、また新しいフィールドが開拓されたりと、今回もてんやわんやです。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…毎日楽しそうに馬鹿なことばかりやっている愉快な所だと思いがちだけど、こいつら全員上から下までもれなく反逆者のお尋ね者だから、その旨留意した上で入山しようね。知らなかったでは済まされないぞ。

騎馬隊

騎馬隊…馬の中で一番速いのは、林冲の愛馬百里風で間違いないが、林冲よりも扈三娘が乗った時の方が動きが良い気がすると、林冲は語る。真偽のほどは…

人物
・林冲(りんちゅう)…梁山泊一の槍の使い手。ノリで蛇矛を使ってみたら、思いのほかしっくりきた。
・索超(さくちょう)…剣の使い手。ノリで大斧を使ってみたら、思いのほかしっくりきた。次の戦で試してみよう。
・扈三娘(こさんじょう)…化粧品屋のお姉さんが試供品を渡すのを躊躇うレベルのナチュラル美人。
・馬麟(ばりん)…王母様からもらった小袋には、ハンドクリームとか、絆創膏とか痒い所に手が届く便利グッズが入っている。
・郁保四(いくほうし)…未だに身長が伸び続けている。2mの大台を突破したにも関わらず。

1.
林冲「なぜか張藍が口を聞いてくれない」
索超「それは」
林「何か知らんか、扈三娘?」
扈三娘「検討もつきません」
林「弱った…」
馬麟「…鄆城に新しいスイーツ屋が出来たとか」
林「それが?」
馬「…手土産にしては?」
林「なるほど!」
索「さすが馬麟」
扈(なぜ知っているの?)

林「飯だ」
馬「…」
郁保四(当たり前のように取り分けるよな、馬麟殿)
扈「…」
索「それにしても馬麟」
馬「…」
索「干物屋の倅目線から見ても、お前の配膳には一分の隙もないな」
馬「適当さ」
郁(林冲殿には肉増し増し野菜少なめでよそっているのを俺は知っていますよ)

扈「馬麟殿の女子力が高すぎるんです」
顧大嫂「あんたが低すぎるだけさ」
孫「勿体無いねえ」
扈「…」
孫「ところで扈三娘、そのミサンガは?」
扈「…馬麟殿に誕生日の贈り物として」
顧「センスあるじゃないか」
孫「嫁に欲しいね」
扈「私も!」
顧「あんたは旦那の世話をしてからもらいな」

・馬麟…鮑旭と一緒に、毎年欠かさず子午山にお中元とお歳暮を贈っている。
・林冲…手土産を渡すや否や、たちまち張藍の機嫌が直ってびっくりした。
・索超…馬麟のきめ細かな気配りは騎馬隊に欠かせんよ。
・郁保四…俺がきのこ苦手なのも知ってて、いつも抜いてくれるんですよね。

・扈三娘…馬麟殿のお返しに、ハンカチをプレゼントしようと思うのですが…
・顧大嫂…悪くないけど、あまりお勧めしないね。
・孫二娘…プレゼントにも隠れた意味ってのがあるんだよ、扈三娘。

2.
索超「今日も疲れたな」
馬麟「暑さに加えて林冲殿の調練ときたものだ」
郁保四「旗で汗を拭くわけにもいきませんからね」
索「早く水を浴びよう」
扈三娘「失礼…」
索「おっと、すまん」
馬「…」
郁「旗も乾かさないと…」
索「具足の管理も大変だよ」
馬(ここは、男の更衣室だったよな?)

・索超…確かに扈三娘とすれ違ったが、それがどうした?
・馬麟…不思議と全く何も感じないんだよな。
・郁保四…扈三娘殿と隣のロッカーですが?
・扈三娘…早く着替えたかったので、あるものは使わないと。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…一年に一度開催される無礼講の大宴会では、日頃の鬱屈からか、物凄い乱痴気騒ぎが繰り広げられるという。その時ばかりは公孫勝もはっちゃけるらしい。

人物
・公孫勝(こうそんしょう)…特徴的すぎるところが多すぎて、普通の所が垣間見えるだけでものすごく驚かれる。
・劉唐(りゅうとう)…任務で変装した際、初めて髪を黒くした時は、本当に誰も気づかなかったし、名乗っても相手にされなかった。
・楊雄(ようゆう)…妓館に行った時、妙に気の合う女の子がいた。名前は藩巧雲。
・孔亮(こうりょう)…秦明と久し振りに話した時、結婚していた事に驚いた。
・樊瑞(はんずい)…項充と久し振りに飲んだ時、またマッチョになったと指摘された。
・鄧飛(とうひ)…柴進屋敷で繰り広げられた、魯達と林冲の某バーベキューパーティーの肉が美味すぎた。もう一度食べたいんだけど…
・王英(おうえい)…郁保四と並んで写真を撮ると、その小ささが際立ちに際立つ。
・楊林(ようりん)…鎖鎌を使って山中の木々をターザンのように移動しようと試みた結果、鎌が刺さりかけた。鎌は着脱式にしようと検討中。

3.
劉唐「この季節の山中は虫が多いな」
楊雄「毎年うんざりしますよ」
劉「楊雄は刺されんな」
孔亮「一番不味そうだからじゃないか?」
楊「お前の血はさぞかし冷たかろうな」
樊瑞「致死軍一の冷血漢だもんな」

公孫勝「…」
劉(!)
楊(刺されまくっている…)
孔(俺などより血も涙もないはずだが…)
樊(一体なぜ…)
公「蚊が多いな」
劉「蚊帳に入ってしまったのですか?」
公「奴らも生きるのに必死だからな」
孔「…殺さないんで?」
公「一寸の虫にも五分の魂と言うではないか」
樊(暗殺してきた俺への皮肉か?)

・公孫勝…師匠の教えで虫は殺さないが、青蓮寺の兵は虫けらのように殺す。
・劉唐…血の凍るような作戦を命令される公孫勝殿が…
・楊雄…蚊の目線で見ても、やっぱり不味そう。
・孔亮…冷血漢の血は暑い夏には蚊にとってむしろありがたい。
・樊瑞…蚊を箸で捕らえる特技は夏場にウケる。

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍…林冲をネズミ、公孫勝を猫にして彼らの掛け合いを元ネタにしたドタバタアニメが大人気。仲良く喧嘩しな。

・林冲(りんちゅう)…口ではやり込められるが、力なら負けん。
・公孫勝(こうそんしょう)…力勝負など馬鹿のすることだ、頭で勝負しろ。

4.
林冲「お前らのやっていることはしょうもないぞ、公孫勝」
公孫勝「」

劉唐(今、公孫勝殿がキレた気を感じた…)
索超(さて、どうなることやら…)

公「…お前、最近鹿を狩ってきたな」
林「感謝しろ」
公「馬が鹿を狩ったか」
林「…何が言いたい」

索(あれが公孫ジョークか?)
劉(まあな)

林「貴様、俺を馬鹿だというのか」
公「気づくのに随分時間がかかったな、馬鹿」
林「もう貴様らに、狩った獣の肉はやらん」
公「ならば我らも貴様が単独行動に出ても、援護しないぞ」

索(所々に思いやりが垣間見えるのがいいよな)
劉(今日の林公語録に加えておこう)

林「行くぞ、索超」
索「はい」
公「帰るぞ、劉唐」
劉「分かりました」

林「…」
公「…」

林「…」
索「…」
林「いきなりしょうもないはなかったな…」
索(やれやれ…)

公「…」
劉「…」
公「次の狩りは多めに狩っておくぞ、劉唐」
劉(この人たちは…)

・林冲…公孫勝は飢え死なんぞよりももっと惨めに死んでほしいから、食い物を恵んでやってるだけだ。
・公孫勝…林冲は馬鹿だからな。馬鹿な奴に相応しい馬鹿な死に方をさせるのが、致死軍の仕事さ。

・索超…実は致死軍の伝令の顔も覚えるほど、連絡を密にしているのを知っている。
・劉唐…実は騎馬隊の速さを信頼した作戦をきちんと立てているのを知っている。

5.
索超「第三回林冲殿公孫勝殿名台詞グランプリを行う」
劉唐「今回も多くの騎馬隊及び致死軍の、下は兵から上は当人を除く上級将校からご投票いただいた」
索「このグランプリは両軍秘中の秘である」
劉「林冲殿は郁保四が、公孫勝殿は孔亮が命に代えて気をそらしているのだからな」
索「では行くぞ」

索「林冲殿の部、金賞は!」
劉「…」
索「ペンネーム、紅一点さん」
劉(バレバレじゃねえか)
索「張藍秘蔵のスイーツを食べてしまったのを隠し通す策はないか?」
劉「紅一点さんに尋ねたんだろうな」
索「そこから漏洩したそうだ」
劉「させたんだろう」
索「バレたであろう翌日は見てられなかった」

劉「公孫勝殿の部、金賞は!」
索「…」
劉「ペンネーム、名もなき兵さん」
索(該当候補が多すぎる)
劉「李逵の香料は、頬張るもんじゃないな」
索「山椒一気飲みしたのか?」
劉「もともと小さい声が変に掠れていた時期があったが、そういう訳か…」
索「それではまた次回!」
劉「あるのか?」

・索超…俺は、「百里の尻の張りは癒されるぞ」が中々好きだ。
・劉唐…「携帯食料かと思ったら、砥石だった」も好きだな。

本隊

本隊…梁山泊の主力部隊。時たま隊長をシャッフルして調練を行うが、その時は本当に将のキャラの違いに戸惑うという。

・関勝(かんしょう)…子どもおっさん。隠れんぼは最後の1人を自分で見つけるまで絶対にやめない。
・呼延灼(こえんしゃく)…代州にいた頃の防寒具のセンスが酷く、いつも韓滔と彭玘に笑われていた。
・穆弘(ぼくこう)…お気に入りの眼帯をなくし、必死で探し回ったが、項充に今付けていることに教えてもらうまで気づかなかった。
・張清(ちょうせい)…礫以外の武芸はあまり得意じゃない。河原に行ったら一日中石探しをしている。
・宋万(そうまん)…梁山泊の裏道を一番知っている。伊達に古参やってない。
・杜遷(とせん)…双頭山など色々な拠点に配属されたことがあるが、彼の安定感はどこに行っても重宝される。
・焦挺(しょうてい)…ただデカイだけでは、彼に相撲で勝つ事は決してできない。
・童威(どうい)…あだ名は出洞蛟(しゅつどうこう)。洞窟から出て来たミズチ。ミズチとは竜っぽいお化けらしい。
・韓滔(かんとう)…あだ名は百勝将(ひゃくしょうしょう)。因みに百ホールドも記録している。
・彭玘(ほうき)…あだ名は天目将(てんもくしょう)。蟹座のこと。凶星。
・李袞(りこん)…あだ名は飛天大聖(ひてんたいせい)。孫悟空のこと。その割に彼が強いかというと…
・丁得孫(ていとくそん)…あだ名は中箭虎(ちゅうせんこ)。あばた顔を矢に当たった虎になぞらえられた。名付け人は張清。

6.
関勝「穆弘の戦は意表を突かれるな」
穆弘「勘でやってるようなもんだが」
呼延灼「俺たちは軍学に発想を縛られているのかもしれんな、関勝」
関「あり得る…」
穆「ならば、お前らも眼帯をつけてみるか?」
呼「…なぜそうなる?」
関「余計なものまで見えてしまっているからか?」
穆「その通り」

呼(付けてみたが…)
郭盛「呼延灼殿」
呼「どこだ、郭盛」
郭「失礼、死角にいました」
呼(文字通り視野が狭くなっただけのような)

関「どうだ、彭玘!」
彭「似合ってるのう」
関「だろう」
彭「しかし、関勝殿」
関「なんだ」
彭「食卓の杯をぶちまけ過ぎだぞ」
関「道理で袖が濡れているわけだ」

呼「模擬戦まで付けるか」
関「二人には負けん」
穆「眼帯王に敵うとでも?」

呼(これは…)
郭「呼延灼殿の死角は俺が引き受けます」
呼(俺が全て引き受けるところを部下に任せられる)

関「眼帯をすると強くなった気分だ」
彭(厨二病か?)

