スライド16

水滸噺 5月(上)[ダメンズマスター李逵]

あらすじ
浪裏白跳 混江竜を嘲り
脱獄の友 愛妻と惚気る
神出鬼没 趙安に史文恭
禁軍将校 笑ったら厳罰

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、  
 あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

「私の推しの扱いがひどい!」
「俺の推しの出番が少ない!」
「フレッシュ!」 
といった、ご意見ご感想等心待ちにしております。

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…広大なキャパシティで皆がやりたい放題できるのも、初代梁山泊頭領のあいつのおかげであるのは忘れがち。まぁ忘れたほうがいいと思うけど。

騎馬隊

騎馬隊…隊長は兵を率いているのではなく、馬を率いているのではないか、という疑惑が生まれたので検証した結果、全体の75%以上の馬が騎馬隊長よりも賢かった。

人物
・林冲(りんちゅう)…あだ名は豹子頭(ひょうしとう)。豹のような顔、すなわち三国志の張飛を連想させるが、多分知力は張飛よりもかなり低い。
・索超(さくちょう)…あだ名は急先鋒(きゅうせんぽう)。突っ込みが鋭いのがあだ名の由来だが、本人はいたって穏やかで、突っ込みより天然ボケのきらいがある。
・扈三娘(こさんじょう)…あだ名は一丈青(いちじょうせい)。実は水滸伝で一番意味が分からないあだ名。雰囲気とか、背中に3mの蛇の刺青がある大女だとか多岐にわたるが、ここでは雰囲気を感じ取ってほしい。
・馬麟(ばりん)…あだ名は鉄笛仙(てってきせん)。鉄笛の名手だから。彼の奏でる音色は林冲のポテンシャルをさらに覚醒させるかもしれない。
・郁保四(いくほうし)…あだ名は険道神(けんどうしん)。葬列の先頭に立つおどろおどろしい神様のこと。その物騒なあだ名と裏腹の騎馬隊屈指のいじられキャラ。

・皇甫端(こうほたん)…あだ名は紫髯伯(しぜんはく)。古の天才獣医伯楽に匹敵する獣医で、髭が紫だから。紫といいつつ、本人的には赤茶だと思ってる。
・段景住(だんけいじゅう)…あだ名は金毛犬(きんもうけん)。馬が好きすぎてワンちゃんみたいに走り回るところははたから見れば愛嬌がある。盗む馬を物色しているだけだが。

1.
林冲「郁保四」
郁保四「はい」
林「…それでいい」
郁(俺は旗になるのだ。そうしていられる自分が本当に誇らしい)

林「…だからといって、本当に旗になるやつがあるか」
郁(旗)「どうもすみません」
索超「この旗が郁保四、ですか?」
旗(郁)「索超殿、こそばゆい」

林「お前は旗か」
郁(旗)「旗です」
林「そうか、旗か」
郁(旗)「旗です」
林「…」
郁(旗)「…」
馬麟(話が進まん)
索「お前も郁保四と一体になれば元に戻れるのか?」
郁(旗)「それが分からないんです」
索「なんと」
郁(旗)「白旗です」
馬「白旗だな」
林「何か言ったか、馬麟?」
馬「何も」

林「郁保四。馬鹿なことはやめて身体に戻れ」
索「痛そうにはためいてるな」
馬「旗だけにか」
郁(旗)「果たし合いをすればいいのではないでしょうか?」
索「その流れでいくのか?」
郁(旗)「林冲殿。私と果たし合いを」
林「やるのか?」
郁(旗)「白旗です」
馬「もういい」

林「面倒だ、郁保四を旗にくるんで吊るせ」
索「そうですね」
郁(旗)「雑!」
旗(郁)「もう慣れた」
林「む、風が」
索「おお、やはり騎馬隊の旗が見事にはためいていると爽快ですね」
旗(郁)「これだ、この風なのだ」

郁「戻れました」
林「そうか」
索「帰るぞ」
馬「鉄笛を吹いてやる」
郁「…」

・林冲…愛馬の名前は百里風。林冲より賢い。
・索超…乾物屋の倅が軍人を飛び越えて騎馬隊の隊長をやっているのも、北方水滸伝ワールドの面白さといえる。
・馬麟…実は冗談を言うのが嫌いではない。気づかれないけど。
・郁保四…林冲騎馬隊の旗持ち。馬乗りながら、旗持ちながら、剣を使って闘うのって凄すぎない?

2.
林冲「お前は馬泥棒だったそうだな、段景住」
段景住「まあな」
林「ならば俺から百里を盗んでみろ」
段「無理だ」
林「怪しい」
段「もう盗みはやめたんだ」
林「そう言いつつ隙を見て盗むつもりだな」
段「付いて来るな」

索超「これは」
皇甫端「段景住が百里風から林冲を盗んでおる」
百里風(怒)

・林冲…最近百里がよそよそしいのだ。何か知らないか?
・段景住…馬泥棒で馬術の腕もピカイチ。皇甫端の手綱捌きはそれほどでも。
・索超…最近百里が寄って来るのだ。何か知らないか?
・皇甫端…凄腕の獣医。林冲が捕まえてきたバッタを診せられたことがある。

・百里風…林冲がバカすぎる!もう知らん! 

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…特殊部隊と闇塩を護衛する部隊。隊長がうっかり、もっと目立つ致死軍を目指すマニフェストを掲げてしまって大混乱になった。

人物
・公孫勝(こうそんしょう)…漫画の影響でスキンヘッドにしてみた。
・劉唐(りゅうとう)…黒髪に憧れ始めたが、赤髪鬼(せきはつき)のあだ名が自分を縛る。あだ名付けたやつ誰だ。
・楊雄(ようゆう)…前職は首斬り役人。リストラにあった時は上司に、お前が首を斬られる番だ、としたり顔で言われた。その上司も楊雄に首を斬られた。
・孔亮(こうりょう)…酷薄イケメン。公孫勝信者との溝が深い。
・樊瑞(はんずい)…妖術の練習を始めたら、相手をしびれさせることができるようになった。それは静電気とは違う。
・鄧飛(とうひ)火眼狻猊(かがんしゅんげい)のあだ名の通り、目が赤いライオンのような風貌。徹夜でネトゲしてもばれにくい。
・王英(おうえい)…スケベ。スケベであって変態ではないとは本人談。
・楊林(ようりん)…鄧飛の鎖鎌を試してみたら、わき腹をかすめた分銅が痛すぎた。

3.
公孫勝「今日は劉唐はいないのか?」
鄧飛「他で任務ですね」
公「…」
鄧「…」
公「…」
鄧「俺は鎖鎌の稽古してますんで、用があったら声かけてください」
公「…」
鄧「…」
公「鄧飛」
鄧「何か?」
公「まさか室内でやるのか?」
鄧「そうですが?」

公「私に当たるだろう」
鄧「大丈夫です。鎖で遠くのものを持ってくる稽古です」
公「ほう」
鄧「机の杯を取りにいきます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…割れましたね」
公「…」
鄧「戸棚の引き出しを開けます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…戸棚ごと倒れましたね」
公「今すぐやめろ」

鄧「稽古を通じて上手くならないと」
公「その前に部屋の備品が壊滅する」
鄧「公孫勝殿が取って欲しいものは何ですか?」
公「話を聞かん奴だ」
鄧「硬くて、分銅で壊れないものだったら何とかなると思います」
公「劉唐は何を躾けているんだ」
鄧「劉唐ですか?」
公「あいつは壊れやすいからいい」

・公孫勝…劉唐はなぜこいつをスカウトしてきたのだ。
・鄧飛…鎖鎌の使い手。弟分の楊林を試しにして鎖鎌の可能性を模索しているが、楊林は堪ったものではない。 

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍…公式(ほぼ)公認カップル、林冲と公孫勝。隊長同士はあれだが、その部下の連携や関係性は思いのほか深い。

4.
林冲「たまには騎馬隊以外のことをやってみないか?」
索超「面白そうですね」
林「歩兵とか」
索「水軍もありますよ」
扈三娘「重装備部隊も」
郁保四「工兵はどうでしょう?」
林「馬麟は?」
馬麟「…お任せします」
林「つまらん」
馬(致死軍が良いなんて言えんだろ?)

公孫勝「ぬるいことを考えているな、林冲」
林「出やがったな、ウスノロ」
公「そのウスノロに調練で勝つつもりか?」
林「なに?」
公「致死軍の調練に騎馬隊のバカどもが付いていけると思えん」
林「面白い。致死軍の木偶どもの調練など寝ながらこなしてやろう」
扈(馬麟殿が凄く嬉しそうに見える)

索「郁保四が早々と脱落した」
扈「あの巨体では無理もありません」
索「しかし、扈三娘」
扈「はい」
索「馬麟が物凄く張り切っているように見えないか?」
扈「見えます」
索「ファンなのかな?」
扈「きっと」

馬(劉唐からもらった致死軍ハンドブックを大事に取っておいて本当に良かった)

・林冲…案の定余裕綽々でこなしたが、百里風の心のケアに思わぬ時間がかかってしまった。
・索超…致死軍スタイルの扈三娘が結構可愛かった。
・扈三娘…意外と致死軍も性に合うかもしれない。
・馬麟…念願が叶ったひと時だった。その日の笛もかつてないほどノリノリ。
・郁保四…木に引っかかった。

・公孫勝…意外と扈三娘が致死軍向きで驚いた。馬麟?普通かな。 

5.
林冲「今度は貴様らが騎馬隊の調練に参加する番だ」
公孫勝「くだらん…」
林「根暗な部下どもが色めき立ってるぞ」
楊雄(夢みたいだ)
楊林(一度参加したかったんだ)
林「早く馬に乗れ」
孔亮(久しぶりだな)
劉唐(たまには良いだろう)
王英「林冲殿、俺は?」
林「身長制限に引っかかった」
王「」

林(落馬しても楽しそうにしてやがる)
雄(楽しすぎる)
錦(疲労が心地よい)

王「…」
扈三娘「王英殿?」
王「!」
扈「この間致死軍の調練に参加したんですが」
王「どうだった?」
扈「意外と向いてました」
王「そうか」
扈「王英殿、それでは」
王「…」

孔「浮かれやがって」
劉「お前もな」

林「なかなかやるではないか、楊雄」
雄「!」
林「お前は…」
錦「錦豹子の楊林です!」
林「豹子頭に似ているな」
錦「!」
公「ナンパはその辺にしろ、林冲」
林「お前の陰気な調練が部下を暗くしているのがよく分かったぞ」
公「余計だ」
林「公孫勝」
公「…」
林「悪くないな」
公「そうだな」

・公孫勝…騎馬隊の調練が楽しいなど、奇特な部下だ。
・楊雄…顔色がとても良くなった。
・楊林…林冲と楊雄がいたら、楊も林も使えないではないか!
・劉唐…調練に騎馬隊のエッセンスを取り入れようと思った。
・孔亮…青州軍時代を思い出した。
・王英…見学。扈三娘ばっか見てた。

