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【サンプル特盛!】秘密が2人の距離を縮めていく|「スイーツ男子と呼ばないで」

三葉「どうもどうも」

清水「おっ、来ましたね」

三葉「今日もやってまいりました」

清水「どんなご用件で?」

三葉「いえね、『ご用件』ってほどのもんじゃありませんが……じつに面白いマンガを見つけたんですよ!

清水「ほぉ!」

三葉「例によって、この面白さの秘密を解き明かしていきたいな、と

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瑞埼「スイーツ男子と呼ばないで」

<ジャンプルーキー>


<作者の個人サイト>


登場人物紹介

・清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。ラノベの愛読家でもある。最近買ったのは『ファイフステル・サーガ』の3巻。

・三葉:清水とは中学からの友人。最近よく聞くのは『ガヴリールドロップアウト』の「ハレルヤ☆エッサイム」。神曲。天にまします我らの父なる神に感謝を。

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三葉「いかがです?中編ながらヤマもオチもあり、よくまとまっていますよね!

清水「ふむ。確かに」

三葉「今回特に注目したいのは物語の序盤、男性主人公の甘井くんとヒロインの瀬戸内さんが接点を持つ場面です」

清水「ほぉ」

三葉「ということで、この序盤の構造=『物語の仕組み』を図にしてみました



三葉「本作では、秘密を抱えているのは甘井くんで

清水「ふむ」

三葉「彼は『猛獣』という二つ名を持つヤンキーです……が、ところがどっこい!じつは大のスイーツ好き。すなわち『スイーツ男子』。これが彼の抱える秘密ですね」

清水「ええ」

三葉「ちなみに、彼が『スイーツ男子』であることを隠す理由としては……『大の男が甘味が好きなんてのはなぁ……男の矜持に関わるんだよ』という発言があります。スイーツ好きだなんてことがバレたらナメられちまうんだよ、という意味でしょう」

清水「ふーむ……ヤンキーって面倒くさいんですねぇ」

三葉「ねっ」

清水「ふむ」

三葉「で、その秘密を偶然知ったのはクラスメイトの瀬戸内さん。彼女は学校のマドンナにしてケーキ屋の娘です」

清水「ええ」

三葉「瀬戸内さんは、甘井くんがケーキを購入するのを見て、彼が『スイーツ男子』であることに気づくわけですね。かくして2人の仲が縮まっていく……というのがあらすじです」


いつのご時世も、「秘密」が2人の距離を縮める

三葉本作で使われている『物語の仕組み』=『<秘密が2人の距離を縮めていく>展開』は、古今東西様々な作品に見られるものですよね」

清水「そうですね。例えば、以前私たちが詳しく分析を行ったアニメ『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』もほぼ同様の『仕組み』に則った作品でした」

三葉「ふむ」

清水「そしてこの『仕組み』の特徴は……」



三葉この王道的『仕組み』をどのように味付けするか。これが作者の腕の見せ所です」

清水「ええ。王道だからこそ、一歩間違うと『どこかで読んだことがあるような……』とか、『○○のパクリでは?』とか、批判されやすいんですよね」

三葉「そうそう!」

清水「ただ逆にいえば、王道的『仕組み』というのはそれだけ物語の構造=展開として優れているということですからね。上手く活用すれば多くの人を惹きつける力があります」

三葉「ふむ」

清水「そして(上から目線で恐縮ですが……)本作はこの王道的展開をじつに上手く使いこなしていますよね!


やってみよう!

三葉「さて、ここからは……恒例!『やってみよう!』のコーナーです!」

清水「はい」

三葉「先ほどご覧いただいた『秘密が2人の距離を縮めていく』という『物語の仕組み』を使って、実際に物語を作ってみましょう!

清水「ふむ」

三葉「でね、アレコレ思案してまいりました」

清水「ええ」

三葉「まずは……野球をテーマにした物語をご披露いたしましょう!」

清水「ほぉ!」


【やってみよう①】プレイボール不良


三葉「とまぁ、こうして、単なるクラスメイトだった2人が言葉を交わすようになるわけです」

清水「なるほど」

三葉「そして、しばらく雑談する内に不良くんが徐々に心を開いていく

清水「ふむ」



清水「2年生だったんですね」

三葉「ええ。高2の春です」

清水いまから自主練を重ねて、打率を3分まで上げ、野球部に入れてもらって、レギュラーになって、そして甲子園を目指す……時間がないですねぇ」

三葉「タイム・イズ・マネーですよ」



三葉「そしてヒロインはバッティングマシンの前に立ち、奇跡の20球連続ホームランをかっ飛ばす。こうして不良くんのコーチに就任したのでした……というのがこの物語のプロローグです」