呼「悪くなかったぞ、穆弘」
関「俺もだ」
穆「だろう?」

・穆弘…眼帯はおしゃれにもなるぞ。
・関勝…また休日用のかっこいいやつを貸してくれ。
・彭玘…いい歳になったはずじゃが、やはり子供だのう。
・呼延灼…見事な指揮ぶりだ、郭盛。
・郭盛…俺もここまでできるとは思いませんでした。

遊撃隊

遊撃隊…またの名を下ネタ隊。兵の一人一人がパンチの効いた猥談を持ち合わせている強者揃いの部隊だが、彼女がいる者は一人もいない。

人物
・史進(ししん)…調練や戦の時はカッコいい。だがおふざけモードになった途端に、衣類を含む全てを解放させてしまう。
・杜興(とこう)…遊撃隊大喜利の定番ネタは、「杜興殿が絶対に言わない事」
・陳達(ちんたつ)…あだ名は跳澗虎(ちょうかんこ)。彼のジャンプ力を称えたあだ名だが、最近ジャンプしたのは足元にムカデが寄ってきた時。
・施恩(しおん)…替天行道を極めすぎたので、最近は逆再生にトライし始めた。
・穆春(ぼくしゅん)…やけに過保護な兄と父に辟易しているが、そうされても仕方ないと思われがちな大きな隙を日々見せつけている。
・鄒淵(すうえん)…猟師だったが、独竜岡の博打場を弟の鄒潤と一緒に荒らし回っていたことも。

7.
穆弘「春!」
穆春「兄者…」

施恩(また忘れ物か?)
陳達(予備のパンツを調練中届けに来た時は驚いた)

弘「父上から手紙が」
春「調練の後で良いだろう」
弘「そうはいかん」
春「頼むから皆の前で辞めてくれ、兄者」
弘「二人の時なら良いのか?」
春「違う!」

施(仲良いな)
陳(一方通行だがな)

史進「俺も兄貴が欲しいと思ったことはあるが、ああいうのはな…」
陳「調練の妨げだぜ」
史「この間たしなめたら、眼帯から火を噴きやがった」
陳「目じゃねのか?」

春「…」
弘「お前の可愛がっていた猫が子猫を産んだぞ!」
春「声がデカい、兄者」

史(家でやれ)
施(猫か)
陳(俺たちはネコ科だ)

弘「邪魔をした」
史(邪魔なんてもんじゃねえ)
弘「じゃあな、春。調練が終わったら手を洗うんだぞ」
春「いつも身体ごと洗ってる!」
陳(シャンプーハットしながらな)
弘「あと…」
春「…」

史「お疲れ」
春「…」
史「穆春?」
春「見ろ史進!子猫が!」
陳「またやるのか?」
施「可愛いな」

・穆弘…穆春に会いに行く用の眼帯を付けて来た。
・穆春…可愛がっていた猫の話のせいで調練の終了時間が四刻伸びた。 
・史進…俺たちの兄貴分というと、朱武か。あいつもめんどくせえよな。
・陳達…神機軍師のくせに、勢いで突っ走るとこあるよな。
・施恩…実は武松が心の兄貴分。

水軍

水軍…夏に行われる水泳大会は、張順VS水軍勢で競われるが、足を引っ張るのは大体李俊。

人物
・李俊(りしゅん)…油断して準備運動を怠って泳いだら、ガチで足をつって張順に半笑いで助けられた。
・張順(ちょうじゅん)…陸上の暮らしが性に合わなくなってきた。
・阮小七(げんしょうしち)…深く潜るのが得意。湖底の貝やら蟹やらを密漁していた所を梁山湖の主に襲われた。
・童猛(どうもう)…あだ名は翻江蜃(はんこうしん)。江をかき回す蜃。“蜃”とは、蜃気楼を吐くという大蛤のこと。貝かよ。
・項充(こうじゅう)…水軍も歩兵もできる、水陸両用部隊隊長。飛刀の名手だが歩兵だとあまり使えなかった。
・阮小二(げんしょうじ)…あだ名は立地太歳(りっちたいさい)。輝くとたちまち災いが起こる星のことで、今でこそ丸くなった船大工だが、若い頃はかなりヤバかったらしい。

8.
阮小七「土砂降りだ」
童猛「騎馬隊は歩兵と合同調練らしいが」
阮「俺たちは天候に関係なく濡れるからな」
童「調練の雨天中止がないなんて、ドーム球場みたいだ」
阮「このだだ下がりなテンションの俺たちに比べて…」

張順「雨だぞ!敬!」
張敬「雨ですな!叔父貴!」

童「蛙か?あいつらは」

順「俺たちは雨天がお前らでいう晴天みたいなもんだ」
阮「お前ら、哺乳類から両生類か魚類にクラスダウンしてるんじゃないか?」
童「天邪鬼め」
順「失礼な」
阮「エラが張ってるな張敬」
敬「潜る時によく使うんですよ」
童「…何に?」
敬「呼吸に」
阮「安心して後を任せられるな、張順」

童「だが、お前ら晴れの日だとあまり調子良くないよな」
順「確かにそれは否定できん」
阮「だよな」
順「だからかもしれないが」
童「おう」
順「水を得た魚の気持ちが凄く良く分かるようになった」
阮「俺たちで言うところの、酸素を得た人間か?」

・張順…魚みたいだな!と褒められていたのが、魚だなと真顔で言われるように。
・張敬…張順の甥っ子で、張横の息子。みるみるうちに水中に適応する様は、おたまじゃくしが蛙になるよう。逆か。 
・阮小七…深く潜るのは得意だが、あいつらほどエラは張ってねえよ。
・童猛…いや、同じくらい張ってる。

9.
阮小二「おう、小五」
阮小五「たまには三人で何かやるのも悪くないと思ってな」
阮小七「懐かしいな」
二「何をする?」
五「餓鬼の頃は、釣りか博打か酒だったが」
七「悪くねえが、せっかくだし今までと違うことがしたいな」
五「ならば梁山泊の地図を作らないか?」
二「地図?」
七「面白そうだ」

二「三人で山中を歩くなんて、初めてではないか?」
七「阮家の男は水で戦う男だからな」
五「この地域だ」
二「山深いところまできたな」
七「俺たちは勝手が分からんぞ?」
五「俺が指示をする」

五「小七、この紐を持ってあそこまで走れ」
七「任せろ」
五「兄貴、山の道の図だが…」
二「おう」

二「ここに山小屋を建てられんか?」
五「いいな」
七「大兄貴、この板は船に使えねかな?」
二「板についたな、小七」
五「くだらねえ」
二「…何に使う地図なんだ?」
五「梁山泊からの抜け道を探っていたのだ」
七「なるほどな」
二「念のため、というやつか」
五「使わんにこしたことないがな」

・阮小二…まさか本当に使う日が来るなんて…お陰で何人助かったのだろうか…
・阮小五…久しぶりの梁山泊に帰還した時は、この道を通ってきていた。
・阮小七…やっぱり俺は山より梁山湖の方がしっくり来るぜ。 

二竜山

二竜山…林冲が少しだけ頭領をやっていたことがあるが、その頃を知る兵は軒並み記憶から抹消している。

人物
・楊志(ようし)…紆余曲折あって、人生のどん底にいた時に、魯智深と曹正に助けられた。人生のアップダウンが激しすぎる。
・秦明(しんめい)…青州軍にいた頃からピュア爺だった。猥談を小耳に挟むだけで顔が真っ赤になるくらい。
・解珍(かいちん)…料理を始めたばかりの時は、身内全員から大ひんしゅくを買い続けていた。始めたばかりにもほどがある、と。
・郝思文(かくしぶん)…雄州野球大会の時は、送りバントやチームバッティングの技術に定評があった。
・石秀(せきしゅう)…実家は肉屋だったが、悪徳な仲買人を屠殺して出奔した。
・曹正(そうせい)…最近楊令からの曹正のソーセージを食べた感想が辛口になってきた。ならばいっそチョリソーでも作ってみようかな。
・蔣敬(しょうけい)…算盤を武器にしてみようかと模索したが、盧俊義にこっぴどく叱られた。
・李立(りりつ)…南出身だから米が主食だったので、二竜山の麦主体の献立に中々慣れない。
・周通(しゅうとう)…あだ名は小覇王(しょうはおう)。大覇王になるにはどうすればいいか、石秀に聞いたら鼻で笑われた。
・黄信(こうしん)…秦明が結婚した時の挨拶を無茶振りされた時は、流石に愚痴らなかった。終わってから延々愚痴ってたけど。
・郭盛(かくせい)…青州軍時代は下働き期間が長かったが、少ないお駄賃を貯め続け、念願の方天戟を買ったのを知った秦明に従者にしてもらった。
・燕順(えんじゅん)…元々は人足のブローカーをやっていたが、悪徳役人に嵌められたのをきっかけに賊徒になった。
・鄭天寿(ていてんじゅ)…銀細工の腕は超一流。だけど、ごく親しくなったものにしか贈らない。
・楊春(ようしゅん)…少華山時代は、縁の下の力持ちだった。朱武と陳達は彼の地味な仕事を高く評価していたが、史進は気づいてもいなかった。
・鄒潤(すうじゅん)…コブにニキビができた時は流石に驚いた。
・龔旺(きょうおう)…張清と幼馴染。石はうまく投げられなかったが、槍を投げるのがしっくりきた。

10.
楊志「…」
曹正(辛気臭い客だな)
楊「…」
曹(盧俊義殿の依頼とはいえ、ここまで辛気臭すぎるとな…)
楊「…」
客「おい、親父」
曹「なんだよ」
客「あの辛気臭せ客をなんとかしてやれよ」
曹「そうしたいのも山々なんだが…」
客「こんな時のための、あんたのギャグじゃねえのか?」
曹「しかし…」

客「いらねえ時には連発するくせに、こんな大事な時にやらねえってのかよ」
曹「今やっても、確実に滑る」
客「いつも滑ってねえとでも思っていたのかよ?」
曹「それとこれとは…」
客「おい、そこの青痣!」
楊「…」
客「ここのデブ親父が、お前を笑わせてくれるとよ!」
曹(余計なことを)
楊「…」

曹(感情を全く感じない…)
楊「…ほっといてくれ」
客「この親父のギャグは爆笑ものだぞ」
曹(ハードルを上げるな、酔っ払い)
客「おい、親父!お前の腹に名軍師が付いてるそうじゃねえか!」
曹「…その軍師こそ、我が脂肪なり!」
楊「…」
曹(滑った…)
楊「韓信、韓信…」
曹(…おや?)

