後悔しない「超選択術」

画像1

第2章「後悔しない選択」をするための準備

第三者の目を意識する

何かを選択する時、「この選択を誰かが評価するとしたら?」と想像するだけで合理的な判断を下す確率が上がるのです。

例えば、何か道徳的に間違った選択をしてしまいそうなときに「自分の母親が、恋人が、祖父母が見ていたら、どうするだろうか?」と想像すると、衝動的な行動にブレーキをかけることができます。

まずは、第三者の目を意識すること。そして、第三者のアドバイスを聞く、もしくは第三者の立場で考えてみることが大切です。

「合理的な意思決定をするためのトレーニング」

① ペンとノートを用意して、今日あなたが行なった最も印象に残っている選択について振り返る。
例 先週からやろうと決めていた「毎朝、健康のために一駅歩く」という選択を今日はできた
② 自分の選択について満足度を10点満点で評価する(選択を評価することで、続けるべきかどうか、自分の選択を振り返ります)
例 毎朝、健康のために一駅歩くという選択を実行できたので満足度は8点。
③なぜ、その点数になったのか、理由を聞く
例 ゆったりと歩いていたら会社に遅刻しそうになり焦ったからマイナス二点。明日はもう少し早く家を出る。
④ 視点を変えて、あなたが行なった選択を長期的に見た場合のメリットを評価(長期的に考えることで目標への道筋が明確になります)
例 一駅歩くことを習慣化すれば1日ごとの歩数が伸び、健康面での改善が期待できる。健康維持ばかりではく、体力増強にもつながります。

知識や経験よりもアンケートの母数を重視

客観的な視点を持つために「母数を重視する」ことです。

私たちの脳には「以前うまくいかなかったから」「多くの人がこの方法を成功したから」など、自分の頭の中に残っている情報や経験などを元に大まかな状況判断を行なっているのです。

物事の判断スピードが上がる一方で、意思決定に到るまでの思考や分析を単純化しすぎてしまい、その場その場で必要なはずの合理的な判断ができなくなってしまいます。

慣れ親しんだ仕事などでは特に、これまでの経験や知識に基づいた直感に引っ張れてしまい、より有効な方法を逃してしまうのです

仮に仕事での選択に悩んでいるなら、行きつけのお店のオーナーやそこで出会ったお客さん、趣味で繋がるコミュニティの人たちなど、同僚や上司とは違う視点で物事を見ている人に相談してみるのも良いでしょう。

「過去にも同じ事例はなかったか」

「これから選択するどの位のサンプルを用意しているか」

そんなことを意識して、母数を広げる努力をすることで選択の質が向上していきます。

プランやコストを明確化する

新しい習慣を身につけたいと思って、それが「体を動かす」「本を読む」といった漠然としたプランのままでは、脳は新しい習慣を実現する選択をし続けることができないからです。

そこでお勧めしたいのが、明確なプランを書き出すことです。

明確なプランとして起きた直後から行うべきことが書かれているので、目にしたら毎日、確実にやるしかありません。

明確ではないプランは、他の選択肢を選ぶ余地を与えてしまいます。

何かを計画して、習慣化しようとしながら上手くいかないのはあなたが怠けているからではありません。

明確さを欠いているため、脳が取るべき選択肢を絞り込めないだけです。

例えば、資格試験の勉強であれば、「毎日、最低30分は資格試験の勉強をする」ではなく、「家に帰ったら、机に真っ直ぐ向かってバックを置き、服を着替えて、そのまま席に座り、教材を開く」「タイマーをつけて、30分間、勉強をする」といった具合です。

明確なプランを作れば、脳は自ずとあなたが求めている方向へ選択を重ねてくれるようになります。

また、時間をお金に変えて、無駄を省く意識を持つことです

自分が取るべき行動を選択するには、コストベネフィットで判断する方法も有効です。

コストベネフィットとは、行動に費やす時間をお金に換算し、その選択が選ぶに足る価値があるかを比べる方法です。

例 「時給1000円のフリーター」

選択肢① 1時間テレビを見る
特にやることがないので、テレビを見る。休養にはなるが、1000円分の価値はあるか?
選択② 1時間資格の勉強をする
勉強して資格を取り、給与の高い職につければ、メリットは大いにあり。
選択③ 1時間ジョギングする
運動することで寿命が延びれば、ジョギングの1時間は1000円以上の価値になる。

