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マドリードダービー レビュー (前半) 理想と現実

アトレティコからすると屈辱を味わう結果となった今季1回目のマドリードダービーについて、(アトレティコ側の視点から)振り返っていきたいと思います。

スタメン

理想 ~思い描いたプラン~

アトレティコは各メディアの予想を裏切る、エレーラの起用という勝負をスタートの時点からかけていました。
このスターティングメンバーから読み取れるメッセージは「ボールを握る」こと、だと戦前多くのアトレティコファンは思ったことでしょう。
これまでにもエレーラが5-3-2の中盤の底で担ってきた役割は、マイボールの時間を作り、プレスを回避しながら展開をすることでした。
また、守備での貢献があまり期待できないスアレスの起用も、ボールを保持し、多くチャンスを作ることが前提になります。

特に、想定されていたサウールではなく、エレーラを起用したことは、この大一番で、今までとは違い、アトレティコがボール保持に対する意思表示をしたと言えたはずでした。

その背景には、CLグループステージ第5節で、フルメンバーではないとはいえ、欧州王者バイエルンにフィニッシュ以外のところは優勢に試合を進めた自信からも、ここ最近のリーガでボールを支配しゲームを進めてきた自信からも、マドリー相手にもやれる、というような確信があったのかもしれません。

ボール保持の失敗と先制点

シメオネは試合後のインタビューでも、今期志向しているボールを保持するスタイルに失敗したと認めていましたが、アトレティコは立ち上がりからマドリーにボール保持を許す形になります。
この展開は、いつも通りのマドリードダービーの形ですが、この試合はボール保持を目指した上での展開であることは忘れては行けません。

アトレティコはいつも通りの5-3-2でスタートしています。ボールこそ持てないものの、5レーンをしっかり埋め、ブロックを引いたアトレティコの守備は見ていて不安を感じるものではありませんでした。
オブラクがスーパーセーブで救ったベンゼマのミドルシュートやクロースのパスなど、危ないシーンはありましたが、ボール保持こそ失敗したものの、露骨な粗が目立つ入りではありませんでした。

しかし、前半15分、クロースの見事なCKにカゼミロが合わせてマドリーが先制します。失点シーンはカゼミロのマークについていたエレーラがスリップしフリーになったカゼミロが決めたアンラッキーなものでしたが、これがアトレティコにとって地獄の始まりでした。

マドリーはここから試合巧者ぶりを見せつけます。
ボールを保持しても無理に攻めいることはせず、クロースのサイドチェンジなどから隙を伺いながら、攻撃に詰まると最終ラインまで回してビルドアップを1からやり直します。こうして、マドリーは試合時間を大きなリスクを負うことなく上手に消化していきます。

誤算

こうなると、ハイプレスを志向している今季のアトレティコはハイプレスをかけボールを奪いに行きたいところでした。が、先述した通り、最前線にスアレスを起用しているため前線のキーマンであるアンヘルコレアを欠き、プレスが機能しません。
たまに攻撃に転じる際にも、マドリーの素早い切り替えとポストプレーで時間を作れるコレアを欠くためにボールを前線に運べません。

こうなると、アトレティコの頼みの綱はトリッピア→ジョレンテのホットラインやジョレンテ、カラスコ、フェリックスの単独突破になります。
しかし、ジョレンテはメンディに封殺され、カラスコは過労によるコンディション不良、たまにフェリックスの突破は見られましたが、周囲のフォローや連携に欠き決定的なシーンは作れません。

アトレティコの遅攻時の基本路線は左サイドの連携からの崩しになりますが、カラスコが不調、エルモソとコケはハイプレスで自由が少なく、フェリックスは孤立したりボールを受けることが出来なかったりするシーンが多かったです。
また、マドリーは右ウイングにルーカスバスケス起用し、このアトレティコの左からのビルドアップを上手く封じていました。

この試合3バックの中央(途中からは左CB)を務めていたのはフェリペでした。
本来このポジションは、現在負傷離脱しているヒメネスが担っているポジションですが、攻撃時に気の利いたポジショニングと展開力が求められます。
フェリペは守備面においては文句の付けようがない素晴らしいCBですが、それと同時に足元の技術はおぼつかない面もある選手です。

フェリペが3バックの中央を務めると、両脇のサヴィッチ、エルモソの重要度が大きく増す訳ですが、マドリーはフェリペには厳しいプレスをかけずに、両脇のふたりに激しくプレスに行くことでアトレティコのビルドアップを左サイド、最終ラインの両方で機能不全に追い込んだのです。

4-4-2へのフォーメーション変更

中盤をマドリーの三人衆に完全に支配されている状況を見て、シメオネは5-3-2を捨て4-4-2への移行を決断します。
5バックのメンバーで4バックへ移行したこの決断も良い方には転びませんでした。
CBは横の距離感を掴みきれず、不自然にスペースが空くシーンが多くなり、サイドチェンジへの対応でスライドが必要になり、マドリーのボール支配を容易にしてしまった点も指摘できるでしょう。

※この4-4-2への移行はこの試合に限らず、マイナスな一面が多いようにも感じますが、これは後半で触れたいと思います。

カラスコの不調と中盤での劣勢、という問題はあったかもしれませんが、前半に関してこの決断は早すぎるものだったと言えるかもしれません。

今季初の先取点を許し、選手や監督も焦りがゼロではなかったのかもしれません。

前半まとめ

選手起用と戦術の不一致、主軸の不調に加え、マドリーの綿密なアトレティコ対策と試合運びに上手くやられた前半だったと言えるでしょう。

シメオネはこの劣勢を展開すべく、ハーフタイムで思いきったカードを切ることになります。

長くなってしまったのでこの試合のレビューは前半と後半に分けたいと思います。
ぜひ後半もお読みください。

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