・楊志…今日でも出て行こうと思っていたが、もう少しだけいてもいいかな。
・曹正…思いのほか、満更でもなさそうだったな。

11.
楊志「曹正のソーセージを売り出すための戦略会議だ」
曹正「しかしなあ、楊志」
楊「嬉しくないのか?」
曹「パッケージに私が作りました、とデカデカ俺の顔写真を載せるのはどうだろう?」
楊「石秀の名案だが」
石秀「顔が見える食品を売ることは、安全・安心に関わりますからな」
曹「…」

曹(俺の面が割れるだろう、石秀)
石(豚の安全・安心など知ったこっちゃない)

楊「石秀?」
石「曹正の顔写真は良いとして、二竜山で作りました!というのは広めない方がよさそうですね」
楊「確かにその通りだ」
曹(自分で気づいてくれ、楊志)
楊「すると、曹正の顔写真も良くないかもしれんぞ」

石「それは曹正を豚かソーセージのキャラにアレンジしましょう」
楊「名案だ」
曹(野郎)
石「デザインは私が」
曹「楊令にさせろよ、楊志」
楊「のった!」
石「チッ」
曹「商品名も普通に…」
楊「それはない」
曹「え?」
楊「楊令のギャグセンスを否定する気か、曹正」
曹「吹毛剣を、しまえ」

・楊志…見ろ曹正、楊令は絵の才能まであったぞ!
・石秀…そもそものネタ考案者が自分のタイトルを返上する訳にはいかんだろう、曹正?
・曹正…俺が、楊令考案キャラクターの着ぐるみを着るのか?

12.
曹正「俺が死ぬ前に聞いてくれ、周通」
周通「…」
曹「羊の腸詰を、西欧ではソーセージというのをたまたま知った」
周「…」
曹「楊志と会う前は、そのギャグで食卓を豊かにしたものだ」
周(どうだろう…)
曹「楊志と出会い、石秀の野郎が二竜山に来てから風向きが変わってな」
周「出番だぞ、曹正」

楊令「曹正のソーセージ!」
曹「!」

楊志「カット!」
曹「またダメなのか、楊志」
志「呼吸にして一つ半遅い!」
曹「動きにくいのだ、この着ぐるみは」
志「文句は侯健に言え!」
石秀「…」
志「石秀も調練の動きが活かせてないぞ!」
石(俺の分まで用意させるとは…)
曹(死なば諸共、道連れだ)

志「令を見習え!一度もNGを出していないぞ!」
曹(それは確かに凄い)
志「死域に入るまで続けるからな」

志「よし!」
曹「」
石「」
蔣敬(えらいことになってた…)
令「蔣敬殿!」
蔣(同じ時間撮影したはずなのにこの余裕)
志「見事だ二人とも」
曹「」
石「」
志「では第2部を」


蔣(切れた)

・楊志…日頃は広い視野を持つが、その焦点が楊令に絞られた瞬間がヤバイ。
・石秀…楊令考案ソーセー君の着ぐるみは、下腹部の締め付けが痛む。
・曹正…楊令考案セージ君の着ぐるみは、腹回りがキツくて汗が止まらない。
・楊令…長いセリフがあるのに一度も噛まず、死域にも入らずに、撮影をやりとおした。
・周通…カメラの予備バッテリーも切れたらどうしようかと思いながら、一緒に死域に入っていた。
・蔣敬…確かに美味しいから売り上げは期待できますけど、このCMがプラスに働くかといえば… 
・侯健
…私は仕立て屋であって、着ぐるみ職人ではないからな?

13.
宋清「曹正」
曹正「なんだ、宋清」
宋「曹正のソーセージの販売を今すぐやめろ」
曹「なぜだ」
宋「あのCMが大ヒットして以来」
曹(あの時のことは何も覚えてないんだが)
宋「今まで見向きもしなかったのに、双頭山の連中の視線が私の下腹部に集まるようになったのだ」
曹「馬鹿しかいないのか?」

宋「体を洗う時など、私の下腹部の一挙一動に、皆が固唾を呑むようになった」
曹「自意識過剰じゃないか?」
宋「あの露骨すぎる視線が、自意識過剰だと?」
曹「そもそも俺は加工食品を売っているのであってな」
宋「ならばあの卑猥なマスコットはなんだ?」
曹「デザインは楊令なんだが」

楊志「楊令?」
宋「曹正のソーセージのCMが卑猥すぎるのですよ、楊志殿」
楊「なんだと!」
曹(知らんぞ、宋清)
楊「楊令の愛らしい世界観のどこが卑猥だ」
宋「曹正でもないのに、宋清のソーセージと言われる私の身になって…」
楊「宋清」
宋「…」
曹「…」
楊「タッグを組もう」
宋「」
曹「…」

・宋清…双頭山に届けられた、この着ぐるみは一体…
・曹正…一つのダジャレがここまでの広がりを見せるなど、どこかで読んだ水のほとりの物語のようだ…
・楊志…彼の緻密な仕事と楊令の愛らしい世界観が一体になると、卑猥に見えるキャラも卑猥に見えない、筈なんだが。

14.
曹正「まさか曹正のソーセージが、ここまで売れるとは」
蒋敬「美味しいのは間違いないですからね」
曹「販路も双頭山まで広がったし」
蒋「宋清は不本意そうでしたが」
曹「生産ラインを覗いてくる」

曹(曹正のソーセージがこんなにも沢山…)
周通「CMのキャラグッズまで、なぜか人気出てるぜ」

曹「…曹正のソーセージワールドの創生か」
石秀「!」
曹「!?」
石「チッ」
曹「貴様!」
石「…レンジで温める時は切れ込みを入れろ、と書いてあるだろう?」
曹「ソーセージと一緒にするな」
石「それともそのままレンジで加熱されて破裂したいのか?」
曹「ソーセージと一緒にするな」

楊志「石秀!」
石「楊志殿」
楊「今、曹正を襲わなかったか?」
曹「大丈夫だ、楊志」
楊「曹正?」
曹「操刀鬼がなまくら包丁で怪我をするとでも?」
石「…」
楊「石秀」
石「…詫びのしるしだ、曹正」
曹「これは?」
楊「見事な真珠ではないか」
曹(野郎)
石(詫びのしるしだからな、豚)

・曹正…CM第二部の撮影に今からげんなり。
・蒋敬…味付けや肉の仕入れ方の参考に、猟師さんの知恵をお借りしたいですね。
・周通…つまみ食いしすぎたせいで、購入者からクレームが届いた。 
・石秀
…曹正は脂の層が厚いから、愛用の包丁が脂まみれになってしまうところだったよ。油汚れならぬ、脂穢れだ。
・楊志…正直、曹正も石秀も大差ないよな。

15.
曹正「曹正のソーセージのPR活動か」
石秀「すっかりこの着ぐるみも着慣れてしまった」
宋清「なぜ私まで…」
楊志「よく似合っているぞ、三人とも!」
楊令「…動きにくくありませんか?」
曹「大丈夫だ、楊令」
宋(情けが身に染みる…)

子供「曹正のソーセージだ!」
曹(感慨深いな…)
石「…」

石「…試食するか?」
子「ありがとう!」
石「…」
曹(石秀?)
子「美味しい!」
石「…それは良かった」
子「また来てね!」
石「…」
曹「酷く顔色が悪いぞ、石秀」
石「…少し、休んでいいか?」
曹「…事情を話してくれたら、帰ってもいいぞ」
石「…致死軍の頃を、思い出してな」
曹「…なるほどな」

石「俺はさっきのような子どもを…」
曹「言うな、石秀」
石「…」
曹「そういう過去は、てめえの格好を弁えて話すんだな」
石「!」
曹「それに、ここは二竜山だ、石秀」
石「…そうだな」
曹「てめえも曹正のソーセージをPRしやがれ」
石「くだらん事言うと刺すぞ」
曹「石秀の奇襲など読み切りだ」

・曹正…頼むから俺たちの下腹部ばかり触らないでくれ、子どもたち。
・石秀…だいぶ吹っ切れましたよ、公孫勝殿。
・宋清…楊令考案キャラ第三弾、ソーセージ将軍の着ぐるみは、下半身の丈が妙に短い。 
・楊志
…第2部のCMは火薬をふんだんに使ったアクション物を企画している。
・楊令…私のお絵かきが着ぐるみになったら妙に怖いですね、母上。

16.
林冲「…」
楊令「!」
林「!」
楊「」

秦明(私が見ても厳しい稽古だ…)
穆弘(こんな稽古を毎日続けているんだぞ、秦明)
李俊(将来が末恐ろしいな)

林「やめ」
楊「…」
林「…」
楊「…」
林「なんだ、楊令」
楊「…」
林「始めるのか…」

秦(どうしたんだ?)
穆(まあ見てろ)
李(もう少し覗こう)

楊「!」
林「…この染みの事か?」
楊(コクリ)
林「…汁物を零したのだ」
楊「!」
林「…着物のシワの事か?」
楊(コクリ)
林「…今は単身赴任中だからな」
楊「!」
林「今日は野菜を食ったか、だと?」
楊(コクリ)
林「…」

秦(これは?)
穆(林冲の稽古並みに厳しい、楊令の生活習慣チェックだ)

林「今日のスタンプは無しだと!」
楊(コクリ)
林「厳しすぎるぞ、楊令」
楊「…」

秦(お前が言うな、という声が聞こえた)
穆(俺もだ)
李(どの口が言いやがる)

林「今日もらえなかったら、罰を受けるではないか」
楊「…」

秦(罰?)
穆(スタンプの数で、家の処遇が変わるらしい)
李(奥方の依頼さ)

・林冲…結局赴任期間中に3個しかもらえなかったので、室内では着ぐるみのみ着用する罰を受けている。
・楊令…(張藍様たっての依頼だからな。しっかりやらねば) 
・秦明
…私も楊令の前では襟を正さなければ。
・穆弘…視界が狭いもんで、よく食卓の杯を零しちまうんだ。
・李俊…楊令からイエローカードを一番貰っている。

17.
林冲「…」
李俊(やはり、林冲が来ると気が引き締まるな)
童威(完全に同意だ、兄貴)
童猛(兄者に同意だ、兄貴)
李(今日の調練は気が抜けん…)

李「やれやれ、やっと気が抜けるぜ」
威「明日は穆弘の方に行きますからな」
猛「今日は飲めるぞ」
威「!」
李「どうした、童猛?」
猛「それは俺だって」

楊令「…」
李(嘘だろう)
威(やっと気が抜けると思ったのに…)
猛「すまん、やはり酒ではなく白湯で」
楊「…」
李(同じ卓に座りやがった…)
威(なんて緊張感だ)
猛(林冲並みだな…)
楊「…」
李「…食うか」
楊「!」
李「!?」
威(楊令のホイッスルが…)
楊「!」
李「…」
猛(イエローカードだ…)

