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はなこは不運だが、「不幸」(アンハッピー)ではない|『あんハピ♪』(2)

 本記事は、アニメ「あんハピ♪」を徹底分析する特集の……第2回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 前回は、「あんハピ♪」の作品概要をご紹介した。


 本記事からは、主要5人の人となりを見ていこう。

 まずは……主役・はなこ!

 彼女の異常なほどのポジティブシンキングっぷりに注目する。


※いつもニコニコ笑顔のはなこ。


はなこは「不運」である


 前回ご紹介した通り……「あんハピ♪」は、様々な「不幸」を抱えた女子高生たちの日常を描いた作品だ。


 そこでまずは、はなこの抱える「不幸」がどのようなものであったか確認しておきたい


 作中、彼女の「不幸タイプ」は「不運」であると説明されている。

 具体的には、「1日に何度も川に落ちる」、「道行く猫には必ず引っかかれたり、噛みつかれたりする」など……彼女は思いつく限りの「不運」に見舞われている。


はなこは不運だが、「不幸」ではない


 さて!

 そんなはなこの最大の特徴は、「異常なほどのポジティブシンキング」だ。


 萌えアニメにしろ少女マンガにしろ、フィクションの世界のヒロインといえば、往々にして脳内にお花畑が広がっているものだが……はなこのポジティブシンキングっぷりは頭ひとつ抜けている

 脳内お花畑コンテストが開催されたならば、まず間違いなく上位に食い込むだろう。


※きららアニメの定番「きららジャンプ」中も満面の笑みを浮かべるはなこ。


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 ここで1つ、はなこのポジティブシンキングっぷりがよくわかるエピソードをご紹介しよう。


 第2話冒頭、はなこが担任教師から趣味を問われる。

 彼女の答えは……「自販機でジュースを買うこと」!


 多くの視聴者が「何を言ってるんだ、コイツは」と困惑したであろうシーンだが、第2話を最後まで見ると、この言葉の意味が理解できるのだ。


 つまり、こういうことだ。

 はなこが自販機でジュースを買おうとすると、いつもいつも見本とは異なる商品が出てくるという。

 まったくの不運である……が!

 彼女はそれを「楽しい」と認識している。「クジを引いているようでワクワクする」と言う。

 だから「趣味」なのだ。


 ……このポジティブシンキングっぷりである!


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 ちなみに、本作のタイトルは「あんハピ♪」

 一見すると「アンハッピー」(unhappy)の略に見えるが、じつはそうではない。


 「あんハピ♪」には、「ANNE HAPPY」という英字のルビが振られている。

 はなこの本名が「花古泉 杏」(はなこいずみ・あん)であることを踏まえて考えると……そう!

 「あんハピ♪」は、「はなこはハッピー♪」、あるいは「はなこのハッピー(な日常)♪」という意味なのだ。


 つまり、はなこは「不運」(unlucky)ではあるが、「不幸」(unhappy)ではない。

 なぜならば、彼女は「不運」を「楽しい」と感じるポジティブシンキングの持ち主なのだから!


※こんな格好をしても笑顔のはなこ。


はなこのポジティブシンキングは、人びとの「世界の見方」を変える


 「不運」ではあるがそれを「不幸」とは思わず、常にハッピーなはなこ!

 そのポジティブシンキングっぷりは、周囲に影響を及ぼしていく。


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 象徴的なエピソードをご紹介しよう。


 はなこらが遠足に行ったときのことだ(第6話)。

 昼になり、一同弁当を食べる。


ぼたんがヒバリの弁当を一口食べて「かわいいし、とってもおいしいお弁当ですね!」

ヒバリ「今日はちょっと作りすぎちゃって……」

ぼたん「このお弁当はヒバリさんが?」

ヒバリは少し寂しそうな表情を浮かべて「うん。うちはずっと両親が仕事で海外だから、料理は自分で……」

はなこ「あれ。じゃあ、ヒバリちゃんはおうちに1人なの?」

ヒバリは少し早口になって「そうよ。言っとくけど、だからって別に寂しいとかは……」

はなこは満面の笑顔で「いいなぁ!お父さんとお母さんがヒバリちゃんをすごく信頼してるってことだよね!」

ヒバリは一瞬驚いた顔をした後、頬を赤らめて「えっ……そんなこと……」


 さて!

 ヒバリは主要5人の中で最も大人びたキャラである……と言うか、「大人でなければ!」と自身を戒めているように見える。

 だから、自分の「幼いところ」や「弱いところ」を隠そうとする傾向がある。


 上述の「言っとくけど、だからって別に寂しいとかは……」というセリフもこれに該当すると言えるだろう。

 つまり……女子高生が「1人で暮らしている」と言えば、心配されたり、同情されたりするのが普通だ。

 だから、はなこに「ヒバリちゃんはおうちに1人なの?」と問われた時、ヒバリは「それは寂しいね」、あるいは「それはかわいそうだね」と言われると思ったのだ。

 そこで、「自分は寂しくなんかない」、「かわいそうなんかではない」と予防線を張ったというわけだ。


 ところが、はなこのセリフは予想外のものだった。

 彼女は「心配」でも「同情」でもなく、「ヒバリはすごい!羨ましい!」と称賛したのだ。


 ヒバリにとっては、目から鱗が落ちる経験だっただろう。

 「そうか!1人で暮らしているというのは、心配されたり同情されたりすることではなくて、賞賛されることだったんだ!胸を張っていいんだ!」なんて思ったはずだ。


 つまり!

 はなこは、そのポジティブシンキングによって、ヒバリの「世界の見方」(view of the world)を変えたというわけだ。


※以下のツイートにある通り、ヒバリの表情は回を追って柔らかくなっていく。これは、彼女の「世界の見方」が、はなこのポジティブシンキングによって変化していったためだろう(詳細は別記事で)。


 このように、はなこのポジティブシンキングには、人びとの「世界の見方」をよい方向に変化させる力があるのだ!


【余談】もしもスティーブ・ジョブズを萌えキャラにするならば……


 最後に、くだらないことをメモしておく。

 「はなこのポジティブシンキングには、人びとの『世界の見方』を変える力がある」と申し上げたが……私はそんなはなこを見ていて、ふと「現実歪曲空間」という言葉を思い出した。


 「現実歪曲空間」(「現実歪曲フィールド」とも。Reality Distortion Field)とは、人びとの「世界の見方」を変化させる能力のことだ。

 具体的には、「常識的に考えれば不可能なことでも、あの人の話を聞いていると『意外にいけるかも……っていうか、絶対にいけるだろ!』と思えてくる」というもの。

 スティーブ・ジョブズのカリスマ性(「ジョブズの話を聞いていると、いける気がしてくる!」)を表す時に使われることが多い言葉である。



 つまり……「ざっくり言えば、はなこはジョブズに似た能力の持ち主なんだな。ってことは、もしもスティーブ・ジョブズを萌えキャラにするならば、それははなこのようなキャラになるのかもしれない」なんて思ったのだ。


続きはこちら★

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(担当:三葉)

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