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本作は成長譚!……で、かおすはどう成長したのか?|『こみっくがーるず』(11)

 本記事は、アニメ「こみっくがーるず」を徹底分析する特集の……第11回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマは……!


 前回まで、「オッサンオタク」、「コミュニケーション・スキルが低い」など、かおすというキャラの様々な要素を分析してきた。

 今回からは、それらを踏まえてより核心的な考察に入ろう★


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 第1回でも申し上げた通り……本作は「かわいい女の子たちを描いたギャグ作品」であり、同時に「彼女たちの成長譚」でもある。


 そう、成長譚!

 特に、主人公・かおすが成長する物語だ。


 ……成長?

 はて、かおすは一体どのように成長したのだろうか?


 私見では、かおすは3つの意味で成長している。

 1つずつご説明しよう。


かおすの「マンガ家としてのスキル」を確認しよう


 かおすの3つの「成長」をご説明する前に……まず、彼女のマンガ家としてのスキルを確認しておきたい

 これまで何度も申し上げてきた通り(例えば、第7回)、かおすはマンガ家として未熟である


※かおすのいろいろアレなマンガ。


 それでは、かおすのマンガのどこが問題なのか、具体的に見てみよう。


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 「こみっくがーるず」第1話の冒頭、かおすが担当編集者の編沢と電話で話をするシーンがある。


 編沢は、かおすのデビュー作(読み切りマンガ)に対する読者の声を伝える。

 散々な評価であり、かおすは早速「自虐風オーバーリアクション」を披露するわけだが……さて、この読者の声は以下の2つのパターンに大別できる


①マンガ家としての基礎スキルが低い(「絵が下手」、「ストーリーがつまらない」、「タイトルからしてどうかと思う」)

②キャラに魅力がない(「女子高生という設定なのにちっともリアリティがない」、「萌えられない」)


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 その後、かおすは「女子マンガ家寮」に入り、何度も何度もネームを作っては編沢からボツを食らい続ける。

 そして入寮からおよそ1年経った第11話で、ようやく「前後編の2回連載」が決まる。


 つまり、入寮後の1年間で、上記2点(「マンガ家としての基礎スキルが低い」、「キャラに魅力がない」)がある程度改善されたのだと推測できる


【かおすの成長①】マンガ家としての基礎スキルが向上した


 かおすの1つ目の「成長」は、「マンガ家としての基礎スキルが向上した」である。


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 入寮前、あるいは入寮直後、かおすの基礎スキルにはかなり問題があったようだ。

 前掲の読者の声以外にも、例えば以下のようなエピソードがある。


 かおすが、グルメマンガに挑戦した時のこと(第3話)。

翼は一読して「かおすの場合、最大の課題は画力だよね。グルメマンガって食べ物がおいしそうに見えることが大前提だけど、かおすのはそうじゃないし、構図がどのコマも同じ感じだし、展開も単調で、そもそもキャラの描き分けができてないし」


 グルメマンガなのに、食べ物がおいしそうに見えない。

 構図もストーリー展開も単調である。

 そしてキャラの描き分けができていない。

 ……ひどいありさまだ。


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 そんなかおすだが……先輩マンガ家からアドバイスをもらったり、翼らのアシスタントを経験したりすることで、基本的なテクニックを身につけていく!


※かおすは、怖浦先輩から背景の描き方を教わった(第7話)。


【かおすの成長②】魅力的なキャラを描けるようになった


 かおすの2つ目の「成長」は、「魅力的なキャラを描けるようになった」である。


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 前述の通り、第1話時点では、かおすのマンガは「女子高生という設定なのにちっともリアリティがない」と評されていた。


 それが、どのように「成長」したのか?

