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小紅は胸も尻も大きいのに、なぜエッチな感じがしないのか?|『未確認で進行形』(3)

 本記事は、アニメ「未確認で進行形」を徹底分析する特集の……第3回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 前回、「小紅の人となり」と「彼女が何事にも消極的な理由」を詳しく考察した。


 今回も引き続き……小紅!

 テーマは、「小紅は胸も尻も大きいのに、なぜエッチな感じがしないのか?」である。


※左:小紅。


【問】小紅は胸も尻も大きいのに、なぜエッチな感じがしないのか?


 前回ご紹介した通り……小紅は胸も尻も大きい

 つまり、「巨乳安産型」だ。


※公式サイトのキャラ紹介欄にも、「巨乳安産型主人公」と記載されている(なかなかインパクトのあるキャラ紹介である)。


※作中、彼女が下着姿になることはない。……が、脱ぐとこんな感じ。


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 さて!

 前回の議論をざっくり整理してみよう。



 ただ、改めて考えてみると……「胸や尻が大きいこと」と「良妻賢母であること」は必ずしも結びつくわけではない。

 と言うかむしろ一般的には、胸や尻の大きなヒロインは「グラマー」、「セクシー」なぞと呼ばれ、エッチな雰囲気が漂っているものではないだろうか。


 ところが、である。

 小紅は確かに胸も尻も大きいのだが、ほとんどまったくエッチな感じがしないのだ。

 一体なぜだろうか?


「乳袋」とは何か?


 アレコレ考えたり調べたりしている内に、大変面白い記事を見つけた。


 一部引用しよう。


※注:以下の引用文中の「藤原」は本作の監督・藤原佳幸氏のこと。また、「菊池」はキャラデザ担当の菊池愛氏のこと。

藤原 僕の中でも、菊池さんの中でも、一番こだわっていたのは小紅の胸ですね。
――その話、ぜひ聞きたかったんです。小紅の「巨乳安産型」なスタイルの表現が素晴らしいですよね!
藤原 いわゆる「乳袋」、胸の谷間などのラインを服の上にも描くやり方は、すごく優れた表現方法だと思うんです。でも、この作品ではそれを使わず、もう少し生っぽく描きたかった。その制限がある中、服の上からでも胸の大きさが分かり、なおかつ太っては見えないようにする。そんな無理難題をお願いしました。最終的に、特注の服のように形から考えて、シワのつけ方などにもすごく気を使いながらデザインしていただきました。しかも、「安産型」と言われているからにはお尻を大きくする必要がある。
――小紅は、胸とお尻が大きくてもグラマーな印象は受けません。そのバランスが絶妙だと思います。
藤原 ウエストをどのくらい絞って、どう描くのかもかなり悩んで頂きました。


 藤原氏が理想とした「小紅のキャラデザ」……それは、以下のように整理できるだろう。

 すなわち、「服の上からでも巨乳だとわかり、かつ太っては見えないデザイン。ただし『乳袋』の使用は禁止」!


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 ところで……その「乳袋」とは一体何なのだろうか?


 簡潔にご説明しよう。

 「乳袋」とは、普通の服を「まるでボディスーツのように体にぴったり張り付いたもの」として描く技法である。

 服に「胸の形をした袋」が付いているように見えることから、「乳袋」と呼ばれる。


 「乳袋」を採用するメリットは明確だ。

 「乳袋」を使うと、服の上からでも「胸全体の形」や「ウエスト」がハッキリ見える。

 つまり、「巨乳だが、太ってはいない = ナイスバディ!」であることが一目で理解できるようになるのだ。


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 私たちが生きる現実の世界では、ボディスーツや水着を除く「普通の服」は、体にぴったり張り付いたりはしない。

 したがって、「服の上からでも『胸全体の形』や『ウエスト』がハッキリ見える」なんてことはない。


 ところが、である。

 この現実世界の物理法則、すなわち「普通の服は、体に張り付いたりしない!重力に沿ってただ垂れるのみ!」に則って巨乳キャラを描くと……大きな胸に引っ張られて生地が持ち上がるため、ウエストのあたりが太って見えてしまうのだ!