李「何が悪いってんだ、楊令」
楊「!」
李「!?」
威(肘ついてたのが駄目なのか)
猛(容赦無く竹の棒で打ちやがる…)
李「今月5枚目だ…」
猛(累計10枚で、調練に一週間林冲付きだからな、李俊殿)

穆春「…」
楊「!」
穆「!?」
楊「!」
穆「レッドカード!?」
李(クチャラーは仕方ない)
威(ジャッジは公平だ)

・林冲…色々あって二竜山にいたが、それは黒歴史に他ならない。
・楊令…二竜山の風紀委員長。その容赦のない審判は、下は兵卒から上は林冲まで常に公平。 
・李俊
…行儀は習わなかったもんでな…
・童威…箸づかいをすごく練習した。
・童猛…言葉遣いにすごく気をつけた。 
・穆春
…クチャラーは慎まねば…

清風山

清風山…そこら中罠だらけな山賊の砦。山の地図のアプデを怠ると、えらい目にあうぞ。

人物
・燕順(えんじゅん)…顔写真を見せたら、10人中9人が山賊の親分と答えるような風貌。残りの1人は海賊と答えた。
・王英(おうえい)…梁山泊一のスケベ。その割に、女性相手だとまともに話せない。
・鄭天寿(ていてんじゅ)…あだ名は白面郎君(はくめんろうくん)。色白のイケメン。顔もイケメン。精神的にもかなりのイケメン。 

18.
燕順「てめえらの女遊びは目に余る」
王英「誰のことだ?」
鄭天寿「兄貴以外の誰がいるってんだ」
燕「お前もだ、鄭天寿」
鄭「俺は王英のバカ兄貴みたいに、妓楼を出禁になったことはないぜ」
王「なんだと」
燕「王英のバカは後で直々に締めるが」
王「!?」
燕「この手紙の数を見ろ、鄭天寿」

王「これ全部鄭天寿へのラブレターか、兄貴」
燕「お前宛の手紙は全部、妓楼からの警告状だ、王英」
王「読まずに捨ててくれ、兄貴」
鄭「一体誰がこんなに…」
燕「たまの休みで山を降りた時の覚えはないか?」
鄭「飯食って、出店ほっつき歩いて、後は銀細工作るくらいしか覚えてないぞ、兄貴」

燕「定食屋の娘より」
王「読み上げるな」
燕「とても素敵な笑顔でお礼を言われて好きになりました」
王「ただし白面郎君に限る」
鄭「…」
燕「饅頭屋の娘より」
鄭「…」
燕「困っているお年寄りにとても親切にされているのを見て好きになりました」
鄭「…当然のことだろう?」
燕「お前は自慢の弟だ」

・燕順…鄭天寿の優しさは自然体なんだよな。王英?ただのバカだ。
・王英…俺だって自慢の弟じゃねえのかよ、兄貴?
・鄭天寿…恥ずかしいな。銀細工でも贈ろうか…

双頭山

双頭山…梁山泊のツインマウンテン。ロープーウェーで山同士を行き来するプロジェクトを進行中。

人物
・朱仝(しゅどう)…身体を洗うときに一番時間がかかるのが髭。髭でオシャレも始めてみた。
・雷横(らいおう)…軍人一直線で堅物な朱仝にくらべると、だいぶノリがいい。
・董平(とうへい)…槍を二本使うのに慣れすぎて、一本の使い方を忘れてしまった。
・宋清(そうせい)…輸送中に賊の襲撃にあったが、鉄扇を武器に返り討ちにした。
・孟康(もうこう)…宋清とはいい友達。彼が道を見つけて、宋清が運ぶ手はずを整える。
・李忠(りちゅう)…武芸は弱くても、兵の面倒見の良さを買われ副官を務めている。
・孫立(そんりつ)…嫁は楽和の姉の楽大娘子。綺麗っちゃ綺麗だけど、化粧のフォローが厚くなっているのに気づいていない。
・鮑旭(ほうきょく)…子午山で出会った友人三人のお陰で、会話の引き出しが増えた。
・単廷珪(たんていけい)…憩いの場の噴水装置を手がけたら評判が良かった。
・楽和(がくわ)…実はロックやデスメタルを歌いたくて仕方がない。

19.
杜遷「朱仝殿」
朱仝「どうした」
杜「なぜ李逵をそこまで嫌うのですか?」
朱「…あんな輩は我らの結束を乱すだけだからだ」
杜「お言葉ですが、朱仝殿」
朱「…」
杜「李逵の作る食事は美味く、双頭山の兵の胃袋は完全に掴まれてしまっていますが」
朱「…たかが飯だろう」
杜「腹が減っては戦はできません」

武松「李逵」
李逵「…」
武「朱仝と何かあったのか?」
李「…何もねえよ、兄貴」
武「ならばお前の愛想ももっと良いのではないか?」
李「朱仝も俺を嫌ってたじゃないか」
武(確かに、初対面で嫌う理由もないはずだが…)
李「子供を誘拐して殺したんじゃないぜ?」
武「それはよく分かっている」

朱「…まさかこんなところで会うとは」
李「おう」
朱「あまりの衝撃でつい過剰反応してしまった」
李「…あの坊主は元気か?」
朱「忌々しいが、まだお前の事を忘れていない」
李「お尋ね者だったのに、妙に懐かれた」
朱「そしたら俺の扱いが酷く雑になってな」
李「そうか」
朱「そこだけは許せん」

・朱仝…開封府にいた頃、お尋ね者時代の李逵をノリで匿ったら、溺愛していた甥っ子を李逵に取られ、えらい嫉妬した。
・李逵…母親のために開封府に買い物に行った際、捕まりかけた所を朱仝の機転で助けられた過去がある。朱仝の甥っ子に懐かれ、未だに彼は朱仝より李逵のことをよく覚えている。 
・杜遷
…李逵の香料を朱貴の店に持ち帰ってやろう。
・武松…李逵も俺たちと会う前は色々あったのだろうな…

20.
鮑旭「この通りだ、楽和」
楽和「…」
鮑「私と馬麟のバンドにぜひボーカルとして参加してくれないか?」
楽「…」
鮑「双頭山のイメージアップにもなるではないか、楽和」
楽「喪門仙の曲は聴いているよ、鮑旭」
鮑「本当か?」
楽「魂を揺さぶられるとは、まさにこの事だと思った」
鮑「ならば…」

楽「身内のカラオケで歌ったこともある」
鮑(無断配信されていたとは…)
楽「あそこまで心を込めて歌えたのは初めてだったと言ってもいい」
鮑「そこまでのファンなのに、なぜ?」
楽「姉がロックを嫌がるんだよ、鮑旭」
鮑「そういう…」
楽「不良の音楽などけしからんと」
鮑(人のこと言えるのかな)

楽「しかし、私も梁山泊の男だ」
鮑「楽和!」
楽「謹んで、引き受けよう」
鮑「ありがとう!」
董平「…」
楽「隊長?」
董「…ドラムで混ぜてくれ」
鮑「喜んで!」
楽「…風流双槍将のお手並み拝見といきましょうか」
董「聞いて驚け」
鮑「次の馬麟の休息日は…」

・鮑旭…ギター担当。喪門仙から風流喪叫仙にバンド名を変更した。風流かどうかは聞き手次第。
・楽和…ボーカル担当。新しい楽曲の扉が開いた音がした。姉のLINEの通知もオフ。
・董平…ドラム担当。やっと歌舞音曲が出来る設定を活かせた、と感無量。あだ名は双槍将だが、所により風流双槍将とも呼ばれる。
・馬麟…鉄笛担当。溜まりに溜まった有給を全部使って、双頭山にて活動中。

・王母…無断配信している宋のカラオケ店に警告の手紙を書いてくれた。

流花寨

流花寨 …梁山泊で攻めの最前線を担う、一番過酷な拠点。だからなのか、実はレクリエーション施設は地味に豊富だったりする。

人物
・花栄(かえい)
…弓は得意だからとダーツに挑戦したが、李応や項充に完敗した。
・朱武(しゅぶ)…色々やってみたかった陣形があったのだが、流花寨だとそもそも陣形を組んだ戦がほとんどできないことに、赴任してから気づいた。
・孔明(こうめい)……顔に大きな傷があるが、賊に絡まれている女性を助けた時の名誉の傷だと本人は語るけれど、本当かな?
・欧鵬(おうほう)…李逵の影響で、嬉しいことがあると奇声をあげて飛び跳ねる癖が移ってしまった。
・魏定国(ぎていこく)…瓢箪矢という発火する矢を考案した。作りたての頃は、火薬の知識があったわけでもないというのに。
・呂方(りょほう)…予知能力に加えて、周囲の人間観察も注意深くやり始めたら、さらに占いが当たるようになった。
・陶宗旺(とうそうおう)… 石を積むだけでなく、つまようじやサイコロを積んだ芸術品も得意。だがいつものノリで簡単に崩してしまう工夫も加えてしまい、完成間近に崩落させたことも。

21.
朱武「これが八陣図のカラクリさ」
孔明「凄え」
呂方「分かりやすい!」
欧鵬「孔明と呂布に兵法の講座なんて、大した名誉だな、神機軍師」
朱「違いない」
花栄「…」
孔「花栄殿?」
朱「質問か?」
花「そろそろ弓の話題を」
孔「呂方、俺の運勢を占ってくれ」
呂「どれどれ…」
花「おい!」

朱「もう聞き飽きたんだよ」
花「馬からそっくり返って」
孔「外さないんですよね?」
花「10連射しても」
呂「外さないんですよね?」
花「目をつぶっても」
欧「外さないんですよね」
花「まだ他にも…」
朱「もういい」
孔「的外れにもほどがあります」
呂「花栄殿なのに的外れとは、これいかに」

花「…」
朱「拗ねるな、花栄」
孔「弓以外の話題は無いんですか?」
花「無い!」
朱(やれやれ)
呂「李広と呂布だったら、どっちが弓の名手ですかね?」
欧(ナイスだ、呂方)
花「ふむ」
呂「…」
花「私には敵わんだろう」
孔「呂方、さっきの話だが」
呂「…」
花「おい!」
朱「外しすぎだ、花栄」

・花栄…弓矢の話題以外なんてない!
・朱武
…戦では輝くが、こういう場ではてんでダメなんだよな。
・孔明
…花栄の日頃のスキンケアについて興味がある。
・呂方…占いを始めたら的中率が噂になり大人気。先日は、戦時中の流花寨に宋江が来た。
・欧鵬…朱武の陣形講座は面白いぞ。

聚義庁

聚義庁… 梁山泊首脳陣の集う場。首脳陣の部屋のレイアウトも性格が如実に表れる。

人物
・晁蓋(ちょうがい)…退屈な会議の時、限界までリクライニングを倒したら椅子ごとひっくり返った。
・宋江(そうこう)…退屈な会議の時、いたずら書きを回覧する最初の相手をうっかり退屈なプレゼン中の呉用にしてしまった。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…退屈な会議の時は容赦なく寝る。いびきまでかくほど。
・呉用(ごよう)…退屈な会議の元凶。だからプレゼンでもちょいちょい笑いを挟んでるんだけど、誰も気づかない。
・柴進(さいしん)…退屈な会議の時は一人丸バツゲームが資料の余白にびっしり。
・阮小五(げんしょうご)…退屈な会議の議事録係。ほとんど話を聞き流しているが、要点だけはきちんと網羅している内容には定評がある。
・宣賛(せんさん)
…退屈な会議の時は、頭巾で気づかれないと高をくくって変顔の練習をしている。

22.
呉用「しまった!」
晁蓋「何がしまったのだ、呉用」
呉「実は…」
晁「…何もしまってないではないか」
呉「確かに…」
晁「もっと現場の者に任せろ、呉用」
呉「そうしたいのですが…」
晁「お前ももっと人に任せることができれば」
呉「仕事を任せてくるのはほぼ晁蓋殿ですがね」
晁「しまった!」

・晁蓋…しまった!冷水を浴びると身体がしまった!
・呉用…しまった!書類でいっぱいの引き出しがしまった!

