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ダルビッシュさんへの手紙

ダルビッシュ有さんへ

立秋は過ぎましたが、残暑というにはまだまだ暑い、猛暑日が日本では続いています。アメリカは広く、移動先によって気候も大きく異なるでしょう。あなたの活躍はスポーツニュースで拝見しています。

さて、大船渡高校の佐々木朗希投手が夏の岩手県大会決勝で登板しないままチームが敗れ、甲子園に出られなかったことについて、『サンデーモーニング』で張本勲さんが「けがを怖がったんじゃ、スポーツやめたほうがいい」と語ったことについて、あなたは「シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う」とツイートしました。

直接的に張本さんの人格や番組の方向性を責めるのではなく、『ドラゴンボール』に登場するキャラクターに託して大事なことを指摘してくれました。

確かに決勝での、そして甲子園での佐々木投手のピッチングを私は見たかったです。

でも、あなたが「自分が一番大事だと思うのは子供達の健康であり、健康を維持した上で一人でも輝く選手が増えることだと思っています。 暑い中長時間練習させたり、試合や練習で何百球も投げさせるのは教育ではありません」と書いたように、私が見たいと思う気持ちと、選手の健康を秤にかけたら、後者が勝るのは当然です。

あなたは、また毎年誰か選手が炎天下に倒れ力を発揮できずに消えていく地方大会の開会式についても「誰が暑い中入場行進して、知らんおっちゃんの長い話聞きたいねん」「今まで自分は教育にプラスになった開会式のスピーチなんて聞いたことないです。みんな同じこと言います」と不要論を述べています。

一連のツイートを読んで、いろんなことを考えました。

私は身長が6フィート6インチ(198cm)と、あなたより1インチだけ高いので、上から目線になるかもしれませんが許してください。

私も含め、歳を取ると既存の枠組みからどうしても外に出るのが億劫になり、そのことを誰よりも自分自身が認めたくないから、立場や過去の実績をかさにきて批判を封じ、議論が始まるのを抑えようとするものです。

あなたが書いているように「主役は球児。誰も感動したい人たちのために甲子園目指してないです」よね。

だけど、高野連があって、朝日新聞があって、阪神球団があって、もちろん各校の野球部も、OB会も、その他諸々もあって、はじめて夏の選手権大会は存在します。

だから、あなたに何も言わずに黙っていろ、とはまったく思いません。

あなたひとりが矢面に立って、分からず屋のおっさんや、議論されることそのものが困る人たち、ただ感動やニュースを消費したい人たちに対峙しているように見えて、その構図が私には我慢がならないのです。

高校野球取材や実況の経験がわずかにあるとしても、私はやっぱり部外者です。当事者や当事者だった人たちが、原理原則に基づいて議論を始めることのどこが変でしょう。

「ずっと停滞していた日本球界を変えていくには勉強し、今までのことに疑問を感じ、新しいことを取り入れていく。その中で議論というのは外せないツール。それを黙って仕事しろとはまさに日本球界の成長を止めてきた原因って気づけないのかな?」

その通りです。

誰かが「私はこう思う」と発言することそのものが受け入れられず、あいつは面倒な奴だとレッテルを貼り、自分は安全なところから石を投げる世の中になってほしくはありません。

いつか、何かの拍子に、その矛先は自分に向いてくるかもしれないです。

そのために、いま熱闘甲子園の時期だからこそ、ダルビッシュさんだけでなく、当事者が声を上げて議論を始めてほしいです。

それは、今日も炎天下行われている大会に水を差すものではありません。

ダルビッシュさん、あなたへの手紙のつもりで書き始めた文章ですが、読み返してみると、ラジオパーソナリティとしての自分への手紙になっていました。失礼しました。

私は私の持ち場で、老害にならないよう気をつけながら、仕事をしていきます。

真夏の甲子園、炎天下の過密スケジュールでない、それでも全国の球児が憧れ、観客や視聴者も無心に応援できる大会に、早くなるといいですね。

子守康範

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