林冲公孫勝

水滸噺 4月(上)[林冲or公孫勝]

あらすじ
豹子頭 百里風より疾きこと風の如く
致死軍 笛の音静かなること林の如く
呼保義 九紋竜説教すること火の如く
黒旋風 慈愛のあふれること山の如し

水滸噺 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、  
 あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、
 薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
・作者のtwitterにて投稿しています。 
・ご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまでお寄せいただけると、とても
 嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

ハードでシリアスな本編を生きる好漢たちに、しょうもないことをめいいっぱいやってほしくて、ちまちま書いてます。

新キャラもちょくちょく出てきますので、お楽しみに!

それでは参りましょう。

梁山泊

梁山泊…イケイケ首領晁蓋は、元ネタの都合で、実は108星に含まれていない。男女比は105:3で、このご時世女性メンバーを増やすことも検討されており、存在感の薄い男性陣は戦々恐々としているとかいないとか。

騎馬隊

 騎馬隊…リーダーよりも賢い馬の方がはるかに多いが、リーダーよりも野性味やハングリー精神に欠ける馬が多く、その点が不満だという。

 人物
・林冲(りんちゅう)…騎馬隊リーダー。もう多くを語るまい。書くことがなくなったとか、そういうことではない。
・索超(さくちょう)…
彼の良識は梁山泊の中でも上位にランクインする。
・扈三娘(こさんじょう)…
林冲騎馬隊の紅一点。綺麗すぎるお顔と、キレッキレすぎる天然ボケ。
・馬麟(ばりん)
鉄笛仙(てってきせん)という笛の名手。最近は縦笛にも挑戦中。
・郁保四(いくほうし)…
旗持ち。握力が強すぎて、食堂の皿を握り割ってしまうこともしばしば。

・皇甫端(こうほたん)…
紫色のお鬚だから、あだ名は紫髯伯(しぜんはく)。スープに髭が混ざると彩良く見えるけど、毛だからな。

・百里風(ひゃくりふう)…
林冲の愛馬。林冲一番の相棒。

1.
索超「林冲殿は百里に乗っている時は輝くな」
馬麟「うむ」
扈三娘「人馬一体ですね」

林冲「おう、百里。いい調子だ」
百里風(喜)
林「どこまでも駆けよう」
百(了)
林(俺と百里の魂が一体となったようだ。こんな世界も悪くない…)

索「そしたら入る体を魂が間違えた?」
林(百)「うむ」
百(林)(怒)

索「皇甫端に来てもらった」
皇甫端「わしにどうしろと?」
郁保四「林冲殿が百里風に、百里風が林冲殿になってしまったのを直してください」
百(林)(早くなんとかしろ)
林(百)「いつもお世話になっています。皇甫端先生」
皇「いえいえ」
索「礼儀正しい」
馬「さすが百里風」
百(林)(俺を無視するな)

皇「食って寝れば直らんか?」
百(林)(直るか馬鹿)
林(百)「もう一度魂を一つにするのはどうでしょう」
皇「なるほど」
索「その手があったか」
扈「さすが百里風」
郁「すごい」
林(百)(この人たちも頭良くないな)

索「つまり、百里風が林冲殿に乗れば良いのだな」
林(百)「乗れ。林冲」
皇「待て、百里。気持ちは分かるが今はお前が乗る番だ」
林(百)「」
馬(かわいい)
百(林)(危うく乗るところだった)
林(百)「乗るぞ、林冲」
百(林)(お前に乗られるならいいか)

百(林)(行くぞ、百里)
林(百)(おう)
索「林冲殿の身体能力なら百里の走りを再現できるはずだ」
皇「そんなに上手くいくかのう」
馬「林冲殿なら大丈夫だ」
皇「どう思う、扈三娘」
扈「絶対戻れますよ。林冲殿ですから」
皇(妙な信頼は厚いのう)
郁(俺にも聞いてよ)

索「走った」
皇「!」

百(林)(百里。お前の身体になって分かったぞ)
林(百)(お前を乗せるのも苦労するのだ)
百(林)(戻ったら手入れしてやる)
林(百)(あんた人か?俺が走るより速いぞ)
百(林)(なめるな、俺を)

林(百)「走るのが楽しくて戻りそびれた」
百(林)(まだ走るぞ、百里)
皇「一生やってろ」

・林冲…めんどくさい軍議は、百里風に代わりに行ってもらう妙技を会得した。
・百里風…軍議で上手いことを言うことがしばしば。突っ込んではいけない。

・索超
…我らの中では、百林冲殿と呼ぼうか。
・扈三娘
…私も雪嶺と入れ替われるのでしょうか。
・馬麟
…百里風が将の方が、騎馬隊がより強くなる気がした。
・郁保四
…俺は旗になるとはいいますけど、本当に旗にはなれませんよ。
・皇甫端
…林冲が百里風の時は、妙に牧場が殺伐として困る。

致死軍&飛竜軍

致死軍…公孫勝があみ出した特殊部隊。ある時は闇夜にまぎれ、ある時は崖を上り、またある時は水中から不意に出現し敵を奇襲する。調練がヘビーすぎるので、割増手当を導入した。

飛竜軍…劉唐が設立した特殊部隊。闇塩部隊の護衛が主な任務。致死軍の兵と出会うとお互いのベースが違いすぎて会話がぎくしゃくしがち。

人物
・公孫勝(こうそんしょう)…ピンからキリまで林冲と同レベルという事は、ピンもキリも人間離れしているのだ。
・劉唐(りゅうとう)…公孫勝の様になりたいと思っていたが、理性が邪魔をしがち。
・楊雄(ようゆう)…顔が黄色いから病関索というあだ名だが、実は関羽より張飛派だった。
・石秀(せきしゅう)…的確に公孫勝の地雷を踏みぬく致死軍良識派筆頭。
・孔亮(こうりょう)…イケメンだけど、酷薄。そこがたまらない、というファンがいるらしい。
・樊瑞(はんずい)…マッチョすぎる暗殺者。妖術とも間違う俊敏性。

・呉用(ごよう)…しまった。

・李逵(りき)…違う世界ではほんまもんのバーサーカーである。この世界ではよもやのおふくろ枠。

2.
公孫勝「石秀、楊雄」
石秀「はい」
公「私は地下牢で一点倒立ができるようになったが」
石「はい」
公「なぜ頭で倒立しようとしたのだと思う?」
楊雄「…」
石「…」
楊(何が始まるんだ?)
石(分からん)

公「地下牢でも体を鍛えようと思った」
楊(発想が脳筋だよなぁ)
公「石畳の上で転げ回ることもやった」
石(裸ゴロゴロのことだな)
公「やがてそれにも飽きた」
楊(でしょうね)
公「それからなのだ、倒立を始めたのは」
石(引き込んで来るな)

公「始めは倒立も出来なかった」
石(だから公孫勝殿の房がうるさかったんだな)
公「それが少しづつ出来るようになってきた」
楊(いつまで続くんだ?)
石(検討もつかん)
公「ついに頭でやる時が来た」
石「…公孫勝殿」
公「…」
石「…オチはあるのですか?」
公「質問は許可していない、石秀」

・公孫勝…まずは三点倒立から始めたのだ。
・楊雄…道理で頭皮がこんなに硬いわけだよ。
・石秀…頭突きも強いのではないかな、公孫勝殿。

3.
公孫勝「呉用殿が反乱の首謀者側近として潜入したとする」
呉用「具体的だな」
公「緊急離脱の合図を耳に覚えさせるぞ」
呉「何を言っている」
公「笛の音が聞こえたら手を上げろ」
呉「待て、説明しろ」
公「呉用殿のためだ」

楊雄「公孫勝殿は?」
劉唐「相国寺で摑まされた笛持ってどっか行った」

公「質問は一つだ」
呉「前提が分からん」
公「童貫軍の力を削ぐために、呉用殿が江南の反乱組織の側近として潜入したという前提だ」
呉「なるほど」
公「では笛を吹くぞ」
呉「待て、まだ質問は山ほど」
公「質問は一つと言った」
呉「しまった」
公「観念しろ、呉用殿」

呉「何も聞こえないぞ、公孫勝」
公「呉用殿の耳が悪いのだ」
呉「お前は聞こえているのか?」
公「」
呉「そのおもちゃはどこで摑まされたのだ?」
公「」
呉「経費ではおろさんからな」
公「」
呉「公孫勝」
公「」
呉「笛、逆さだぞ」
公「」

・公孫勝…いや、正しい。
・呉用…微かに何かが聞こえ始めたような…

・劉唐…あの音が初めて聞こえた時嬉しかったよな。
・楊雄…半面、来るところまで来ちまったか、とも思いました。

4.
公孫勝「私の大切なものがなくなった」
劉唐「…」
楊雄「…」
孔亮「…」
樊瑞「…」
公「容疑者はここにいる」
楊「公孫勝殿」
公「…」
楊「…何を盗まれたので?」
公「大切なものと言った」
楊「…」
孔(分かんないって)
公(…?)
(裾のポッケにあった)
公「…」

劉(いつになく公孫勝殿の顔が厳しい)
樊「それは、ポケットに入るくらいの大きさですな」
公「!」
劉「樊瑞?」
樊「いつも身一つで動き回る公孫勝殿の大切なものと言ったら、それくらいの大きさに違いない。違いますか?公孫勝殿」
公「…違う」
樊(あれ?)
孔(ダサっw)

公「もっと大きいもの、とだけ言っておこう」
劉(そんなものをどうやって公孫勝殿にバレずに盗めるというのだ)
公「…」
伝令「公孫勝殿!」
劉「どうした!」
伝「東に二里の丘で高廉の奇襲。味方が被害を受けています」
公「分かった」
伝「これで死ねます」
公「眠れ」
伝「…」

劉「急行しましょう、公孫勝殿」
公「そうか、犯人は高廉だったのか」
楊「?」
公「私の大切なものをいつも盗んでいく…」
孔(くさっ)
樊(嫌いじゃないだろ?)
孔(まあね)
公「今日は弔合戦と行こうか」
劉「おう!」
楊(…犯人は俺たちの中に、って言わなかったっけ?)