・林冲…もっと日向で遊べば良いものの。
・扈三娘…次があったら王英の乗れる馬は用意してあげよう。 

本隊

本隊…一軍クラスの兵が集う軍隊。半年に一度の隊長自慢プレゼンは、本隊人気イベントの一つ。

人物
・関勝(かんしょう)…得意武器は青龍偃月刀。それでスイカ割をしたらえらいことになった。
・呼延灼(こえんしゃく)…得意武器は二本の鞭。スペアを腰に四本くらいさしといたら、玄関に引っかかった。
・穆弘(ぼくこう)…得意武器は朴刀。パワーはあるものの、視界が限られるため攻撃範囲は見切られやすい。
・張清(ちょうせい)…得意武器は礫。MAX158kmの本格派。最近の課題は、シュート回転の克服。

6.
穆弘「!」
呼延灼「珍しいな、穆弘が落馬するなど」
穆「いかん、眼帯が」
呼「今日は調練用か?」
穆「連休明け初日用の眼帯だ」
呼「哀しい目をしているな」
穆「貸してくれ」
呼「ほれ」
穆「…」
呼「…」
穆「大変だ。何も見えない」
呼「目の付け所が違うぞ、穆弘」
穆「うまいな」

・穆弘…目の付け所が違うのは眼帯だけではない。
・呼延灼…自分は眼帯よりも顔の刀疵に憧れてたな。

7.
張清「李逵に斬ってもらった礫が驚くほど投げやすかった」
関勝「あのスライダーはグローブがあっても顔に食らうな」
張「そしたらその辺の石をまともに投げられなくなった」
関「それはマズい」
張「投げやすくて硬いものはないか?」
関「その辺の石とか」
張「それを投げにくくなって困ってるんだ」

・関勝…石は投げないが、仕事は郝思文にぶんなげる常習犯。おまけにノーコン。 
・張清…スライダー、シュートに加えナックルまで投げられる李逵の礫はオーダーメイドの特注品である。 

水軍

水軍…なぜか隊長を務めている李俊がリーダーの軍隊。夏の水軍野郎どもによるシンクロナイズドスイミングは、毎年高い評価を集めている。

人物
・李俊(りしゅん)…泳ぎ、操船、航海どれをとっても部下よりも下手くそ。戦の指揮でかろうじてイニシアチブを握れている。
・張順(ちょうじゅん)…李俊より泳ぎが得意。
・阮小七(げんしょうしち)…李俊より操船が得意。
・童猛(どうもう)…李俊より航海と水路の見極めが得意。
・項充(こうじゅう)…李俊より飛刀が得意。

8.
張順「本当なんだよ」
李俊「にわかに信じがたいが」
張横「久しぶりだな、順」
順「兄貴、良いところに」
横「どうした」
李「張順が魚と喋れると言って聞かないんだ」
横「喋れるぞ」
李「張横までそう言うのか」
横「論より証拠、見せてやれよ」
順「あれか!」

李「なんだ、あれって?」
横「まあ見てろ」
李「魚影が」
横「これは宋国広しとはいえ、順にしか出来ん」
李「こいつは!」
魚「李俊のチキン野郎」
横「魚を統率して泳がせることができるんだ」
李「魚にチキン野郎と罵られるとは」

順「見たか、李俊殿」
李「あの魚どもを一網打尽にして捌いて干物にしてやりたくなったぞ」
順「それは絶対にやめろ」
李「なぜだ」
順「俺の部下だぞ。それを殺すと言うのか」
李「しかし、張順」
順「なんだ」
李「あれを見ろ」

宋江「今日は大漁だな、盧俊義」
盧俊義「おう!」

順「」

・張順…魚と話せるが、それはつまり人間関係ならぬ魚関係まで背負いこむことになるのだ。
・李俊…宋江の釣った魚が久しぶりに美味かった。
・張横…弟は昔よりさらに魚に近づいてきてると思った。

・宋江…交渉の結果、張順と対立している区域での釣りのみ許可された。
・盧俊義…おう、おう。(今釣った鯉も張順の部下なのか?)

9.
項充「李俊殿、飛刀下手ですね」
李俊「くそ」
項「安道全のメス投げも上手いのに」
李「商売道具だろう」
項「やれやれ」
李「人の痛みが分からん奴だ」
項「俺は人の痛みを分かろうとは思いません」
李「なんだと?」
項「だって宋江殿の斜め上な心の痛みを分かると思いますか?」
李「確かに」

項「人の心の痛みなんて分かるわけありません」
李「だからって傷つけるようなことを言うなよ」
項「俺は人の心の痛みには鈍感ですが」
李「開き直るな」
項「人の心の痒みが分かる男になりたいんです」
李「その心は?」
項「痒いところに手が届く人材です」
李「上手くもねえ」
項「痛え」

項「李俊殿が無謀に突っ込んでいくのを飛刀でサポートしたり」
李「お前のサポートなどいらん」
項「穆弘殿の恥ずかしい話を共有して李俊殿を優位に立たせますよ」
李「それは悪くないが」
項「なんですか?」
李「穆弘にも同じ事をしているのではないか?」
項「」
李「掲揚鎮の掟で懲らしめてやる」

・李俊…武術はそこそこだけど、他の運動は鈍臭い。石を投げるフォームが女の子投げで張清は呆気にとられた。 
・項充…水陸両用部隊隊長。穆弘と李俊のタッグ技は強烈だった。塞ぎの虫が鳴き止まなくなるくらいに。 

二竜山 

二竜山…梁山泊の育成施設。梁山泊の二流とか二流山とか心ない兵がのたまうが、そんな奴はおおむね厠掃除係に任命される。

人物
・楊志(ようし)…根暗頭領だったのも昔の話。兵の食事や飲み会、プライベートにまで乱入し、日々SNSでアップしている愛妻家で子煩悩な大将。
・秦明(しんめい)…怒りんぼといわれたのも昔の話。最近怒鳴ったのは、タンスの角にガツンと小指をぶつけたとき。
・石秀(せきしゅう)…致死軍だったのも昔の話。基本的に優しい人柄なんだけど、致死軍マインドに毒されすぎて、兵をいたわる言葉まで物騒になりがち。
・曹正(そうせい)…痩せていたのも昔の話。太っちょなお肉屋さん。エプロンを付けたら10人に8人がお肉屋さんっぽいと答える。
・燕順(えんじゅん)…堅気だったのも昔の話。山賊のお頭がよく似合う豪快な笑い声。
・鄭天寿(ていてんじゅ)… 銀細工職人だったのも昔の話。それでも手先は器用でピッキングの達人。

10.
石秀「曹正は肉屋だが」
曹正「操刀鬼の曹正とは俺のことだ」
石「実は俺の実家も肉屋だったのだ」
曹「初耳だな」
石「お前の解体の腕は認めるが、俺だって負けたもんじゃない」
曹「面白い」
石「負けた方が解体されるルールで勝負だ」
曹「待て、石秀」

楊志「美味いもんが食えると聞いて」
曹「解体の腕を競うのがメインのはずだが」
石「料理まで競うのも悪くなかろう」
曹「俺は秘伝の曹正のソーセージで勝負するぜ」
石「今なんと言った、曹正」
曹「曹正のソーセー」
石「次言ったら腸詰と一緒に煙で燻すからな」
曹「発想が物騒なんだよ、お前は」

楊「やはり曹正の羊の腸詰は美味い」
曹「ソーセー」
石「…」
曹「」
楊「?」
石「楊志殿。俺の煮込みを食ってくれ」
楊「石秀が料理の名手とは知らなかった」
石「牛をバラして内臓をグツグツと煮込んだ逸品だ」
楊「…」
曹「美味いが、後味が悪いな」
楊「食欲を落とさないでくれ」
石「バカな」

・楊志…腹ぺこになるとついついそこら辺の屋台で買い食いをしてしまい、嫁さんと楊令に叱られる。
・石秀…致死軍から配属されたせいか、発想が血生臭い。そういうのは解体だけにしといてくれよ。
・曹正…石秀にお腹を触られながらBクラスと呟かれた時は肌に粟が立った。

11.
秦明「どうしたものか」
阮小五「秦明殿?」
秦「阮小五か」
五「戦は大勝利でしたのに、顔が暗いですね?」
秦「…実はな」
五「はい」
秦「楊令の面倒を見てもらっているご婦人がいる」
五「はあ」
秦「楊令の接し方の考えに違いがあり、怒鳴ってしまったのだ」
五「…」
秦「…」
五(そんだけ!?)

秦「私は彼女のことを傷つけてしまったのではないか」
五「…」
秦「どう思う、阮小五?」
五「…僭越ながら申し上げますと」
秦「うむ」
五「清風山の連中がやらかした事に比べたら、可愛いものかと…」
秦「あの三人が?」
五「中でも王英は青州の妓楼全店舗に出禁になる程です」
秦「けしからんな」

五「二竜山が見えてきました」
秦「…」
五(戦の時より緊張してる?)
秦「…」
五(ご婦人と子どもが見える)
秦「…」
五(顔赤っ)
秦「…」
公淑「秦明様。お帰りなさいませ」
楊令「…」
秦「…うむ」
五(声小さっ)
王英「よし、早速妓楼に」
秦「子供の前でやめろ!」
王「」
五(これが霹靂火秦明か)

・秦明…あだ名は霹靂火(へきれきか)。雷様である。
・阮小五)…自分がかつてのガールフレンドにやらかした事を思い出し、すごく謝りたくなった。

・公淑…秦明様のお叱り?理不尽だと思ったことは一度もありませんよ?ところで、顔が赤いのは風邪をひかれたのですか?
・楊令…(初心すぎるぞ、秦明殿。鈍すぎるぞ公淑様)

・王英…青州抱かれたくない男ランキング殿堂入りを果たす。抱かれたい男ランキング殿堂入りは花栄。

12.
鄭天寿「ほれ、楊令」
楊令「…」
公淑「見事な銀細工ですね」
鄭「昔とった杵柄ってやつですよ」
楊「…」
鄭「兄ちゃん、やるだろう?」
公「楊令、御礼は」
鄭「礼などいりません。持ってきな」
楊「…」
公「鄭天寿殿、ありがとうございました」

燕順「おい、鄭天寿」
鄭「どうした」
燕「女の髪飾りを作ってくれ」
鄭「またかよ」
燕「持ってるとモテるんだ、あれは」
鄭「作ってるのは俺だぞ」
燕「金は出してんじゃねえか」
鄭「割り増してくれ。俺だって忙しいんだ」
燕「王英の嫁の分も作ってやったらどうだ?」
鄭「死んでも無いな」

秦明「鄭天寿」
鄭「秦明殿。珍しい」
秦「簪を作って欲しいのだが」
鄭「簪、ですか?」
秦「…」
鄭「かしこまりました」
秦「料金は」
鄭「いりませんよ」
秦「そういう訳には」
鄭「宴で振舞ってくれたらチャラにしますって」
秦「鄭天寿」
鄭「必ず、届けますから」
秦「頼む」

・鄭天寿…腕の良いイケメン銀細工師。気のいい兄ちゃん。

・楊令…鄭天寿に作ってもらった装飾品が初めてのおしゃれ。まだ大事に付けてるよね。
・公淑…誰かからもらった銀の簪は二人にとって大切なもの。
・燕順…例え窮地に陥ろうとも、彼の銀細工と共に戦い続けるのだ。
・秦明…花栄と仲が良かったな。 

