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大阪らしいラノベって何だ?|「国内の地名」が付くタイトルの研究(6)

7秒でわかる本記事の要点


「タイトルに『岐阜』が付くラノベ」(1冊)をご紹介。

「タイトルに『大阪』が付くラノベ」(8冊)をご紹介。大阪らしい強烈な個性を持った作品群を詳しくご説明する。


概要


 本記事は、1975~2018年の44年間に刊行されたラノベの内、「国内の地名」が付くタイトルをピックアップ★徹底分析する特集「『国内の地名』が付くタイトルの研究」の……第6回である!


※注:「『国内の地名』が付くタイトル」とは、例えば以下のような作品を指します。


<特集全体の目次>


第1回:タイトルに「都道府県」が付く作品と、「妹」が付く作品、どちらが多いと思う?

第2回:「秋田県でも恋がしたい!」

第3回:「北海道」ラノベは(大体)Eat or Fight !!

第4回:「全47作★全ての都道府県を網羅したご当地ラノベシリーズ」っていかがでしょう?

第5回:ニンジャ v.s 絶世のブス……あなたはどちらがお好み?

第6回(本記事):大阪らしいラノベって何だ?

第7回:京都を舞台にしたラノベを執筆するあなたのためのパーフェクガイド★

第8回:「奈良」ラノベを志すあなたには、「京都」ラノベが参考になるかも

第9回:【総まとめ】「タイトルに『国内の地名』が付くラノベ」のススメ


第1回からご覧になることをオススメします★


ここまでの振り返り


三葉「さて」

清水「はい」

三葉前回、『埼玉・東京』が付くタイトルをご紹介しましたが……」

清水「ええ」

三葉「あれをもって東日本は終了!今回から西日本に突入いたします」

清水「ほぉ」

三葉「……といったあたりを地図にまとめてみました」



「岐阜」タイトルを見てみよう★


三葉「さて、西日本の一発目は……『岐阜』!

清水「はい」

三葉「まずはいつも通り、『岐阜』が付くタイトルの一覧表を見てみましょう……こちら!」



清水「ほぉ……1冊だけなんですね」

三葉唯一無二の『岐阜』タイトルということでね、『岐阜』の書店のみなさん、あるいは岐阜県庁のみなさんには、ぜひ本作を大々的に取り上げていただければと思いますが」

清水「ふむ」

三葉「以下、『江姫 ~乱国の華~ 中 岐阜宰相の妻』の内容をざっくりご紹介しましょう」


三葉「これは、安土桃山時代~江戸時代初期の人物・江姫(ごうひめ)の生涯を描いたシリーズの2作目です」

清水「ふむふむ」

三葉「日本史に詳しい方はご存知かと思いますが……江姫というのは、『江(ごう)』、『崇源院(すうげんいん)』といった名でも知られる女性で、

・父は浅井長政

・母は織田信長の妹

・姉は茶々(豊臣秀吉の側室)

・生涯に3度婚姻関係を持っており、2度目の相手は豊臣秀勝(秀吉の甥っ子)、3度目の相手は徳川秀忠(江戸幕府2代目将軍)

・息子は徳川家光(同第3代将軍)

・さらに昭和天皇の祖先でもある

……という歴史上の要人ですね」

清水「ふーむ、なるほど。……っていうか、アレですね」

三葉「どれです?」

清水「ラノベというより、歴史小説っぽくないですか?

三葉「確かに。レーベルが『メディアワークス文庫』なのでラノベに振り分けられますが……そうですね。歴史小説と考えた方が実態に合っているかもしれません」


「大阪」タイトルに迫る★


三葉「続いて……『大阪』!

