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ヒバリははなこと出会い、魅力的な女の子になった|『あんハピ♪』(3)

 本記事は、アニメ「あんハピ♪」を徹底分析する特集の……第3回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 前回は、はなこのちょっと異常なほどの「ポジティブシンキング」っぷりをご紹介した。


 今回は……もう1人の主役・ヒバリ!

 彼女の「素直でない」性格に注目する。


※ヒバリ。


ヒバリは「悲恋」をしている


 「あんハピ♪」は、様々な「不幸」を抱えた女子高生たちの日常を描いた作品だ。

 そこで、まずはヒバリがどのような「不幸」を抱えているか確認しておこう。


 作中、彼女の「不幸タイプ」は「悲恋」と説明されている。

 「悲恋」とは「報われず、悲しい結果に終わる恋」のことだが……ヒバリのそれはただの悲恋ではない!

 なにしろ、彼女が恋しているのは「道路工事現場の看板に描かれたイラスト」(「オジギビト」というそうだ)なのだから


※左:オジギビトに頬を染めるヒバリ。


 なお、彼女が「看板のイラスト」に恋するようになった経緯は以下のように説明されている(第2話)。


ぼたんが頬を染めて「あの……聞いてもよろしいんでしたら……あの方のことは何がきっかけで?」

ヒバリは恥ずかしそうに俯いて「別に……これっていうきっかけがあったわけじゃなくて。……小学生のとき、登下校の途中でよく見かけてたの。最初は気にしてなかったんだけど、どんな日でもじっとたたずんで不平不満も言わず、ただ静かに頭を下げ続ける。……そんなあの人の誠実な姿を見てたら、いつの間にか……って!何言わせるのよー!!」


 ……経緯を聞いても、「看板のイラストに恋をする」というのがどういうことなのか、私にはさっぱり理解できないのだが……しかし!

 現実の世界にも、無機物に恋をして、さらに結婚する人までいるという(例えば、以下のページには、ベルリンの壁やエッフェル塔と結婚した人の例が紹介されている)。


 そう考えれば、ヒバリの「悲恋」もそう突飛なことではないのかもしれない。


【特徴①】ヒバリはしっかり者である


 続いて、ヒバリの性格的な特徴を見ていこう。

 何よりもまず、彼女はしっかり者である!


 彼女は、脳内に巨大なお花畑が広がっているはなこや、すぐに体調を崩してぶっ倒れるぼたんをリードする役を担っている。


【特徴②】ヒバリは素直でない。自分の「幼いところ」や「弱いところ」を隠そうとする


 もう1つのヒバリの性格的特徴、それは「素直でない」ということだ!


 上述の通り、ヒバリはしっかり者だが、しかし「何事も完璧にこなす超人」というわけではない。

 そして、彼女は高1。まだまだ子どもだ。

 「幼いところ」や「弱いところ」だってあるに決まっている。


 しかし!

 彼女はそれを隠そうとする。


 つまり……アニメやマンガの世界では、「一見するとしっかり者だが、じつは人一倍寂しがり屋でメンタルが脆いキャラ」を往々にして見かけるが、ヒバリはこれに該当するのだ。

 具体的には、「こみっくがーるず」の琉姫「えんどろ~」のセイラ、そして「らき☆すた」のかがみなどが比較的よく似た性格をしている。


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 さてここで、ヒバリの「素直でない」ところがよくわかるエピソードを2つご紹介しよう。


 まず、ヒバリとぼたんが買い物に出かけた時のことだ(第7話)。

 2人は雑貨店を散策する。


ピンク色のかわいらしいネグリジェを見つけたヒバリが思わず声を上げる「あっ……これは!」

ヒバリはうっとりした表情になって「わぁ!」

しかし彼女はすぐに我に返って取り繕う「ハッ!……ああっ、えっと……私には似合わないけど、はなこなら!」

ぼたんは微笑んで「いえいえ。ヒバリさんにもきっとお似合いですよ」

ヒバリは顔を赤らめて「そっ、そんなこと……」


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 もう1つ、はなことぼたんが、ヒバリの家に遊びに行ったときのエピソードを見てみよう(第9話)。


はなこ「それにしても……」

 はなこが、ヒバリの家のリビングを見回す。

 ……ピンク色の壁紙とカーテン。

 ……花柄のソファ。そしてその上にはクマのぬいぐるみと、やっぱりピンク色でしかもハート型のクッションが並んでいる。

はなこ「ヒバリちゃんち、すっごーくかわいいねぇ!」

ヒバリは頬を赤らめて「あっ、親がインテリアに無頓着な人たちだから、私が子どもの頃から選んでたのよ!少女趣味とかじゃなくて……」

はなこは満面の笑みを浮かべて「へぇ!ヒバリちゃんの思い出がたくさん詰まってるんだぁ!」

ぼたん「ピンクがお好きだったんですね」

ヒバリ「えっ、ええ。小学校の頃の話よ。いまは別に……」

はなこ「あれ?でもヒバリちゃん、よくピンクの下着着けてるよね」

ヒバリ「えっ!いつ見たの!?」

はなこ「体育の着替えの時に」

ヒバリは恥ずかしさのあまり体を震わせる「ううっ……ううっ……」


※左:少女趣味全開のリビングで、少女趣味全開のワンピースを着用し、「自分は少女趣味ではない」と言い張るヒバリ。


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 以上、ヒバリの「素直でない」ところがご理解いただけたと思う。

 さて、こうなると「一体全体、なぜヒバリはこんな性格になったのか?」ということが気になってくる。


 作中で明言はされていないが……考えてみよう!