双頭山 

双頭山…董平が首領になってから、武器を二本使いたがる兵が増えた。

人物
・董平(とうへい)…槍を二本使い始めたきっかけは、足を骨折した時の松葉杖。
・楽和(がくわ)…歌を始めたきっかけは、芸妓さんやってたお姉ちゃんのお得意様のモノマネ。
・鮑旭(ほうきょく)…丁寧な言葉遣いを始めたきっかけは、スパルタ指導による矯正。 

13.
董平「鮑旭は今でこそあんな馬鹿丁寧な口調で話すが」
楽和「…」
董「昔はどうしようもない盗っ人だったらしい」
楽「意外ですね」
董「俺は鮑旭にあの頃の気風を思い出してもらいたいんだ」
楽「黒歴史ほじくり返さなくても」
董「鮑旭の荒々しさを取り戻そう」
楽(今のままでいいと思うけどな)

鮑旭「董平殿」
董「おう、鮑旭」
鮑「兵の調練にて報告したいことがございます」
董「鮑旭」
鮑「はい?」
董「荒々しく報告しろ」
鮑「荒々しく、ですか?」
董「荒々しく」
鮑「…」
董「…」
鮑「…棒で叩きませんか?」
董「…叩かんが?」
鮑「…本当に?」
董「なぜ叩くんだ?」
楽(何かあったな)

鮑「しからば」
董「…」
鮑「孫立の野郎は要領良く適当にやってやがる」
董(ドラマでも見たことない変貌ぶりだ)
鮑「兵を走らせるのも飽き飽きだが、今日も四刻走らせたぜ」
楽(内容は真面目だ)
鮑「将校に使えそうな奴のリストはこちらにまとめてある。読んでおいてくれ」
董「律儀だな、鮑旭」

・董平…面白半分でちょっかい出して後悔することが多い。
・楽和…馬麟とのセッションはチケットを売り出した直後に完売する。
・鮑旭…荒々しくしゃべると背後が寒くなる。 

聚義庁

聚義庁…皆の弱点は皆で補おう!がコンセプトだったが、皆の弱点のしわ寄せはすべて呉用に行ってしまった。

人物
・晁蓋(ちょうがい)…デスクワークが苦手。
・宋江(そうこう)…替天行道の暗唱が苦手。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…歩くのが苦手。
・呉用(ごよう)…休むのが苦手。
・柴進(さいしん)… 我慢が苦手。

14.
晁蓋「調練に行きたい」
呉用「この書類の束の決済を済ませたら、ご自由にどうぞ」
晁「こんなの誰が判を押しても同じではないか」
呉「そう言うわけにはいきません」
晁「ならば、この書類の山に判を押したくなるような話を聞かせてくれ」
呉「そうですな」

呉「例えばこの裴宣から回って来た、鄆城の食べ物を取り扱う商人が守るべき法案に関する書類ですが」
晁「中身を見ずに判を押したくなる代物だ」
呉「裴宣は始め単身で鄆城の商人に突撃をしました」
晁「無謀な」
呉「ご懸念の通り、裴宣はコテンパンにされてしまったのです」
晁「無理もない」

呉「しかし裴宣は諦めませんでした」
晁「さすがだ」
呉「彼の突撃は敗れこそしましたが、その姿勢に共感する商人が少しづつ現れたのです」
晁「戦に似ているな」
呉「これが裴宣の戦で、彼はすでに鄆城の商人の半数以上を味方につけ、法案の策定にこぎつけたのです」
晁「これは真面目にやらねば」

・晁蓋…書類を読むのは苦手だが、一度乗れば呉用も頼みにする判断力と決断力をみせる。100回に1回くらいだが。
・呉用…晁蓋をやる気にさせる話のレパートリーは意外とある。
・裴宣…梁山泊の領地の行政部門担当。もともと弁護士だったのに、なし崩し的に任されてしまった。

15.
宋江「梁山泊大運動会の目玉」
呉用「大障害物競争ですね」
盧俊義「今回も手が込んでいるのかな?」
呉「宣賛統括の元、李雲、湯隆、凌振、解宝、陶宗旺、魏定国、単廷珪が本気を出しました」
宋「見るものが見ればヤバさが分かるな」
盧「怪我人は?」
呉「医療班を配置済みです」
宋「さすが呉用」

呉「郁保四が脱落しました」
宋「湯隆の鉄条網はくぐり抜けられる気がせん」
盧「関勝が、頭ひとつ出ているぞ」
宋「フラグの気を感じるな」
呉「魏定国、凌振の瓢箪矢、地雷、大砲ゾーンです」
盧「落ちた」
宋「宣賛の落とし穴か」
呉「行動パターンを読み尽くしている」
盧「死人は出んよな、呉用」

盧「単廷珪の泥濘と濁流で李逵が脱落したか」
呉「陶宗旺、解宝、李雲による石積みと兵器の急斜面です」
宋「最大の難所だ」
盧「登りきればゴールだ」
呉「索超と劉唐が」
盧「解宝の卵鉄に吹き飛ばされた」
宋「石積みも炸裂した」
盧「死人は出んよな、呉用」
宋「死ねばそこまでのものだ、盧俊義」

盧「先頭は誰だ?」
呉「林冲と公孫勝と史進です」
宋「裸で走ってるのは?」
盧「言うまでもないぞ、宋江殿」
呉「史進が穴に落ちました」
宋「ゴール!」
盧「同着か?」
呉「いや、あれは?」
盧「王定六が既にゴールしているだと?」
呉「障害物エリアを迂回して裏からゴールした?」
宋「審議!」

高みの見物
・宋江…王定六のズルは許せん!
・盧俊義…王定六の奇策は正直あり。
・呉用…上に同じ

優勝者と敗者
・王定六…戴宗の入れ知恵で物議を醸したが、表ルートの倍以上走った事が分かり見事優勝。
・林冲…公孫勝の野郎に足を引っ張られなければ。
・公孫勝…林冲のバカに走路を遮られなければ。
・史進…単廷珪ゾーン前で既に裸。

プロ仕掛け人軍団
・宣賛…走者の行動パターンを読みきった落とし穴の配置はさすが。
・湯隆…林冲に賭けたがスッた。
・李雲…公孫勝に賭けたがスッた。
・解宝…史進に賭けたがスッた。
・陶宗旺…手堅く王定六に賭けて儲けた。
・凌振…呼延灼に大砲を当てそうになった。
・魏定国…見てて笑い疲れた。
・単廷珪…上に同じ。

脱落者たち
・郁保四
…ビリッケツで完走した姿は宋江の感動を呼んだが、デカすぎて胴上げを断念された。
・関勝…この穴に関勝殿が落ちる、という落書きを見つけて倍ムカついた。
・李逵…無事張順に回収された。
・索超…落とし穴?落ちるわけないだろう。
・劉唐…石積みの下敷きになり救助が難航したが赤毛で分かった。

行間の脱落者たち
・呼延灼…泥沼で徐寧に足を取られ道連れにされた。
・徐寧…賽唐倪を着用して善戦したが、泥沼に沈没した。
・李俊…濁流に流される大失態。水軍勢はしばらくネタにして愉しんだ。
・張清…コースを外れて迷子になったところを致死軍に発見された。
・燕青…意外と最初の方の落とし穴に落ちる番狂わせ。
・石勇…劉唐と同じ石積みに巻き込まれたのに救助隊に気付かれなかった。

16.
宋江「聚義庁と錚々たる面子がお送りする、梁山泊お化け屋敷だ」
林冲「私たちに入れと?」
宋「怖いぞ」
林「行くぞ、お前ら」
索超「面白そうだ」
扈三娘「子どもですね」
郁保四「手が込んでるな」
馬麟「…行きたくない」

宋「いかん、帰る時には戸締りをしなければ」

索「郁保四と逸れましたね」
林「ひっきりなしに奇声が聞こえるな」
扈「言うほど怖くないですね」
馬「…」
扈「馬麟殿?」
霊「馬鹿者どもが!」
馬「!?」
林「なんだ!」
索「死角から!」
扈「…馬麟殿?」
馬「…鉄笛を落とした。先に行っててくれ」

杜興「腰抜けたのか?」
馬「抜けてない」

林「出口だ」
扈「…」
林「どうした、扈三娘?」
扈「戸が開きません」
林「なに?」
扈「錠がかかってます」
索「そんなバカな」
扈「入り口まで戻るのは?」
索「同じ出入口だぞ」
林「つまり、閉じ込められたのか?」
扈「そういう事になります」

呉用「この策は宋江殿が鍵です」
宋「私が鍵か」

杜「閉じ込められただと?」
公孫勝「お前のクソ力で開かんのか?」
林「いたのかウスノロ」
李逵「板斧があれば叩き壊せるんだが」
楊雄「ピッキングできる奴はいませんか?」
湯隆「錠は外なんだ」
林「開けゴマ」
公「寒いぞ、林冲」

宋「しめたな、呉用」
呉「私の策も当たる事はあります」

郁「皆どこに行ったのだ?」
馬「郁保四」
郁「馬麟殿!?」
馬「足をくじいてしまった」
郁「おぶります」
馬「…」
霊「…」
郁「また出た!」
馬「!」
霊「…」
郁「追いかけてみましょう」
馬「…」
霊「…」
郁「見失いましたね」
馬「…外に出たのか?」
郁「いつの間に!」
馬「…」
郁「…」

・林冲…霊より俺の方が怖いだろ?
・索超…なかなか怖がらせがいがあるリアクション。
・扈三娘…基本真顔。
・馬麟…ずっと扈三娘の背中の端っこ持ってた。
・郁保四…霊ですか?見たことなかったですね。あの日までは。

・宋江…郁保四が来るまで気づかなかった。
・呉用…しまったじゃありません。宋江殿。

・李逵…奇声出しすぎて喉を痛めた。
・杜興鬼臉児(きれんじ)のあだ名に恥じぬ強面を初めて活かせた。
・公孫勝…お化けみたいな顔色だからノーメイク。人を怖がらせる動きはさすが。
・楊雄…お化けみたいな顔色とか言わないでくれよ。
・湯隆…そういえば顔を知らない奴が一人いたが、あいつはどこいったんだ?

17.
柴進「鞠は友達だ、宋江殿」
宋江「友達を蹴るのか?」
柴「愛でているのです」
盧俊義「蹴鞠か、柴進?」
柴「盧俊義殿も蹴鞠を嗜まれたらいかがですか?」
盧「遠慮しておく」
柴「胸と腹に大きな鞠を3つも抱えている盧俊義殿は、もっと運動されたほうが良い」
盧「今何と言った、柴進」

・柴進…盧俊義怒りのダイレクトボレーを顔面に食らって泣いた。
・宋江…やっぱり怒ると怖いな、盧俊義。
・盧俊義…今でこそぽっちゃり系になったが、若い頃はガチムチで武術も一廉だったのだ! 