清水「なるほど」

三葉「このあとのストーリーとしては、例えばヒロインの父が登場して大騒動になるとか」

清水「ふむ」

三葉『なぜヒロインは野球を辞めたのか?』『なぜ不良くんをコーチしようと思ったのか?』が明かされたり

清水「ほぉ」

三葉「たまにはサービスシーンが必要だろうという配慮から、マドンナちゃんがセーラー服姿でバットを振るうシーンを挿入。チラッと何かが見えて、全国の健全な野球少年をモヤモヤさせたり」

清水「……」

三葉「アレコレ面白くなるのではないかと」

清水「なるほど」

三葉「手前味噌で恐縮ですが、『野球が下手な不良』と『バッティングセンターの娘』という設定はなかなかどうして秀逸だと思うんですよね」

清水「わかりますよ、その感じ。舞台はちょっと寂れた感じのバッティングセンターでね」

三葉「そうそう!」


【やってみよう②】キモオタの拙者がクラスのマドンナの秘密を握った結果

三葉「続いてまいりましょう」

清水「はい」

三葉「タイトルは……『キモオタの拙者がクラスのマドンナの秘密を握った結果』です!」

清水「……凌辱系エロ作品ですか?」

三葉「いえ、汗と涙と感動の物語です」

清水「嘘ですよね……」



清水「初っ端から口をはさんで恐縮ですが……」

三葉「ええ、何でしょう?」

清水『キモオタでも関係ないよねっ』って……」

三葉「よいタイトルでしょ?傑作だと自負しています。ちなみに某作品にインスパイアされています」

清水「いや、それはわかりますが……何がどう『関係ない』のか気になりますねぇ」



三葉マドンナちゃんが少し頬を赤めるシーンです」

清水「ほぉ」

三葉「この場面ではまだ明らかになりませんが、じつはマドンナちゃんは、常々『キモ関』について語り合える仲間がほしかったんですね。ところがスクールカースト最上位に属する彼女の周りにはそんな人間はいない」

清水「タイトルからして『キモオタでも関係ないよねっ』ですからね。スクールカースト上位層にファンはいないでしょうねぇ」

三葉「ええ。そして同時に、これまた物語終盤まで明かされることはありませんが、じつはマドンナは、本音で話せない友人関係に疑問やら疲労やらを感じているんですね」

清水「なるほど」

三葉それゆえに、キモオタの『仲間』という言葉にグッとくるものがあったという次第です」

清水「ふむ」

三葉そしてキモオタは続けます

清水「ほぉ」



清水「……キモオタくんはしょっちゅう絞殺されそうになっていますねぇ」

三葉「ああ、そうそう。キモオタくんが余計な一言を言い、マドンナちゃんが『死ね!キモオタ死ね!』と叫びながら首を絞める。これをこの作品のお約束にしたいと思いまして」

清水「ふーむ……」

三葉「こうして始まった物語ですが、このあとのエピソードとしては、例えば……」



清水『マドンナちゃんにオタバレの危機が迫る』というわけですね」

三葉「まさに!」



清水「……『大地よ、海よ』って……『ドラゴンボール』ですか」

三葉「まさに!悟空が元気玉を放つ時の名台詞です!」

清水「……秋葉原に海はないですけどね」



三葉「そして、オタクたちによる秘技『Great Wall of Otaku』が炸裂する!」

清水「ほぉ!一体どんな技で?」

三葉「これはアレですね。オタクたちがクラスメイトの前に立ちはだかり、視界を遮る技ですね」

清水「……」

三葉「サッカーやバスケットボールのごとく、オタクとクラスメイトによる攻防が繰り広げられる!反復横跳びの応酬!その間に逃げるキモオタくんとマドンナちゃん……かくしてマドンナちゃんの青春は守られたのであった!

清水「……」

三葉「このあたりのシュールな展開は、傑作コメディ『坂本ですが?』を意識しています」

清水「うーむ……」

三葉「そしてこのあとのシーンですが……」



清水「ここでも『仲間』押しですか」

三葉「ええ。何しろ本作のコンセプトは『友情・努力・勝利』ですからね!」

清水「どこかで聞いたことのあるコンセプトですねぇ……」

三葉「それから、もう1つエピソードをご紹介しますと……



三葉かくして、2人が京都で大暴れする次第です」

清水「なるほど」

三葉「他にも、例えば京都アニメーション本社の前を通りかかったマドンナがうっすら涙を浮かべるエピソードがあったりしてね」

清水「よほど好きなんですねぇ」

三葉「クラスの連中がどよめきます。『えっ……マドンナちゃんが……ビルを見て泣いている!?』」

清水「うーむ……」


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 以上、「秘密が2人の距離を縮めていく」という「物語の仕組み」を使った創作例でした。

 上述の通り、これはじつに強力な「仕組み」です。みなさんもぜひお使いになってみてください。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)

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