見出し画像

拷問!山賊!魚雷発射!……ピンチを乗り越えて友情を育む話!!|『大災難P.T.A.』(2)

画像1


テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「大災難P.T.A.」をベースに新しい物語を妄想します。

※「大災難P.T.A.」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「大災難P.T.A.」は、家族と休暇を過ごすために帰路を急ぐ主人公が、数々の災難(悪天候、交通機関のトラブル、がさつで無神経な同行者……)に巻き込まれるコメディ作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「大災難P.T.A.」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


画像6


三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて以上を踏まえて「案①」ですが……ズバリ!「家族と休暇を過ごそうと帰路を急ぐ中年男性が、異国のストライキやクーデター、そして無神経でがさつな中年男性に悩まされながら旅する物語」です。


画像3


嘉村 ストライキやクーデター!?

三葉 はい。「設定やストーリーの構造が『大災難P.T.A.』と同じでも、『主人公に降りかかる災難のレベル』を引き上げることで、『大災難P.T.A.』とはまた違った面白い物語になるはず!と考えたのが、この「案①」です。

嘉村 ほぉ!

三葉 つまり、『大災難P.T.A.』ベリーハード版ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 そして「大災難P.T.A.」はアメリカ(ニューヨーク~シカゴ)の物語ですが……「ベリーハード版」となると舞台にも工夫が必要だと思うんですよ。端的に言って、もっとヤバそうな場所を舞台にすべきでしょう。

嘉村 確かに。

三葉 ということで、「案①」のあらすじをご紹介しましょう。……主人公は中年男性。彼はエリート商社マンです。ここでは仮にA氏と呼びましょう。

嘉村 ふむ、A氏ですね。

三葉 物語は、A氏がヨーロッパ出張を終え、日本に帰国しようと飛行機に乗るところから始まります。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、A氏の隣席には日本人男性が座っているのですが……この男がじつにがさつで無神経!A氏をイライラさせる!

嘉村 がさつで無神経というと?

三葉 どうでもいいことをペチャクチャ話しかけてくるとか、カバンから取り出した煎餅をボリボリボリボリ音を立てて食べるとか、おしぼりで顔から首筋、さらに胸のあたりまでぬぐうとか……狭い機内でそんなことをされたらイラッとするでしょ?

嘉村 確かに……。

三葉 ここでは、彼をB氏と呼ぶことにしましょう。

嘉村 承知しました。

三葉 元々が几帳面で神経質なA氏は、そんなB氏の言動が気になって仕方がない。A氏は、「あと10時間ほどで日本だ。日本では、妻と娘が待っている。家族3人で楽しい正月を過ごすんだ……そう、もうすぐ楽しい休暇だ……こんなヤツのことは無視しろ……気にするな……」と自分に言い聞かせますが……。

嘉村 ええ。

三葉 「災難」はまだ始まったばかり!ここからが本番です。

嘉村 いよいよですね!

三葉 まず……悪天候を理由に、飛行機が中東の某国に着陸します。

嘉村 ふむ。

三葉 乗客は一度飛行機を降り、空港のロビーで次の指示を待つことになりますが……いつまで経ってもアナウンスがない。徐々にイラついてくるA氏。一方のB氏は「こりゃ参りましたねぇ、アハハ!」と能天気に笑い、一層A氏に苛立たせる。

嘉村 うーむ……。

三葉 待つこと数時間。ようやく空港の職員がやってくる。辺りにホッとした空気が流れますが……それも束の間。乗客は事情も説明されずに、空港から追い出されてしまう。

嘉村 ほぉ。

三葉 そして空港が閉鎖される。

嘉村 閉鎖!

三葉 突然のことにA氏は混乱しますが……他の乗客の言葉を聞くに、どうやら空港でストライキが発生。空港は最低でも3日ほど閉鎖されるとのこと。

嘉村 あらら……。

三葉 A氏が叫ぶ「そんなバカな!冗談じゃないぞ!」。しかし空港職員は無表情に「私の責任ではない。怒鳴られても困る。町の中心部へはタクシーで移動してくれ」とだけ言い残し、どこかへ行ってしまう。

嘉村 ふむ。

三葉 呆然と佇むA氏。一方のB氏は……根が楽天的なのでしょう。まるでこの災難を楽しんでいるかのように大きな声で笑う「ハッハッハ!困りましたねぇ。いえね、どうも嫌な予感がしていたんですよ。じつは私、いま大殺界でしてねぇ!」。

嘉村 またA氏をイライラさせるようなことを言う……。

三葉 ええ。おっしゃる通り、A氏はイラッとして怒鳴り散らしてやろうかとも思いますが……彼は大人。怒りをグッと堪え、腹に収める。そう、イライラしている場合ではない。これからどうするか、身の振り方を考えねばなりません。