三兄弟

三兄弟…李逵の機嫌を損ねたら晩飯の献立に響くので、食事前の兄貴分たちの緊張感は見もの。

人物
・魯達(ろたつ)…弟想いかと思いきやそうでもない。
・武松(ぶしょう)…自分が一番ダメだと思い込んでる。
・李逵(りき)…兄さん思い。

18.
武松「李逵」
李逵「なんだい、兄貴」
武「これ以上、俺を甘やかさないでくれ」
李「お!」
武「このままではお前に依存して堕落してしまう気がしてならんのだ」
李「何日持つかな?」
武「飯と服と寝床の準備と朝起こすだけで充分だ」
李「何を引き算したんだ、兄貴?」

・武松…拳を鍛えすぎて、手先を使う作業が大の苦手になってしまった。叩き壊すのは大得意だぞ。
・李逵…柴進から稀に見る高待遇のオファーが届いたけど、やっぱり字が読めなかった。

19.
柴進「李逵を貸してくれ、武松」
武松「…断る」
柴「李逵はお前だけのものではない、同志みなのものだ」
武「断る」
李逵「ものじゃねえ」
柴「同志みなのもの、ということはだな、武松」
武「…」
李「ものじゃねえ」
柴「李逵は、我々の志と同じということになるのではないか?」
武「!」
李「志じゃねえ」

柴「よく来てくれた、李逵」
李「兄貴は最近だらしねえから、仕方ねえ」
柴「武松は大丈夫かな?」
李「作りおきの飯と服を一週間分用意してあるからなんの問題もない」
柴「歪みがないな、李逵」

武(火は、どうやって消せばいいのだ?)

柴「急げ、李逵」
李「まさか二日も経たず、魯達の大兄貴から緊急帰還の司令が届くとは」
柴「あの大きな拳で木を倒しまくったらしい」
李「山一つ焼け野原にしちまったとも聞いたぞ」
柴「とんだ大災害だな」
李「人災だ」
柴「いた!」
李「兄貴!」
武「…」
柴「どういうことだ…」
李「また虎と戦ったのか」

・武松…住処を追われた虎と一昼夜闘っていた。虎もとんだとばっちりである。
・李逵…火は水で消えるんだぜ、兄貴。 
・柴進…週に一度は自炊をしようと思った。

20.
魯達「武松」
武松「…」
魯「不精すぎるぞ、武松」
李逵「?」
魯「李逵がいなくても自活していた頃はあったではないか」
武「…」
魯「李逵は完膚なきまでにお前を堕落させたかもしれんが」
武「…」
魯「俺はそうならぬ自負がある」
武「…」
魯「李逵を俺に貸せ、武松」
武「嫌だ…」
魯「武松!」

柴進「結果は?」
李「三日で堕ちた」
柴「ダメンズだな、李逵」

・魯達…李逵に甘えすぎた戒めとして、三日三晩の滝行を敢行したが、雑炊の匂いに一目散。
・武松…李逵のレンタルサービスを利用する者にもれなく付いてくる。
・李逵…もし俺が女だったらどうなってたのかな?
・柴進…豪華な食材を取り揃えて自炊を始めたが、火を付けられず断念。

21.
宋江「全くお前らときたら」
魯達「…」
武松「…」
李逵「宋江様。兄貴たちは悪くねえ」
宋「李逵」
李「俺の料理がちょっと美味くて、裁縫と寝床作りがちょっと得意で、朝起きるのがちょっと早いのが悪いんだ」
魯「そのちょっとが、我らには100万里よりも遠いのだ」
武「もう自活できる気がしない」

宋「お前らに単独の旅を命ずる」
魯「そんな」
武「死んでしまいます」
宋「嘆く者は死ね!」
魯「!」
武「!」
李「宋江様」
宋「李逵は二人が帰るまで梁山泊で私の供をせよ」
魯「…」
武「…」
李「…」

呉用「魯達は子午山で酒浸り。武松は開封府の闇武術大会のチャンピオンになったそうです」
宋「志を忘れていなければ良い」
呉(絶対忘れてる…)
李「宋江様」
宋「なんだ、李逵」
李「たまには会議に出なよ」
宋「なんだか歩くのが億劫なのだ」
呉(もう李逵が頭領で良いな)

・李逵…結局どれだけ強かろうが偉かろうが、胃袋を握ってしまえば頭は上がらなくなるのだ。 
・宋江…盧俊義よりも太った。 
・魯達…王母様の厳しい禁酒プログラムを遂行中。 
・武松…洪清との直接対決のチケットは歴代最高値で取引されている。 
・呉用…激務過ぎてどれだけ食っても太る兆しがない 

養生所&薬方所

養生所&薬方所…頭が痛くて来院しても、場合によってはもっと頭が痛くなって帰ることもあるかもしれない。

人物
・安道全(あんどうぜん)…外科手術の腕は超一流なのに、折り鶴を折れない。
・薛永(せつえい)…薬の知識は超一流。剣の腕もまあまあ上手。
・白勝(はくしょう)…先入観を持たずに人と付き合う習慣を持っていたら、こんなことになってしまった。
・文祥(ぶんしょう)…貴重な常識人。白勝すらもはや常識人とは程遠いスペックなのだ。
・馬雲(ばうん)…('ω')ノ

22.
白勝「お前らを見ていて常々思う」
安道全「なんだ、白勝」
薛永「?」
白「健康とはなにか」
安「つまらん事を」
白「医者が言うせりふか」
安「患者を健康にするのが医者の仕事だろう」
薛「さすが、安道全」
白「すまん、言葉が足りなかった」
安「?」
白「お前らの健康とはなにかと言う事だ」

安「私達の健康?」
白「安道全は医者の不養生を超越した労働時間なのにピンピンしている」
安「三徹のなにが不健康なのだ?」
白「薛永は己を実験台にし、薬の効能を確かめている」
薛「この間は死ぬかと思いました」
白「お前ら自身の健康にもっと気を配るべきではないだろうか」
安「名演だ、白勝」

安「しかし、私は患者を診ないと死ぬ病にかかっている」
白「確かに」
薛「私も、自分で試さない薬を人に使うというのはできません」
白「薬師の鑑だ」
安「むしろ私は白勝の健康が気になる」
薛「私も」
白「…それを言うならよ」
安「…」
薛「…」
白「頼むから俺に休みをくれ」
安「仕事が回らんのだ」

・安道全…患者を一日でも診ないと禁断症状が出る、医療ジャンキー。
・薛永…好きで薬草を摂取してるわけじゃないんですけど、あの苦味は堪らなく美味しかったです。
・白勝…安道全・薛永向けの業務マニュアルは日々改訂され続けているが、勤務時間外の仕事にカウントされるのがものすごく腑に落ちない。

23.
爺「…」
薛永「何者!」
爺「…」
薛「待て!」

安道全「なんだこの壺は」
白勝「蓮?」
安「こういう壺は開けない方がいいのはよく知っている」
白「ガキの頃そんな話読んだな」
安「だが開ける」
白「好奇心には敵わん」
安「」
白「」

薛「安道全と白勝が!」
解珍「わしのせいなのか?」

薛「お前の毒物のせいで、安道全と白勝の意識が戻らん」
解「わしの蓮に対してその言い草はなんだ」
薛「酷い匂いだ」
解「お前は平気なのか、薛永?」
薛「体質だ」
解「蓮はわしが面倒を見なかったから不貞腐れているだけだ」
薛「食い物が腐り果てた匂いだぞ、これは」
解「味は良いんだが」

安「!」
白「!」
薛「良かった、二人とも」
安「このヘドロは凄いぞ、薛永」
解「ヘドロ…」
安「この匂いをまともに嗅ぐだけで意識が弾け飛んだ」
薛「酷い」
安「しかし、意識が全て弾け飛ぶ寸前に閃いた」
薛「何を?」
安「麻酔に使える」
薛「なるほど」
解「大概じゃな」
白「俺の台詞」

・解珍…山中の鬼ごっこは無敗だったが寄る年波には勝てなかった。

・薛永…薬草ドーピングをしすぎて、もはや常人ではなくなってしまったかもしれない。
・安道全…満を持して全身麻酔による手術を決行しようとしたものの、タレで手が荒れて無期限延期した。
・白勝…おとぎ話の教訓は活かさねえとな。

24.
文祥「白勝はいいな」
白勝「どこが?」
文「安先生に、懇切丁寧に医術を教えてもらえているし」
白「…」
文「安先生とふざけ合える仲だし」
白「…」
文「私にはどうも当たりが厳しい」
白「俺はお前の方が羨ましいぞ、文祥」
文「それは?」

白「お前は医者の仕事のみをすればいい」
文「確かに、お前は事務局を兼務しているな」
白「なまじ仲が良いせいで、仕事とプライベートの境目を蔑ろにされがちだ」
文「薛永殿と長話してるもんな」
白「何より、戦以外の時のお前は定時で帰れるじゃないか」
文「今日の帰りは?」
白「検討もつかん」

安道全「白勝」
白「文祥に取りに行かせる」
文「?」
安「白勝」
白「鍼の発注もだな」
文「?」
白「文祥」
文「?」
白「だからお前は未熟なんだ」
文「名前を呼んだだけだろう」
白「俺は湯隆の所に小刀の回収と鍼の追加注文の依頼をして、帰りに朱富の饅頭を買ってこいと言った」
文「深すぎる」

・白勝…伊達に安道全と薛永と長い間同じ釜の飯を食ってるわけじゃねえんだよ。
・文祥…安道全の梁山泊での初弟子。割とマジで白勝は彼の頭を心配したという。 
・安道全…くしゃみが白勝!と聞こえる。そしたら大体飛んでくる。

25.
薛永「あと一口だ、馬雲」
馬雲「」
白勝「お前の弟子か、薛永?」
薛「馬雲という」
白「その見てるだけで口中に苦味が押し寄せてくる液体はなんだ?」
薛「薬師の修行ドリンクだ」
白「それは?」
薛「人の免疫機能を鍛えに鍛えるドリンクだ」
白「毒ではないのか?」
薛「毒ではない、薬だ」

馬「」
白「もうやめろ、馬雲。ドリンクよりお前の顔色の方が見るに耐えん」
薛「止めるな、白勝。これも修行だ」
馬「_:(´ཀ`」 ∠):」
白「こいつは喋れんのか?」
薛「もっぱら表情とボディーランゲージで会話する」
馬「(´Д` )」
薛「あと一口だ」
馬「_| ̄|○、;'.・」
白「言わんこっちゃない」

・薛永…彼のある種の異形体質は、長年の服毒による賜物。良い子は真似しないように。
・馬雲…囧
・白勝…表情豊かで愉快そうな奴だな。 

練兵場 

練兵場…たまに林冲と史進とか、関勝と呼延灼が本気の立合いをすることがある。観覧料は無料だから、調練そっちのけで見に行こう!

