これは単なる「日常系萌えアニメ」ではない……「ナンセンスギャグアニメ」+「サスペンスホラーアニメ」のハイブリッド作品だ!|『あんハピ♪』(1)
こんにちは。傑作アニメを分析・研究する「未来世紀アニメスタディーズ」のお時間です。
本日取り上げるのは……こちらの作品!
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概要をチェック★
まずは、「あんハピ♪」のストーリーをざっくり確認しておこう。
舞台は、名門高校「天之御船学園」。
同校は勉学やスポーツに秀でた生徒が集まることで知られているが……7組だけは例外。
「不幸」を抱えた生徒専用のクラスなのだ。
果たして、なぜそんなクラスがあるのだろうか?
作中では明言されていないが……担任教師は以下のように言っている(第1話)。
小平先生「あなた方には、全員幸福になってもらいます。……ズバリ言っちゃいます。ここにいるみなさんは全員不幸です。安心してください。みなさんを1つのクラスに集めたのは、その不幸を克服し、幸福をつかんでもらうためなのですから!」
本作は、そんな1年7組に入学した5人の少女の「不幸」な日常を描いた学園アニメである!
※主要5人。左から、レン、ヒビキ、ぼたん、ヒバリ、はなこ。
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さて!
それでは、彼女らはどのような「不幸」を抱えているのだろうか?
主要5人の「不幸」を見てみよう。
【1】不幸タイプ:「不運」
まずは、主役・はなこ!
不幸タイプは「不運」である。
彼女は「1日に何度も川に落ちる」、「道行く猫には必ず引っかかれたり、噛みつかれたりする」など……思いつく限りの「不運」に見舞われている。
※はなこ。
【2】不幸タイプ:「悲恋」
続いて、もう1人の主役・ヒバリ!
不幸タイプは「悲恋」。
「悲恋」とは「報われず、悲しい結果に終わる恋」のことである。
なるほど。確かにヒバリの恋は報われないだろう……なにしろ、彼女が恋しているのは「道路工事現場の看板に描かれたイラスト」(「オジギビト」というそうだ)なのだから。
※左:オジギビトに頬を染めるヒバリ。
【3】不幸タイプ:「不健康」
3番目は、ぼたん!
彼女の不幸タイプは「不健康」だ。
文字通り、「虚弱体質」という意味だが……これが想像を絶する虚弱さなのだ。
例えば、握手すれば手の骨が折れ、5m走れば疲労のあまり倒れ込むという具合である。
【4】不幸タイプ:「方向オンチ」
4番手は、ヒビキ!
不幸タイプは「方向オンチ」。
「方向オンチ」と言うと、「不幸」というほどのこともなさそうだが……彼女の方向オンチ具合は並大抵のものではない。
何しろ、毎日登校するたびに道に迷い、学校に到着するまでに3時間もかかっているのだから。
【5】不幸タイプ:「女難」
最後に……レン!
彼女の不幸タイプは「女難」だ。
これは、意図せずして「女性・メス」を魅了してしまうというもので、彼女の周りには常に動物(無論、すべてメス)が群れている。
【特徴】これは単なる「日常系萌えアニメ」ではない!
続いて、本作の最大の特徴を確認しておこう。
すなわち!
本作は一見すると「日常系萌えアニメ」なのだが……実際には「『日常系萌えアニメ』と『ナンセンスギャグアニメ』を足し合わせ、さらに『サスペンスホラーアニメ』のテイストを付け加えたハイブリッド作品」である!
【1】「日常系萌えアニメ」としての側面
本作は単なる「日常系萌えアニメ」ではない!
……が、「日常系萌えアニメ」的な側面も持っている。
というか、それが本作のベースだ。
「日常系萌えアニメ」とは、「かわいい女の子たちの日常を描いた作品」のことであり、また「視聴者に萌えてもらうことを重視した作品」のことである。
つまり、「あんハピ♪」(のベース)は、「はなこら5人のかわいらしさに萌える作品♥」というわけだ。
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【2】「ナンセンスギャグアニメ」としての側面
本作は「日常系萌えアニメ」だが……同時に「ナンセンスギャグアニメ」でもある。
例えば、主要5人が抱える「不幸」にご注目いただきたい。
詳細は上述した通りだが……いかがだろう。
「看板に描かれたイラストに恋するヒロイン」、「握手しただけで骨折するヒロイン」……「萌えキャラ」というよりも、「『ナンセンスギャグアニメ』に登場するヒロイン」っぽくないだろうか?
また、彼女らが通う高校や、そこで行われる授業も突飛なものだ。
例えば、地下深くに謎の大施設があったり、そこで等身大のすごろくをしたり、ウサギ型のロボットが登場したり……普通ではない!
※左上:ウサギ型のロボット。右上:「プリキュア」風のバトル。右下:「ガンダム」風のロボット。
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【3】「サスペンスホラーアニメ」としての側面
本作は「『日常系萌えアニメ』と『ナンセンスギャグアニメ』のハイブリッド作品」だが……さらに「サスペンスホラーアニメ」のテイストも感じられる。
すでにご紹介した通り、本作の舞台・名門高校「天之御船学園」の1年7組は、「不幸」を抱えた生徒専用のクラスだが……はて。
一体なぜそんなクラスがあるのか?
また、担任教師・小平にも多くの謎がある。
彼女はライフルでクマを狙撃したり、崖から落ちたはなこら5人を、自身も落下しながら助けたり、たびたび超人的なアクションを披露する。
一体何者なのだろう?