劉「今日の公孫勝殿は凄まじかったな」
楊「ええ」
孔(間違って殺されかけた)
樊(俺も)
公「我らの危機を知らせた伝令に敬礼」
一同「…」
公「健気な奴め」
劉「公孫勝殿?」
公「私の持たせた笛を懐にまだ持っていたよ」
劉「…」
楊「…」
孔「!」
樊「!」
公「孔亮と樊瑞は梁山泊に伝令」

対公孫勝
・劉唐…一番付き合いが長いから盲信気味。公孫勝のうっかりミスを深読みしてドツボにはまる。
・楊雄…そこそこ長い。劉唐ほどではないがリスペクトしすぎ。公孫勝の凡ミスを見ると冷静さを一気に欠く。
・孔亮…ほどほどの付き合いだから、公孫勝ガチ勢ほどのリスペクトはない。公孫勝のミスをさりげなくフォローすることが一番多いのは彼。大事にしろよ。
・樊瑞…一番付き合いが短いから意外と間抜けな所があるんだとすんなり受け入れられた。

5.
李逵「宋江様に致死軍を体験してこいと言われた」
公孫勝「…」
李「公孫勝、だよな?」
公「…」
李「飯食ってるか?顔色悪いぞ」
公「…」
李「致死軍の連中の服も穴だらけじゃねぇか」
公「…」
李「調練はどうでもいいが、この生活習慣の乱れは許せねえ。正させてもらうぜ」
公「…」
楊雄(お袋だ)

楊(李逵が来ただけで、兵の顔に生気が)
公「李逵」
李「なんだ」
公「誰が兵の服にアップリケを付けていいと言った」
李「穴がデカすぎたんだ。しょうがねえじゃねえか」
公「こんな服は着れん」
李「カッコいいやつならいいのか?」
公「そういうことではない」
楊(お袋との会話を思い出すな)

李「じゃあ俺は行くぜ」
兵「…」
李「お前は俺の香料が大好きだったな。餞別だ」
兵「!」
李「お前の服の穴はいつでも俺が埋めてやる。安心して闘え」
兵「…」
李「お前は…」
楊「お袋…」
公「整列」
兵「!」
李「なんだってんだ」
公「あとで分かる」

兵「またきてね」
李「あいつら」

・公孫勝…周囲があっと驚く少ない食事量。突風で少し飛ばされかけた。
・楊雄…別の世界では嫁がいる設定に不満。もしかしたら顔が黄色い所よりも直すべきところがあるのかもしれない。
・李逵…李逵がお袋になる水滸伝ワールドがあってもいいではないか。文字が読めなくても気持ちは伝わった。

林冲・公孫勝炎の七日間

人物
晁蓋(ちょうがい)…梁山泊頭領イケイケ派。その元気ハツラツさは、陰キャの抱える闇すらも浄化してしまうという。
・宋江(そうこう)…梁山泊頭領じっくり派。中年にして赤子の如くピュアピュア。幼児用アニメでガチ泣きした時は晁蓋も引いた。
・呉用(ごよう)…しまった軍師。普通の軍師はしまったと言わない。人間離れした事務処理能力。
 
・林冲(りんちゅう)&公孫勝(こうそんしょう)…ダブルボケの二人が突っ込みに回るほど、宋江の天然ボケに振り回された。

・扈三娘(こさんじょう)…全く男という奴は。
・馬麟(ばりん)
…林冲を穏やかにする曲を覚えた。
・郁保四(いくほうし)
…いつもとばっちり。

・劉唐(りゅうとう)…公孫勝に一票入れたかった。
・楊雄(ようゆう)
…黄色い顔が青ざめると緑色になるのか?と孔亮にからかわれた。
・孔亮(こうりょう)
…公孫勝の無茶ぶり窓口担当。
・樊瑞(はんずい)
…色々あって、崖上りがマイブームになったさ中の出来事である。

・呼延灼(こえんしゃく)…鞭(べん)というでかくて太い棒を二本持って闘うから双鞭(そうべん)というあだ名。韓滔、彭玘とバンドを組んだ時はハイハットとスネアドラムをお釈迦にしてしまった。
・石勇(せきゆう)
…隠れ公孫勝ファンのスパイ担当。公孫勝が遊びに来たときは、思いっきり甘やかす。

・索超(さくちょう)…色々あって長期休暇を満喫中。
・楊令(ようれい)
…色々あって子午山にて修行中。

6.プロローグ
宋江「林冲、公孫勝」
林冲「…」
公孫勝「…」
宋「いい加減に仲良くせよ」
林「…」
公「…」
宋「二人の優秀な指揮官が不仲なのは心が痛むのだ」
晁蓋(何を言っている、宋江)
呉用(これほど仲良しな二人組いないですよ)

宋「致死軍が危機な時は、たまたま騎馬隊が出動していたから助かったと聞くし」
晁(林冲の言葉通りに聞くな、宋江)
宋「林冲の危機の時にも、たまたま致死軍が近辺で任務があったからと聞いた」
呉(そんな訳ないでしょう、宋江殿)
宋「だから私は決めた」
林「…」
公「…」

宋「二人のどちらが人気者なのかを皆に決めてもらうのだ」
晁「ほう」
宋「勝った方が兄。負けた方が弟として仲良くするのだ」
林「︎」
公「︎」
宋「皆の者、よろしく頼むぞ」
呉「投票よろしくお願いします」

晁蓋…企画は面白いが、宋江がこじれないか心配だ…
・宋江…騎馬隊と致死軍が不仲なのは良くない!
・呉用…騎馬隊と致死軍の兵から、二人の仲良し案件を募集しはじめた。
 
・林冲…宋江殿はこういうところがあるからな…
・公孫勝
…意図が全く理解できん…

7..林冲の場合(1)
林冲「えらいことになった」
馬麟「…」
扈三娘「どうしたのですか?」
林「なんでもない」
馬「…何かあったな」
扈「林冲殿は何もないと」
馬「…明日からの調練は荒れるぞ」
扈「?」
馬(こんな時、林冲殿のメンタルケアができる奴がいたら)

索超「楊令この野郎www」
楊令「索超殿のせいですwww」

・林冲…こんな時、こいつらにどう接したらいいのか分からん。
・馬麟…兵にできる限りの休養を取らせるにはどうしたらいいか…
・扈三娘…何か違いましたか?

・索超…一緒に水遊び中。
・楊令…索超殿の竹の水鉄砲は、すごいです!

8.林冲の場合(2)
扈三娘「馬麟殿の言う通りでした」
馬麟「…」
扈「なぜ分かったのですか?」
馬「なんとなく」
扈「こんな調練では兵が死んでしまいます」
馬「どうすることもできん」
扈「馬麟殿!」
馬(林冲殿を宥めることができる奴がいたら…)

索超「王進殿が魚を捌きながら死域に」
楊令「承知しました」

・扈三娘…何度落馬したことか…
・馬麟…鮑旭だったらもっとうまくできただろうが…

・索超…こんなに捌いたら、川の魚がいなくなるぞ。
・楊令…王母様、お願いします!

9.林冲の場合(3)
扈三娘「林冲殿!もう兵は限界です」
林冲「弱い兵は死ぬのが戦だ」
扈「しかし」
林「戻れ、扈三娘」
♪〜 鉄笛 〜♪
林「今日は辞めだ」
扈(馬麟殿!)
馬麟(これも一時しのぎにすぎん。誰か調練のスケジュールを管理できる奴はいないのか)

索超「王進殿が土をこねて二日になるが」
楊令「死域ですね」

・林冲…帰宅してから、なぜ調練を辞めたのか思い出せず頭をひねった。
・馬麟…まさか本当に通用するとは…
・扈三娘…まさか、鉄笛の音で操ったのですか?

・索超…もはや手と土の境目が分からん。
・楊令…王母様、お願いします!

10.林冲の場合(4)
呼延灼「林冲」
林冲「なんだ?」
呼「梁山泊に致死軍という軍があると聞いた」
林「木偶の群れだ」
呼「本当か?」
林「その木偶の頭が公孫勝というウスノロでな」
呼「ん?」
林「貧弱でマヌケなのに邪魔ばかりして来てな」
呼「うむ」
林「俺が死ぬのを邪魔しやがったんだ」
呼(いつから惚気話に?)

・林冲の死生観…色々ありすぎて自分の死に対してとてもドライなんだけど、いかんせん身体を鍛えすぎたので死神も露骨に避けて通るとか。
・呼延灼…穆弘や李俊にも聞いてみたが、どう考えても腐れ縁以上でも以下でもない見解で一致した。

11.林冲の場合(5)
林冲「郁保四。網にかかりすぎだ」
郁保四「はい…」
馬麟(郁保四の巨体では無理もないだろう)
林「この障害物コースを半刻(15分)以内に走破するのだ」
郁「…」
馬(何があったんだ、林冲殿)
林「お前も致死軍の木偶くらい機敏になれ」
馬(?)
林「公孫勝の野郎には死んでも負けん」
馬(公孫勝殿?)