26.
史進「師匠!」
李忠「坊ちゃん!」

兵「史進殿の師匠があんなおっさん?」
兵「あの人がもしかして王進か?」
兵「王進があんなしょぼくれてる訳ないだろ」
兵「ていうか、坊ちゃんってwww」

史「…」
李「…」
史「お互いの呼び方を考えませんか」
李「私もそう言おうとしたところだ」

史「まさか師匠が梁山泊にいるなんて」
李「九紋竜の名は聞いていたが、まさかこんな所で会うとは」
史「…」
李「…」
史「…良い天気ですね」
李「私たちはお見合いをしている訳ではないぞ、史進」
史「…」
李「…気まずいな」
史「お互いの黒歴史熟知してますもんね」

李「私を稽古でコテンパンにした話は、問題ないぞ」
史「師匠のオリジナル必殺技の話は…」
李「絶対にやめろ」
史「むしろそっちを話したいんですけど」
李「お前だってノリノリで覚えてたじゃないか」
史「餓鬼でしたからね」
李「今でも覚えてたりするのか?」
史「…バッチリです」
李「マジかよ」

・史進…初めての武芸の師匠が李忠だった。入門者向けではあったが、すごい癖が強い棒術だったらしい。
・李忠…108の必殺技をもつ李忠流棒術の師範。これでもかというほどダイナミックな動きで翻弄するも、足元がお留守になりがちなのが致命的な弱点。

27.
焦挺「…」
燕青「…」

宋万「焦挺と向き合っているイケメンは誰だ?」
杜遷「燕青というらしい」
宋「梁山泊相撲横綱の焦挺に、相撲で勝負するのか?」
杜「体術の達人という噂だ」
宋「面白そうだ」
杜「体格差が気になるが」

焦(このイケメン、強い…)
燕(チャーミングな顔に似合わぬ強者だ)

燕(しかし…)
焦(…!)

宋「おお!」
杜「見事だ」

焦「」
燕(私の敵ではない)

宋「凄いぞ、燕青」
杜「見事な技だった」
燕「…」
宋「しかしな、燕青」
燕「…」
杜「相撲で投げっぱなしジャーマンスープレックスは禁じ手ではないかな」
燕「あ!」

焦(地獄突きを返せばよかった…)

・焦挺…梁山泊プロレスでは、顔に似合わぬ悪役レスラー。得意技は地獄突きとヘッドバット。
・燕青…謎の覆面レスラーとして大人気。背中の鳳凰の刺青がトレードマーク。
・宋万…杜遷とタッグを組んで、梁山泊プロレス初代タッグ王座のチャンピオンとなった。
・杜遷…ライバルは童威、童猛の双子タッグ。 

塩の道

塩の道…梁山泊の資金源。蔡福が塩を資金に変えるよりも、塩を貨幣にしたらもっと儲けられるのではないか、という魂のプレゼンをしたが、結果はしょっぱかった。

人物
・盧俊義(ろしゅんぎ)…燕青+蔡福=盧俊義
・燕青(えんせい)… イケメン+高IQ+体術の達人=燕青
・蔡福(さいふく)…高血圧+内臓脂肪+高血糖=蔡福
・蔡慶(さいけい)…花+高身長=蔡慶

28.
蔡福「痩せろだと?」
蔡慶「盧俊義様の指令だ」
福「着払いで鏡を送りつけてやろうか」
慶「自己管理もできん奴が闇塩の仕事など出来んとさ」
福「鏡を見ろ」
慶「盧俊義様もだが、兄貴も痩せた方がいいと思うぜ」
福「慶、貴様」
慶「痩せたら兄貴イケメンじゃないか」
福「ふむ」
慶(チョロい)

慶(始めたら極端なんだよな、兄貴は)
福「慶、俺は死ぬかもしれん」
慶「死ぬなら敵と戦って斬り刻まれて死のうぜ」
福「俺の敵は飢えと燕青だ」
慶「燕青?」
福「ほら、慶。鏡を見ろ」
慶「鏡?」
福「俺では無く燕青が映っている」
慶「燕青はコレステロールで再検査をしないぜ、兄貴」

・蔡福…今年の健康診断は血液検査で軒並み引っかかった。
・蔡慶…実は隠れ肥満。
・盧俊義…着物はXLでも着れなくなってきたので、侯健のオーダーメイドで間に合わせている。
・燕青
…BMIから血圧から何から何まで理想値の優等生。健康診断の結果図すら綺麗に整っている。 

梁山湖 

梁山湖…梁山湖の魚たちの置かれている状況は、宋国の置かれている状況以上に乱世。張順ですら、全貌を把握しきれていない。

29.
宋江「今日こそ梁山湖のヌシを釣るぞ、盧俊義」
盧俊義「おう」
趙林(親方はボウズに銀一粒、俺は大穴の宋江様が釣るに小遣い全部だ)
宋「盧俊義は鯉でも釣っててくれ」
盧「おう」
宋「良い天気だな、釣り日和だ」
盧「おう!」
趙(船乗ったらおうしか言わなくなったな、盧俊義様)

宋「水軍の調練が盛んだな、盧俊義」
盧「おう」
宋「盧俊義、当たりだ」
盧「おう、おう」
趙(鯉だろ?)
盧「おう?」
宋「凄い当たりだ!」
盧「おう、おう」
趙「これはヌシかもしれませんよ」
宋「頑張れ、盧俊義」
盧「おう」
趙(それにしても妙に白くて自由に泳ぐ魚だな)

宋「長丁場だな」
盧「おう…」
趙(なんかおかしいな)
宋「もう一息だ、盧俊義!」
盧「おう」
趙(あれは、ふんどしか…?)
宋「釣れ、盧俊義!」
盧「おう!」
趙「こいつはヌシじゃない!」
張順「」
宋「張順が釣れた…」
盧「おう…」
趙「…」
宋「…」
盧「…」
趙「〆ますか?」
宋「馬鹿!」

・宋江…魚は釣れなくても人を釣るのが上手い。鯉で李逵を一本釣りした実績は伊達ではない。
・盧俊義…船を降りたら普通によく喋った。
・趙林…宋江が釣るに全賭けしてたから、小遣いはあえなく没収された。
・張順…梁山湖のヌシとの戦いは未だ継続中。梁山湖の魚の半分は張順の味方だと言う。

30.
張順「やれやれ、めんどくせえ」
童猛「どうした、張順」
張「部下の意気地がなくて尻をひっぱたいてやったところさ」
童「恋の相談か?」
張「そんなもんさ」
童「信用されてるな」
張「赤くなって突撃しやがったよ、あいつは」
童「甘酸っぱいじゃねえか」
張「うまくいったか、覗きに行こう」

童(それでなぜ俺は潜水しているのだ?)
張(あいつだ)
童(よく見えん)
張(息を止めろ、気づかれる)
童(もう限界なんだが)
張(いい女じゃねえか)
童(意識が朦朧としてきた)
張(頑張れ)
童(…)
張(しまった!童猛!)

童「死ぬかと思った」
張「すまん、童猛。気づかなかった」
童「意識を失う寸前のことだが」
張「おう」
童「綺麗な赤い衣を纏った女が見えた気がしたよ」
張「そうか」
童「惚れちまったかもしれねえ」
張「お前を助けてくれたんだ」
童「また会えるかな」
張「会えるさ、湖を覗けばな」
童「?」

・張順…部下のこいの相談をよく受けると言う。こいの字は皆さんの想像にお任せしよう。
・童猛…助けてくれた女に会いたくて、湖面を覗き始めた。寄ってくる綺麗な赤い鯉は不思議と釣る気がしない。

31.
趙林「親方も博打で無一文ですか?」
阮小二「劉唐に汚い手を使われた」
趙「でも梁山湖で今日の飯を調達するなんて」
二「背に腹は変えられん」
阮小七「この辺は張順の縄張りだから気をつけろよ」
趙「背に腹は変えられませんもんね」
七「しかし兄貴」
二「なんだ」
七「フレッシュな弟子だな」

趙「かかった!」
二「凄い引きだ」
七「慌てるな、フレッシュ趙林」
趙「なんですかそれは」
二「釣り上げろ、趙林」
趙安「フレッシュ!」
林「!?」
安「フレッシュだな、少年」
二「石を持ってこい、小七」
七「沈めるぞ、兄貴」
安「まずは助けてくれ、泳げないんだ」
林「親方、お願いします」

安「フレッシュある所に、禁軍の趙安ここに参上」
二「早く沈めろ、小七」
七「フレッシュとは程遠い顔色だ」
林「待ってください」
二「どのみち敵将だ」
林「フレッシュ趙安殿を沈めるなら、私を先に沈めてください」
安「ありがとう、フレッシュ趙林くん」
林(身代金の宛先は禁軍で良いよな)
安「」

・趙林…禁軍からせしめた身代金は、またしても劉唐にカモられた。
・阮小二…博打もトランプもオセロも阮小五には敵わなかった。
・阮小七…小五兄貴だったら、身代金をもっとたんまりせしめただろうな。

・趙安…内密に引き取りに来た公順にこっぴどく叱られた。フレッシュ… 

朱貴・朱富のお店 

朱貴・朱富のお店…魚肉饅頭を注文しないと、こっそり勘定を5%割り増しするらしい。

人物
・朱貴(しゅき)…切羽詰まったら無銭飲食をしてもいいが、6刻の皿洗いが待っている。
・朱富(しゅふう)…食べログで酷評してもいいが、レビュアーのその後は保証しない。

32.
朱貴「今日も荒れてるね、首領」
王倫「林冲が来てから荒れない日はない」
朱「荒れてない日は?」
王「無い」
朱「荒れが日常だな」
王「逆に並の荒れでは荒れだと認識しなくなったかもしれん」
朱「それは?」
王「寝床に毒蛇が入ってた」
朱「!?」
王「どうせ窓から入ったんだろうが」
朱(絶対違う)

王「宋万と杜遷と焦挺が練兵場でひそひそ話してたんだが」
朱(あいつら…)
王「私が話しかけたら、一目散に逃げていった」
朱(処断されるぞ)
王「どうせ私のサプライズパーティーでも開こうとしてるに違いないだろ?」
朱「ポジティブだな、首領」

・王倫…小者界のアイドル。ポジティブシンキングと猜疑心の組み合わせが歪。 

・朱貴…もっと王倫と距離をとって、あの三バカに自重を促そう。
・杜遷…古参の三バカ。略して古三バカ。年長だが、実は血の気が一番多い。
・宋万…古三バカ、次男。杜遷より冷静だが沸騰しやすさは大差ない。
・焦挺…末っ子。バカというにはIQが高すぎる。

33.
郭盛(呼延灼殿に朱富の店に呼ばれるとは)
呼延灼「郭盛」
郭「はい」
呼「お前の副官ぶりだが」
郭「…」
呼「まことに見事だと思う」
郭「!」
呼「指揮もさることながら、調練の指導の巧みさは眼を見張るものがある」
郭「恐れ入ります」
呼「そこでお前に託したいものがある」
郭「?」

呼「これだ」
郭「!?」
呼「この衣装は宋国でも限られたものしか着ることのできない、由緒正しき代物」
郭「あの…」
呼「俺は梁山泊でもこの衣装を継ぐに相応しい者を探していた」
郭「…」
呼「郭盛」
郭「はい…」
呼「お前を初代梁山泊フレッシュマンに任ずる」
郭(朱富が凄え顔して見てやがる)

郭「呼延灼殿」
呼「…」
郭「山ほどお尋ねしたいことがあるのですが」
呼「…」
郭「…」
呼「…」
郭「呼延灼殿はかつてこの衣装に身を通していたのですか?」
呼「聞くまでもない、郭盛」
郭「…」
呼「…」
郭「着てた時どんな気持ちでした?」
呼「聞くまでもない、郭盛」