嘉村 ふむ。

三葉 B氏が再び口を開きます「それでオタク、この後どうするんです?ホテルに泊まるんですか?それとも……」「それとも?」「1000kmほど離れたところに、もう1つ空港があるそうですよ」「ほぉ!」「そちらへ向かうか……」「そこへ行こう!」……一刻も早く家族と再会したいA氏は、迷うことなく答えます「私はその空港に向かいますよ!」。

嘉村 なるほど。

三葉 B氏は腕を組んで「ふーむ……なるほど」。その思わせぶりな態度が気になるA氏「……何か?」「いえね、ホラ、この国は治安がよくないでしょ?政情も不安定だし」……なるほど。言われてみれば、ニュースでそんな話を聞いた記憶があります。

嘉村 ふむふむ。

三葉 B氏は続けて曰く、「それに、この国ではほとんど英語が通じない。オタク、この国の言葉がしゃべれます?」「いえ、まったく……」「私もですよ。それに現金もない」「カードを持っているが……」「カードねぇ。中心部を離れたら使えないんじゃないかなぁ」……A氏は段々と不安になってくる。

嘉村 ガイドも通訳もなしに、治安の悪い国で1000kmの移動……うーむ。なかなか勇気がいりますねぇ。

三葉 今度はA氏が尋ねる番です「えーと……オタクはどうするんです?」「じつは、迷ってるんですよ。いつ再開するかわからないこの空港で待機するってのもねぇ。正月は日本で家族と過ごしたいし。ただ、1人で旅するのもちょっと……」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 A氏は思案する。このがさつで無神経で、配慮のかけらもなく、話しているだけでムカムカする男と1000kmの旅!?冗談じゃない!……冗談じゃないが……命には替えられない!かくしてA氏はB氏を誘い、2人は1000km離れた空港へ向かうことになります。

嘉村 なるほど。

三葉 しかし、2人には次々と災難が降りかかる!それは文字通り、命懸けの旅!

嘉村 ほぉ。

三葉 例えば、突如軍人に拘束されて拷問されそうになったり。

嘉村 拷問!?

三葉 クーデターが発生し、2人はスパイの疑いをかけられたのです。

嘉村 クーデターですか……。

三葉 どうにかこうにか嫌疑を解いた2人は、再び拘束されては堪らないと山の中の道なき道を進みます。すると今度は……山賊に捕まり、銃殺されそうになる。

嘉村 山賊……。

三葉 またまた間一髪で逃げ出した2人は、「山がダメなら海だ!海から空港へ向かおう!」と考える。そして身振り手振りで漁師と交渉を行い、物々交換で小舟を譲ってもらいます。かくして出航したところ……間もなく、国籍不明の潜水艦に遭遇。いきなり魚雷をぶち込まれる!

嘉村 よく死にませんねぇ……。

三葉 あるいは、国王軍と革命軍の戦闘に巻き込まれ、見よう見まねで戦車を運転することになったり。

嘉村 さすが「ベリハード」。

三葉 とまぁ、そんな具合です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 当初、A氏は「なぜオレがこんな目に遭わなきゃならんのだ!」「冗談じゃない!」「それにしても生きるか死ぬかって瀬戸際に……このクソ野郎!ヘラヘラ笑うな!その口を閉じろ!」と終始イライラしていたのですが……。

嘉村 ふむ。

三葉 「大災難P.T.A.」同様、彼は次第に変化していきます。

嘉村 ほぉ。変化というと……。

三葉 まず、彼は「心の広さ」を手に入れる。「度量」と言ってもいいでしょう。たいていの災難なら笑い飛ばせるスケールの大きな人間になったのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしてもう1つ。主人公は「思いやり」を獲得する。

嘉村 思いやり……。

三葉 ええ。思いやりとは、「相手の気持ちに気づき、気づかいすること」です。つまり……いくつもの災難を乗り越え、やがて2人は空港に到着する。空港は大混雑。どうにかチケットを手配できたものの、2人は別々の便になってしまう。そう、ここでお別れです。その時A氏は、妙に感傷的になっている自分に気づくのです。

嘉村 ほぉ……。

三葉 あれだけ嫌っていたのに……いまでは友情を感じている!「こいつ、悪いヤツじゃないんだよなぁ。ちょっと空気が読めないだけで」。

嘉村 なるほど。

三葉 2人は搭乗ゲートの前で握手を交わし、別れます。A氏は搭乗口に向かって歩きながら、このハチャメチャな旅を振り返る。あんなこともあった。こんなこともあったと回想する内に……彼はふと思い至る。もしかすると……B氏は天涯孤独の身ではないだろうか?

嘉村 ほぉ……。

三葉 いま思えば……B氏は時々寂しそうな表情を浮かべていたような気がする。「家族と正月を過ごすんだ」「オレは妻と子どもを愛している」なんて言っていたが……もしかして、B氏は事故か何かで家族を亡くしているのではないだろうか?