 このように……「乳袋」とは、「巨乳だが、太ってはいないキャラ」を描くための技法なのである。


なぜ小紅には「乳袋」がないのか?


 以上、「乳袋」の実用的な価値をご紹介してきた……が!

 「乳袋」にも欠点がある。


 めったやたらと胸が強調され、「セクシーでエッチな感じのキャラ」になってしまうのだ。


 したがって、「巨乳だが太ってはいない。かつ、セクシーでもないキャラ」を描く時には「乳袋」は適切ではないということになる。


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 さて!

 ここで改めて本作の監督・藤原氏の理想の「キャラデザ」を確認しておこう。

 藤原氏が「小紅のキャラデザ」に求めたこと、それは……「服の上からでも巨乳だとわかり、かつ太っては見えないデザイン。ただし『乳袋』の使用は禁止」。


 一体なぜ「乳袋」を禁止したのか……もうおわかりだろう。


 そう!

 小紅が、セクシーなキャラではないからだ。

 小紅は「良妻賢母」型のヒロインだ。露骨にエロくては困るのだ。


小紅の巨乳はどのように描かれたのか?


 そもそも「乳袋」が、「服の上からでも巨乳だとわかり、かつ太って見えないようなデザイン」を実現するために誕生したしたものだということを考えれば、それを捨てて新たな技法を探求するという今回の試み……これは「プロジェクトX」に匹敵する挑戦的取り組みであり、「プロジェクトH」なんて呼んで然るべきだと思うのだがそれはさておいて!

 「服の上からでも巨乳だとわかり、かつ太っては見えないデザイン。ただし『乳袋』の使用は禁止」という難題は、いかにして達成されたのだろうか?


 私はデザインやイラストに関してはまったくの素人なので、素人目線で気づいた範囲の話になるが……例えば、前掲の引用文中にもある「シワのつけ方」に注目してみたい


 改めて小紅をじっくり見ると、彼女の腹のあたりに、頻繁に「深いシワ」と「シワによってできる影」が描かれていることに気づく


※腹まわりのシワと影にご注目!


 ところで、小紅は普段濃紺の制服を着ている。

 つまり、「濃紺の制服」に「黒っぽいシワと影」……目立たないのである。

 この「目立たない」というのが重要なのだろう。


 要するに、「腹にあたりに『黒っぽいシワと影』があるため、巨乳で、かつ太っていないことがわかる。しかも、『乳袋』ほど胸が強調されることもない」というわけだ。


【結論】「乳袋」がないから!


 最後に、本記事全体を振り返っておこう。

 冒頭の問いは……「小紅は胸も尻も大きいのに、なぜエッチな感じがしないのか?」


 本記事では、この問いに答えるべくキャラデザに注目した。

 つまり……「『乳袋』を使用しないなど、セクシーになりすぎないように配慮されているから」である。


 そしてこの結果、小紅は「巨乳だが、太ってはいない。かつ、セクシーでもないキャラ」……まるで「ママ」のような包容力のあるキャラになり得たのである!


【補足①】「乳テント」と「乳カーテン」


 本記事では「『乳袋』の代わりに、『黒っぽいシワと影』が活用されている」と申し上げたが……より一般的には、「乳袋」の代替手段として「乳テント」や「乳カーテン」と呼ばれる技法が採用されることが多いようだ


 この視点から改めて小紅を見ると……「小紅のキャラデザには、ゆるめの『乳テント』+『黒っぽいシワと影』が使われている」と言えるように思う。


【補足②】ファンアートにおける違和感


 「未確認で進行形」のファンアートを見ていると、小紅のデザインに少なからぬ違和感を覚えることがある。

 原因は……そう!

 「乳袋」が描かれているのだ!


 特にエロイラストやエロ同人誌の場合、「乳袋」を描きたくなる気持ちはわかるのだが……やっぱり違和感があるなぁと思った次第である。



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(担当:三葉)

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