・呼延灼…フレッシュマンの思い出?股間の居心地が悪かったことしか覚えてないな。久しぶりに衣装を取り出したら、着たくなったらしい。
・郭盛…そもそも着方が分からない衣装だが、呼延灼殿に聞くのも躊躇われるな…

34.
朱富「よく来てくれた、薛永」
薛永「ご内密な話ということなので」
顧大嫂「扉を閉めるよ」
薛「顧大嫂殿?」
孫二娘「別にあんたを取って食おうってわけじゃないよ、薛永」
朱(なぜか説得力を微塵も感じない)
孫「あんたを食おうとしても、添加物満載で食えたもんじゃなさそうだからね」
薛「勘弁」

顧「痺れ薬を作りたいのさ」
薛「そんな水のほとりの賊徒みたいな真似を」
孫「あたしらもそうじゃないか」
朱「我々の店を青蓮寺の密偵が探ることもありうると思う」
薛「確かに」
顧「そんな時のために作っておくのも、やぶさかじゃないだろう?」
薛(一番いらなさそうな人だと思いますけど)

孫「勿論堅気には使わないよ」
薛「わざわざ言わなくても」
顧「教えてくれよ、薛永」
薛「怖い」

顧「これが効くのかい?」
薛「少なくとも四刻は気絶しますよ」
朱「ありがとう、薛永」
孫「職場のセクハラ爺で試そう」
薛「用法用量を守って正しく使ってくださいね」
孫「風邪薬じゃないよ」

・薛永…孫二娘の見立てでは滋養のありそうな男だと言う。どういう意味だ。
・朱富…笑いながら客をたしなめる事があるが目は笑ってない。あだ名の笑面虎の由来である。
・顧大嫂…強い。とても強い。
・孫二娘…彼女にセクハラした上役の爺が厠休憩から帰ってこない。 

郵便屋さん

郵便屋さん…代表者が吝嗇を通り越しているドケチなので極めて薄給。しかし、金持ち顧客リストを渡されてからは、各自の力量で大儲けしてもよい。

人物
・戴宗(たいそう)…足が速いけど、短距離は自信がない。
・張横(ちょうおう)…足が遅いけど、舟をこぐと速い。
・王定六(おうていろく)…足が速いけど、食うのは遅い。

35.
戴宗「俺は金持ちが嫌いだ」
張横「そうですな」
戴「だから無駄に金を使う奴が許せない」
張「金持ちだけかな?」
戴「このあいだの飛脚屋の客は許せなかった」
張「金持ちですか?」
戴「お得な飛脚プランを用意しているのに、いつもの普通飛脚で依頼しやがったんだ」
張「セコいことで」

戴「何のために俺らは日々の飲食を犠牲にしてまで、儲けにならん割引プランを用意していると思っているのだ」
張「干し魚はもう食い飽きましたな」
戴「客はもっとお得なプランを用意している事に気付くべきだと思う」
張「その割に料金表に小さく書いてありますね」
戴「金持ちは敵だ」
張「客です」

戴「金持ちの個人情報を覗き見して、そいつの商売を潰しにかかるのはどうだろう?」
張「個人情報は目的外で使わないって書きませんでした?」
戴「書いてない」
張「じゃああの長文の規約には何が書いてあるんで?」
戴「どうせ最後まで読まんだろうから、途中から替天行道のコピペだ」
張「ならば良し」

・戴宗…梁山泊の飛脚の元締め。叛徒が営業している電話屋さんがあるかもしれないから、最後まできちんと契約書は読もうね!
・張横…金持ちのお得意様の顧客リストは別途自分の分を用意してある。用途は目的外の利用ではないので何一つ問題ない。 

開封府

開封府…宋国の首都。日本の東京である。とても栄えていて、当時のグルメガイドが現存している。早い話が開封府のるるぶ。

36.
頭ひとつ、出ていた。

魯智深「待て、ナレーション」

魯「ご通行中の皆さん。しばしご協力願いたい」
若者「…」
中年「…」
婆「…」
魯「王進殿はそこにいてくれ」

魯「王進殿から見て、頭ひとつ出ているように見えたのだろうが」

魯「誰と比較してそう思ったのだ?」

魯「頭ひとつは少なく見積もりすぎではないか?」

魯「仮にこちらのお婆さんが対象だったら、頭九つは違うぞ?」
婆「…」

魯「やり直しを要求する」

魯(頭九つは言い過ぎか)

魯「機だな」
朱仝「開封府も人が多いな」
魯「!」

頭ひとつ、出ていた。

魯「やられた」
朱「?」

・魯智深…公式198cm。頭一つ出ていたというと、周りは170cm以上はあるのかな?
・朱仝…公式205cm。魯智深よりでかいが、原典郁保四は300cm。DNAがバグってる。

・若者…この後追い剥ぎをして西に逃走し、とある山中に迷い込んだ。

・中年…この後青蓮寺に出勤した。

・婆…この後すれ違った息子の着衣の乱れを厳しく叱った。 

林冲さん家

林冲さん家…梁山泊ではよく友達が遊びに来る。手土産を持ってくる気の利いた奴は、白勝くらい。

人物
・林冲(バカ)…張藍に惚れたきっかけすら覚えてないくらいぞっこん。会った瞬間既に惚れていたとかなんとか。
・張藍(ちょうらん)…面白そうな旦那様だと思っていたが、お友達も面白い人が多いのね。

37.
白勝「林冲にこんな可憐で素敵な奥方がいるとは」
張藍「お上手ですね、白勝様」
安道全「バカ林冲のどこに惹かれたので?」
張「そうですね」
白(天女様の様だ)
安(林冲に惹かれるとは、どこか重大な欠陥があるに違いない)
白(酷えな)
張「チョロくて可愛い、チョロ可愛いところです」
白・安「納得」

白「林冲はチョロそうだな」
安「奥方なら一撃で倒せると思う」
張「もしかしたら旦那様と言うより、愛玩動物の方が近いかもしれません」
安「正直だな、張藍殿」
白「林冲って名前が鼠っぽいもんな」
安「白日鼠に言われたらおしまいだ」

林冲「貴様ら好き勝手言いやがって」
安「チョロ鼠のお出ましだ」
林「貴様」
張「林冲様」
林「…」
白(緊張してやがる)
安(ハムスターが怯えてるみたいだ)
張「何か私に言うことは?」
林「なんの話だ」
張「また心底から後悔しますよ」
林「!」
白(すげえものを見てるな)
安(餓鬼の躾けだ)

張「…」
林「…」
白(黙り込んで早四刻)
安(粘り強い)
白(暇だな、俺たちも)
安(林冲の弱みを握るチャンスを潰せるか)
林「…張藍」
張「…」
白(無言が怖いな)
安(ちびりそうだ)
林「…」
張「…」
白「…」
安「…」
林「…愛しているぞ」
張「声が小さいですよ」

林「…愛しているぞ」
張「もう一度」
林「…」
張「…」
林「愛しているぞ!」
張「私もです、林冲様」
安「帰るぞ、白勝」
白「とんだ茶番だった」

・張藍…どれだけ林冲が駆け回ろうとも、所詮張藍様の掌の上なのだ。 
・安道全…ちょっとタイプでも、林冲の嫁だからきっと同レベルのアレに違いない。
・白勝…小回りの効く気の利かせ方は女性受けしやすい。仕事の賜物である。 
・林冲…張藍に叱られると無意識にとるポーズを安道全にバッチリ真似られた。

38.
張藍「おはようございます!」
林冲「…」
張「起きてください、林冲様」
林「…!」
張「林冲様?」
林(今日は特に可憐だ…)
張「いい天気ですよ」
林「張藍」
張「なんですか?」
林「今日はフレッシュだな」
張「なんですか、それは」
林「…」
張「今日の私はフレッシュ張藍です!」
林(異臭が…)

趙安「フレッシュ!」
林「!?」
張「御機嫌よう」
趙「フレッシュだな、ご婦人」
張「あなたもフレッシュですね」
林「…」
趙「ご婦人のフレッシュさも麗しい」
張「あなたのフレッシュさも」
林「いつまで讃えあっているのだ」
趙「名乗ろう」
林「いらん」
趙「私はフレッシュ趙安。禁軍の将だ」

林「つまみ出せ」
趙「今日は戦に来たのではない」
林「何しに来たのだ」
趙「時空を超えて来たのだ」
林「首をねじ切るぞ」
張「あなた、フレッシュ趙安様は悪い人ではありませんよ」
林「敵だが?」
趙「麗しのフレッシュ張藍様」
張「…」
趙・張「フレッシュ!」
林「」
趙「アディオス!」

・張藍…胆力には定評があり、夫婦の寝室の窓から飛び込んできた趙安にも眉ひとつ動かさなかった。フレッシュ!
・趙安…フレッシュに国境も敵味方も男女も関係ないのだ。フレッシュ!
・林冲…加齢臭が急激に気になり始めた。 

牢屋

牢屋…梁山泊の要になる三人を収監していたことに開き直り、三人のキャラグッズを作って儲けようともくろんだが、その姿勢は賛否両論。

人物
・林冲(りんちゅう)… 軍人の要。それしかできないけど。
・安道全(あんどうぜん)…医療班の要。それしかする気もないけど。
・白勝(はくしょう)
… コミュニケーションの要。彼も相当貴重だぞ。

39.
安道全「今日は最悪だぞ、林冲」
林冲「極寒の中取ってきた俺になんて言い草だ」
安「雑草100%だ、林冲」
林「お前の絵が下手くそなのだ、安道全」
安「墨しかない中で最善を尽くしてある」
林「薄い緑と淡い緑など書かれても分かるわけないだろう」
安「道草でも食ってた方がまだましだ」
林「野郎」
白勝「これは何だ、林冲?」
林「いい匂いがしたきのこだ」
安「豚か犬なのか、お前は」

・林冲…多分力づくでいけば手枷も足枷も外せる。
・安道全…薬草は取ってこないが、山の味覚を取ってくる才覚は認めてやる。
・白勝
…トリュフの取り方を図鑑で調べた時に爆笑した。 

青州軍

青州軍…秦明が将軍を務めるエリア。もともと賊徒の多いエリアで出動の多い地帯。八百長試合する賊徒と、ガチで討伐する賊徒を分けている。

人物
・秦明(しんめい)…若いころ、狼牙棒という物騒なデカいサボテンみたいな武器を使っていた。使い始めは生傷が絶えず大変だった。
・花栄(かえい)…弓しか得意なものがないのか!と黄信に憎まれ口をたたかれたが、案外そうかもしれない。
・黄信(こうしん)…喪門剣という、気持ち長い剣を使っている。鮑旭のあだ名とかぶった。
・孔明(こうめい)…歴史上の人物と同姓同名なのは恥ずかしいが、ネームバリューに助けられることも少なくない。
・孔亮(こうりよう)…この頃から致死軍入りできるような兆しはあった。いたずらのレベルがえぐい。

40.
孔亮「好きな女ができた」
孔明「マジか」
亮「どうしよう、兄貴」
明「俺に打ち明けてくれたことは嬉しいが、あいにく浮いた話と縁がない」
亮「だよな」
明「他に頼りになる人はいないか?」
亮「いない」
明「いるだろ。秦明殿とか」
亮「正気か、兄貴?」
明「!」