・林冲…機敏さを鍛える調練?走れ!12刻!(6時間)
・馬麟…気持ちを込めて鉄笛を吹くと、林冲が思い通りの行動をするようになり、少し怖くなってきた。
・郁保四…違う世界では身長3mとバグっている。この世界だと常識の範囲ギリギリででかい。

12.林冲の場合(6)
林冲「公孫勝の弟になるなら死んだ方がマシだ」
扈三娘「林冲殿?」
林「いたのか」
扈「ずっと」
林「聞かれたか」
扈「?」
林「実はな…」
扈(聞いてない)
林「…というわけだ」
扈「…勝てばいいのでは?」
林「バカなことを言うな。公孫勝の兄になるなら死んだ方がマシだ」
扈「…それは?」

・林冲…「死>>>>>>公孫勝の兄or弟」 この式は林冲と公孫勝を入れ替えても機能する。
・扈三娘…今日の出来事を久し振りに兄の手紙に書こうと思い立ったが、連絡先を知らなかった。

13.林冲の場合(7)
馬麟「そういうわけだったのか」
扈三娘「はい」
馬「…」
扈「男とはそうなのですか」
馬「林冲殿はその極め付けといったところだ」
扈「私には理解できません」
馬「…扈三娘」
扈「はい」
馬「俺もお前も、林冲殿と共に戦うことはできてもケアする事は得意ではない」
扈「…」

馬「しかし、それは仕方がないことだと俺は思う」
扈「じゃあどうすれば良いのですか?」
馬「こういうのが得意な奴が来たら真っ先に騎馬隊に配属してもらうよう、先手を打つ」
扈「なるほど!」
馬「策を練るぞ、扈三娘」
扈「はい!」

楊令「索超殿?」
索超「今、おぞましい気を感じた」
楊「?」

・扈三娘…林冲騎馬隊兵の思う扈三娘可愛い顔ランキング第3位。訳がわからずキョトンとした時の顔。
・馬麟…月夜で一人鉄笛を吹いていたら、梁山泊に住む獣が寄ってきた。一番でっかいのは林冲。

・索超…人生最後の長期休暇の予感がプンプンしてきた。寄り道しようかな…
・楊令…梁山泊のシンボル。王進というキングオブ不器用な師匠の元、すくすく育つ。それは器用なのか、不器用なのか。

14.公孫勝の場合(1)
劉唐「どんな話でした?」
公孫勝「…」
楊雄「公孫勝殿?」
公「…」
孔亮「おうい、公孫勝殿」
公「…」
孔「林冲殿が」
公「︎」
劉(?)
楊(?)
孔「じゃなかった、王英から伝言が」
公「孔亮、お前が死んでこい」
孔「!」
劉(少し分かったぞ、孔亮)
楊(ありがとよ、孔亮。そして死ね)

・公孫勝…今は林冲の名すら聞きたくない。
・劉唐
…林冲と王英は間違えんだろう…
・楊雄
…間が悪すぎたな。
・孔亮
…この拠点は守り切るのでは無く、捨てる予定だったのでは?

15.公孫勝の場合(2)
樊瑞「公孫勝殿」
公孫勝「…」
樊「そこ、俺の岩…」
公「…」
樊「何を考えておいでで?」
公「…」
樊「騎馬隊の」
公「︎」
樊「調練が激烈ですね」
公「樊瑞」
樊「なにか?」
公「この崖を降れ」
樊「︎」

・公孫勝…我ながら、良い岩見つけたものだ。
・樊瑞…落下しかけたが、たまたま生えてる蔓草を掴めて九死に一生。少し死ぬ意味が理解できた。

16.公孫勝の場合(3)
石勇「公孫勝殿?」
公孫勝「…」
石「この屋根裏は万が一の時の代物ですので、あまり使わないでくださいね」
公「…」
石「戸締りはよろしくお願いしますよ」
公「…」
石「おい」
部下「はい」
石「朱富の饅頭と顧大嫂の焼饅頭どっちがいいと思う?」
下「引きこもりのヒモ養ってるみたいですね」

・公孫勝…湿度と暗さが絶妙だ。さすが時遷の弟子。
石勇…結局朱富の店で、低カロリーの饅頭を買ってきた。

17.公孫勝の場合(4)
呼延灼「公孫勝」
公孫勝「…」
呼「樊瑞が登れなくて難儀している」
公「…」
呼「林冲とお前の話をした」
公「…」
呼「林冲騎馬隊ってどんなだ?」
公「馬よりも馬鹿な奴が率いる珍走団さ」
呼「林冲が馬よりも馬鹿だというのは分かるぞ」
公「いつも迷惑している」
樊瑞(崖っぷちってこういう事か)

・公孫勝…作者の脳内では某Y先生の影響でスキンヘッドだが、きっとマイノリティだろうな。
・呼延灼…ドラムスティックの扱いはお手の物だが、リズム感を加味せずメンバー入りさせた事を後悔したと韓滔は言う。
・樊瑞…公孫勝と命がけロッククライミングで親交を深めるも、今は一刻も早くどいてほしい。

18.公孫勝の場合(5)
孔亮「今回は死ぬかと思いました」
公孫勝「…」
孔「報告ですが」
公「…」
孔「林冲殿が」
楊雄(!)
公「…」
孔「我らを敵とみなす調練を強いています」
公「…」
楊(なぜだ、林冲殿)
公「孔亮」
孔「はい」
公「報告は後でいい」
孔「…」
公「もう一度死ね」
孔「」
楊(さすがに気の毒だが、死ね)

・公孫勝…人気投票若干負けている。みんな!公孫勝殿にパワーを!(劉唐)
・楊雄…親友の石秀の代わりに孔亮が来たので目の敵にしているが、て痛すぎるしっぺ返しをくらいそう。
・孔亮…兄に孔明がいる。兄弟で諸葛亮孔明リスペクトか!と笑われるが、両親がそうだったとしか言いようがない。

19.公孫勝の場合(6)
馬麟「林冲殿が変だ」
楊雄「公孫勝殿もだ」
馬「公孫勝殿を強く意識している」
楊「林冲殿と何かあったのだ」
孔亮「こんな事があったそうだ、まぬけども」
楊「孔亮」
馬「人気投票?」
孔「勝った方が兄、負けた方が弟だとよ」
楊「…それで?」
孔「…」
馬「実質変わらんだろ?」
孔「…確かに」

・楊雄…公孫勝殿が変?何を言っている。我らを試しているに決まっているだろ?そうに違いない。
・孔亮…公孫勝殿が変?いつもの事ではないか。
・馬麟…林冲殿が変?今頃気付いたのか。

20.公孫勝の場合(7)
劉唐「人気投票か」
楊雄「はい」
孔亮「劉唐殿」
劉「なんだ」
孔「公孫勝殿が勝ったら、林冲殿が弟になるんだろ」
劉「…」
孔「それはあんたの弟にもなるって事じゃないか?」
劉「!」
楊「それは」
劉「林冲殿が俺の弟に」
孔「…」
劉「林冲殿が」
楊「劉唐殿」
孔「口元が緩みまくってやがる」

・劉唐…結果によっては林冲の弟になる訳だが、公孫勝殿が負ける訳ない。
・楊雄…絵巻水滸伝で石秀に「弟になってもいいぜ」と初対面で告白される役回りに驚愕。
・孔亮…久しぶりに兄貴に会って、この茶番を罵り尽くしたいと思った。

21.エピローグ
宋江「というわけで、この度の人気投票は」
林冲「…」
公孫勝「…」

画像1

宋「林冲に軍配が上がった」
林「…」
公「…」
宋「双方の勢いは五分といって良く、最後は一票差であったという」
呉用(ご投票ありがとうございました)
林「…」
公「…」
宋「…」
呉(宋江殿?)
晁蓋(泣いている…)

宋「…すまぬ」
林・公「?」
宋「互角だった」
公「…」
宋「互角だったのだ」
林「…」
宋「私が、悪いのだ」
林「宋江殿?」
宋「優秀な指揮官を争わせてしまった。私は頭領失格だ」
晁(また極端な)
宋「勝敗をつけるのは、容易い。しかし、私はもう争って欲しくないのだ」
呉(じゃれてるだけです)

宋「だから私は決めた」
林「…」
公「…」
宋「私が公孫勝に一票を投じる」
林「︎」
公「…」
晁「待て、宋江」
宋「待たぬ」
呉「それでは人気投票の意味が」
宋「人気投票をさせたのが間違いであった。ならばその間違いは私が正さねばならぬ」
晁(余計拗らせておる)
呉(林冲の気持ちが…)

林(白い世界も悪くないかも知れん)
公「…宋江殿」
宋「…」
公「その一票は辞退させていただきたい」
宋「なぜだ、公孫勝」
公「私はいつも林冲にあと一歩及ばないからですよ」
林「公孫勝…」
宋「…ならば」
晁「ならば?」
宋「もう、諍いは起こさぬな」
公「林冲次第ですな」
林「!」

宋「林冲」
林「…」
宋「林冲」
林「…起こしません」
宋「よし」
公「…」
晁(これは公孫勝の勝ちではないか?)

晁蓋…試合に負けたが、勝負には完勝だな…
・宋江…良かった。本当に良かった。
・呉用…素なんですよね、これ。
 
・林冲…宋江の眼から離れたとたんに大喧嘩を吹っ掛けた。
・公孫勝
…三十六計逃げるに如かずさ。

遊撃隊

遊撃隊…史進を大将に据えた結果あまりにもバカが増えすぎたため、副官にお目付け役として杜興を配置したが、杜興も同レベルのバカになってしまったと聞いたとき、呉用は頭を抱えた。

人物
史進(ししん)…裸族。上半身の龍の刺青はカッコいいが、下半身は余計。
杜興(とこう)…遊撃隊副官。とてつもなく不本意な配属だったが、史進らと同レベルの言い争いしかしてないので、こいつも同レベルだったようだ。
陳達(ちんたつ)…ジャンプ力は半端ないのに使い所がない。
穆春(ぼくしゅん)…お兄ちゃんっ子。ちょっかいのかけ方が下手くそ。
施恩(しおん)…替天行道マニア。そろそろ他の本も読んだ方がいいと思う。
・鄒淵(すうえん)…猟師。特徴が無いのが特徴といえば特徴。

・晁蓋(ちょうがい)…騎馬隊の紅一点に惚れられているけど全く気づいてない。
・宋江(そうこう)…
彼の善意による大迷惑の矛先はいつ向くかわからない。
・呉用(ごよう)…
しまった。

・李俊(りしゅん)…水軍リーダー。泳ぐのも操船も部下の方が上手い。
・張順(ちょうじゅん)…
潜水部隊担当。ほぼ魚。

22.
史進「俺たち遊撃隊の野郎はバカばかりだな」
陳達「なんだとこの野郎」
史「穆春はバカだろ?」
陳「あいつはバカだ」
史「施恩は替天行道バカだろ?」
陳「筋金入りだな」
史「鄒淵だって賢いとは言えんだろ?」
陳「言えん」
史「じゃあもう俺が一番賢いんじゃないか」
陳「それは無い」