こうした謎は最後まで明かされないが……というか、明かされないからこそ、本作には「もしかすると……これは単なるギャグアニメではないのではないか?」、「何か恐ろしいどんでん返しがあるのではないか?」と妄想を膨らませてしまう不穏な雰囲気が漂っているのだ。
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【4】まとめ
以上申し上げてきた通り……本作は「『日常系萌えアニメ』と『ナンセンスギャグアニメ』を足し合わせ、さらに『サスペンスホラーアニメ』のテイストを付け加えたハイブリッド作品」だ。
そしてこれはつまり、「1粒で3度おいしい」ということである。
例えば第8話は、はなこらがVR(バーチャル・リアリティ)の世界で「プリキュア」風のバトルを繰り広げるギャグ回だ。
ただ、そんな中にもしっかりと「萌えられるシーン」が用意されている(第8話最大の「萌え」は、ぼたんがデレたシーンだろう)。
つまり、第8話は「ナンセンスギャグ」テイストの強いエピソードだが、それだけではなく、「日常系萌え作品」風の萌えも十分楽しめるのだ!
※「プリキュア」風のバトル。
【補足①】本作はなぜヒットしなかったのか?
本特集では、今後「あんハピ♪」の魅力を考察していくが……それに先立って、ここで「なぜ本作はヒットしなかったのか?」を確認しておきたい。
「なぜヒットしなかったのか?」……言うまでもなく、「あんハピ♪」は魅力的な作品である。
少なからぬファンがいる。
が!
それではヒット作かと訊かれると……「人気は一部にとどまった」というのが一般的な認識だろう。
原作が魅力的であることに加えて、みんな大好き「きららアニメ」であること、また制作会社や監督にもファンがついていることを踏まえれば、ヒット作になるポテンシャルは十分にあったはずなのに!
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私見では、以下がヒットに至らなかった最大の理由だ。
すなわち……第2~3話に「日常系萌えアニメ」的要素、「ナンセンスギャグアニメ」的要素、「サスペンスホラーアニメ」的要素を詰め込みすぎた結果、多くの視聴者が混乱してしまったのだ。
「これは『日常系萌えアニメ』なのか?それとも『ナンセンスギャグアニメ』なのか?はたまた『サスペンスホラーアニメ」なのか?……一体何を楽しむ作品なんだろう?」
そしてその結果、一部の視聴者が「何やら面白そうなのだが……よくわからない。自分には合わないようだ」と視聴を中断してしまったというわけだ。
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一方……第4話以降は、第2~3話と比べて高く評価されているようだ。
なぜだろう?
おそらく……本作に否定的な印象を持った視聴者が第2~3話あたりで離脱したため、好意的な視聴者のみが残り、結果的に第4話以降の評価が高まったということも影響している。
ただそれ以上に、第4話以降になると、「このエピソードは『日常系萌えアニメ』のテイスト強め!『ナンセンスギャグアニメ』的要素は味つけ程度に登場するだけ」などというように、メリハリが利くようになったからだと思う。
例えば第4~5話は、明らかに「日常系萌えアニメ」のテイストが強い。
具体的には……各キャラの「かわいさ」と、キャラ同士の「百合百合した関係性」がじっくり描かれる一方、「各キャラのナンセンスな不幸っぷり」や「ナンセンスな高校生活」、そして「サスペンスホラー風の要素」は味つけ程度に登場するだけだ。
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はて。
それでは、一体なぜ第2~3話にはたくさんの要素を詰め込んでしまったのだろうか?
なぜ、第4話以降のようにメリハリをつけなかったのだろうか?
おそらく……視聴者に対して、「これから始まる『あんハピ♪』というアニメは、『日常系萌えアニメ』と『ナンセンスギャグアニメ』を足し合わせ、さらに『サスペンスホラーアニメ』のテイストを付け加えたハイブリッド作品です」と説明しようとしたからではないかと推測される。
第2~3話という序盤のエピソードだからこそ、「あんハピ♪」の全貌を伝えようとしてアレコレ詰め込み、その結果ゴチャゴチャしてしまったというわけだ。
【補足②】掲載誌が「まんがタイムきららフォワード」であることの意味
ここまで、「あんハピ♪」は「日常系萌えアニメ」にとどまらぬ作品であると申し上げてきたが……本作の原作が、「『まんがタイムきららフォワード』掲載のマンガ」であることを思い出せば、これは当然のことと言えるだろう。
どういう意味だろうか?
ご説明しよう。
そもそも……「まんがタイムきららフォワード」は、日常系萌え作品で有名な「きらら系雑誌」の1つである。
……が、「まんがタイムきらら」などの姉妹誌と比べると、掲載作の毛色はやや異なっている。
特に大きな差異は、もっぱら「日常系萌え作品」を扱う姉妹誌に対して、「まんがタイムきららフォワード」にはSFやファンタジーに該当する作品も多いということだ。
こうした雑誌の特徴を踏まえて考えれば、「あんハピ♪」が「日常系萌え作品」の範疇に収まらないのも当然のこととご納得いただけると思う。
ちなみに、「アニメ化された『まんがタイムきららフォワード』掲載作」といえば……そう!
「『萌え』と『ゾンビ・アポカリプス』のハイブリッド作品」として知られる「がっこうぐらし!」がある。
明日に続く★
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(担当:三葉)
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