亮「少年マンガのパンチラで真っ赤になるピュア独身秦明殿に人妻との禁断の愛の相談などした暁には、卒倒して失血死するぞ」
明「人妻なのか?」
亮「でも、花栄殿は癪だろ?」
明「癪だ」
亮「黄信殿は論外だろ?」
明「論外だ」
亮「したら俺には兄貴しかいねえんだよ」
明「そいつは光栄だ」

明「だが言ったとおり、俺には縁がない」
亮「すると、あの野郎を殺すしかねえか」
明「亮。それは違う世界の常套手段だ」
亮「畜生、不甲斐ねえ」
明(どうしたものか)

燕順「王英てめえ、また妓楼でやらかしやがったな」
王英「勘弁しろ、兄貴」

明「妓楼へ行け、亮」
亮「どっかで聞いたぞ、それ」

・孔明…軍師孔明の苦肉の策も大失敗に終わったのであった。って書くと未曾有の大失敗みたいだな。
・孔亮…兄による、試みの地平線を鵜呑みにした策はあえなく大失敗に終わったが、致死軍適性はだだ上がりした。

・燕順…今日も弟分の尻拭い。
・王英…青州妓楼組合のブラックリスト入りを果たす。

もしも相談を受けたら
・秦明…相談の内容に卒倒し、失血死。
・花栄…孔亮は顔が良いから大丈夫じゃないかな?私のように。
・黄信…人妻に惚れただと。けしからん野郎だ。そこに座れ。いいから座れ…

41.
将「青州軍に孔明がいるらしい」
兵「マジっすか」
将「各地の合同演習で負け知らずだそうだ」
兵「さすが孔明」
将「我らが孔明を撃破する魁となる」
兵「あの顔にでかい傷のある張飛みたいな奴強そうですね」

孔明「また俺の名に踊ってくれているらしい」
孔亮「兄貴の面で孔明とは誰も思わんよ」

将「孔明っぽい軍師が出てきた」
兵「兵を前に進めました」
将「何か策を仕掛けてくるのではないか」
兵「そりゃ孔明ですよ。何もしないわけない」
将「孔明だもんな」
兵「ご決断を」
将「一旦退け!」

明「毎度助かるよ」
兵「孔明っぽい格好してるだけですけどね」
亮「これが兄貴流孔明の罠か」

将「なすすべもなく負けた」
兵「結局あの張飛みたいな奴にごり押しされただけでしたけどね」
将「しかし正面で受けてたったらどんな罠が待っていたことか」
兵「帰ったら罰走ですな」
将「畜生」

秦明「見事だ孔明」
明「こん時だけは親に感謝しますよ」
黄信「汚い真似を」
花栄「味な策と言え」

・孔明…青州軍では騙すより騙される方が多い。
・孔亮…孔明を手玉にとる小汚い策の数々は後々役に立つ日が来る。 
・秦明…孔明と初対面の時に思わず司馬懿みたいに、ゲッ!孔明!?と言ってしまった。
・花栄…孔明がいるなら私は黄忠だな。爺じゃないぞ。
・黄信…頭に反骨の相があるのを孔亮に指摘された。 

黄門山

黄門山…原作未登場。メンバーの共通点のなさすぎるところが逆に新鮮で、飲み会の出席率は高い。

人物
・欧鵬(おうほう)…李逵のスパイスを飲み屋に持参して注意された。 
・蒋敬(しょうけい)…団体客なのに個別会計を主張して注意された。
・馬麟(ばりん)…酔って笛吹いたら店内BGMの邪魔になって注意された。
・陶宗旺(とうそうおう)… 酔って居眠りした時のいびきがデカすぎて注意された。

42.
欧鵬「俺たちは四人で黄門山の賊徒だったそうだ」
陶宗旺「そうなんですか」
蒋敬「私の場違い感がすごいな」
馬麟「…」
欧「集まった手前、親交を深めるべきだと思うんだが」
蒋「話すことあるか?」
欧「俺は鉄槍」
陶「石積み」
馬「笛」
蒋「算術」
馬「…」
欧「解散!」

・欧鵬…黄門山の首領だがここでは今ひとつ手腕を発揮できなかった。 
・蒋敬…算盤上手だが、図形問題は苦手。 
・馬麟…別に違う部署の連中と話すのは嫌いじゃない。得意でもないけど。 
・陶宗旺…石積みとパズルゲーの話題は豊富。 

雄州

雄州…関勝が将軍のエリア。休日の軍人と子どもの交流会のレクリエーションで一番ムキになる。

人物
・関勝(かんしょう)…部下の誕生日や家族構成は軒並み覚えている。
・宣賛(せんさん)…いたずらで掘った落とし穴に、くまなく関勝が引っかかることに感動した。
・郝思文(かくしぶん)…息子の郝瑾の誕生日まで関勝が覚えていることに感動したが、ごちそうを食べにきたいだけだった。
・単廷珪(たんていけい)…水を使った土木工事や仕掛けづくりは得意。戦での用途はとても限定的。
・魏定国(ぎていこく)…火を使った仕掛けづくりは得意。練兵場に埋めた地雷がどうしてもあと一個見つからない。

43.
郝思文「こどもの日だから家の出番だと思っていたが」
陳娥「…」
郝瑾「…」
郝嬌「…」
宣賛「…」
金翠蓮「…」
魏定国「…」
単廷珪「…」
郝「関勝殿の誕生日もこどもの日だった」
宣「こどもの格が違う」
嬌「関勝殿はおじちゃんじゃないの?」
魏「おじちゃんでも一番子供だろ?」
嬌「そうね」

単「サプライズパーティーのご協力感謝いたします」
陳「当然です」
瑾「手筈はどうなっているのですか?」
金「恐らく関勝殿は半泣きになりながら、私たちを探していると思われます」
魏「半泣き!?」
宣「私達の家をくまなく巡らせる謎解きを作ったのだ」
単「手が混みすぎている」

関勝「どこだ!」

嬌「関勝殿の泣き声が聞こえたわ」
郝「準備を」
宣「…」
関「郝嬌様!」
嬌「関勝殿」
一同「お誕生日、おめでとうございます」
関「」
魏(全泣きだ)
単(満身創痍じゃねえか)
宣(やり過ぎだぞ、翠蓮)
金(あなたこそ)
関「…」
陳「涙を拭いて、関勝殿」
関「…」
嬌「なぜ最初に私の名を?」
関「」

・郝思文…関勝の有様を見て察した。
・陳娥…後片付けはみんなでやりましょうね。
・郝瑾…大人の本気の遊びの恐ろしさを思い知った。
・郝嬌…今日は可哀想だったから頭を撫でてあげよう。

・宣賛…私達の首が取れるマネキンはやり過ぎだぞ、翠蓮。
・金翠蓮…あなたこそ、落とし穴は一つで充分ではないですか。
・魏定国…瓢箪矢と地雷の仕掛けに気合を入れすぎたかもしれない。
・単廷珪…水を被る仕掛けも手をかけすぎたかもしれない。

・関勝…絶対に許さんぞ!と思っていたが、ケーキとチキンがとても美味しかったから許した。 

子午山

子午山…人里離れたならず者大歓迎施設。実は近隣の村の治安はあまり良くない。

人物
・王母(おうぼ)…実は諸々の家事をこなしているときは死域に入っている。
・王進(おうしん)
…行間で気を放つ稽古をしていたら、死域に入った。

44.
鮑旭「また窮屈な器になってしまった」
武松「…」
鮑「武松殿の焼き物はどんな出来栄えですか?」
武「…」
鮑「凄い…」
武「そう見えるか?」
鮑「凄く滑らかな器です。表面がとてもなだらかで」
武「…」
鮑「羨ましい。どうしても私は窮屈な器になってしまって…」
武(裏側を見せにくくなったな)

武「鮑旭」
鮑「なんですか?」
武「実は見て欲しいのは裏側なんだ」
鮑「裏側?」
武「これだ」
鮑「!」
武(今の俺の憤りをぶつけたら、こんなおどろおどろしい器になってしまうんだ)
鮑「…かっこいい」
武「!?」

鮑「凄いです、武松殿」
武「…」
鮑「おもて面では凪いだような滑らかさを演出しつつ、それを一変させて裏面では嵐の中のような荒れた世界を表現しているのですね」
武(凄い語彙力だ)
鮑「この器のタイトルは海、ですね」
武「海か」
鮑「そんなイメージで作られたんですよね?」
武「それもいい…」

・武松…色々あって、子午山にてメンタルのリハビリ中。彼の前衛芸術は開封府の闇の骨董品屋で高値で取引されている。
・鮑旭…やっと字を読み書きできるようになった程度だが、語彙力だけは異常に豊かになった。

45.
楊令「!」
張平「!」
男「気をつけやがれ」
楊「災難だったな、張平」
張「今のはスリですよ、楊令殿」
楊「本当か?」
張「懐を確認してください」
楊「やられた」
張「でも大丈夫です」
楊「それは?」
張「私がぶつかられた瞬間、楊令殿とあいつの財布をスリ返しました」
楊「蛇の道は蛇か」

・楊令…盗みの才も活かしようだな。
・張平…王進先生には内緒で豪遊しましょう。 

青蓮寺

青蓮寺…宋国の秘密機関。24時間働けないやつしかいない。

人物
・袁明(えんめい)…青蓮寺総帥。月間スローガンのキャッチコピーと可愛い挿絵を楽しみにしている職員は少なくない。
・李富(りふ)
…出番がないのではなく、行間で仕事をしまくっていた。
・聞煥章(ぶんかんしょう)
…仕事はできる嫌な奴。人望は皆無。
・史文恭(しぶんきょう)…暗殺者。完成度が高すぎるモノマネに定評があり、モノマネライブは大盛況。
・洪清(こうせい)…袁明の従者。小さいころから一緒だったので、袁明の秘密を意外なほど知っている。
・高廉(こうれん)…闇の軍の指揮官。公孫勝アンチの筆頭だが、徹底したアンチっぷりは大ファンと何ら変わりない。
・殷天錫(いんてんしゃく)…高廉のサブ。林冲に襲われたときに、なぜかかっこいいと思ったという。
・呂牛(りょぎゅう)…聞煥章の悪友。どうあがいても聞煥章ごときでは、彼の上に立てない。

46.
史文恭「久しぶりだな、洪清」
洪清「…」
史「開封府の何ヶ所で俺を見た?」
洪「三箇所」
史「どこで?」
洪「相国寺の野菜売り場」
史「…」
洪「青蓮寺の厠掃除」
史「…」
洪「私の体術道場の受付にて」
史「さすがだな、洪清」

史「しかし、あと一ヶ所足りない」
洪「…」
史「気づいてなかったかな?」
洪「…」
史「ならばそこには出没し続けることにしよう」
洪「どこに…」
史「それを言っては面白くないではないか」
洪「…」

洪「どこにいたと言うのだ」
女将「洪清さん、いらっしゃい。いつもの定食でいいかしら?」
洪「頼む」
女「あんた、いつもの!」
史「はいよ!」

・史文恭…神出鬼没。どんな人にでも化けられる暗殺者。もしかしたら、あなたのお隣さん、よく会うコンビニの店員、職場の食堂のおっちゃんに化けてるかもしれない。
・洪清…体術の達人。稽古は上級者に応じて厳しくなるが、開封府の子供たちに教える時は優しいお爺ちゃんにしか見えない。