清水「西の大都市ですね」

三葉「まずは、『大阪』が付くタイトルの一覧を見てみましょう……どうぞ!」



清水「なるほど……って、あれ?『大阪ウォーターフロント幽霊事件』って……『北海道』に『北海道幽霊事件』というのがありましたが、もしかしてシリーズものですか?」

三葉「そうなんですよ!じつはこれ、『幽霊事件』シリーズの1作なのです」

清水「ほぉ!」


※「幽霊事件」シリーズ:女子大生の水谷麻衣子が、恋人の千尋や親友の美奈子とともに殺人事件に挑む推理もの。全44冊で2001年に完結。シリーズの一部がテレビドラマ化されている。


清水「それから、『BOYSサイキック・アクション 岩手ワンダー・レジェンド』は、『BOYSサイキック・アクション』シリーズですよね?」

三葉「そうそう!」


三葉先日、この『BOYSサイキック・アクション』シリーズ、そして『ガンパレード・マーチ』シリーズは、『わが国のラノベ界を代表する<タイトルに地名が付くシリーズ>』だと申し上げました」

清水「ふむ」

三葉「じつは、『幽霊事件』シリーズもその仲間でして」

清水「ほぉ!」

三葉「以下、この3シリーズの分布を地図に落とし込んでみました……ご覧ください!」




三葉『幽霊事件』シリーズには、『北海道・東京・大阪・京都・長崎・沖縄』が付くタイトルがある……というわけです」

清水「なるほどねぇ!」


大阪らしいタイトル


清水「そういえば」

三葉「ええ」

清水「先ほどの『<大阪>タイトルの一覧』ですが……」

三葉「再掲しておきますね」



清水『BOYSサイキック・アクション 大阪タコヤキウォーズ』『タコヤキ』、それから『異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~』『お好み焼き』は、『いかにも大阪!』って感じがして面白いですね」

三葉「確かに。ここまで『その土地らしさ』が強いタイトルは珍しいかも

清水「そうそう!」

三葉「今後『タイトルに<大阪>が付くラノベ』を執筆するとして、この路線を攻めるのも一案かもしれませんね」

清水「例えば、『這いよれ! 通天閣』なんて具合でしょうか?」

三葉「何かが通天閣に這いよってきているのか、それとも通天閣が夜な夜な移動しているのかわかりませんが……うん、そんな具合です」


※注:元ネタは「這いよれ! ニャル子さん」。以下同様。


清水「それでは、『ビリケンさん@がんばらない』ってのはどうでしょう?」

三葉「ビリケンさんは『幸運の神』ですからね。できれば頑張っていただきたいところですが……面白い!」


清水『優勝を誓ったくいだおれ太郎は道頓堀に飛び込む』なんていかがです?」

三葉「改変しすぎて元ネタがさっぱりわからなくなっていますが……とりあえず大阪愛が感じられるタイトルですね。愛!」


清水「続いて、『かに道楽スレイヤー 』というのも面白いかと」

三葉「『スレイヤー』ってのは、『殺すもの』という意味の英単語ですからね。とりあえず『かに道楽』さんに謝罪した方がよいと思いますが……もし許可をいただけたら最高ですね。ユニーク!」


清水「では、『これは太陽の塔ですか?』は?」

三葉「単なる大阪観光のガイドブック、あるいは岡本太郎さんの作品解説本にしか見えませんが……ふむ。面白い」


三葉「とまぁね、キリがないのでこのあたりにしておいて」

清水「ええ」

三葉「続いて、先ほど話題にあがった『異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~』のストーリーを見てみましょう」


三葉「本作は……大阪のオバチャンが、美少女剣士として異世界に転生し、女神から託された『異世界でお好み焼きを布教する』という使命を果たすべく邁進する物語です……って、まぁ全部タイトルに書いてありますね」