穆春「好き勝手言いやがって」
施恩「史進より賢い自信はあるぞ」
鄒淵「そうだ」
陳「人望ねえな」
史「貴様ら」
穆「俺は史進よりも賢い兄上の弟だから賢い」
陳「ん?」
施「俺は史進よりも替天行道を暗記しているから賢い」
陳「…」
鄒「俺は史進よりも山に詳しいから賢い」
陳「同レベルだった」

史「お前らの賢さはその程度か」
陳「強気だ」
史「穆弘の賢さは関係ないだろう」
穆「む」
史「替天行道は暗記するものではない。この世で活かすものだ」
施「不覚」
史「山の事なら子午山で学んだ」
鄒「ぐ」
史「やはり俺が一番のようだな」
陳「む、風が」
史「しまった」
陳「履いてねえのかよ」

史進…チラリズムもほどほどにしなければ。
陳達…誰得だ、馬鹿野郎。
穆春…汚い…
施恩…おぞましいものを見た。
・鄒淵…こいつは一体なんなんだろうか。

23.
宋江「正月だ」
晁蓋「新春隠し芸大会を始める」
呉用「1番。遊撃隊将校による、これが本当の隠し芸」
晁(察した)
宋(ウキウキ)
呉(察した)

史進「おめでとうございます!」
晁(やっぱり)
宋(!?)
呉(隠しきれてない)
林冲「出てるぞ」

張順(俺たちセーフですよね)
李俊(ふんどしはセーフだ)

史「この竜の面を下腹部に付けて…」
晁(雑だな)
宋(…)
呉(若さなのか)
宋「史進!」
史「︎」
晁(このトーンは…)
宋「他の者も芸を止めよ」
呉(マジギレの宋江殿の声だ)
晁(しかし)
宋「一列に並べ」
呉(裸で説教受けるのか?)

張「宋江殿がキレた」
李「なんで?」

宋「この正月というのにお前らときたら」
史「すみませんでした」
林(史進が裸で宋江殿に謝ってるwww)
晁(これ笑ったらダメなんだよなwww)
呉(ダメですwww)
宋「これだけ立派な体躯をしているのに、亡くなった父上に申し訳なくないのか!」
史「…申し訳…ないです」

李(wwwww)
張(wwwww)

宋「施恩」
施恩「申し訳ございません、宋江様」
晁(泣くな、施恩。裸で)
呉(きついな)
宋「お前ら、また来年出直してこい」
史「はい…」
晁(やっと終わった)
呉(二刻はやってましたね)
宋「やれやれ」
晁「…」
呉「…」

張「俺ら出た方がいいですかね」
李「辞退しよう。腹が痛くてたまらん」

・晁蓋…水軍が辞退を申し出ているが。
・宋江
…良い口直しになるだろう。
・呉用
…大差ないと思いますが…

・李俊…しまった!緩くなってる!
・張順
…もう出番だぞ!李俊殿!

史進…遊撃隊将校一同、リベンジを誓った。
施恩…私の穢れは、替天行道でも落とせないかもしれない…

24.
杜興「李家荘の執事だったこのわしが、下品極まりない貴様らにお行儀というものを叩き込んでやる」
陳達「うるせえ、老いぼれ」
鄒淵「くたばりぞこないめ」
杜「貴様ら」
史進「ご老体、無理をなさるな」
杜「︎」
史「陳達も鄒淵も失礼ではないか」
陳(そういえばあいつ、お坊っちゃんだった)

史「杜興殿。奴らが悪いのは口と頭だけ。そうカリカリなさるな」
陳(なんか腹立つな)
杜「すまなかった」
鄒(謝った)
杜「行儀の良い史進ほど気持ちの悪いものは無かった」
史「何だと」
杜「史進は口を利くな。口汚くても行儀良くても腹がたつわい」
史「」
陳(ひでえwww)

杜興…早い話が、史進は黙れ。
陳達…身体で主張し始めたぞ。
・鄒淵…結局同レベルだよな、この馬鹿と爺は。
史進…なぜこんな爺が遊撃隊にいるのだ…

水軍

水軍…李俊を頭にする部隊。重要性は重々承知しているんだけど、補強の優先度が低くなりがちなのが悩みの種。楊令伝、岳飛伝で華麗なるジョブチェンジを図るが、それはまだまだ先の話。

人物

・李俊(りしゅん)…水軍リーダー。豪放磊落なケチ。
・張順(ちょうじゅん)…七日七晩水に潜っていられるという噂を立てられて最近迷惑している。
・阮小七(げんしょうしち)…阮兄弟末っ子。水軍でも末っ子の如く立ち回るが、李俊には通用しない。
・童猛(どうもう)…童威の双子の弟。髭の有無で差別化を図るも、李俊には最後まで判別されなかった。

25.
李俊「お前らの致命的な短所に気がついた」
童猛「なんだ」
李「水の上ならまだしも、陸に上がったらキャラがモロかぶりしているところだ」
張順「確かに全員弟で」
阮小七「血の気が多くて」
童「水軍所属だな」
李「だろう?」

張「潜りすぎて鰓が出来つつあるってのはどうかな」
童「魚に進化するのか?」
七「腕白な末っ子ってのはポイント高くないか」
李「マザコンが入るとヘタれるな」
童「俺は」
張「童威じゃない方って覚えてたぞ」
七「俺は童威を童猛じゃない方って覚えてた」
童「?」
李「お前はそんなもんさ」

童「李俊殿だってろくなキャラ立ってないじゃないか」
李「なんだと」
七「酒場で逃げるチキン野郎」
張「魚食うの下手くそ」
童「船も下手くそときたもんだ」
李「てめえら」
張「だけど、そんな李俊殿が」
童「嫌いではないのだ」
李「おう…」
七(俺は含むところがある)

・李俊…お前らより強けりゃいいんだ!
・張順…俺は極力陸に上がりたくないんだ。
・阮小七…あの酒場の一件の後、李立共々ひと月は引きずってた。
・童猛…餓鬼の頃からの付き合いだから、どんくさいのもよく知ってるよ。

二竜山

二竜山…梁山泊の兵はまずここで適性を確かめられ、配属される。自分の希望通りに行くことはありそうでない。

人物
・楊志(ようし)
…顔に大きな青あざがあるからあだ名は青面獣(せいめんじゅう)。枕の跡とか、楊令の奇襲による打ち身とかレパートリーが幅広い。
・曹正(そうせい)
…お肉屋さん兼情報屋。彼の捌いたお肉は絶品。彼自身のお肉はなかなか減らない。
・周通(しゅうとう)
…古の英雄項羽に憧れて、あだ名は小覇王(しょうはおう)。梁山泊あだ名名前負けランキングでは上位の常連。
・解珍(かいちん)
…二竜山の副官。純情じじい秦明をからかうのがライフワーク。お前もじじいだ。お手製のタレは絶品だが、品質管理が困難すぎて商品化できなかった。
・燕順(えんじゅん)…二竜山将校。女癖が悪すぎる弟分二人の尻拭いをしすぎた結果、女性目線に立った恋愛相談に精通してしまった。

26.
楊志「いつ食っても曹正の作った」
曹正「…」
楊「羊の腸詰は美味いな」
曹「なあ、楊志」
楊「なんだ」
曹「この腸詰は西洋でソーセージと言うのだ」
楊「それが?」
曹「俺が作ったソーセージだ」
楊「?」
曹「俺の作ったソーセージ」
楊「分かってる」
曹「分かってない!」
周通「楊志殿らしい」

・楊志…美味い!曹正の羊の腸詰め!
・曹正
…このソーセージが波乱を起こす予感がするぜ。
・周通
…馬鹿言え。

27.
解珍「タレでもっと冒険がしたくなった」
燕順「やめとけ」
解「大丈夫だ。わしのタレは懐が広い。わしのように」
燕「ほざけ」
解「材料を用意した」
燕「食うのに相応しくないものがちらほらあるな」
解「独竜岡料理の鉄則がある」
燕「それは?」
解「寝かせれば食える」
燕「寝言は寝て言え」

燕「壺が色々あるな」
解「蘭のことか?」
燕「なんだって?」
解「蘭は辛口だが寂しがり屋でな、一日三回は面倒を見なくてはならん」
燕「は?」
解「気をつけろ燕順。蓮はかき混ぜてはならん」
燕「お前まさか」
解「…」
燕「タレの壺に女の名前つけているのか」
解「言うなよ」

・解珍…想いも一緒に漬けてるのさ。
・燕順…間違っても腐らせるなよ。

28.
解珍「わしのタレは売らんと言ったはずだ」
商人「私はあの味をこの国の人々に振る舞いたいのです」
解「売らん」
商「何故です!」
解「わしのタレは食通にこそ分かるが間違いなく一般受けはせん」
商「…」
解「例えていうならば伝説の深夜番組」
商「李師師様!」

解「左様。李師師様は深夜番組でこそ輝いておった」
商「それが血迷った番組がゴールデンに移り」
解「悲劇じゃった」
商「Hじゃない李師師様なんて、6Bのシャー芯です」
解「そのこころは?」
商「濃くても代わりはいくらでもいます」
解「上手いの」
赫元「…」
〜その後この商人を見た者はいない〜

・解珍…タレを作り始めた時は何度死線を彷徨ったことか分からないと、息子の解宝はかく語る。試作していた頃は近隣で異臭騒動を度々引き起こし、保健所にマークされていた。

・李師師…伝説の深夜番組看板女優。ゴールデン移行に伴いひな壇に登らされた結果彼女の魅力を殺し、無念の打ち切り。提案したPは長期休暇から帰ってこない。
・赫元
…深夜番組のカメラ担当。見えそうで見えないアングルを演出する匠は、今なお各地のファンが伝説として語り継いでいる。