【原因①】両親からの期待


 まず……彼女の両親は仕事で多忙だそうだ。

 いまは海外に赴任しており、ヒバリは1人で暮らしている。


 おそらく……ヒバリは、幼い頃から「ヒバリなら1人でも大丈夫よね。しっかり者だもん」、「ヒバリはしっかり者だから助かるな」なんて両親に言われて育ったのだろう

 そして子どもは、保護者の「期待」に沿って成長するものだ(保護者に反抗する場合もあるが、それも親の「期待」を基準にしているという意味で、「期待」に沿った行動と言える)。


 その結果、ヒバリは「私はしっかり者!」、「しっかり者でなければならない!」と自身にプレッシャーをかけ、「幼いところ/弱いところ」を隠すようになったと思われる。


【原因②】中学時代のいじめ


 その上……彼女は中学時代にいじめられていたそうだ


 原因は「悲恋」である。

 「看板のイラスト」に恋していることが同級生にバレてしまい、「ひどくバカにされたり、からかわれたりしたわ……」(第1話)とのこと。

 その結果、彼女は一段と本心を隠すようになったものと推測される。


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 こうしてヒバリは、一見すると「とてもしっかりしたいい子」、しかし実際には「自身の『幼いところ/弱いところ』を隠し、誰にも本心を明かさない子」になった。

 ……高校に入学し、はなこと出会うまでは!


【変化】ヒバリははなこと出会い、素直になった。そして……!


 ここまでご説明してきた通り……ヒバリは、「一見するととてもしっかりしたいい子」だが、じつは「自身の『幼いところ/弱いところ』を隠し、誰にも本心を明かさない子」として育った


 ところが!

 彼女ははなこ出会い、親交を深める中で変化していく。


 詳細は前回申し上げたので割愛するが……要するに、はなこのちょっと異常なほどの「ポジティブシンキング」に触れ、自分の「幼いところ/弱いところ」も恥ずべきものではないと考えるようになるのだ。


 ヒバリは、そのままの自分を受け入れるようになり、そして素直に行動するようになる。


 「素直な行動」というのは「高1女子らしい行動」のことで、例えば「友だちと手をつなぐ」ことであり、あるいは「友だちに『ほら、アーンして』なんて食べさせてやる」ことだ。

 はなこと出会う前のヒバリだったら、きっと「そんな子どもっぽいこと、私にはできない……」と考えたのだろうが、いまは違う。


※高校入学前のヒバリは堅い表情をしていた(左上)。しかし、はなこと出会い、リラックスした柔らかい顔になる(右下など)。


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 ……とはいえ、人はそう易々とは変われない。

 ヒバリは素直に行動するようになるが、しかしどうしても照れや恥ずかしさが残る。


 具体的なエピソードを見てみよう。

 例えば、ヒバリらが遠足に行ったときのことだ(第6話)。


 案の定、度重なる「不運」に見舞われるはなこ。

ヒバリは頬を赤らめつつも、すっと手を伸ばす「ほら、つないでたら危なくないでしょ?行くわよ」

はなこは一瞬驚いてから、満面の笑みになる「……えっ……うん!」

はなこがヒバリの手を取って、嬉しそうに「ヒバリちゃんってば、心配性だなぁ!」

ヒバリは頬を赤らめたまま「あなただからよ……」


※左下:はなこと手をつなぐヒバリ。


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 あるいは、こんなエピソードもある。


 林間学校の食事の時間(第11話)。

 虚弱体質のぼたんが(いつも通り!)両手を骨折し、フォークを使えないでいる。

 はなこが食べさせてやろうとするが、「不運」の彼女には上手くできない。


 そこで……ヒバリ!

ヒバリは頬を赤らめて「仕方ないわね」

はなこ、ぼたん「えっ?」

 ヒバリはフォークでエビフライを取り、ぼたんに差し出す。

ヒバリは恥ずかしそうに「はい」

ぼたんは驚いて「……ええっ!ももも、もっ、もったいないです!日頃から迷惑のかけ通しなのに、こんな……」

ヒバリ「早くしてよ。恥ずかしいから……」

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 この「恥ずかしがるヒバリ」にご注目いただきたい!

 つまり、普段はしっかり者でみんなをリードしているヒバリが、ふとした時に頬を赤らめる!あるいは、色っぽい声で「早くしてよ。恥ずかしいから……」なんて言う!


 このギャップ!

 これがヒバリというキャラの魅力だ!


※主要5人の中で、1人だけ照れくさそうなヒバリ。


 さらに、こうした照れくさそうなヒバリに「百合っぽさ」を感じる視聴者もいるようだ

 上述のエピソードで、はなこやぼたんに対して頬を染めるヒバリの姿を見ていると……なるほど!

 確かに「ソフト百合」っぽい!

※ソフト百合:恋愛や性愛を含む「ガチ百合」に対して、女性同士の「友情以上、恋愛未満の関係」を意味する。



 ……そして、こうしたヒバリの魅力は、はなこと出会い、素直になったからこそ生まれたものだ。

 私たちはヒバリに萌えるたびに、はなこの「ポジティブシンキング」のすごさを思い知るのである。



明日に続く★

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(担当:三葉)

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