憧れのお姉さん~「二十歳の原点」高野悦子さん

 私が、「二十歳の原点」という作品を知ったのは、高校1年生のとき。
学校の授業で、国語の先生が紹介したのがきっかけだった。

 もともと、本を読むのは大好きだったし、早速図書館で探して、借りて、
読んだ。

 衝撃だった。

 借りて読むだけでは収まらず、シリーズ三冊を買った。

 高野さんの、ものすごく深い思考、内省、葛藤に衝撃を受け、何よりも、
「自殺」でこの世を去った、という事実が、16歳の私を虜にした。

 私は、その頃既に「死にたい人」だったから、憧れの自殺を遂げた人に、
強烈な憧憬を懐いてしまったのだ。

 高野さんに出会ってから30年近く経った今も、彼女は私の憧れだ。高校
のとき買った文庫本は、手放したけれど、今、私のスマホには、電子書籍で
「二十歳の原点」三冊が入っている。

 度々読み返して、思う。この世を去ったときの高野さんの倍以上、歳を
取ったのに、私の方がはるかに幼稚だ。二十歳で、こんな思考ができる
のか、と。

 そして、「彼女が生きていたら」と。

 存命が不可能な年齢ではない。会って、話してみたかったとは、以前から
思っていたような気がする。

 けれど、高野さんが「自殺した」から、この作品は世に出て、私も
高野さんを知ることができたのだ。カッコさん(高野さんの愛称)が
自殺を選ばなければ、私とカッコさんの人生が交わることはなかった。

 私が高校で属していたのは、進学コースだったから、1年生のときから
模擬試験は度々受けていた。志望校には必ず、立命館大学の文学部、と
書いた。カッコさんが学んだ大学だ。彼女は日本史、私は日本文学と、
コースは違ったが、カッコさんの後輩になることに憧れていたのは確かだ。

 実際に、立命館の文学部には、合格した。実家の経済状況が悪くて、
入学手続きはできなかったけれど。カッコさんの後輩にはなれなかった
けど、合格はとてもうれしかった。

 生きていてほしかったけど、ご存命なら、知ることもなかった女性。
いつも、「生きていたら」と、「自殺したから知れた」という二つの
間で、私の心は揺れる。

 きっと、私は自死を選べない。だから、いつまでも、彼女は
「憧れのお姉さん」だ。

 

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