6年前の2月10日は、福岡でもかなり冷え込んでいた。 明け方、大仕事を終えた妻をねぎらい帰路につく時、まだ暗い空から白い雪が。 あぁ、これが2月9日ならフグの日にちなんで毎年毎年誕生日のたびに下関までフグ食べに行かなきゃいけなくなってたんだろうな、と思った。ナイス一日大遅刻！だいちこく・・・ダイチコク・・・ 雪が、寝惚けた目に映る街の色を消していく。黒も、くろも、コクでさえも、消えてしまう。あ、名前ダイチにしょう。
真っ赤に染まった夕空を、一匹の赤とんぼが、渋いおじさん声で歌いながら飛んできた。 「夕焼ぁ～け 小焼けぇのォ 赤とーんーぼー♪」 わたしが何の気なしに、すっ、と人差し指を突き出すと、赤とんぼは、ちょん、と指の先にとまった。 「あつッ！」 驚いて手を引っ込めると、指の先が軽く火傷したみたいになった。赤とんぼがニヤリと笑って言った。 「焼きたてですよ」
やっちまった。また給料日に飲みに行って、酔ってホストに全部使っちまった。次の給料日まであと、３０日……。 とりあえず今日食べるものを調達しないといけない。やるしかないな。釣り。 ベランダに出て鉢植えで育ててるバラの花を１本引っこ抜くと（人差し指の先にちょっとトゲ刺さって痛かった）、紐にくくりつけてベランダの外に垂らす。そして心からの愛を込めて告白する。 「あぁ焼き鮭朝定食、どうしてあなたは焼き鮭朝定食なの？その名を捨ててあたしを愛して」 １０分くらいやっていると（向か
元気な男の子を産んだぱせりんは、息子の名前に悩んでいた。 画数やら何やら、大まかな海外での意味やら何やら、かなりかなり考えた名前を、旦那が気に入ってなくて乗り気じゃないのだった。 もうこうなったら、あの高名なお坊さん、10101298和尚に名づけてもらおう。なんて読むのかわかんないけどあの和尚さんの名前。 「１０さん、お願いします！」 「ん－、まず『りん』付けるよね。ぱせりんの子だし」 「女の子名づけランキング上位常連の凛！ でも男の子だから……」 「まぁ、太郎だよね。
・夢。小学校からの友人たちと飲み会。した夢だったと思うけど最後ゲロ吐いたのだけ覚えてる。 ・寝起きにモンスターマンゴーロコ飲んでからの６連勤初日。火曜日まで残業なし予定ですこしほっとした。 ・仕事中 ポカリ・ポカリ・ドデカミン ・帰宅後、シャワーから出て耳掃除した綿棒（３日目）がもう先っぽ茶色く汚れていたのでなんかそこら辺のちょっと汚れてるとこその綿棒でこすってから捨てた。 ・夕 塩焼きそば・塩焼きそば・塩焼きそば
家賃が……払えない……。キャッシング枠も使い切った。俺に残された選択肢は――。 俺は最後に残った百円玉を握り締め、競馬場内を探し回った。競馬好きのギャンブル狂たちには決して見つけられない、人の目の節穴に棲むという伝説の穴馬の王。穴馬の中の穴馬。調べはついている。三年に一度、この競馬場に必ず現れる。そしてそれが今日なのだ。そいつを見つけて賭ければ、俺の人生一発逆転サヨナラホームランだ。 『ワアアアアアアアアア！！！』 物凄い大歓声に競馬場が戦慄した。俺は急いで観客席に出た
令和元年5月16日、西新井のギャラクシティでドーム映像作品『HIRUKO』を観た。 私は映像を映像として、舞踏を舞踏として、芸術を芸術として読み解く土壌をまったく培ってこなかったから、地元でやってるってだけでそんな高尚な作品に触れて面白がれるのかちょっと不安だった。観て感じたことを簡単に言ってしまうと、最後どこまでも昇っていくエンドロールがとても凄いと思ったのと、あとはやっぱり正直よく分からなかったということ。 けれどその道の人たちが面白がっているのだから、私も素人