流花寨

流花寨(りゅうかさい)…梁山泊の最重要拠点。ピリピリしがちな兵の緊張感を穏やかにするのは、花栄と朱武の漫才。

人物
・花栄(かえい)
…弓の名手でイケメン。どっかで見た設定だな。物心ついた頃には手の皮が分厚かった。秦明が結婚した時は新婦のお父さんのようなリアクションを見せた。
・朱武(しゅぶ)…花栄の軍師だが、その前は裸ん坊の暴れん坊史進のお守り役だった。その頃に比べたら胃薬の量は四分の三に減った。
・欧鵬(おうほう)
…将校としてよりも、目撃者として優秀。信じられないものを見たときは、だいたい彼が先にいる。その真相は15巻にあり。

29.
花栄「弓の稽古に飽きた」
朱武「お前ほど極めたらな」
花「騎射だって出来るぞ」
朱「あいにくやる機会がないな」
花「馬からそっくり返って十連射して外さないんだが」
朱「弓を作った人もそこまで極めてくれたら本望だな」
花「最近は矢をいなくても貫けるようになってきた」
朱「なんだそれは」

花「あつらえたように欧鵬がやって来た」
朱「射るのか?」
花「」
朱(凄い気だ)
花「!!」
欧鵬「!」
朱「欧鵬!」
花「案ずるな朱武。気絶しただけだ」
朱(普通案ずる…)
花「小李広のエア弓矢だ」
朱「すげえものを見た」

朱「戦で使えるのではないか」
花「だめだ。これ一回で一万本くらいのエネルギーを使う」
朱「しかし、これは脅威だぞ」
花「こんなの使うくらいなら」
朱「こんなのって」
花「私が一万本射れば、一万人殺せるぞ?」
朱「もうエア弓矢は使うな、花栄」

・花栄…もう今日は休むぞ、朱武。
・朱武…これから調練だぞ?
・欧鵬
…首をぶち抜かれる衝撃を受けた、気がした。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…キングオブコミュ障安道全と小太り薛永のコンビによる医療班。予算の割り当ては大きい。
人物
・安道全(あんどうぜん)
…得意分野は外科。林冲の頭の中が気になって仕方ない。
・白勝(はくしょう)
…出っ歯なコソ泥だったからあだ名は白日鼠(はくじつそ)。メンタルクリニックを開業したら案の定大人気。しかし彼のメンタルをケアする人も忘れてはならない。
・薛永(せつえい)…
薬屋さん。彼の運動量やハードワークぶりからして小太りになる理由がないのだが、ぽっこりしている。

困った患者ども
・樊瑞(はんずい)
…梁山泊ICUの常連。もう鍛えるのやめろ。
・林冲(りんちゅう)
…安道全、白勝とは腐れ縁。遊びに来るたびに罵り合うほど仲良し。
・宣賛(せんさん)…軍師。意地悪だったけど、結婚を機に穏やかになった。関勝以外には。
・蔡慶(さいけい)…闇塩ブラザーズ弟。のっぽ。
・蔡福(さいふく)…闇塩ブラザーズ兄。デブ。

30.
安道全「珍しいな、樊瑞」
樊瑞「相談したいことがあって来た」
安「白勝のメンタルクリニックは三ヶ月待ちだぞ」
樊「メンタルではない。フィジカルの方だ」
安「フィジカル」
樊「はらわたの鍛え方を教えてくれ」
安「はらわた」

安「それは、栄養摂取とか腸内細菌を鍛える…」
樊「それも望ましいが、物理的なほうだな」
安「物理的とは?」
樊「はらわたを鍛えないと死ぬ気がするんだ」
安「毒、ではないのだな」
樊「パンチだ」
安「パンチ」
樊「どうにかならんか」
安「白勝」
白勝「あのバカだな」

林冲「はらわたを鍛えるか」
樊「林冲殿ならご存知ではないかと思い」
林「ふむ」
安「私は作業に戻るぞ」
林「はらわたを鍛えるとは面白い」
樊「ありがたい」
林「この豹子頭、はらわたの調練をお前と共に模索しよう」
白「脳筋がシンクロしやがった」
安「脳ではない白勝。内蔵だ」

安「やれやれ」
薛永「安道全、大変だ」
安「何事だ」
白「お前が来た、ということは」
薛「林冲と樊瑞が」
安「白勝」
白「もう出来てるぜ」
薛「致死量超えの薬草を咀嚼し始めた」
安「行くぞ」
白「合点だ」
薛「プロだ」

・安道全…まずは樊瑞だ!
・白勝
…林冲は問題ないから気にするな、薛永!
・薛永
…この二人の呼吸はなんなのだろう。

・樊瑞…心なしか、腸が頑丈になった気がします、林冲殿。
・林冲
…見立ての通り、なんともなかった。

31.
宣賛「どうも食欲が出なくて」
薛永「私の作った粥を食べますか?」
宣「それは?」
薛「見た目は悪いですが、野草をふんだんに入れた薬効満点の粥です」
宣「ほう、それは」
薛「なにか?」
宣「昔そんな粥を作ったことがあった」
薛「本当ですか!」
宣(顔が近い)

宣「こんな面体だから、捨てられたこともあったがな」
薛「なんと」
宣「関勝殿は食ってくれたなあ」
薛「どんな野草を使っていたのですか?」
宣「確か…」
薛「宣賛殿」
宣「プロの目から見てどうかな」
薛「率直に申し上げまして」
宣「うむ」
薛「関勝殿だから食えたと思います」
宣「やっぱり」

薛「食べた後に腹を下したりしませんでしたか?」
宣「関勝殿はしなかったぞ」
薛「目眩とか皮膚のかゆみとか」
宣「関勝殿は出なかったぞ」
薛「…宣賛殿は?」
宣「…結構出た」
薛「用法容量を守って、正しい調理を心がけてください」
宣「すまん」

・薛永…エナジードリンクと下剤を一緒に食べてるようなものでしたからね。
・宣賛…道理で眠れなかったわけだ。

32.
蔡慶「蔡慶という」
安道全「なんの相談かな?」
蔡「兄のことで相談が」
安「白勝のメンタルクリニックは二竜山で五ヶ月待ちだが」
蔡「それも予約しておきたいが、本題ではない」
安「本題とは?」
蔡「兄に整形手術をしてほしいのだ」
安「また面倒臭そうなのが」

蔡「兄の顔写真だ」
安「面倒臭さが顔からにじみ出ている」
蔡「まったくもってその通りなのだが」
安「なんだ」
蔡「頬を削ぐ」
安「ふむ」
蔡「顎のたるみを除く」
安「…」
蔡「目元のむくみを除けば」
安「どこかで見たような」
蔡「こいつだろ?」
安「燕青!」

蔡「兄はコンプレックスに顔と手足が生えたような奴で」
安「コンプレックスが胴体なのか?」
蔡「それを払拭できれば、兄貴は燕青なんだ」
安「根本的な問題が未解決だと思うのだが」
蔡「兄貴の人生を明るくしてくれ」
安「ミミズを地上に引っ張り出しても干からびるだけだぞ?」
蔡「的確にひどい」

蔡「頼む!この通りだ」
安「うーむ」

蔡福「なんだこのおもちゃは」
慶「医者の安先生が鍛冶屋に頼み込んで作ってくれた代物だ」
福「鏡かこれは?」
慶「正面から覗いてくれ」
福「なんだこれは!」
慶「兄貴」
福「燕青が映る鏡などいるか!」
慶(兄貴の顔を屈折させてできた顔なんだが)

・安道全…ブラックジャックを読んでメス投げの練習を始めた。
・蔡福…腕力が自慢。彼だったらデブのっぽの盧俊義を担ぐのも朝飯前、なはず。
・蔡慶…兄と2人で牢番をしているのが表向きの仕事。地下牢に行く度にしたたかに頭を打つ。

工房

工房…職人ゾーン。実は隠れ武闘派がちらほらいるらしい。

人物
・湯隆(とうりゅう)
…鍛冶屋。独自の帳面を持って最高級の鉄を作るが、独自の言い回しも編み出しすぎて部下はいつもひと苦労。
・凌振(りょうしん)大砲
・阮小二(げんしょうじ)…船大工。阮三兄弟の長男にして大黒柱。弟たちに助け舟を出すよりも出されることの方が多かった。
・趙林(ちょうりん)…阮小二の弟子。not 108星。船大工の見習いをしているが、梁山泊こども賭博倶楽部の胴元をしているとかいないとか。

・白勝(はくしょう)
…コミュ障揃いの職人の中でひときわ光を放つコミュ充。その光は白勝の気苦労と共にあるのを忘れてはならない。

33.
湯隆「凌振」
凌振「どうした。良い大砲のアイデアでも出たのか?」
湯「違う」
凌「じゃあ黙れ。大砲の邪魔だ」
湯「俺も話すのは得意ではないが」
凌「なんの話だ?大砲か?」
湯「お前はもう少し人の話を聞いた方が」
凌「大砲の話しか聞かん」
湯「」

湯「どうにかならんか」
白勝「俺に振る?」

白「凌振」
凌「白勝?」
白「大砲の話だ」
凌「おう」
白「大砲も打ち所があるんだろ?」
凌「うむ」
白「湯隆も大砲の時と鉄を打つ時があってな」
凌「鉄は知らん」
白「大砲は鉄じゃねえか」
凌「確かに」
白「だから湯隆の鉄の話は聞いてくれ」
凌「分かった」

湯「お見事」
白「なんか奢れ」

・湯隆…白勝の誰とでも仲良くやれるところは見習いたいよ。
・凌振…それで大砲の鉄はいつできるのだ?
・白勝…安道全と同レベルがまだいたとは…

34.
趙林「楊令?」
阮小二「そんな小僧がいるらしい。会ったことはないが」
趙「すると俺の後輩になるわけか」
阮「そうだな」
趙「何を教えてやろうか」
阮「舟の漕ぎ方か?」
趙「酒、博打、女」
阮「責任者出てこい」

阮「女はやめておけ、自己解決してそうだ」
趙「一番自信あるのに」
阮「…」
趙「親方は楊令にあったら何を教えるんですか?」
阮「俺は、やはり舟のことかな」
趙「でしょうね」
阮「生意気な」
趙「俺は」
阮「もう聞いた」
趙「酒、博打、親方」
阮「俺?」