時間をお金に換算することで、あなたにとっての1分、10分、1時間の価値が見えてきます。

この物差しを当てて、「この選択肢を本当に選ぶべき価値があるのか?」と自問すること。

第3章「後悔しない選択」をするための習慣

複数のサンプルを用意する

複数のサンプルを用意する習慣は、思い込みによる弊害を取り去ってくれます。

 例えば、第一印象が強く印象に焼きつく心理作用を「初頭効果」と言い、良くも悪くも人は最初の印象だけで判断や評価を下してしまいます。

恐ろしいことに、「初頭効果」によって「いい人」だという第一印象を持った側の脳内では「確証バイアス」が働きます。「いい人」の良いところ、「親切な人」の親切なところ、「優秀な人」の優秀なところを探すようになってしまうのです。

第一印象に惑わされずに冷静な判断ができるようになる為には、「色んなサンプルを用意しておく」ことが重要なのです

逆に初頭効果で与えた第一印象が悪く、例えば、「空気の読めない人だ」と評価されてしまうと、その人は相手からマイナス面ばかりをピックアップされるようになります。

プラスの評価とマイナスの評価のどちらにしろ、人は第一印象にこだわり、「この人はOOだ」という人物評を固めてしまうのです。

また、「周りと同じことをしたい」という心理は、「社会的証明」と呼ばれ。慣れない場所でより強く働きます。

他人の評価や口コミは必ずしも信用できません。先に触れた「初頭効果」や「確証バイアス」によって生まれた印象の積み重ねでしかないからです。

色んなサンプルを用意することを習慣づければ、衝動的に非合理な決断をしてしまうのを防ぐことができます。

本を読むのであれば、一冊だけではなく、その本とは反対の立場にある人の本、科学的な根拠に基づいた本を読むこと。

特に「科学的根拠のあるなし」は、合理的な選択をする上で、重要です。

選択のための複数サンプルは、他人の意見や本・WEBから得るばかりではなく、自分自身を他人に置き換えるという方法で得ることができます。

選択を迫られた時に、「他の人達だったらどう考えるか」「上司だったらどう考えるか」と違った見方をすることで多様な意見があることに気がつきます。

難しい選択は午前中に行う

選択肢が多すぎると、人は選択する事自体を先延ばしにします。

ところが、脳は、選択を先延ばしにしていることを忘れません。

「いつかは選択しなきゃいけない」と思いながら別のことを考えるため脳は疲弊して、さらに判断する力を失ってしまうのです。

その為、「選択疲れ」が溜まっていない午前中に、難しい選択を行うべきなのです。

こうした”選択疲れ”は日常的に全ての人の意思決定に影響していきます。

しかも、疲れがピークに近づくと意思決定すること自体が面倒になり、比較検討することなく衝動的に選択するか、選択を回避し先送りするようになっています。

冴えた頭をキープする選択疲れ回避テクニック

①一日のプランを作る
1日の行動をあらかじめ作っておき、それに従って行動することに対して自分の選択を絞っておけば、そのたび訪れる選択に迷うことはなくなる
②自分の中でルールを作る
朝食はパンとコーヒー、昼は紅茶など、毎日することに対して自分の選択を絞っておけば、“選択疲れ”を回避できる。
③ものを増やさない
カバンにボールペンやサインペンが何本も入っていたら、どれを使うのか迷いが生じる。一本しか持ち歩かなければ、選択に疲れることはない。