23.
宋江「梁山泊博打大会だ」
盧俊義(博打って公にやるものなのか、呉用?)
呉用(公に反乱起こしてる私たちが今更気にすることではないかと)
盧(一理ある)
劉唐「…」
石勇「…」
白勝「…」
穆弘「…」
宋「決勝はこの四人でポーカーをしてもらう」
盧(麻雀じゃないのか?)
呉(ルールを知らないそうです)

穆「…」
宋「穆弘が劣勢だ」

李俊「穆弘が次に身体のどのパーツを賭けるか、賭けようぜ」
童猛「前歯に銀一粒!」
李立「俺は左の小指!」
阮小二「残りの目玉!」

趙林「…」
劉「…」
石「…」
白「…」
穆「」
趙「穆弘殿、手札は?」
穆「このままで、いい」
劉「ハッタリはきかんぞ、穆弘」

穆「俺は全てのチップに加えて…」

俊(何を賭ける?)

穆「!」
趙「!」
劉「!」
石「!」
白「!」
穆「残りの目玉を賭ける」

阮「当たった!」
俊「しかし洒落にならん」
阮「確かに」

白「早く治療を…」
穆「そんな事より貴様ら、賭けるか降りるか決めないか!」
白「」
劉「…」
石「…」

白「俺は、降りる」
劉「…ならば俺は」
穆「…」
劉「全てのチップに加え、この赤毛を賭ける」
穆「!」
石「俺も、全てのチップに加え…」
穆「…」
劉「…」
石「勝った者が無償で俺を働かせる権利を一月分賭ける」

俊(面白くなってきた)
阮(しかし、穆弘の目玉が…)

穆「…」
劉「…」
石「…」
趙(穆弘殿が両目に眼帯を…)
劉「穆弘…」
穆「なんだ、劉唐」
劉「きさま!見えているなっ!」
穆「!」
石「降ろせたのは白勝だけだな」
白「ハッタリなのか!?」
劉「眼帯を、外せ」
穆「…」
石「そちらではない、今つけた方だ」
穆「…負けた」
白「見せろ、穆弘」

穆「なぜ分かった?」
劉「俺たちはお前の右目側にいたからな」
石「拙い芝居だ」
穆「!」
白「くそ!」

俊「ただの間抜けか」
阮「俺は勝ったからな」

劉「それでも賭けるのか、穆弘?」
石「没遮攔を遮るのも悪くない」
穆「野郎…」

宋「穆弘イカサマにより退場!」
盧「本当にやりかねん」

劉「…」
石「…」

宋「梁山泊博打王の龍虎が相打つとは」
盧「高度な戦になるぞ」

劉「…」
石「…」
劉「石勇」
石「…」
劉「部屋の床下と屋根にいる蚤どもを、全て潰せ」
趙「!」
石「ならば劉唐」
劉「…」
石「さっきから耳障りな風の音を、止めてくれるよな?」
趙(これがプロ…)

劉「二枚チェンジ」
趙「…」
石「三枚チェンジ」
趙「…」

盧「趙林も見事なディーラーになった」
呉「船大工見習いですよね?」

劉「…」
石「…」
劉「ロイヤルストレート・五虎将」
石「…ファイブ・タイガー」

盧「関勝、林冲、秦明、呼延灼、董平!」
呉「雷横、燕順、王英、李雲、顧大嫂!」

宋「劉唐の勝ちか」
盧「見応えのある博打だった」
呉「穆弘のイカサマは?」
盧「おもちゃと血糊の演技だが、あの二人の目は欺けなかったな」
宋「なるほど」

石「…俺の負けだ」
劉「今日はついてるな」
石「…まだ何か隠してるのか?」
劉「さて?」
趙(初めに俺を買収した時点で劉唐殿の勝ちです)

・劉唐…金よりも自分の運を試したくてやっている。
・石勇…賽子博打だったら彼に分があった。
・穆弘…薛永に不意打ちで鎮静剤を打たれなかったら本気でやってた。
・白勝…養生所連中の相手じゃ無敵でも、プロには勝てねえや。

・趙林…買収された金も、結局劉唐にカモられた。

・宋江…博打好きが多いな、梁山泊は。
・盧俊義…鄒淵、鄒潤、孫新も中々の遣り手らしいぞ。
・呉用…戦とはどうも勝手が違うらしく、朱武も宣賛も予選負けです。

・李俊…俺も弱くはないぞ。
・童猛…ならなんで決勝にいねえんだよ。
・李立…途中で日和るからな、李俊殿。
・阮小二…小五と小七とよくやったな。

三兄弟

三兄弟… 荒事あるところに、彼らあり。彼らあるところに美味い飯あり。

人物
・魯達(ろたつ)
…隻腕になろうとも、梁山泊武術ランキング上位の座を譲る気はない。
・武松(ぶしょう)…拳だけでなく、足技の練習も始めた。
・李逵(りき)…地方出身の好漢と仕事する時は、郷土料理のレシピを聞き出してその日の夕飯に作ってあげる。

24.
李逵「もう兄貴の世話はやかん!」
武松「なぜだ、李逵」
李「兄貴ももっと家事に協力してくれよ」
武「…」
李「俺だってもっと自分の時間が欲しい!」
武「…すまなかった」
李「…」
武「俺は何をすればいい?」
李「…食器洗いと自分の服の洗濯はやってくれよな」
武「分かった」

武「李逵」
李「…」
武「皿の類は、持っただけで全て砕け散ってしまった」
李「…」
武「洗濯も、川で汚れを濯いだだけなのに全て裂けてしまった」
李「…」
武「それで、俺は何をすればいい?」
李「もう何もしないでくれ、兄貴」

・武松…結局皿と服のおつかいを頼まれたが、それすらまともにこなすことは出来なかった。
・李逵…武松の兄貴のクソ力は、家事に全く向いてねえや。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…入院中の患者は追加料金を支払うと、安道全のマッサージと針治療を受けられる。

人物
・安道全(あんどうぜん)…実は一番寝心地がいいベッドを使っている。
・薛永(せつえい)…彼のおかゆは見た目こそ悪いが薬効満点。実はトッピングで薬草増し増しの注文も可能だが、その後の体調は保証しない。
・白勝(はくしょう)…もしかしたら呉用の次に働いているのは意外にも彼かもしれない。
・文祥(ぶんしょう)…安道全の弟子。最近針治療を教えてくれるようになった。
・馬雲(ばうん)…薛永の弟子。もっぱら表情とボディーランゲージでコミュニケーションをとる。喋らないのになぜか伝わる。

25.
薛永「腹が減った…」
馬雲「∑(゚Д゚)」
白勝「いかん。薛永が腹ぺこになった」
薛「…」
安道全「文祥!」
文「朱富の店に!」
安「違う!顧大嫂だ!」
文(そこまで分からん)
呉用「すまん、薛永。睡眠薬の処方を」
薛「」
呉「薛永?」
白「今補給するから待っててくれ」
安「薛永のピットインだ」

文「買ってきました!」
安「薛永!」
薛「」
安「何!顧大嫂じゃない?」
薛「」
安「文祥!」
白「朱富の饅頭を湯隆の所で香ばしくしたやつを大至急持ってこい!」
文(なんて解析力だ)
薛「」
馬「(´-ω-`)」
安「薛永は腹ペコになるとこうなるんだ」
呉「…」
白「寝てら」

文「買ってきました!」
安「薛永!」
薛「」
安「何!両面ではなく、片面だけ香ばしくしたやつじゃないと食わんだと?」
薛「」
文「…」
安「文祥!」
文「ただ今!」
薛「…」
白「こうなると頑固だからな」
安「テコでも動かん」
呉「…」
白「ここで寝かせるか」
安「呉用殿に一服盛るぞ、白勝」

・薛永…片面の香ばしさに香料の風味が足りなかったから食べなかった。
・馬雲…( *`ω´) 
・安道全…薛永の表情から食べたいものを読み取る様はさながら診察。
・白勝…食わなかった饅頭は俺たちの分だ。
・文祥…ここからあと三往復する事になるのをまだ知らない。

・呉用…口周りがやけに苦いが、よく眠れた。

牧場

牧場…梁山泊のお馬さんや家畜が放し飼いにされている区域。

人物
・皇甫端(こうほたん)
…獣医。動物関係の悩み解決に日々心を砕いている。
・段景住(だんけいじゅう)…馬の調達担当。馬群の交通整理はお手の物。 

26.
呼延灼「次の戦では連環馬を仕掛けたいのだが」
段景住「馬に馬甲を付けて鎖でつなぐやつだな」
呼「そうだ」
段「実は皇甫端が死域に入るほどのめり込む仕事なんだ」
呼「皇甫端が、死域に?」
段「一度薛永に丸太を依頼したことがあるほどだ」
呼「そっちで死なないか?あの歳だと」

段「馬甲を付けるのを嫌がる馬がいるだろ?」
呼「いるな」
段「鎖で繋がれるのを嫌がる奴もいるだろう?」
呼「連環馬あるあるだ」
段「そして皇甫端が何よりのめり込む仕事が」
呼「…」
段「馬の相性を選ぶ仕事だ」
呼「分かる気しかせん」

段「皇甫端が死域に入るタイミングはまさにそこだ」
呼「実は俺も大好きな仕事なんだ」
段「馬同士の仲を吟味したりとか」
呼「この馬とこの馬は絶対別にしようとか」
段「脚力や大きさのバランスを考えたり」
呼「性格も吟味せねばならんし」
段「…」
呼「…」
段「皇甫端呼んでくる」
呼「頼む」

・呼延灼…世話好きなところがある。連環馬後の満足度アンケートを馬にも取ってみたいもんだ。
・段景住…俺は馬を説得する仕事が好きだ。
・皇甫端…めんどくさがるフリしてるけど、内心は超楽しみ。

・連環馬…呼延灼といえば、この戦法。馬を馬甲で覆い横つなぎにして相手を蹂躙する。正面から受けたら即死。万が一正面から受ける時は馬の首にぶら下がって何とかしよう。

梁山湖

梁山湖 …四季折々美しい景色が見れる湖。湖底には主がいるらしいが、対立している張順も未だ出会ったことはない

27.
張順「万が一のため、お前らに泳ぎを習わせろとの宋江殿の指令だが」
史進「…」
張(こいつは突っ込まんが…)
呼延灼「…」
郭盛「…」
張(こいつら二人の衣装はなんだ?)
郭(なぜこれを皆の前で着なければならぬのですか、呼延灼殿?)
呼(聞くまでもない、郭盛)

