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マーク・キャナの覚醒に見るMLBの打撃トレンド

5年目のユーティリティプレイヤーのマーク・キャナが躍動しています。
シーズンはまだ8月半ばながら、fWAR2.3、その他出塁率やホームランなどでも自己ベストを記録するキャリアイヤーを送っています。

今回はそのキャナの覚醒の要因について調べて書いていきます。

洗練されたアプローチ

キャナのアプローチの変化の一つは”見極め”が改善した点です。

K%は20.6%はキャリア2番目の低さで、BB% 13.9%は断トツのキャリアハイを記録しています。それだけでなく、O-Swing% 21.9%もそれまでのキャリアハイ28.2%(2018シーズン)を大きく下回り、改善がフロックではないことを示しています。

キャリアハイの出塁率.381の秘訣は間違いなくここにあります。


力強さを増したアプローチ

もう一つの大きな変化は引っ張り打球が増加したことです。

引っ張り方向への打球を示すOppo%は44.8%から54.9%に、センターからライト方向への打球は減少しています。


この2つの変化から分かること

三振減・四球増」と「プルヒッティングの増加」はA'sの方針、あるいは現代のトレンドに沿ったものだと言えるでしょう。

まず「プルヒッティングの増加」ですが、これはフライボールレボリューションの煽りを受けたものです。
なぜ、FBRがプルヒッティングの増加に影響したかというと、それは引っ張ったほうがホームランを打ちやすいからです。

Fangraphsによれば、引っ張ったフライボールがホームランになる確率は34.4%の高確率。センター方向では11.0%で、逆方向だと6.0%にまで確率は下がり、明らかに引っ張った方が有利であるというデータが出ています。

下の記事はCLEのホセ・ラミレスとフランシスコ・リンドーアが小柄であるのにも関わらずホームランを量産できるのは、プルヒッティングを意識しているからだ、という趣旨のことが書かれています。(記者は"The MVP machine"やビッグデータベースボールで知られるトラビス・ソーチック記者。)

A'sもPull%の割合をどんどん上げていて、2017年にはMLB18位、2018年も19位だったチームのPull%ランキングを今年は4位にまで上げています。

そして、K%の方も2017年から26位13位4位とワーストに近いところからベストのところまで上り詰めています。
三振の多さというのはフライボールレボリューションの弊害であり、裏でもありますが、ホームランのコストが安くなっている今、三振か/HRかというフリースインガーは淘汰される傾向にあります。
また、チームとしてもここ最近世界一になっているチームはアベレージの高さと三振の少なさを両立させているチームです。A'sもそれを踏襲しているのだと思います。


まとめ

今回は今年のキャナの覚醒の要素を球界全体のトレンドとA'sの目指している方向性にからめて書いてみました。

キャナは打撃面だけではなく、スーパーユーティリティという面でも流行に乗っかった存在です。メインポジションは外野の両翼ですが、オルソン離脱中は1B、ロレアーノが離脱している現在はCFでの出場機会も増やしています。肩は平均以下でスプリントスピードにも秀でているわけではありませんが、OAAやDRSでは及第点もしくは平均以上の数字を残していて、ロレアーノの穴をよく埋めています。

これまでフルタイムのプレーヤーではありませんでしたが、キャナは今やチームになくてはならない存在です。ロレアーノが復帰しても、きっとまたどこかで出場し続けるでしょう。首脳陣は嬉しい悩みを抱えることになりそうです。




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