第4章 選択力を鈍らせる5つの落とし穴

感情バイアス

私たちは気分がいい時、悪い時で、物事の認知の仕方が変化してしまうのです。物事の受け止め方が変われば、当然、その後の意思決定にも影響が出ます。

本来であれば、合理的な選択ができる人でも、気分が悪い時は何でもないことをネガティブに捉えてしまい、あとで後悔する選択肢を選んでしまいます。

それを避ける方法があります。

1つ目は、自分の認知、判断が感情に左右されることがあると自覚すること。

人間は感情的になると判断する力がなくなることを理解した上で、「客観的な視点を持つ」あるいは「未来の自分を想像する」などの対策を施すことが大切です。

もう1つは、ストレスが大きい時に大切な選択をしないことです。

ストレスを感じ、精神的にも追い詰められた時の選択は短絡的で、後悔する結果になることがほとんどです。

強いストレスを感じている時は、選択してはいけない状況だと自覚し、あえて判断を先延ばしにすること。

プロジェクションバイアス

プロジェクションバイアスは、今、この時点での感情をベースにして、「未来もきっとこうなるだろう」と見積もって選択してしまう現象のことです。

例えば、大学の合格発表を見て、自分の番号がないことを知り、「人生終わった」と落ち込む姿を想像してください。

それを見たあなたが、自分の未来を想像すると、志望校に落ちたことをきっかけに就職も思うようにいかず、最悪の人生を歩む自分の姿を思い浮かぶはずです。

ポイントは、今の感情をベースにして、その延長線上に未来を想像してしまうところです。

プロジェクションバイアスが働くことで、私たちは今の感情をベースにして未来を思い描いています。

その結果、悲観的、楽観的になったまま意思決定を下し、将来的にも後悔する選択をしてしまうのです。

それを避ける為に、「選択するときの状況と、それによって起きる未来の状況をできるだけ近づけると良い」

例えば、スーパーに夕食の食材を買いに行ったとします。空腹時の「お腹が減った」という感情で買い物をすると、プロジェクションバイアスが働いて、食べた後の状況がうまく想像できず、買いすぎてしまう。

こうした失敗がなぜ起きるかといえば、今の感情と未来の感情がかけ離れているからです。

あらかじめ夕食のレシピを決め、買うべき食材をメモにまとめ、スーパーへ行くようにすれば、プロジェクションバイアスの落とし穴に落ちずに済みます。

食べ過ぎも抑えられます。空腹時の場合、「注文した後、食べた後の状況がうまく想像できなっているのだ」と考えることで、感情を切り離して注文する点数を選択することができるようになります。

メモリーバイアス

歪められた過去の記憶にとらわれることで、後悔する選択をしてしまうことです。

例えば、何かネガティブな事態が起きる直前に会っていた人のことは、「この人と会うと嫌なことが起きる」と記憶されます。

あるいは、仕事で大きなミスをした場所に行くと、「また失敗するのではないか?」と不安になってしまいます。

悪い体験は、良い体験よりも強力で、メモリーバイアスはこうした因果関係のない2つの要素を結びつけ、未来に向けた選択に影響を及ぼすのです。

こうしたメモリーバイアスに惑わされない為の2つの対策があります。

1つ目は、自分が「過去の最高の体験」または「過去の最悪の体験」のどちらにしか思い出していないのではないか?と疑ってみることです。

意識的に1つ以上の体験を思い出して、出来るだけ記憶を平均化するように勤めること。サンプルを増やし、客観視していく。

2つ目は、記憶に関する日記をつける方法です。

嫌な記憶、嬉しい記憶、覚えておきたい小さな出来事。ネガティブだったりポジティブだったりする両極端な記憶だけではなく、小さな気づきも箇条書きにして行くことで、記憶の平均化が進みます。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視してしまうバイアスです。

客観的に見れば、失敗しそうな状況でも、「自分だけは大丈夫」「今回は大丈夫」「自分にそんなに悪いことが起きるわけでもない」と解釈して、後悔することになる選択肢を選んでしまいます。

こうした、正常位バイアスを避け、後悔しない選択をするにはどうすれば良いのか。

自分の判断力のなさ、選択する力のなさを認めることが、正常性バイアスを避けるための出発点です。

正常性バイアスの落とし穴から逃れるためのテクニックを1つ紹介します。

「WRAP」という方法です。

(W) 選択肢を広げる

会社を「辞めるか」「辞めないか」、「買うか」「買わないか」など、二択は自動的に視野を狭めてしまい、正常性バイアスや確証バイアスを働きやすくします。

これらのバイアスから逃れる為にも、「避難しないとどういうリスクがあるのか?「避難する場合、どこに行けば良いのか?」「避難するための手段はいくつあるのか?」「避難する前に想定しておくべきことは何か?」など。選択肢の幅を広げて考える必要があります。