張「李逵はいないのか?」
呼「北の大地の厳しい任務を志願したそうだ」
張「泳ぎの調練の方がよっぽどぬるいと思うが」
史「ちょうどいい水温だ」
郭「…」
張「動きが鈍いぞ、郭盛」
呼「フレッシュマンが下腹部の位置を気にしてはならぬ」
張(フレッシュマン?)
史「そのヘンテコな衣装はなんだ?」

呼「史進」
史「…」
呼「由緒正しきフレッシュマンの衣装を侮辱することは、俺が許さぬ」
張(呼延灼殿?)
呼「分かったな」
史「おう…」
張(この格好で凄まれても…)
郭「…」
呼「お前の鮮度はその程度か、郭盛」
郭「股間がはみ出そうで…」
呼「全裸の奴がいるではないか」
史「脱げよ、お前ら」

・張順…呼延灼の上達ぶりには目を見張ったが、目のやり場にすごく困った。
・史進…羞恥心ってやつは、自分の隠したいものを隠しきれない時に感じるもんなんだな。
・呼延灼…フレッシュマンの衣装は水練にもちょうどいいな、郭盛。
・郭盛…いっそ史進のように脱げたらどれだけ気が楽になることか…

朱貴・朱富のお店

朱貴・朱富のお店…魚肉饅頭の食品サンプルとかキーホルダーとか作り始めたが、ニーズはあまりない。

人物
・朱貴(しゅき)…彼と奥さんの陳麗がブラディ・ドールの舞台、S市にタイムスリップしたお話はこちら
・朱富(しゅふう)…父親があれな人で、血のつながっていない兄弟が多い。最近忙しいから、妹を一人雇いたい。

28.
朱貴「また毎朝水汲みをしなければならないのか」
陳麗「あの世界の仕組みの事は忘れましょう、あなた」
朱「…重くないのか、陳麗?」
陳「何がですか?」
朱(焦挺でも持ち上げられるかという量の水を二樽も…)
陳「病が治ってから、妙に力が湧いてくるのですよ」
朱(一体誰の血をもらったのだ?)

川中「蚊に食われちまった」
坂井「だからしぶといのか、こいつは!」
下村「こいつが卵を産んだらS市が滅びるぞ」
藤木「…殺虫剤も効かない」
キドニー「何としても川中を殺せ!」
叶「撃ち殺すか?」
川「おい」

宋万「…」
陳「宋万殿、お食事中のスマホはお行儀が悪いですよ」
宋「…すまん、陳麗殿」
杜遷「なあ、朱貴。梁山泊移動用にセグウェイを買わないか?」
朱「…」

朱「…陳麗」
陳「すごく釈然としませんね、あなた」
朱「そう思うよな!」

・朱貴…なんなのだこの世界は…
・陳麗…食洗機があるのに、水道がないってどういう事ですか? 
・宋万…字が読めるようになってから、スマホゲーが楽しくてな…
・杜遷…梁山泊の斜面を行き来するのに使えるのではないのか?

・川中…坂井と下村まで俺を呼び捨てにしやがる…
・坂井…社長じゃありませんよ、蚊のことですよ!
・下村…色々あって左手の無いブラディ・ドール新入り。川中の野郎、俺の血まで吸いやがった!
・藤木…蚊取り線香も効きやしませんね…
・叶…蚊だろうが蝿だろうが俺が撃ち殺してやるぜ?
・キドニー…蚊の分際で、俺を露骨に避けるところまで川中に似やがった。

29.
朱富「朝から酒か、戴宗」
戴宗「悪いか?」
朱「仕事ではないのか?」
戴「肝の臓も働かせてやらんと」
朱「24時間年中無休だな」
戴「それは心の臓だ」
朱「ところで戴宗は」
戴「なんだ」
朱「神行法という走る術を使えるのは本当か?」
戴「…」
朱「戴宗?」

戴「飲んじまった…」
朱「まずいのか?」
戴「神行法に生臭は厳禁なんだ」
朱「酒に加えて肉の角煮と魚肉饅頭をたらふく食ってたな」
戴「今日は神行法で遼まで行く仕事があったのを忘れていた」
朱「生臭を食ったらどうなるんだ?」
戴「足が止まらなくなる」
朱「ならいっそ天竺まで行ってこいよ」

・戴宗…天竺まで行って経典を持って帰ってきた。
・朱富…戴宗専用セットを考案中。

断金亭

断金亭…梁山泊の宿泊施設兼大宴会場。宴会場には様々な小道具や、演劇スペースも備え付けられており、節目の宴会シーズンでは好漢たちが日々芸を磨いている。 

30.
晁蓋「梁山泊暑気払い恒例、隠し芸大会を始める」
宋江「史進には決して脱がぬよう、深く釘を刺しておいた」
呉用「脱ぐための諸条件が揃いすぎてますからな」
晁「それでは行ってみよう」
呉「一番。遊撃隊将校による…」
宋「呉用?」
呉「服を脱いではならぬなら、脱がずに脱げればいいのだろう!」

史進「…」
宋(きちんと着ているではないか)
陳達「…」
穆春「…」
晁(黒子が…)
史「…」
陳・穆「!」
宋(なんと!)
呉(誰も何もしていないのに着物が消えるように脱げた)
晁(黒子が偽装とは…)
史「…」
宋(これは叱らずに見届けよう)
晁(腕を上げたな、史進)

史「…」
晁(ついに下着一枚までこぎつけたが…)
呉(ここが芸の分水嶺だぞ、史進)
史「…」
晁(史進の気が客席を圧倒している)
呉(笑い声一つ起きない)
史「喝!」
宋(脱げる!)
陳「これが本当の隠し芸だ!」穆
宋(まさに脱げる一刹那に、最小限の布で補うとは…)
晁「見事だ、史進」
呉「涙が…」

・史進…芸終了後の気の緩みから、退場でやらかしてしまった。
・陳達…最後の布のパス練習は、調練よりも本気でやっていた。退場は知らん。
・穆春…天井から服を脱がせる施恩の技術も中々だったろ?退場は知らん。

・晁蓋…芸は完璧だったのに、まさか退場であんな事に…
・宋江…竜頭蛇尾とはこの事だ!
・呉用…感動の涙が退場でご破算。

陣中

陣中…とある戦の真っ最中。緊張感は欠かさないけど、たまには気持ちをほぐしてあげないとね。 

31.
晁蓋「見事だ、史文恭」
史文恭「いえ、そんな」
韓滔「何を楽しまれているのですか、晁蓋殿」
晁「史文恭のモノマネの完成度が素晴らしいのだ」
韓「ほう」
史「もったいないお言葉」
韓「わしにも見せてくれんかのう」
晁「頼む、史文恭」
史「…かしこまりました」

史「史進殿にだいぶ手加減をしてもらった立ち合いをしてもらい、辛うじて部下への面目を保つ李忠殿」
韓(細かい…)
史「わっ!」
晁「www」
史「やるな!」
韓(腰抜け具合が完璧だ)
史「今日はここまでだ、史進」
晁「見事だ!」
韓(確かに面白いが、入山して間もないのに、完成度が高すぎやせんか?)

史「部下にサプライズプレゼントをもらって、ボロクソに罵りながらも、何だかんだで満更でもなかった杜興殿」
韓(細かすぎる…)
史「なんじゃこれは!」
韓(声が…)
史「こんなクソみたいな物しか贈れんのか!貴様ら!」
韓(…)
史「こんなクソはわしが引き受けて処分してくれるわ!」
晁「見事!」

晁蓋…笑い上戸。史文恭がこんなに面白いやつだったとは!
・韓滔…ネタは嫌いではないが、何か肌が合わんの…

・史文恭…仕事柄、人の真似をすることが多いものでね…

柴進の庭

柴進の庭…先祖代々引き継いでいる、とてもきれいなお庭。なんだけど、様々なまだ見ぬ野生生物が生息しているらしい… 

持ち主
・柴進(さいしん)…私の叔父さんが心血を注いで管理した自慢の庭さ。よく分からん生き物も生息しているらしいが、私の知ったことではないぞ。 
 
32.
柴進「私のペットが揃いも揃って脱走してしまった」
林冲「お前の薄汚い食客共に世話させるからだ」
柴「なんとかして私のペットを全て連れ戻してくれ」
索超「どれほどいるのですか?」
柴「リストだ」
索「やけに多いな」
林「豹?」
扈三娘「大蛇?」
馬麟「ラクダ?」
索「海豚?」
郁保四「象?」

索「虎だの彪だの、見覚えがある動物ばかりだな」
馬「さすがに竜はいないよな」
索「海豚って知ってるか?」
馬「検討も付かん」
索「ラクダは?」
馬「コブがある生き物だという」
索「コブだ!」
馬「ラクダだな」
索「捕まえろ」
男「なんだ!」
索「鄒潤!」
馬「コブ違いか」
索「すまん、鄒潤」

鄒潤「俺たち猟師も駆り出されたんだ」
索「適任だな」
鄒淵「おい、潤!」
潤「なんだ、兄貴?」
淵「解珍殿と解宝殿がえらいもん捕まえたぞ」
解珍「頭が二つある蛇と」
解宝「尾が二本の蠍だ」
馬「…それは?」
索「おい、あれ…」
馬「頭が九つの竜、だと…」
珍「何を飼ってるのだ、柴進は…」

郁「助けてください!」
索「郁保四!」
馬「あの巨人は…」
珍「まさか、険道神…」
索「…そんな装備で大丈夫か?」
宝「…大丈夫だ、問題ない」
珍「やっとる場合か」
淵「逃げるぞ!」
潤「話が違うにもほどがある」

林「脱出だ、お前ら」
索「その生き物は?」
林「豹だ」
索「速い…」
扈「お先に」
馬「青い大蛇の中に…」

索「なぜか急先鋒というあだ名が憎らしい」
馬「鉄笛仙も…」
宝「小覇王よりマシだ」
珍「黒鉄!」
黒鉄「!」
珍「出口は向こうだ」
索「見事な猟犬ですな」
珍「林冲など比較にならんわい」

宝「水路を行くのか」
珍「わしらは泳げんぞ」
海豚「!」
馬(かわいい)
索「乗れと言っているのか?」
海「!」
索「乗るぞ!」

珍「速い」
宝「賢いな」
淵「あれを見ろ!」
潤「竜だ!」
混江竜「!」
出洞蛟「!」
翻江蜃「!」
珍「行け!両頭蛇!」
宝「行け!双尾蠍!」
索「そういうノリ?」

淵「…じゃあ俺たちも」
潤「呼んでみるか」
淵「行け!出林竜!」
潤「行け!独角竜!」
出林竜「!」
独角竜「!」
索「…いいな」
馬「…俺たちは何も出なさそうだ」
郁「…」
索「お前の険道神は味方にならんのか?」
馬「…捕まえないとダメなんじゃないか?」
郁「マジでそういうノリですか?」

宝「勝ったな、父上」
珍「捕まえておいて良かった」
淵「ありがとよ、出林竜」
潤「もどれ、独角竜」
索「いいな…」
馬「…もしかしてお前は素早さをあげる呪文じゃないか?」
宝「この大虫窩って絶対やばいよな」
淵「嫌というほど虎が出てきそうだ」
珍「まず、この柴進の惨状を呉用殿にチクるぞ」

・柴進…罰として、自分の背丈まで届くほどの反省文を書かされている。 
・林冲…また百里風にそっぽ向かれた。
・索超…海豚に急先鋒と唱えたら、素早さが上がった。
・馬麟…鉄笛を吹いたら、目が覚め、味方の体力も回復した。
・扈三娘…一丈の蛇なんて飼えませんよ…
・郁保四…次に行くときは一番いい装備を頼もう。
・解珍…あだ名は両頭蛇。両頭蛇も双尾蠍も、妖術タイプに弱そうじゃな。
・解宝…あだ名は双尾蠍。弱点は入雲竜と混世魔王か…
・鄒淵…あだ名は出林竜。出林竜は典型的な竜属性だな。
・鄒潤…あだ名は独角竜。独角竜は頭突き技が強そうだ。

33.
李忠「なぜ私たちが柴進の庭に?」
周通「さっぱり分からん」
段景住(頼りねえパーティーだ)
李「打虎将は虎に対して強くなるのだな」
周「上乗せされたところで、基礎能力値はしれてるけどな」
李「黙れ」
周「金毛犬は?」
段「こいつか?」
金毛犬「きんもー!」
李(鳴き声が…)
周(キモかわ系?)