・阮小二…責任者の阮小七にお灸をすえた。飛び切りのやつ。
・趙林…親方の若いころはやばかったって、小七兄さんが言ってましたけど…

文治省

文治省…文系ゾーン。1日1刻(30分)の運動を推進しているが、軍人がベースのハードな運動ではなく、もっと負荷の低い運動を教えてほしいというクレームが。

人物
・蕭譲(しょうじょう)
…偽造の名手。匿名でQRコードの偽造依頼が届き、試したところ済州の妓楼のHPに飛んだ。
・金大堅(きんだいけん)…ハンコ屋さん。彫り物が得意。ハンコの納品間近になると柄が悪くなるが、部下は金大堅のはんこー期と呼んでいる。

35.
蕭譲「おい、金大堅」
金大堅「どうした蕭譲、そんな太い声を出して」
蕭「私は秦明だ」
金「随分と干からびた秦明殿だな」
蕭「なんだと」
金「怒鳴るな蕭譲。喉を壊すぞ」
蕭「もういい、帰る」
金「…秦明の手紙が書けんのか?」
部下「形から入らないと気分が乗らないそうで」

・蕭譲…結果、出会ったこともないのに、秦明の一挙一動を完コピして本人に見せた。
・金大堅…判子ばかり掘るのも飽きたな…

兵站

兵站…ごはんから日用品までの物資のチャージを担当するセクション。荷台や袋が重すぎるから、腰のコルセットは必需品。

人物

・柴進(さいしん)…歯車が少し違ったら皇帝だったかもしれないセレブ。そんな人に金銭管理の責任者やらせて大丈夫?
・蔣敬(しょうけい)…そろばん上手。アナログ勘定が得意すぎて、デジタル化の波に乗り切れていない。
・李立(りりつ)…消去法で兵站に回された。集めるより作る方が得意だとは本人談。

・裴宣(はいせん)…梁山泊事務責任者。鉄面のようなポーカーフェイスだが、嫁の前では緩みまくる。扈三娘のガードの方がよっぽど固いと嫁のS氏は語る。

36.
李立「柴進殿からの補給リストだ」
蔣敬「相変わらず多いなあ」
李「裏まで読めよ」
蔣「いつも思うが」
李「なんだ」
蔣「柴進殿が兵站の頭ってのは、どう考えてもミスキャストだろ?」
李「正直そう思う」
蔣「なんだ末尾の中東の織物とか、西洋の葡萄酒とか」
李「ガチセレブだもんな、柴進殿」

李「でもまあ、あれだな」
蔣「?」
李「西洋の葡萄酒は2,3本多くてもばちは当たらんよな」
蔣「…織物も多少予備があって困る代物ではない」
李「…」
蔣「…」
李「出世したな、俺たち」
蔣「だな」
李「極貧時代に食ってた代物なんかなあ」
蔣「働かないで食う飯もだんだん不味くなるぞ」

・蔣敬…この辺は裁量の範囲だよな。
・李立…そうでもねえと、やってらんねえからな。

37.
柴進「最近呉用殿の面白くもない冗談が面白くてな」
裴宣「それは?」
柴「汗にまみれているな、と指摘した時のこと」
裴「はい」
柴「呉用殿曰く」
裴「…」
柴「兵の調練をしていたのだ」
裴「…」
柴「面白くないだろう?」
裴「逐一覚えている柴進が面白い」

柴「私くらいのセレブになると、面白くないものにこそ、面白さを感じてしまう様になった」
裴「拗れたな」
柴「もはや私の面白いは、お前たちの面白くないで、お前たちの面白いは私の面白くないなのだ」
裴「じゃあ、史進の裸芸は」
柴「あれはつまらん」
裴「つまらんはあるのか」

・柴進…彼のご先祖様は柴栄と言い、全国統一直前に若くして病死したんだって。その結果子孫が山賊の勘定奉行になるんだから、人生って分からないよね?
・裴宣…はたから見ると、柴進の笑いのツボは幼いけどな。

塩の道

塩の道…梁山泊の金稼ぎ部門。ただ同然で腐るほどとれる海の塩をぼったくり価格で売っていたから、塩は国有品だったんだよ。

人物
・盧俊義(ろしゅんぎ)
…闇塩の首魁。でかくて太っている。筋肉もすごかったがいかんせん脂肪に包まれつつある。
・燕青(えんせい)
…彼の背中には綺麗な鳳凰の刺青があるらしい。めったに見せないけど。
・蔡福(さいふく)
…中年・恰幅が良い・小柄・女性経験無・インドア派・内気・粘り強い。仕事は抜群だが職業柄地味すぎる。陽キャラへの呪詛がエネルギー源。
・蔡慶(さいけい)
…中年・痩身・高身長・女性経験有・アウトドア派・陽気・見切りが早い。仕事は兄に頼りがち。兄の呪詛が巡ってくる日も近い。

38.
蔡慶「なあ兄貴」
蔡福「…」
慶「たまには陽の光でも浴びないと…」
福「…」
慶「仕事をする引きこもりって感じだぞ」
福「…どうせ」
慶「どうせ?」
福「俺たちのような地味な兄弟の地味な話を投稿したところで、誰もいいねせんだろう?」
慶「そういうキャラ?」

福「我らの仕事など誰も見向きもせん」
慶「裏方だからな」
福「林冲だの公孫勝だの、華々しい奴らだって俺らがミネラルを補給しなければ汗もかけん」
慶「言い方」
福「林冲一日分の汗に、我らの想いがどれだけ染み込んでいると思う?」
慶「林冲は兄貴のような脂汗はかかん」

福「梁山泊に塩が無くなってみろ?」
慶「極端だな」
福「朱富の饅頭は味が無くなり」
慶「素材の味はするぞ」
福「盧俊義様は優しくなり」
慶「ん?」
福「燕青の野郎は無職になり露頭に迷うのだ」
慶「ほんと燕青嫌いだな、兄貴は」

・蔡福…日陰者が直射日光を浴びると雲散霧消してしまうのだ。
・蔡慶
…皮下脂肪にそんな性質あったかな?

39.
盧俊義「闇塩の道について子供たちに啓蒙普及活動を執り行うよう、宋江殿から指令が出た」
蔡福「犯罪なんですけど」
盧「我々の綿密なマーケティングの結果」
福「犯罪ですけど」
盧「着ぐるみで演劇をするのが良いとの結論が出た」
福「犯罪」
盧「早速取り組んでくれ」
福「犯罪」

蔡慶「どんな劇をやればいいんで?」
盧「話が分かるな、蔡慶」
福「…」
盧「蔡福は豚の着ぐるみ、蔡慶はきりんの着ぐるみを着てくれ」
福「豚…」
慶「お話は?」
盧「後は任せる」
福「着ぐるみは…」
盧「変えてはならん」
福「え?」
盧「着ぐるみ以外はお前らの自由だ」
福(何だこの縛りプレイ)

燕青「…よろしく頼む」
福「チッ」
慶「見事な着ぐるみだな」
燕「盧俊義様が侯健にわざわざ作らせた特注品だ」
慶「金掛けてんな」
燕「お前らの身体の寸法に合わせて作ったのだが」
福「ああ。忌々しいほどのジャストフィットだ」
燕「くっw」
慶「www」
福「ぶち殺すぞ」

燕「豚ときりんが闇塩の道について解説するストーリーだ」
福「調達するまでの苦労は?」
盧「カット!」
福「飛竜軍と青蓮寺の血で血を洗う争闘は?」
盧「カット!」
福「盧俊義様。これでは何も伝わりません!」
盧「子供に血なまぐさい話を見せられるか!」
慶(何だかんだで真面目だなあ、兄貴は)

慶「塩ってしょっぱいぞ!」
盧「名演だ。蔡慶」
福「涙もしょっぱいぞ」
盧「脂汗だろ」
福「︎」
慶「…塩ってどこで取れるのイケメン兄さん?」
燕「塩は海で取れるのさ」
福「母なる海は万物の命を育むんだぜ」
盧「カット!」
福「何故?」
盧「言葉が難しい!」
福「しかし…」
慶(ようやるわ)

・盧俊義…パワハラではない。アイデアを共有したいだけだ。
・燕青…与えられた仕事はそつなくこなすが、アドリブの寸劇では脆さを露呈した。
・蔡福…仕事のエンジンが一度かかると盧俊義をも凌駕する完成度を要求する。
・蔡慶…座右の銘は適当。口が裂けても盧俊義と兄には言えない。

40.
蔡慶「宋江殿からビデオが届いた」
蔡福「このご時世VHSもなかろうに…」
慶「そしたらそもそも、俺たちの部屋にTVがあることを突っ込まねえと…」
福「梁山泊といっしょ?」
慶「宋の子供達を入山させる子供番組を作成した。見てくれ」
福「梁山泊も宋にプロパガンダを仕掛けていくのか」
慶「いや、もしかすると」
福「?」
慶「宋江殿は純粋に子供達に見てもらいたいのではないかな」
福「たちが悪すぎる」

福「始まった」
宋江「良い子のみな!おはよう」
福「良い子は梁山泊に入らん」
慶「www」
宋「歌のおにいさんの宋江だ」
福「楽和では無いのか」
楽和「うたのおねえさんの楽和よ」
慶「かわいいな」
福「可憐だ」
宋「それでは歌を歌おう」
福「酒を持ってくる」
慶「つまみは俺が」

福「楽和のパートが際立つな」
慶「宋江殿は?」
福「中の下」
宋「体操のおにいさんを呼ぼう」
戴宗「よう」
福「戴宗はおっさんではないか」
楽「体操のおねえさんも来て!」
楽大娘子「はーい!」
福「おねえさん…」
慶「おねえさん…」

福「やたら淫らな体操だったな」
慶「子供に見せられん」
宋「最後に替天行道を暗唱しよう」
福「お前言えるか?」
慶「2ページくらい」
宋「…」
福「…」
宋「…」
福「始まらんな」
宋「…替天行道は皆の心にある」
慶「は?」
宋「また来週!」
慶「作者じゃないの?」
福「冒頭から忘れてるとは」