 第11話で、かおすが新作ネーム(後に「前後2回の連載」となる作品)を持ち込んだ時の編沢の反応を見てみよう。


編沢はかおすのマンガを読んで「これ……悪くないかも!……登場人物がとてもいきいきしていて、何よりかわいい!」

かおすは驚く「えっ!?それ……いろいろ考えられなくて、なんとなく頭に浮かんだものを描いただけで……」

編沢「それゆえに、余計な設定や小細工がなくて読みやすい!力が抜けて、自然体のかおす先生らしさが出てる!」


 抽象的なセリフのため、編沢がどこを評価しているのかわかりづらいのだが……おそらく「キャラのちょっとしたしぐさやセリフに光るものがある = キャラが魅力的」という意味だろう


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 なお、この時かおすが提出したのは、「女子高生4人の何気ない日常を描いたマンガ」である。

 4人がクレープを食べたり、海に遊びに行ったり……そう!

 かおすは、小夢らと共に実際に体験したことをモチーフにしているのだ!


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 つまり!

 入寮前、家族以外の人とほとんど交流のなかったかおすは、「いきいきとしたリアリティのある人間」を描けなかった。

 あまりにも、人と交流してこなかったためだ(詳しくは、第5回)。


 しかし寮に入り、かおすは小夢らと出会った!

 素晴らしい仲間と共に、忘れ得ぬ日々を過ごした!

 その結果、彼女は「いきいきとしたリアリティのある人間 = 魅力的なキャラ」を描けるようになったのだと思われる。


【かおすの成長③】精神的な自立を果たした


 かおすの3つ目の「成長」は、「精神的な自立を果たした」である。


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 詳細はこのあとご説明するが……まず概要から。

 すなわち……これからご紹介する「成長③」は、「成長①:マンガ家としての基礎スキルが向上した」、「成長②:魅力的なキャラを描けるようになった」とは、2つの点で異なる


 第1に、「成長①、②」が「マンガ家としての成長」であったのに対して、「成長③」は「人間的な成長」である。


 第2に、達成時期が異なる

 「成長①、②」は、「入寮~小夢らの退寮」の間(約1年間)に実現している。

 一方、「成長③」は「小夢らの退寮~かおすの退寮」の間(1ヵ月未満の短い期間)に達成されている

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 それでは具体的なエピソードを踏まえつつ、かおすがどのように「成長」=「自立」を遂げたのか詳しく見てみよう!


【Step①】入寮前


 そもそも……かおすは大変温かい家族に生まれ、十分に愛されて育ったと推測される(詳しくは、第4回)。


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【Step②】入寮中(小夢らの退寮まで)


 かおすは、高1にして「女子まんが家寮」に入る。

 ……これは、彼女にとって大変な決断だっただろう。

 なにしろ「対人恐怖」を抱えたかおすが、「温かい家族」を離れ、他人と共に生活しようというのだから!


 ……が、かおすは幸運だった!

 寮生(小夢、琉姫、翼)や寮母は、優しくかおすを受け入れてくれた。

 だから、かおすは出会って早々から親しく付き合うことができた。

 時には甘え、時には励まされ、まるで実家にいるかのような安心感のもとで生活することができた。


 つまり、かおすは「温かい(実の)家族」から「冷たい世間」に出ていくはずだったのだが……実際には「温かい(疑似)家族」と出会ったのだ


 やや意地悪な表現になるが……要するにこの時点では、かおすは精神的に自立できていない。

 「温かい(実の)家族」から「温かい(疑似)家族」へと、依存先を変更しただけなのだ。


※琉姫に甘やかされるかおす。


 そんな恵まれた環境下で、かおすはマンガ家としての腕を磨き(「成長①、②」)、「前後2回の連載」を獲得するに至る。

 さらに、小夢らのサポートを受けつつ前編を完成させ、高評価を得る。


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【Step③】入寮中(小夢らの退寮後)


 さて……問題はここからだ!


 かおすが入寮する時点で決まっていたことだが……老朽化した寮を建て直すために、かおすらは一時的に寮を離れ、実家に戻ることになる


※老朽化した寮。


 小夢らは、退寮に向けて着々とマンガを完成させていく。


 一方……かおす!