嘉村 あー、なるほど!つまり、A氏は「思いやり」を獲得したことで、B氏の気持ちを察することができるようになったわけですね。

三葉 その通りです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 かくして、A氏はきびすを返す。彼は空港職員を押し切って搭乗ゲートを駆け抜け、B氏を探します。

嘉村 ラブストーリーのラストシーンみたいですねぇ。

三葉 やがてA氏は、B氏を発見。B氏はベンチでうなだれていた。背中が寂しそうだ。A氏は確信する。やはり……。

嘉村 ふむ。

三葉 A氏が口を開きます「クソ忙しい年末年始に恐縮だが……よければうちに招待させてくれないか?」

嘉村 ふむふむ。

三葉 B氏は一瞬驚きの表情を浮かべてから、「……同情かい?気持ちはありがたいが……」「うちの妻は嫉妬深いんだ。きっとオレは彼女に問い詰められる。『音信不通の3日間、何をしていたの?』ってね。そこで、きみが必要なんだ」「……」「証言を頼みたい」「……わかった。ありがたくお邪魔するよ。……ただ、何て言えばいい?『戦車で革命軍を追い回していたんですよ、奥さん。わかりますね?電話をする余裕なんてちっともなかったんです』と言えばいいのかい?……奥さん信じてくれるかね?」「飛行機の中でじっくり口裏を合わせる必要がありようだな」……と、そんなやりとりがあって、物語は幕を閉じます。

嘉村 なるほど。

三葉 さて最後に、以上のストーリーを「大災難P.T.A.」と比較する形で整理してみましょう。


画像4


三葉 冒頭申し上げた通り、基本的な設定やストーリーの構造は、「大災難P.T.A.」と同じです。ただし降りかかる災難を「ベリーハード」にすることで、オリジナリティのある物語になり得たと言えるでしょう。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「家族と休暇を過ごそうと帰路を急ぐ20代後半の男性が、悪天候や交通機関のトラブル、そして無神経でがさつな中年女性に悩まされながら旅する物語」です。


画像5


嘉村 ふむふむ。

三葉 早速ですが、「大災難P.T.A.」と比較してみましょう。


画像6


嘉村 なるほど。今度は、旅の同行者が「中年女性」なんですね。

三葉 ええ、そこが「案②」のポイントです。

嘉村 ほぉ。

三葉 「大災難P.T.A.」では、主人公は「同行者 = 愛嬌があるが、がさつで無神経な中年男性」に悩まされます。

嘉村 ふむ。

三葉 ただしこれ、「中年女性」でもいいはずですよね。

嘉村 ええ、まぁ。

三葉 というか、偏見に満ちたことを言いますが……「愛嬌があるが、がさつで無神経なキャラ」といえば、「中年男性」よりも「オバチャン」、それも「関西のオバチャン」の方がしっくりくると思うんですよ。

嘉村 あー、確かに。

三葉 一方、主人公は20代後半の男性に設定しました。仕事のできる優秀で真面目な青年ですが、思い通りにいかないことがあるとすぐにイライラしてしまう……そんなキャラですね。

嘉村 なるほど。

三葉 いかがでしょう。イメージが湧いたでしょうか?……「線の細い20代男性」と、「大口を開けて『ワハハッ!』と笑う恰幅のいい中年女性」のコンビをご想像ください。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて……ストーリーは、「大災難P.T.A.」と同じでいいでしょう。2人は悪天候やら交通機関のトラブルやらに巻き込まれながら、旅をします。

嘉村 ふむ。

三葉 物語前半、主人公の青年はしょっちゅうイライラしている。例えば、こんな具合。……食後、中年女性が言う「あらあら!もう終わりかい?まだ食べられるだろ?」「僕はもう結構ですよ」「ダメだよ、もっと食べないと!」「いえ、本当に大丈夫ですから……」「大丈夫なものかい!なんだい、その足の細さは!あたしより細いんじゃないかね?」「……」「って、あたしの足が太いんだったね。ワハハ!」「(イラッ!)」。

嘉村 なるほど。ただでさえ災難続きでイライラしているのに、呑気に冗談を飛ばすオバチャン……確かにイラッとするかも。

三葉 しかし旅が進むに連れて、青年は人間的に成長していきます。そして最終的には、オバチャンに好意を抱くようになる「いろいろ困った人だけど……底抜けにいい人なんだよなぁ」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 かくして2人が、性別も年齢も超えて気の置けない友人のような関係になったところで、この物語は幕を閉じます。

嘉村 ふむ。

三葉 中年女性ならではのエピソード……例えば誰とでもすぐに親しくなるとか、見ず知らずの人に飴を配り出すとか、口癖が「よっこいしょういち」だとか。そういったものを盛り込むことで、「大災難P.T.A.」とはまた違ったユニークな物語になり得ると思うのです。



続きはこちら!!

---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで★

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!