47.
殷天錫「高廉殿、ギリギリすぎます」
高廉「公孫勝の事を罵っている奴は何者だ?」
殷「林冲ですよ、早く退きましょう」
高「林冲?」
殷「…」
高「…」
殷「知らないんですか?」
高「公孫勝以外は全く興味がなかった」
殷「おっと」

殷「梁山泊最強で無敵の騎馬隊、黒騎兵を率いる隊長ですよ」
高「梁山泊に騎馬隊があったのか」
殷「たまに騎馬隊に襲われたでしょう?」
高「あいつら梁山泊だったのか?」
殷「なんだと思ってたんですか?」
高「なんか邪魔してくる馬だと思ってた」
殷「認識を改めていただきます」

高「しかし殷天錫」
殷「なんですか?」
高「お前、林冲好きなのか?」
殷「…大嫌いですよ」
高「そのわりにお前」
殷「…」
高「詳しいし」
殷「…」
高「百里風とかいう馬の絵ばっかり描いてるし」
殷「…」
高「衣装が俺たちのより黒いのな」
殷「林冲の事なんて、なんとも思ってません!」

・高廉…青蓮寺の軍の首領。公孫勝の事が大嫌い。大嫌いすぎて、公孫勝と共闘する夢を見た時は、あまりのショックで泣きながら目を覚ました。
・殷天錫…高廉の副官。林冲の事が大嫌い。大嫌いすぎて、乗馬の修練を毎日欠かさないし、林冲と公孫勝の罵り合いに心を痛めたりなんてしていない。

48.
女「聞煥章ってケチね」
聞煥章「金は払っただろうが」
女「向こうの卓にとんでもないパフェを頼んだ人がいるわ」
聞「酔狂だな」

袁明「…」
洪清「…」

女「私もあんなのを二人で食べる男ができたらな」
聞「願い下げだ」
女「私の台詞よ」

袁明「いちごはもらうぞ」
洪清「チョコは私が」

女「失せろ、下衆野郎」
聞「勝手にしろ」

袁「洪清、ペースを落とせ」
洪「アイスが溶けます、殿」

聞「清々したな」
呂牛「お前もどうかと思うぞ」
聞「いつの間に」

袁「オレンジを食べすぎだ、洪清」
洪「いちごは殿の方が多く食べました」

呂「扈三娘よりも気立ては良さそうだったぞ」
聞「厠に行ってくる」

袁「厠に参る」
洪「殿。アイスが口に」

聞「!!」
袁「…」
聞「…」
袁「…」
聞「袁明様…」
袁「…」
聞「アイスが、口に」
袁「…」

・聞煥章…扈三娘の大ファン。歪みまくってるけど。 

・女…聞煥章ご指名の女の子。この間の王英って奴も最低だったわ。

・袁明…初めてのインスタのアップが巨大なパフェの写真だった深意を幹部たちは掴み損ねた。
・洪清…意外と甘党。

・呂牛…情報収集に喫茶店ってのは便利なもんなんだ。 

禁軍 

禁軍…調練が好きすぎる奴らしかいない。趙安軍の臭気が侵食してきて辟易気味。

人物
・童貫(どうかん)…禁軍元帥。小柄でも末恐ろしいマッチョ。宦官は髭が生えないが、彼は生えていたらしい。異常だな。
・鄷美(ほうび)…副官。彼の特別調練は酆美のご褒美と呼ばれ、恐れられている。
・畢勝(ひつしょう)…酆美と一緒に呼ばれるとき、何故いつも自分が後なのかずっと腑に落ちない。
・李明(りめい)…禁軍将校。若い。
・韓天麟(かんてんりん)…禁軍将校。おっさん。
・馬万里(ばばんり)…禁軍将校。不細工。
・王義(おうぎ)…禁軍将校。小柄。
・陳翥(ちんしょ)…禁軍将校。静か。
・段鵬挙(だんほうきょ)…禁軍将校。にぎやか。

・趙安(ちょうあん)…フレッシュ!彼らのスピンオフという名の法螺話はこちら
・公順(こうじゅん)…副官。基本突っ込み。たまに趙安すら唖然とさせるボケをぶちまけることも。
・何信(かしん)… 親衛隊隊長。こいつも良く分からんキャラだな。

49.
李明「何が始まるのですか?」
韓天麟「お前は初めてだったな」
馬万里「童貫元帥と鄷美殿、畢勝殿による、笑いを堪える調練だ」
王義「今年も楽屋の前を通るだけで汗が止まらなくなるほどの気だった」
韓「笑った者は没羽箭くんの石を食らうのだ」
李「骨折れません?」
馬「去年折った」
李(正気か?)

童貫「…」
李(普通に出てきた)
童「…」
李(何だ?)
童「私に謝る時の韓天麟のリアクションをする」
李(?)
韓(!)
童「申し訳ございません!元帥!」
李(w)
韓「」
〜李明、罰〜
李「痛え」
馬「危なかった」
王「声裏返るんだよな、韓天麟」
韓「…」
李「肋やられました」
馬「笑った罰だ」

鄷美「…」
畢勝「…」
韓(!)
王(元帥の服だw)
馬(丈が短すぎるw)
鄷「ダブル元帥」
畢「笑うでないぞ、貴様ら」
韓・王・馬(www)
李(声が完璧だwww)
〜全員、罰〜
李「腕が」
馬「歯が」
李「普通の調練でも負わない怪我です」
韓「そのうち慣れるさ」
陳翥「…」
王「いつも陳翥は笑わんな」

・李明…この後満身創痍で三月調練に出れなかった。
・韓天麟…笑い上戸だから一番食らったけど、身体が丈夫だから意外と平気。
・馬万里…容貌魁偉。口元がもっと不細工になってしまった。
・王義…服の下に鎖帷子を仕込んでいるのがバレて懲罰調練行き。
・陳翥…一度も笑わなかった。仕掛け人側で出てみたい。
・段鵬挙…行間に潜んでいたところを、童貫に引っ張り出され、懲罰調練へ。

・童貫…笑いを堪える調練を考案。滑った時の痛みも石を受けるのと同じくらい痛いのだ。
・鄷美…畢勝とのコンビ芸には定評があるが、漫才はだだ滑りした。
・畢勝…鄷美とは笑いのツボが合わない。シュールなピン芸の方が得意。

50.
趙安「大宋国の禁軍たるもの、外国語の嗜みくらいあっても悪くなかろう」
公順「だからってこんな胡散臭い教室で習わなくても」
何信「趙安殿が臭いだと!」
公(一番臭いのはあんただ)
王黼「ハローエブリワン!くっさ!」
公(胡散臭さに顔と手足がついてる…)
趙「ハロー!」
何「Hu weird, teacher」

王「ハウアーユー?」
趙「アイムファイン!」
何「You do not know English skills」
公(改めて凄いところに来てしまった」
趙「Fresh!」
王「フレッシュ?」
趙「Fresh!」
王「Flesh!」
何「No!」
王「⁉︎」
公(何信殿?)
何「Fresh! F R E S H ! Fresh!」
王「何言うてんねん」
公(それな)

何「酷かったですな」
趙「流暢だったな、何信」
公「青蓮寺の消費者相談窓口にチクって摘発させましょう」
趙「しかし、公順。一言も喋らない消極性はフレッシュとは言えんぞ」
何「うむ」
公「…恥ずかしくて」
趙「公順。羞恥心で大事を躊躇うなら我が軍に入るな!」
公「!」
何「名言だ、趙安殿」

公「申し訳ございません」
趙「フレッシュマンの衣装に身を通したお前が、英会話教室ごときを恥ずかしがるとはけしからん」
公「やっぱり恥ずかしかったんですか、趙安殿?」
趙「黙れ。あそこで道に迷っている西方の異人を手助けしてこい」

皇甫端(しまった。段景住とはぐれた)

公「行って参ります」
何「骨は拾ってやる」

公「エクスキューズミー?」
皇「!」
公「メイアイヘルプユー?」
皇(胡人と勘違いされている…)
公(取り付く島がない…)
皇(敵地だから目立ちたくないのだが)
公「ドゥーユーノー、Fresh?」
皇「…」
公「Fresh!」
皇「…」
公「F R E S 」

段景住「良かった!皇甫端」
皇「遅いぞ、段景住」
公「!?」
段「なんだこいつは?」
皇「分からん」
段「さっさとずらかるぞ」
公「…」
何「骨を拾いに来たぞ、公順」
趙「見事なネイティブフレッシュだった」
公「趙安殿」
趙「…」
公「めっちゃ恥ずいっすね!」
趙「それな」
何「Phew!」

・趙安…フレッシュ!
・公順…二度と英語なんて使うもんか。
・何信…ネイティブもびっくりの謎の英語力。フレッシュ!

・王黼…奇人。史実でも金髪のロングヘアーとお髭の持ち主だったらしい。開封府で怪しすぎる商売やビジネスに手を染める、後の宋国宰相。

・皇甫端…髭が紫で瞳が青いからって、異国人扱いしないでくれ。
・段景住…髭が金でもこもこ。金毛犬とはよく言ったもの。馬の輸送の寄り道中だった。

51.
趙安「呼延灼殿、この衣装はちょっと…」
呼延灼「フレッシュマン引継ぎの儀の衣装だ」
趙「なぜ乳首が露出しているのですか」
呼「果実と言え、趙安」
趙「明らかに罰ゲーム…」
呼「趙安!」
趙「」
呼「フレッシュマンが腐った事を抜かすな」
趙「!」
呼「その涙がお前の鮮度の現れだな、趙安」

徽宗「これより、フレッシュマン引継ぎの儀を行う」
趙(陛下まで参列されているとは)
李師師「第8代フレッシュマン、呼延灼前へ」
呼「…」
趙(あの衣装を私よりも見事に着こなしている)
李「第7代フレッシュマン、呉達」
呉達「…」
李「第6代フレッシュマン、沈機」
沈機「…」
趙「勢揃いだ…」

李「初代フレッシュマン楊業の元に集え」
徽「第9代フレッシュマン趙安、前へ」
趙「…」
李「歴代フレッシュマン、盃に集え」
趙(なんて大きな盃)
李「歴代フレッシュマン、最後のジュースを振り絞れ」
趙(ジュース?)
呼・呉・沈「!」
徽「その盃のジュースを一滴残らず飲み干すのだ、趙安」
趙「」

・趙安…盃のジュースを一滴残らず飲み干した時、何かが変わった。
・呼延灼…第2代フレッシュマン呼延賛以来のフレッシュマン就任に地元は大いに湧いた。

・呉達…第7代フレッシュマン。青蓮寺に移る前は軍人だった。
・沈機…第6代フレッシュマン。今でこそドライフルーツだが、ジューシーさは健在。

・徽宗…改元ネタに一番相応しい人物。よもや平成最後にこんなネタを書く事になろうとは。
・李師師…リハーサルで散々笑ったから、もう大丈夫。

元ネタ!

twitterにて連載中!
ご意見ご感想(クレーム)、リクエスト等、こちらまで!

今月号も長々とお読みいただきありがとうございました!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!