清水「なるほど」

三葉「ラノベではお馴染みの『異世界転生もの』ですが……」

清水「はい」

三葉「きっちり『大阪カラー』に染め上げられているのがよいですよね。やっぱこうでなくちゃ!」

清水「タイトルに『大阪』が付いているのに、いざ読んでみると『これ……大阪でなくてもよくない?』というのでは寂しいですもんね」

三葉「でね」

清水「ええ」

三葉「要するに本作は、『大阪版の<異世界転生もの>』というわけですよ」

清水「ふむ」

三葉「それなら、『大阪以外のバージョンだってあってよいだろう』と思うのです」

清水「なるほど。『異世界転生もの』はあまりにも流行りすぎた結果、『飽き飽きした』という声も聞かれますが……」

三葉「そうですね。とはいえ、それでも出版され続け、そしてアニメ化されている。『そこには一定の需要がある』と考えるべきでしょう」

清水「ふむ」

三葉「但し、『異世界転生もの』は非常にライバルの多いジャンルです。いまから参入するには何かしらの個性が必要。そこで……」

清水「本作同様、『秋田版の<異世界転生もの>』、『岐阜版の<異世界転生もの>』なんてのがあり得るのではないかということですね」

三葉「まさに!」

清水「ふーむ……まぁ、大阪ほど『カラーの強い土地』はそうそうないわけで、その点が気になりますが……なるほど。一考の余地はありますね」

三葉「でしょ!」

清水「ええ」

三葉「さて、本作のご紹介に戻りますと……」

清水「ふむ」

三葉「ネット上のレビューを見ていたら……『押しが強く、社交性の高い大阪のオバチャンは冒険者に最適』といったコメントが散見されまして」

清水「あー、なるほどね!コミュ障気味の青年よりもよほど上手くやれるかも!」

三葉「そうそう。考えてみれば巧い設定ですよね」

清水「ふむ」

三葉「その一方で、『<大阪のオバチャン>感が強すぎて、さっぱり美少女らしくない!オレは美少女ものを読みたかったのに!!』という声もあるようで。……私はこのコメントを見た時、思わず吹き出してしまったのですが……ご本人にとっては切実な問題なのでしょうね」

清水「うーむ……『大阪のオバチャン』と『美少女』をいかに両立するか……なるほど。難題かも」

三葉「きっと両者は相反する概念なのでしょう……なんて言ったら大阪のオバチャンにぶん殴られそうですが」


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三葉「以下、残り4冊の概要をまとめておきました。どうぞご参照ください!」


大阪は踊る!

 ある日、道頓堀で石油が湧く。大阪中が盛り上がるが……巨大な利権を狙って政府も動き出す!

 主人公は大阪市役所の職員。真面目だが小心者でうだつの上がらない彼を中心に、大阪と政府の戦いを描いたコメディ。


誰でもなれる!ラノベ主人公 ~オマエそれ大阪でも同じこと言えんの?~

 大阪の日本橋を舞台にした群像劇。

 中二病の少年、魔術師の少女、地下アイドル、お笑い芸人、串カツ屋の店長、そしてヤクザなど、アレコレ混在するごった煮のエリア・日本橋らしいキャラが織りなす物語。


大阪城下 老舗ごふくや事件帖

 大阪城下の呉服屋を舞台にした物語。

 主人公は女子高生。呉服屋で店長代理を務める大学生がヒーロー役。

 なお、キャッチコピーは「名推理×関西弁×着物男子に悶絶必至のプチミステリー」。関西弁の着物男子をお好きな方はぜひ。


都市シリーズ 奏(騒)楽都市OSAKA <上下>

 川上稔氏による『都市シリーズ』の5~6作目。

 舞台は、動乱によって東西に分裂した日本。東京と大阪を中心にして、両者は対立しながらも均衡を保っていた。

 しかし大阪圏の不穏な動きをきっかけに、再び戦いが始まる……というSF作品。

 ちなみに、タイトルの「ソウ」は、正しくは「『奏』の下に『騒』が付く」作者の創作漢字(表紙の左上をよく見ると、この字が使われている)。Amazonでは「ソウ」となっているが、一般的には「奏(騒)」と表記することが多いので、ネット検索される場合などご注意ください。


 ……以上★

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)

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