李「小覇王はどうなんだ」
周「これは俺の仮説だが」
段「なんですか」
周「小覇王は大覇王に進化するのではないか?」
李「そういうアビリティか」
段「じゃあレベルを上げないと」
周「だからスタート地点の雑魚を倒し続けて中覇王になったら冒険を始めよう」
段「せこい」
李「弱者の兵法だ」

周「レベル87でやっと中覇王とは…」
段「途中で止めたかった…」
李「白衣秀士を3発で倒せる強さか」
段(まだ弱い気がする)
金「きんもー」
李「こいつはなんの役に立つんだ、段景住?」
段「さあ…」
金「きんもー!」
周「桃花山のマスコットだな」
李「よし、冒険を始めるぞ!」
段「やっとか…」
金「きんもー!」

・李忠…この直後に花和尚と双鞭にダブルエンカウントし、ゲームオーバー。
・周通…花和尚に一撃で負けた。
・段景住…結局金毛犬は、終始傍で鳴いてるだけだった。

雄州

雄州…関勝がいなくなってから、すっかり商店街もさびれてしまったという。後任の将軍もノリが悪いとえらい不評だが、それは関勝のノリがおかしかったんだってば! 

人物
・関勝(かんしょう)
…木でできた大刀は、修学旅行に来た子供たちから一番人気の土産物である。
・宣賛(せんさん)…100円ショップのパーティーグッズ売り場に、自分のなりきりグッズが勝手に売られていた。
・郝思文(かくしぶん)…娘の郝嬌と二人でお使いに行ったら、どの店の主人も娘に恭しかったのはなぜだろう。
・単廷珪(たんていけい)…彼の作る水鉄砲は、夏になると毎年近隣の子供たちが大挙して買いに来る。
・魏定国(ぎていこく)… 彼の作る花火も、夏になると毎年近隣の子供たちが大挙して買いに来る。

34.
関勝「郝瑾は真面目すぎるな」
郝瑾「関勝殿が子供すぎるだけです」
関「違うな」
郝「それは?」
関「真面目なことはとても良い事だ」
郝「…」
関「しかし、真面目な話や仕事だけでは人は疲れてしまう」
郝「それは分かります」
関「今日は郝瑾に、大人の笑いを伝授してやろう」
郝「お願いします」

関「郝瑾。お前の親父が仕事中、俺に言いそうな事を言ってくれ」
郝「はい」
関「…」
郝「関勝殿、今日の調練後のご予定について申し上げます」
関「言え」
郝「雄州知府への定例報告書類の確認と決済」
関「…」
郝「魏定国の瓢箪矢作成のための材料費の見積もりを…」
関「リアルすぎる、郝瑾」

郝「申し訳ございません」
関「謝らなくて良いぞ、郝瑾」
郝「…」
関「しかし、うっかり真面目に仕事するところだった」
郝(あれ?)
関「フリを頼む」
郝「知府との会食どうしましょうか?」
関「券を持っているが、使うのをバレたら大変な券なんだ」
郝「?」
関「お食事券」
郝「汚職事件ですね!」

・関勝…郝思文の言葉尻を捉えてしょっちゅう悪ふざけをする。それが面白いかどうかは全く別のお話。
・郝瑾…頭の回転はなかなか早い。ちょっと謎かけの練習をしてみよう。

裴宣と孫二娘さん家

裴宣と孫二娘さん家 …普通の一軒家に、堅物夫と山賊妻が暮らしている。まっすぐすぎる夫と変化球が得意な妻のコンビネーションは抜群。

人物
・裴宣(はいせん)…あだ名は鉄面孔目(てつめんこうもく)。いかついルックスだから役人よりも軍人に見られがち。実は武芸も嗜んでいて、双刀遣い。
・孫二娘(そんじじょう)…あだ名は母夜叉(ぼやしゃ)。今でこそもっぱらデスクワークや肉屋で物流の監視を担当しているけれど、本当はスパイ適性が抜群に高い。

35.
裴宣「孫二娘」
孫二娘「はい」
裴「店の経営は問題ないか?」
孫「まったくないですよ」
裴「分かった。別件だが、牧畜の民と仲買人の収益の取り分が…」
孫(本当に仕事のことしか話さないねえ)
裴「また別件だが…」
孫「あなた」
裴「…」
孫「今はあなたの昇進を祝わせてください」
裴「…」

孫「鉄面孔目の鉄面を溶かしてやりましょうか?」
裴「…勘弁してくれ」
孫「なぜです?」
裴「…仕事でにやけるわけにはいかん」
孫「確かに、鉄面孔目がニヤニヤしてたら嫌すぎますね」
裴「…」
孫「実際は?」
裴「…」
孫「裁判にかけますよ?」
裴「…嬉しすぎる」
孫「柔面孔目ですね」

裴「ありがたすぎて、言葉が出んのだ」
孫(赤面孔目…)
裴「実は私からも贈り物がある」
孫「それは?」
裴「これを」
孫「…これは?」
裴「柴進から仕入れた葡萄酒だ」
孫「貴重な…」
裴「年号を見てくれ」
孫「これは…」
裴「お前の生まれた年だ」
孫「イケ面孔目め」

・裴宣…孫二娘がいてくれるお陰で、私も仕事に励めるというものだ。
・孫二娘…この贈り物の話を肴に、顧大嫂を一晩付き合わせた。

北の大地

北の大地…金国建国前夜の頃のことである。

人物
・阿骨打(あぐだ)
…女真族のリーダー。チャラ男に見られがちだが、長老会議の仕切りや戦の指揮の実力は確かなものがある。
・蔡福(さいふく)…冬は寒いな、慶。
・蔡慶(さいけい)… こんな時のための皮下脂肪じゃねえのかよ、兄貴。

36.
蔡福「慶」
蔡慶「なんだ」
福「お前がいつも鬢に差している花はなんだ?」
慶「一枝花が花を差して何が悪い?」
福「お前も俺と同じ製造工程で仕込まれたのだから、無理をするな」
慶「言い方…」
福「花など差した所で、蛾や蝿しか寄ってこない」
慶「兄貴を食虫植物の消化液で溶かしてやりたいぜ」

福「この北の大地で花など差した所で…」
女「蔡慶さん!」
女「蔡慶さんよ!」
慶「…」
福「」
真婉「…」
慶「真婉…」
福(この界隈の顔面偏差値では中の上だな)
真「蔡慶さん…」
慶「この花は…」
真「…」
慶「真婉!」
福(すれ違いざま、ヤンデレの気を強く感じた…)

阿骨打「モテるな、蔡慶」
慶「阿骨打」
福「…」
阿「その花は?」
慶「真婉から」
阿「あの族長の娘か…」
福(渋い顔だ)
慶「何か問題が?」
阿「今でこそ味方だが、なかなか面倒でな…」
慶「この花の名は?」
阿「ガマズミだ」
慶「ガマズミ?」
福「読者諸君!オチの意味は花言葉でググれ!」

・蔡福…重そうな女だな、蔡慶…
・蔡慶…花飾りがトレードマークだから、あだ名は一枝花。真婉の顔は悪くないぜ、兄貴。
 ・阿骨打…まあ付き合うかどうかは、お前らの自由だがな…

・真婉…蔡慶は好きだけど、隣のデブは生理的に無理。

37.
蔡福(結局慶と真婉が結ばれたが)
真婉「あなた、忘れ物です」
蔡慶「わざわざありがとう、真婉」
福(とても気立ての良い奥方だな)
真「あとこれも」
慶「これは見事な」
福(ヤンデレの気は、気のせいだったのか…)
慶「おい、兄貴」
福「なんだ」
慶「真婉が俺と兄貴の弁当を持ってきてくれたぞ!」

福「お前までリア充になるとは、宋国の先も思いやられるな」
慶「俺たちは宋を滅ぼそうとしてるじゃねえか、兄貴」
福(北の大地はひぐらしがなく頃か)
慶「美味そうな弁当だな、兄貴」
福「丁寧に作られた饅頭だ」
慶「兄貴の嫌味すら真婉は封じ込めちまうとはな」
福「エンドレスで聞かせてやろうか」

慶「美味い!」
福(さすがに大きいから二つに割ろう)
慶「盧俊義様は今どこで何をしているかな、兄貴?」
福(!?)
慶「兄貴?」
福「…なんでもない」
慶「美味すぎて声も出ないか」
福(…)
慶「阿骨打は良い顔をしなかったが、最高の嫁だぜ」
福(饅頭に針が入ってたなんて言えるわけないだろう?)

・蔡福…そう言えば北の大地に来て、足音が一歩多く聞こえる気がするのだが…
・蔡慶…兄貴の皮下脂肪の弾む音だろ?