 彼女は後編を描かねばならぬのだが、「人気が出なかったらどうしよう」などと悩み、一向にペンが進まないでいる。


 そしてついに、小夢らの退寮の日がやってくる。


※小夢らを見送るかおす。


 小夢らはかおすを心配しながらも、それぞれ実家に帰っていく。


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 ……さぁ、ここからが本番だ!

 ここに至って、ついにかおすは「温かい家族」から切り離されたのである!

 人生で初めて「温かい家族」を失い、1人ぼっちになった彼女は情緒不安定になる!


 かおすは、「描かねば……描かねば……」と自身を奮い立たせる。

 何度もペンを握る。

 しかし、描けない。

 ペンを握ると、手がブルブルと震えてしまうのだ。


 「人気が出なかったらどうしよう」という不安に加えて、初めて味わう強烈な孤独に、彼女は1人泣く。

かおす「寂しい……」

かおす「1人で虚しくて……なんだか絵もかわいく描けなくて!」


 かおすは部屋を見回す。

 そこに小夢らの姿はない。

かおすが呟く「……本当にみなさん、いなくなってしまったんですね」


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 そんな中……寮母が、かおすのために食事を作ってくれる。

かおす「ご飯……今日は私だけなのに、こんなにおいしくて、温かくて……まるで実家にいるようです」

寮母「当たり前でしょ」

かおす「えっ?」

寮母が微笑む「ここでは私がお母さんなんだから」

かおすは思わず号泣する「おかぁ……寮母さん!おかぁ……あばぁー!」


 寮母の言葉をきっかけに、かおすは徐々に落ち着きを取り戻し始める。

 ……が、まだ描けない。


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 続いて、かおすの母・はる子が寮を訪れる。


※娘を溺愛する母・はる子。


 寮母を交え、3人でかおすの幼い頃の話をする。

 そして、はる子は優しく微笑む。

はる子「苦しいんなら帰ってきてもいいんですよ、薫子ちゃん」


 それまでかおすを「かおす先生」と呼んでいたはる子が、ここでは「薫子ちゃん」と言っていることにご注目いただきたい。

 「あなたはもう『かおす先生』として十分頑張った。だからもう頑張らなくてもいい。マンガ家ではなくて私の一人娘、『薫子ちゃん』に戻っていいのよ」なんて意味が込められているのだろう(まさに名シーン!)。


 ……だがしかし!

 我らがかおすはこう言うのだ。

かおす「……もう少しここにいます」

はる子「帰らないのですか?」

かおす「まだやり終えていない原稿があるんです!ここにいる間に自分の力で終わらせたいんです!」


 そしてはる子は寮を去り、かおすは再びペンを握る。

 ……しかし、まだ手が震える!

 マンガが描けない!


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 その時だ!

 今度は小夢ら3人からメッセが届く。

 3人の何気ないやりとりを見て……かおすが微笑む!

かおす「みんなの顔が見えました!……大丈夫!一緒にいます!……大丈夫!頑張れます!」


※下段:「大丈夫!」のかおす。


 そしてついに!

 かおすがマンガを描き始める!


 ……と同時に、エンディング曲「涙は見せない」が流れる。

 ちなみに、同曲の歌詞には「大丈夫だよねきっと 一人じゃない」というフレーズがある。

 まさにこの時のかおすの心境を歌っているのだろう!


※エンディングでは、かおすら4人は大人っぽい格好をしている。本作が成長譚であることを象徴していると言えるだろう。


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 ここまで見てきた「かおすの『自立』へのステップ」を整理すると、以下のようになる。



 つまり「こみっくがーるず」は、「(実の)家族」を離れたかおすが、「(疑似)家族」のもとでマンガ家として成長し、最後に「(疑似)家族」を離れて人間的に成長(=自立)する物語なのである!


※かおすの「(疑似)家族写真」。



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(担当:三葉)

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