第2話「タタカイ」

【凡例】
〈 〉:本来の行動で見える感情とは逆の感情を表している

●丘:鏡桜街(中腹部)

   リョウスケとライビ、男と狼に向かっていく。

リョウスケ/ライビ 「ハアァ〜〜!!!」

<SE:両者の武器が交わる音、体がぶつかり合う音、地面を蹴る音などによる風>

   両者、撃ち合い・せめぎ合いが続く。

男 「ん〜、なかなかやるじゃねぇの。まあでも、ただ運動能力が高いってだけだな」

   男、かけているサングラスに手をかけ、柄の部分を押す仕草。
   パッと見、何も変わったように見えない。

   〈男、拍手をしながら、〉
男 「〈うん、強いな、お前。合格だ〉」
   〈男、リョウスケに手を差し出す。〉

   リョウスケ、急な停戦態勢に少し油断したところで、
ライビ 「リョウスケ!!避けて!」
リョウスケ 「え?」

   狼、男の後ろから猛スピードでリョウスケに突進してくる。
   リョウスケ、間一髪で避けきる。

狼 「あら〜、侵入者でこれ避けられるやつ久々に見たわ」
男 「反射神経もそこそこいいな。これはやっぱ絶好の実験体なんじゃねぇか」

   リョウスケ、すぐさまライビに向かって、
リョウスケ 「今のが、あべこべってやつか?」
ライビ 「そうだよ。でも見破れないでしょ?いまは見ただけじゃ」
リョウスケ 「あぁ、まったく見破れる気がしない」
ライビ 「だから、ボクがいる」
リョウスケ 「なるほど。なんとなく理解」
ライビ 「後で色々、説明し直すからこの戦いの間は、ボクの声に耳をすませておいて」
リョウスケ 「了解」
ライビ 「あと、さすがにその木の棒じゃきついから・・・ちょっと待ってね」

   ライビ、尻尾を光らせて、その光をリョウスケの木の棒に纏わらせる。

リョウスケ 「これなんか強そう」
ライビ 「でしょ?これで10倍は強くなるよ。そろそろ決着(ケリ)つけに行こうか!」
リョウスケ 「だな。ライビ!!」

   リョウスケ、ライビの背に乗り、攻撃を開始する。
   リョウスケとライビ、相手を素早い動きで撹乱させ、隙をついて光る武器で攻撃をどんどん仕掛けていく。

男 「クソッ、あの化け猫が速くてヤツを捉えられない。ウル、どうにかしろよ、この役立たず!」
狼 「ふざけんじゃないわよ!脳筋のアンタが鈍くさいからでしょうが。他人のせいにするな」
男 「うるせぇ!しかもあの小僧の武器、だいぶ強くなってんしよ、クソッ。クソが!」

   男と狼、かなり息が上がっている。
   男、再びサングラスの柄を押す動作。

   〈男、両手を上げながら〉
男 「〈参った。これ以上戦うのはよそう。素晴らしい戦闘だった。君たちの勝ちだ〉」
   〈男、リョウスケとライビに手を差し出しながら〉
男 「〈もう俺たちは、仲間だ〉」

   リョウスケ、ライビから降りて、男に手を差し出す。
   男の背後から、狼がリョウスケに飛びかかろうとしてくる。

狼 「馬鹿め〜!引っかかったな!」

   リョウスケ、ニヤッと笑って、
リョウスケ 「ライビ、今だ!!」

   ライビ、リョウスケの頭上を飛び越えて男に勢いよく突進タックルを決める。
   リョウスケ、光る武器で狼の顎をアッパーで薙ぎ払う。

リョウスケ 「2回も通じるほど馬鹿じゃねぇよ、な、ライビ!」
ライビ 「ニャオゥゥゥーーー!!!」

●丘:鏡桜街(8合目〜てっぺん)

   男と狼、地面に伸びて突っ伏している。意識はない。
   ライビ、体が元どおり小さくなっている。
   リョウスケ、男のサングラスを手に取り、
リョウスケ 「これは役に立ちそうだから、もらっとくか」

   戦いに勝利した、リョウスケとライビ。
   ライビが連れて行こうとしていた丘のてっぺんまで二人は再度歩き出す。

ライビ 「急な戦いに巻き込まれてしまったけど、もうすぐてっぺんに着くニャ」
リョウスケ 「あのさ、さっきから思ってたんだけど・・・」
ライビ 「なにニャ?」
リョウスケ 「いや、ちょっと言いにくいんだけど・・・」
ライビ 「だから、なにニャ??」
   リョウスケ、ニタァと笑い、
リョウスケ 「無理にニャとか言わなくていいよ(笑)」
ライビ 「・・・・。猫なんだから・・無理とかじゃなくて・・ニャ、くらい言う、、ニャ、、?」
リョウスケ 「いや、完全に猫に寄せようとしてる(笑)。あんなに強くてかっこいい系なのに、なんか可愛い子ぶろうとしてる(笑)」

   ライビ、顔が真っ赤になり、
ライビ 「それは絶対言うなぁぁぁ!!!」

   ライビ、リョウスケを追いかける。逃げるリョウスケ。ドタバタ劇。

   騒がしい二人の追いかけっこが終わる頃、てっぺんが見えてくる。

ライビ 「ハア、ハア。今日はこのくらいにしといてやるニャ。着いたニャよ」
リョウスケ 「ハア、ハア、ハア。まだニャ言うか。最後のニャの位置おかしいし、、。なんだこれ・・・」

   丘のてっぺんから見える景色は大きな桜の木が何百本も立ち並び、街全体を囲んでいる。

リョウスケ 「まただ・・、なんで・・花がほとんどクリスタルなんだ・・」

   ライビ、真面目な顔つきになって
ライビ 「これが、カガミザクラだよ」
リョウスケ 「カガミザクラ・・・」

   大量のクリスタルの桜の花びらが空に螺旋を描きながら、円を広げるように舞い上がった。

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