・真婉…蔡慶には表の顔。蔡福には…

子午山

子午山…王進の焼き物が売れに売れて、いつの間にか一財産築いてしまった。王母様の発案で、近隣の子供たちの学びと憩いの場を作ろうと企画中。

人物
・王母(おうぼ)
…息子やその弟子どころか、山の獣に虫、果ては無機物までもが、彼女が来たらこうべを垂れる。
・王進(おうしん)…「一寸先は死域」の境地まで到達。そんな容易く入るべきゾーンではない。

38.
王母「四人で里に買い物も良いですね、鮑旭、馬麟」
鮑旭「はい、母上」
馬麟「王進先生が茶碗を選んでいる途中で死域に」
母「進!」
鮑「抜けましたね」
馬(なぜ慣れているんだ、鮑旭は)
母「喉が渇きましたね、鮑旭」
鮑「あそこに喫茶店が」
馬(田舎臭い店だな)
母「失礼ですよ、馬麟」
馬「!」

鮑「母上は何になさいますか?」
母「そうですね」
馬「王進先生が、メニュー選びで死域に」
母「!」
馬(怖っ)
鮑「大きなパフェがありますよ、母上」
母「四人で食べてみましょうか」
馬「珍しいですね、王母様」
鮑「王進先生が器を覗きながら死域に」
母「!」
馬(怖っ)

母「厠に参ります」
鮑「私も」

馬(王進先生と二人に…)

馬「四人でも食べきれるかどうかの量だ」

馬「二人を待ちますか、先生?」

馬(先生が、パフェを食べながら死域に…)

母「待たせました、進、馬麟」
鮑「先生…」
母「進」
鮑「…」
馬「…」
母「杏子は、残しましたね?」
馬(店が、軋んだ)

・王母…杏子の季節だから、このパフェを頼んだのですよ、進。
・王進…いくつになっても、母だけは怖いと震えながら死域。 
・鮑旭…熱々のラーメンが冷麺になった…
・馬麟…箸まで冷たくなって、持てたもんじゃない…

39.
王母「鮑旭、馬麟」
鮑旭「…」
馬麟「…」
母「この派手な楽器は、いつ買ったのですか?」
鮑「先月、里の楽器屋にて、買いました…」
馬「買うように唆したのは、私です…」
母「…」
鮑「母上に黙ってこのような買い物をしてしまい…」
母「弾いてごらんなさい、鮑旭」

鮑「…母上?」
母「事と次第によっては、只ではおきませんよ」
馬「王母様!」
母「…」
馬「私の鉄笛も共に吹かせていただきます」
母「…」

鮑(馬麟!)
馬(あれだけ共に練習したではないか)

鮑「…参ります、母上」
母「…」
鮑「…」
馬「…」
鮑「お前を人肉饅頭にしてやろうか!」

母「鮑旭、馬麟」
鮑「…」
馬「…」
母「…久しぶりに、私の血が滾りました」
鮑「…母上?」
母「少し、待っていなさい」
馬「?」
母「…」
鮑(使い込まれた琴だ)
馬(手入れも見事だ)
母「私も混ぜなさい、鮑旭、馬麟」
鮑「母上!」
馬(マジかよ…)
母「二人とも、只ではおきませんからね」

・王母…子午山バンド「喪門仙」琴。まさかこの私が、歌舞音曲に精通していなかったと思っていたので?
・鮑旭…「喪門仙」ボーカル兼ギター。どんな曲だろうと巧みに合わせる母上の技巧はさすがだ。
・馬麟…「喪門仙」鉄笛。王母様の正統派の技術は勉強になる。
・王進…三人のセッションを味わいながら死域。

40.
鮑旭「…」
馬麟「…」
王母「緊張しているのですか?」
鮑「とても…」
馬「これほど多くの人の前で演奏など…」
王「誰にでも、初めてはありますよ」
鮑「…」
王「2人に言っておきます」
馬「…」
王「いくらでも失敗しても、構いません」
鮑「母上?」
王「失敗は必ずあなた達の糧になります」

王「だって、喪門仙の初ライブなのですよ、2人とも!」
鮑「…」
馬「…」
王「全力で楽しまないと、つまらないじゃないですか」
鮑「母上が一番若々しいな、馬麟」
馬「俺たちらしくなかったな、鮑旭」
王「行きますよ!」
鮑「はい!」
馬(しかし、血化粧する時からノリノリだったな、王母様)

鮑「…」
馬「…」
王「見事でした、鮑旭、馬麟」
鮑「今は、何も考えられません…」
馬「余韻がまだ残っています」
王「大切にするのですよ」
馬「…」
鮑「しかし母上がこのような化粧をされるなんて…」
王「私にも若い頃はあります、鮑旭」
馬(王進先生に…)
王「なりません、馬麟」
馬「!」

・王母…彼女の若い頃を知る者は開封府にもごく一握り。老舗の茶屋のお婆ちゃんが幼馴染だったとか。
・鮑旭…こんな私でも世間に居場所があるのですね。
・馬麟…人のために笛を吹くのも悪くないな。
・王進…三人のライブに感激しながら死域。

青蓮寺

青蓮寺…座禅スペースを設けた。いい加減にしてると、洪清に文字通りお灸をすえられちゃうからきちんとしようね。

人物
・袁明(えんめい)…この歳になっても、いまだ勉強をかかさない。今は若者の傾向を学ぶために、深夜アニメの勉強中。
・李富(りふ)…梁山泊について勉強しすぎて、所属する兵や事務係の名前まで覚えてしまった。
・聞煥章(ぶんかんしょう)…義足に小銭を貯めていたら、金属探知機に引っかかった。
・洪清(こうせい)…袁明のボディーガードだけやってると思われがちだが、青蓮寺総務部の責任者でもある。
・呂牛(りょぎゅう)…聞煥章のなにか。同じ穴の狢とはまさにこのこと。

41.
聞煥章「また使えると思った部下が辞めてしまった」
呂牛「そういう奴だから、見切るのも決断も早いのだろうな」
聞「どうすれば、未だ旧態依然とした業務フローを改善できるのだ…」
呂「…上が模範になるべきだろうな」
聞「…つまり?」
呂「俺に言わせるな、聞煥章」
聞「そういうことか…」

袁明「…」
洪清「…」
聞(まさかこの二人を相手に、パソコンの使い方講座をやることになるとは…)
袁「…」
洪「…」
聞「それではお手元の資料を…」
袁「聞煥章」
聞「…」
袁「なぜプロジェクターを使わぬ」
聞「!?」
袁「洪清」
洪「…」
聞(すごく使いやすいレーザーポインタまであった…)

聞「以上が林檎社のパソコンを活用する利点です」
袁「…」
洪「…」
聞「…ご質問は?」
洪「…」
聞(…コウセイドノ?)
文立(トラウマが…)
洪「セキュリティーソフト導入における各社の性能面の比較、および部署内で情報共有するにあたっての注意点について聞きたい」
聞「!?」
文(凄い理解力…)

・聞煥章…洪清がここまで話しの分かる男だとは思わなかった…
・呂牛…オレモコウセイノアイテハイヤダ…
・文立…趙安がつけた聞煥章の護衛。という事は、つまり…?

・袁明…きっかけさえ与えれば、後は勝手に独自の努力で目覚ましい進歩を遂げる。
・洪清…あまり年寄り扱いするな、聞煥章。

42,
聞煥章「フレッシュマンの広告も見飽きたと思わないか、文立?」
文立「…」
聞「文立?」
文「…フレッシュマンは、永遠に不滅です、聞煥章様」
聞「そういえばお前は、趙安の元にいたのだったな」
文「ジューシー何信様の部下でした」
聞「あの濃すぎて臭すぎるあいつか」
文「それは否めません」

聞「なぜ何信の元から、私の護衛に?」
文「何信様の命令で…」
聞「…実際のところは?」
文「…何信様が臭すぎて、二つ返事で承諾しました」
聞「趙安も臭くないか?」
文「趙安様は、まだ誤魔化しが効くんですよ」
聞「…何信は?」
文「くさやの干物が完敗しました」
聞「くさやが?」

文「ただ一つ何信様の名誉のため申し上げますと」
聞「…」
文「何信様は臭いですが、不潔ではないのです」
聞「風呂に入ってるのか?」
文「趙安様の軍でバスローブが一番似合う男でもあります」
聞「でも臭いんだろ?」
文「臭すぎます」
聞「なぜだ?」
文「台詞まで臭いですよ?」
聞「最悪だな」

・聞煥章…なぜ道を変えた、文立?
・文立…五里先から、何信様の匂いがしたので…

禁軍

禁軍 …意外にも科学的なエビデンスに基づいた合理的な調練プログラムを組んでいるというが、やっぱり異常すぎる調練もかかせない。

人物…
・童貫(どうかん)…マッチョ宦官。そもそも男性ホルモンが出にくくなってるはずなのに、この筋肉量。
・趙安(ちょうあん)…フレッシュマン。宋国の広告で起用されすぎて、開封府では彼の顔を見ない日はない。うんざりしそうだ。

43.
趙安「フレッシュ!」
公順(取ってつけたような登場のさせ方だ…)
何信「趙安殿ほどのフレッシュマンに地方営業をさせるなど、宋国は腐ってるな」
公(あんたの体臭を感じなくなった俺の鼻は、既に死んでいるのだろうな…)
何「北京の雰囲気は開封府とは違うな、公順」
公「気質が違いそうですね」

趙「フレッシュ!」
民(衣装が…)
民(都の禁軍から来た御仁だと…)
民(嘘やん…)
趙「フレッシュ!」
公「あまり芳しくないですね」
何「見る目がないな、北京の田舎者は」
公「何信殿、声が…」
董万「聞き捨てならんな」
何「何者だ」
董「北京の将、董万とは俺のことだ」
何「なんだその髪型は」

董「貴様らの将はあの変態か?」
何「フレッシュマンを愚弄するか、貴様」
董「北京の民を愚弄した輩に言われたくない」
趙「やめよ、何信」
董「変態禁軍のお出ましだ」
趙「私の鮮度に嫉妬するとは北京も青い」
董「バカ言え」
趙「ヅラで頭皮の惨状から逃避している輩の声など聞こえんよ」
董「!」

・趙安…地方の民と禁軍との交流の架け橋となるのもフレッシュマンの役目の一つだ。
・公順…定食屋で我々を見る目が痛いですね。
・何信…なぜ隣の客は鼻をつまむのかな?

・董万…一目で俺のヅラを見抜くとは…

44.
童貫「調練という言葉を言ってはならない調練を行う」
鄷美「元帥、言ってます」
童「まだスタートと言ってない、鄷美」
畢勝「つまり、調練という言葉を使わず、調練を表現する調練ですな、元帥」
童「その通りだ」
鄷「言った者は?」
童「厳しい調練を課す」
畢(元帥が一番言いそう)
童「スタート」

鄷「今日は八刻の遠駆けの」
畢「…」
鄷「訓練とその後、騎馬と歩兵の模擬戦を行う」
畢(訓練はありなのか)
童「それでは今日の調練を始める」
鄷(もう言っちゃった)
畢(言ったこと忘れてないか?)
童「調練を行う前の準備調練だ。各自、身体をほぐす調練を行うように」
鄷(元帥…)
畢(わざとか?)

童「鄷美、畢勝」
鄷「…」
畢「…」
童「調練の指揮に迷いがある」
鄷「…」
童「何を迷う畢勝」
畢「元帥」
童「…」
畢「今朝私たちに言ったことを、覚えてらっしゃいませんか?」
童「…」
鄷「…」
畢「…」
童「…調練と言わぬ調練」
畢「はい」
童「…そんなに言っていたか?」
畢「冒頭から」

・童貫…自分への罰として、一人で二倍の調練に取り組んだ。
・鄷美…童貫だけに取り組ませるわけにはいかないので、言ってないけど結局全ての調練に付き合った。
・畢勝…その辺は割とドライで、自分は調練と言ってないから所定の終了時刻でさっさと引き上げた。

元ネタ!

twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

長々とお読みいただきありがとうございました!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!