(R) 仮説の現実性を確かめる

「避難した場合、どんな環境が待っているのか」「逃げなければ、どうなるのか」「同規模の災害時、避難しなかった人たちはどうなったのか」などの仮説を立てて、その行動を取った時のイメージをします。

多方面からチェックすることが重要です。

(A)決断の前に距離を置く

いざ、どちらかにきめるという段階で、瞑想する時間を10分挟むなど、意思決定を保留する時間を取りましょう。そうすると、脳をフラットな状態に持っていけます。

(P) 誤りに備える

熟考を重ねても選択の結果に後悔することはあり得ます。

あらかじめ、「最悪の結果」と「最高の結果」を想定し、選択の結果がどのようになれば、満足できるのかをシミュレーションしましょう。

第5章 「後悔をしない選択」をするトレーニング

「1日再構成法」で幸福な選択を見極める

これは1日のうちに行った選択の中で、自分が本当に幸せを感じた選択はどれだったのかを記録し続ける方法です。

自分にとって何が価値ある選択だったのかを見返す事で、「後悔しない選択」をする為に何に注意を払えばいいか分かるようになります。

「1日再構成法」では、1日の終わりに自分の選択によって起きた出来事を、次の項目を満たすように記録します。

① 開始時刻
②終了時刻
③やっていたことの内容
④誰とやっていたか
⑤得られた快楽はどの程度だったか(1~10点で採点と寸表)
⑥感じたやりがいはどの程度だったのか(1~10点で採点と寸表)

もし、「同僚とお酒を飲みにいく」という場合であれば、、、、。

①20時00分
②22時半
③居酒屋で上司の愚痴を吐きながら酒を飲んだ
④同僚のA、B、Cと4人で
⑤5点 最近あった上司の理不尽な振る舞いを愚痴って少しスッキリ
⑥2点 家で英会話の勉強でもしていた方が良かったと思った

ポイントは「快楽」と「やりがい」を分けて評価していくところ。快楽は衝動的な視点で、やりがいは建設的な視点になります。

どちらもバランスよく揃っているのが理想です。

快楽だけの選択はいずれも虚しくなりますし、やりがいだけの選択は人生を息苦しくさせます。

そうすることで自然と「快楽」と「やりがい」のどちらにどのくらい注意を払うべきか分かるようになります。

もう1つ「1日再構成法」にアレンジを加えます。

それは「その予定を組んだ時に感じていた期待感の評価」です。

例えば、「朝ジムに行く」という選択をした時、ジムに向かう前の期待感を評価し、終わった後の快楽、得られたやりがいの点数と比較します。

「毎日のルーティンだし、めんどくさい」という気分で期待感「3」だった。しかし、体を動かして頭もスッキリして、快楽は「7」。その後の作業も効率的になったので、やりがいは「8」といった具合です。

その繰り返しを記録することで、自分にとって幸せなことを選択できる注意力が磨かれていきます。

コアバリューノートで何が大事かを把握する

「コアバリューノート」とは、日記形式であなたが大切にしている価値観をノートに書き出すというもの。

コアバリューを意識することで、目先の利益ではなく長期的な視点から物事を選択できるようになります。

まず、自分が人生で大切にしていきたいことを1つ書き出します。

ノートの一番上にコアバリューを書き出したら、その下にその日の出来事で「充実していたな」「嬉しかったな」「楽しかったな」という感覚を得た「3つの出来事」を書き出します。

そして、最後に「その日、人生で大切にしていきたいことの為に取った選択と行動」を書きます。

コアバリューをつけていくことで、自分にとって最も大事なことが意識できるようになり、選択時の基準が確立されます。

例えば、あなたが会社員で「外資系企業への転職」をコアバリューとしているなら、同僚からのアフター5の飲み会の誘いに対して「語学の勉強時間に当てたい」と断ったり、「今日は、海外からの研修生も来るらしな」と参加したりと、迷うことなく選択することができます。

つまり、何が自分の人生のコアバリューかを常に意識することで、感情的な判断に流されることがなくなり、後悔しない選択ができるようになるのです。