・蔡福…一仕事終えるたびに激痩せするが、たまの休日で激太りしている。
・蔡慶…近場の飯屋で理不尽な悪口を言われてブチ切れだが、宋国宰相蔡京(さいけい)のことだったので平謝りした。

梁山泊と一緒 キャスト
・宋江
…梁山泊首領ポワポワ派。やる事なす事全て善意から始まっているから、無下にできないけどすごく困る。
・楽和…歌のおねえさんを引き受ける代わりにギャラを上乗せしてもらった。
・楽大娘子…楽和の姉ちゃん。女性陣全員にオファーを蹴られ仕方なくオファーしたところ、ホスト通いで金策に困っていた事もあり快諾した。
・戴宗…酒場でイキっている所を宋江にスカウトされた。足がめちゃくちゃ速いが、体操では活かせない。

顧大嫂のお店

顧大嫂のお店…名物の焼饅頭はガッツリ食べたい兵隊の胃袋を支えている。肉まんをごま油で両面焼くだけで倍美味くなるんだなこれが。

人物
・顧大嫂(こだいそう)…梁山泊女傑トリオの一角。武芸と腕力が自慢。索超に腕相撲で勝ってしまった。
・孫新(そんしん)
…顧大嫂の旦那。顔は良いけど痩せっぽち。お得な話に目ざとく、顧大嫂も買い物前に頼りにしている。

・扈三娘(こさんじょう)
…梁山泊女傑トリオの一角。もうちょっと角が取れたら仲良くなれそうとは、女傑トリオ最後の一角、孫二娘は言う。
・孫立(そんりつ)…孫新の兄。双頭山の将校。流され体質は違う世界でも共通。

41.
扈三娘「顧大嫂殿」
顧大嫂「おや、扈三娘かい」
扈「折り入って相談が」
顧「新しい男の話かい?」
扈「実は」
顧(平気でスルーするからね、この娘は)
扈「体重を増やすにはどうすれば良いのかお尋ねしたく」
顧「は?」
扈「顧大嫂殿のように太るにはどうすれば」
顧「絞め殺すよ。扈三娘」

顧「食って寝れば嫌でも太るさ」
扈「調練でみるみる痩せてしまって」
顧「林冲の調練はさぞかし痩せるだろうねぇ」
扈「そうなんですよ。顧大嫂殿」
顧「私も参加してみようか」
扈「お勧めですが、顧大嫂殿が乗れる馬があるかどうか」
顧「ナチュラルに冗談を嫌味で返すんじゃないよ」
扈「?」

扈「顧大嫂殿が乗れる生き物」
顧「話がずれてないかい?」
扈「熊」
顧「私をなんだと思っているんだい」
扈「象」
顧「母大虫が乗るなら虎がいいね」
扈「母大虫は虎なのですか?」
顧「なんだと思ってたんだい?」
扈「団子虫の大きい奴か何かかと」
顧「そろそろ面に出よう、扈三娘」

・顧大嫂…審判を頼むよ、孫二娘。
・扈三娘…力なら敵いませんが、技なら負けません。

42.
孫新「兄者」
孫立「なんだ」
新「あのふくよかな顧大嫂が」
立「どうした」
新「痩せてしまった」
顧大嫂「驚きだね」
立(誤差だろう)
顧「痩せちまったよ。義兄さん」
立「ああ」
新「顧大嫂が痩せた理由を知りたくないか?」
立「別に」
顧「あたしが痩せたのもこれのおかげさ!」
立(この流れは…)

顧「激痩せくん!」
新「健康的にみるみる痩せて、獣のような目になる優れもの!」
立「みるみる痩せるのは病だ」
新「宋国認可の牛のマークの製薬会社だから、安心!」
立「薛永の認可は出ていないのか?」
新「今なら天地の気を吸収する首飾りも付いてくる!」
顧「どうする、義兄さん?」
立(獣だ)

呂牛「聞煥章。お前の天敵から確実に避けられる道具を売ってやろうか?」
聞煥章「いらん」

・孫立…弟夫婦のゴリ押しに根負けし、1ケース買わされてしまった。その刹那、遠い世界の自分とシンクロしたという。
・孫新
…顧大嫂が好きすぎる旦那。兄でノルマを達成したので、本格的に脱会を進める予定。
・顧大嫂
…いささかミーハーで、一度使って使わなくなった代物は孫新の部屋にてんこ盛り。

・聞煥章
…とある事情で太った女性がトラウマになってしまった。扈三娘が太ったらどうしようと悩んでいる。
・呂牛…片足が義足の牛がトレードマークの製薬会社代表。顧客リストに李富の名を見つけ爆笑。

三兄弟

三兄弟…魯達、武松、李逵の三兄弟。多分こいつらだけで100人秒殺できる。

人物
・魯達(ろたつ)
…片腕を無くしても、自身の両腕とも言える弟分二人を抱えている兄貴。その弟分も腕が二本あるから実質腕は五本ある。
・武松(ぶしょう)…無口で喋らない分、想像力は豊か、だったら良いな。
・李逵(りき)…武松を堕落させる弟分。目覚まし、料理、洗い物、寝床作り、洗濯、裁縫を担当。見事すぎるお袋っぷり。

43.
魯達「関勝はお前より子どもだったな」
李逵「そうだよ、大兄貴」
魯「じゃあ林冲は?」
李「俺よりバカ」
魯「公孫勝」
李「俺より凶暴」
魯「呉用」
李「俺より迂闊」
魯「燕青」
李「俺より鈍感」
魯「宋江殿」
李「俺よりピュア」
魯「武松」
李「俺より間抜け」
武「なんだと」
魯(的を射ている)

魯達…じゃあ俺は?
李逵…俺よりえぐい!
武松…的を射ている…

雄州

雄州(ゆうしゅう)…商店街のおばちゃんたちから大人気の関勝が将軍を務めるエリア。

人物
・関勝(かんしょう)
…子ども。戦と武術は半端ない、どうしようもない子ども。
・郝思文(かくしぶん)…苦労人。もともと苦労してたが、関勝の副官という特大の貧乏くじを引いてしまった。

・魯達(ろたつ)…関勝とオセロをしたら完勝した。
・李逵(りき)
…関勝とばばぬきをしたら完勝した。

44.
李逵「やい、関勝」
関勝「なんだ」
李「お前は俺に、俺より子どもだと言われたのを根に持っているらしいが」
関「そうだ」
李「俺より子どもが嫌とは、どういう意味だ」
関「む」
李「子どもとはなんだ」
関「それは」
魯達「哲学だな、李逵」

李「俺はお前より大人だ」
関「どういう意味だ」
李「料理が上手い」
魯「全面的に同意だ」
李「寝床も作れるし、服も繕える」
魯「嫁に来て欲しいな」
関「俺もだ」
李「それに何より」
関「む」
李「武松の兄貴の足手まといにはならないぜ」
関「つまり」
郝思文「私に当てはまりますな」
関「あー」

郝「朝きちんと起きれましたか?」
関「起きれた」
李「嘘つくんじゃねえ」
関「くそ」
郝「開封府の提出書類をきちんと出しましたか?」
関「出した」
魯「戴宗の飛脚の特別料金を出しても、三月遅れだな」
李「おい、関勝」
関「すまなかった」
郝「よろしい」
李「許すなよ、郝思文」

・関勝…提出書類の件も何とかなったぞ。
・郝思文…どうせ都が腐敗しているからでしょう。

・魯達…こいつら面白いと思わないか、李逵?
・李逵
…俺は郝思文の息子と娘の方が大人だと思うぜ、大兄貴。

代州

代州…北の国境近辺のエリア。軍人のホープ呼延灼が将軍。寒い。

人物
・呼延灼(こえんしゃく)
…意外とどんくさいところが徐々に徐々に表面化してくる。
・韓滔(かんとう)
…作者一番の推しである。こんなじっちゃんになりたいなぁ。会いたかったら10巻までがんばって!

・李逵(りき)
…料理本の出版を打診されたが、契約書が読めなかった。
・韓成(かんせい)…韓滔のせがれ。二世の中でも指折りのハードモード人生だが、この頃は楽しい子供時代だった。
・穆凌(ぼくりょう)…呼延灼を父と呼ぶが、息子と認められるのはだいぶ先。

45.
韓滔「倅が夢中になっている海賊漫画があってな」
呼延灼「あれか」
韓「呼延灼は三本使うのかと聞かれたのだ」
呼「使わん」
韓「だからわしは言ってやった」
呼「うむ」
韓「呼延灼なら三本どころか四本使うと」
呼「頭をかち割るぞ、韓滔」

韓「倅が近々友達を連れて確かめに来るそうな」
呼「近々とはいつだ」
韓「昨日の明日じゃな」
呼「今日ではないか」
韓「とりあえず、納戸にあった鞭は持ってきた」
呼「貸せ、韓滔」
韓「やるのか、呼延灼」
呼「子どもの夢を壊すわけにはいかん」
韓「惚れ直したよ、呼延灼殿」

韓「おや、倅が来たようだぞ」
呼「早すぎる。時間を稼げ、韓滔」
韓「戦みたいだな」
呼「これは戦だ」
韓「分かった。わしも本気で時間を稼ごう」
呼「頼むぞ。やすりで削るのに二刻はかかる」
韓「まかせろ」

李逵「よう韓滔」
韓「李逵ではないか」
李「今日の飯はまかせろ」
韓「李逵」
李「どうした」
韓「お前、斧を三本使って闘うことはできんか」
李「試してみようか?」
韓「倅に見せてやってくれんかのう」
李「任せておけ」

穆凌「父上。その口は…」
呼「悔しさと鞭を噛み締めていたのよ」

・呼延灼…双鞭を三鞭にしてやろうか…
・韓滔
…顎と首が強くなったのう。

・李逵
…意外とできるもんだな!
・韓成…父上の棗の棒は長すぎてダサいんだよな。
・穆凌…一度だけ食べた李逵の料理の味が忘れられない。

チーム張清

チーム張清…ゆかいな傭兵軍団。色々投げたり飛ばしたりするのが好きな連中が集まっている。

人物
・張清(ちょうせい)
…石を投げれば百発百中。仕事の依頼もよく投げるのがたまに傷。
・龔旺(きょうおう)…身体にトラの刺青がある。だからなんだと言われても困る。
・丁得孫(ていとくそん)…元山賊。あばた顔をあだ名にするのはいじめではないか。

・瓊英(けいえい)…梁山泊美人番付裏横綱。張清ごときでは彼女の真のポテンシャルを引き出すことはできない。
・鄔梨(うり)…瓊英の養父。瓊英のポテンシャルをくまなく引き出せる男は梁山泊にもいなかった。張清は滑り止めの滑り止め。

46.
張清「いやー楽しかった」
龔旺「どうだった?」
丁得孫「やったか?」
張「やはり瓊英は素晴らしい」
丁「やったのか?」
張「おう、やりまくりだ」
丁「マジか」
張「彼女をリードするのがこれほど楽しいとは」
龔「…リードしたのか?」
張「素質はあると思ったが、これほどとは」
龔「…」
丁「…」

張「十刻はやってたなあ」
丁「絶倫か」
張「彼女の下半身の使い方を指導したら、みるみる上達して」
丁「参った」
張「これほど楽しいキャッチボールは久しぶりだ」
龔「だよな!」

鄔梨「どうだった、瓊英」
瓊英「張清様に下半身の使い方を指導してもらいました」
鄔「」

・張清…彼女は下からいくんだ。
・龔旺…アンダースローって言えよ、張清殿。
・丁得孫…レーザービーム送球に自信あり。

・瓊英…張清殿は上から攻めてこられるんです。
・鄔梨…オーバースローと言え、瓊英。

47.
張清「俺たちは投擲武器が持ち味だが」
龔旺「槍」
丁得孫「飛叉」
張「他に投げる武器はないか」
龔「というと?」
張「石だとダメージは大きさによる」
丁「ふむ」
張「もっと安定した武器はないか」
龔「飛刀は?」
張「飛刀は嫌だ」
龔「何で?」
張「手を斬りそう」
丁「軍人が何言ってやがる」

張「飛刀はキャラが被るからやめておこう」
龔「キャラ?」
丁「銭とかどうだ?」
張「銭」
丁「銭なら形が一緒だろ」
張「一理ある!」
丁「没羽銭」
張「金に糸目つけなさそう!」
丁「どうだ、龔旺」
龔「それは張清が次の仕事を見つけてからだ」
張「あー」
丁(俺も食費を博打でスったばっかだ)

・張清…飛叉一本でいいのか、丁得孫?
・龔旺…飯にしようぜ。
・丁得孫…ちょっとさっきぶん投げた飛叉を取ってくる。

子午山

子午山(しごさん)…王進先生が立ち上げた新進気鋭のならず者更生施設。王進先生の厳しい修行も王母様の美味しいご飯でチャラ。

人物
・王母(おうぼ)…満場一致で北方水滸伝ワールド最強お母さん。王母様の前に立ったら逆らうという言葉が脳裏から裸足で逃げ出す。
・王進(おうしん)…行間で存在感を醸し出す、北方水滸伝ワールド最強師匠。極めるものを極めた結果、不器用まで極めてしまった。
・鮑旭(ほうきょく)…色々あって王進のところにぶち込まれた盗賊。娑婆とは違う独自法規に満ち満ちた子午山で人間に戻る途中。水滸伝一巻の名場面の一つである。

48.
鮑旭「母上」
王母「どうしました、鮑旭?」
鮑「王進先生が」
母「進が?」
鮑「畑を耕すのを、やめません」
母「分かりました。進のところに行きましょう、鮑旭」
鮑「はい、母上」
母「死域は初めてですものね」
鮑「?」
母「進!」
鮑「︎」
母「進で困ったら私を呼びなさい」
鮑「鳥が、落ちました」

・王母…息子を死域から覚ます技を様々会得している。
・王進…覚めた。
・鮑旭…この日は鳥肌と全身のわななきが止まらなかった。

北方水滸用語集
・死域…自分の身体が自分のものでないようによく動くが、そのまま動き続けると死ぬ。現代語ではゾーンやフロー、ランナーズハイが該当。王進先生は何をするにも死域に入りがち。

青蓮寺

青蓮寺(せいれんじ)…梁山泊と戦う頭脳派集団。蹴鞠を奨励したところ、職員の顔色が良くなってきた。

人物

・聞煥章(ぶんかんしょう)…李富しか友達がいないせいで、蹴鞠のパスが李富からしか回ってこない。
・呂牛(りょぎゅう)
…聞煥章を裏で操る情報屋。困ってる聞煥章は大好物。

・趙安(ちょうあん)
…宋禁軍のアイドル(自称)。若いっちゃ若いけど、アラサー折り返し地点。宋の広告でよく起用されるが、白すぎる歯が目障りというクレームが寄せられた。

49.
聞煥章「蹴鞠部が仕事になってしまった」
呂牛「聞煥章」
聞「あれは?」
呂「劇の様だが」
聞「くだらん」
呂「甘いぞ聞煥章」
聞「?」
呂「あの豚の演技を観ても同じことが言えるのか?」

豚「塩を運ぶのも大変だブー」

聞「豚が塩を運んでいるだけではないか」
呂「これだから頭だけの素人は」

呂「塩の担ぎ方」
聞「ふむ」
呂「体重ほどある袋を、足腰と腕力を巧みに使い軽々と持ち上げている」
聞「本当か」
呂「豚の歩みも乱れが全くない」
聞「演技だろ?」
呂「演技の中に過酷な仕事に基づいた確かな技を持っている」
聞「どうでもいい」
呂「これを見逃すのは後悔するぞ」
聞「くだらん」

呂「これは」
豚「塩を持って逃げるブー」
麒麟「わー」
呂(塩を持って逃げるという状況。塩の密売か?)
豚「おいらの奥義で竜を呼ぶブー」
呂(竜が飛ぶ…飛竜軍か!)
麒「蓮の花が散っていく」
呂(青い蓮…青蓮寺!)
豚「こうやって運ばれた塩が、皆のお家に届くのだブー」
呂(なんなのだ、これは)

豚(あのガン見している爺はマークしておけ)
麒(青蓮寺の間者か?)
豚(良いリピーターになる)
麒(ああ、うん)

聞煥章…蹴鞠にはまり義足に刺青を入れようとしたが歩行に支障をきたすと彫物師に止められた。
呂牛…演劇鑑賞という柄ではないが、人を騙す仕事柄、演技を参考にしているとか。

…見る人が見れば胸を熱くする熱演を見せたが、子供たちの人気は全部燕青に持ってかれた。
麒麟…もう辞めね?

50.
趙安「禁軍をフレッシュにしたい」
聞煥章「フレッシュ?」
趙「童貫元帥、宿元景将軍もお歳を召されている」
聞「それで?」
趙「齢35のフレッシュ趙安が、禁軍の若返りを図る」
聞(笑ってないで助けろ、呂牛)
趙「精鋭禁軍も若返りは必要だろう、聞煥章」
聞「若作りもほどほどが良いと思う、趙安」

趙「若作りではない!私は若いのだ」
聞(なぜこんな奴が禁軍の将軍に)
趙「フレッシュ!」
聞(殺して構わんぞ呂牛)
呂牛(‍✖)
趙「さらば聞煥章。また会おう」
聞「ズボンの丈が短すぎる」

・聞煥章…何がフレッシュ趙安だ。
・呂牛
…お前も青蓮寺のフレッシュマンではないか。

・趙安
…第9代フレッシュマン。青蓮寺と禁軍の懸け橋になるのもフレッシュマンの役割さ。

禁軍

禁軍…北方水滸伝のラストを飾る、最強の軍隊。1日が調練の単位になって久しい調練ホリックな奴でないととても務まらない。

人物
・童貫(どうかん)…ラスボス。日常調練、プライベート調練、休み調練とレパートリーにとんだ調練をあみ出し、最強の軍を作り上げた宦官。
・鄷美(ほうび)…副官。調練しながら今日はする事がないと思った時ヤバイと思ったのも昔の話。
・畢勝(ひつしょう)…副官。調練について語る調練で、調練が自分であり自分が調練だと真顔でスピーチした時は、童貫も笑った。
・侯蒙(こうもう)…童貫お付きの文官。軍費の調達とかが仕事。潤沢な資金で調練施設を作ったけれど、予算ゼロでできる調練に童貫が魅せられたため、月々の維持費に頭を抱えている。

51.
童貫「鄷美、畢勝」
鄷美「はっ」
畢勝「何か」
童「藪から棒だが」
鄷「はい」
童「お前らは調練以外の時は何をしているのだ?」
鄷・畢「!」
童(元帥たるもの部下のプライベート調練も気にかけてやらねば)
鄷・畢(迂闊な事を言うと隙を指摘されてしまう)

童「鄷美」
鄷「私は、調練以外の時は、調練の事を考えております」
童「…調練以外の時も、ではないか?」
鄷「!」
童「畢勝」
畢「私も、調練以外の時も、調練をしています」
童「調練をしているではないか、畢勝」
畢「!」

童「鄷美、畢勝に命ずる」
鄷・畢「…」
童「調練以外の時は調練以外のことを行う調練をせよ」
鄷・畢「はっ!」
童「お前らも軍の調練が思考の土台になっていると思うが、調練を行わない調練も怠るな」
鄷・畢「はっ!」
童「…何がおかしい、侯蒙」

・童貫…調練から離れる調練中。
・鄷美…調練を忘れる調練中。
・畢勝…調練以外のことを行う調練中。
・侯蒙…調練をNGワードにしたくて仕方がない。

元ネタ!
水滸伝

twitterにて連載中!

ご意見ご感想(クレーム)、リクエスト等、こちらまで!

今月号もお読みいただきありがとうございました!



中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!