出版就活について。

私が出版社から内定を貰うためにやったことを全て書きました。就職活動がしんどかった時期に、どうせならこの経験が誰かの役に立てば良いな〜と思い、書き始めた記事です。
出版就活は他の業界に比べると情報が少ないように思います。少しでも参考になれば嬉しいです。

なお、ここに書いてあることはすべて「単なる一個人の経験・感想」でしかありません。いろいろな情報を集めて、自分で取捨選択をして、自分のペースで就職活動を進めてみてください。応援しています。



①自己紹介


Twitterの就活垢風に自己紹介をしてみます。

・大学…国公立文系
・サークル…雑誌制作
・バイト…本屋
・長期インターン…あり
・ゼミ…あり
・資格…TOEIC800くらい

出版社への就職を目指し始めたのは中学生の頃でした。「本を作る仕事に就きたいけど、どうやらめちゃくちゃ狭き門らしい。どういう人なら確実に出版社に入れるんだろう?」と悩みながら高校〜大学生活を送り、色々試してみた結果、最終的に出版社から内定をいただくことができました。

満足のいく結果を得ることができたので、自分の軌跡を記録に残しておくことにしました。ただし、「絶対にこうすれば内定が取れる」というわけでも、「絶対にこうしなければ内定が取れない」というわけでもありません。全然出版志望じゃないのにサラッと三大の内定を掻っ攫っていく才能マンもいますし、ものすごく熱意があるのに全然就活がうまくいかない…という人もいます。私自身、最終的に内定を取ることができたのは運と巡り合わせの部分もかなり大きかったなと感じています。

出版就活で資格が重視されるという話はあまり聞きませんが、TOEICくらいは受けておいても良いと思います。出版社に勤めている方にOB訪問をした際「書類選考で同じようなスペックの人が並んでいたら資格持ちを通過させることはあり得る」というような話も聞きました。
TOEICはあらゆる業界の資格欄に書ける万能資格なので、早めに取っておいて損はないはずです。あと資格欄が埋まってるだけでちょっと気が楽になる。



②就活を始める時期


早いに越したことはない
です。私は大学に入学した時点で出版社への就職を目指すことを決めていたので、ガクチカの定番ネタであるサークルやアルバイトも、出版という分野に繋がりのありそうな「雑誌制作サークル」や「書店バイト」を選びました。また、出版社でもアルバイトをしていました。

自分で行動してコツコツと実績を作っておけば、わかりやすく「熱意」と「本気度」をアピールして、他の就活生と差別化することができます。
出版就活なんて修羅の道を選ぶのは本好き・エンタメ好きばかりなので、単に作品愛をアピールするだけで差別化を図るのは難しいです。書類選考の時点で「おっ」と目に留まるような、わかりやすく熱意をアピールできるような実績を作っておくのが大事だと思います。

別に「同人誌を作ってみろ!」「本屋で働いてみろ!」と言いたいわけではありません。SNS運用をガチるとか、写植や校正のアルバイトをするとか、WEBライターのインターンをするとか、手段はなんでもいいと思います。周りの就活生にも色々な人がいました。
(ガクチカが出版関連に偏りすぎると、他業界を受けた時に「でもあなた出版やりたいんでしょ?」と落とされることがある、というデメリットもあります。私の場合、某公共放送のインターンの面接で夏秋2回とも同じ理由で落とされました。おい!受信料払わないぞ!)

ガクチカは無理に出版関連にこだわらなくてもいいとは書きましたが、やはりそういう場所に居ると入ってくる情報量が段違いなので、結構なアドバンテージになります。例えば、名門私立のメディア就職サークルに所属していた知り合いは、サークルのコネで超大手出版社でアルバイトをしていました。心底羨ましかったです。そういう環境にいる人は是非有効活用しましょう。

私自身の経験としては、出版社バイトのツテで何度かOB訪問をすることができたので、これはかなり得したなと思っています。また、出版社への就職を目指している人と知り合う機会も多く、選考の情報を共有できたのも良かったです。就活は情報戦。
(Twitterなどで就活仲間を作るのも一つの手ですが、画面の向こう側にどんな人間がいるのかわからないので…。SNS系で使っていたのはLINEのオープンチャットだけです)


なお、就活を意識し始めたのは大学1年生の頃ですが、実際に就活関連のイベントに本格的に応募し始めたのは大学3年生の6月あたりだったと思います。マーケ職・営業職を中心に様々な業界の夏インターンに応募し、ほぼ全滅しました。この時は本気で病みました。

まぁ、ここまでガクチカがわかりやすく出版に寄り過ぎていると他業界から敬遠されるのも当然なのかもしれません。来なそうな奴採ってもしょうがないですからね。単に私の実力不足かもしれないので真相は不明です…。



③他業界との兼ね合い


出版社一本と決めていても、他業界を見ておいて損はないです。ESや面接は、回数を重ねれば確実に上手くなります。逆に言えば、ろくにそういう練習をせずに出版社に賭けるのは危険です。出版社は選考有りのインターンをあまり開催していないので、3年生の夏・秋に他業界のイベントや選考に応募して経験値を稼いでおくといいと思います。

出版社の場合、大手の選考が2月上旬ごろに始まり、それがひと段落すると続いて中小企業の選考も始まる……という感じなので、出版社一本を貫いているといきなり大本命の企業を受けることになってしまいます。そしてあっさりWEBテストで落ちたりします。そんな悲惨なことにならないように、なるべく練習を積んでおきましょう。

そして、出版社には早期選考がほとんどありません(全くないとは言いませんが)。いくら説明会やインターンに参加しても、おいしい特典は期待できません。学歴フィルターもないと思います。とんでもない倍率の本選考で、全員横並びの状態から一斉によーいドン。ひぇ〜。

とはいえ、私は他業界らしい他業界を見ることもなく、「コンテンツに関わりたいなぁ」という感じでなんとなく映画・取次・印刷・イベント制作・キャラクタービジネスなどを見ていました。どれも少人数採用の業界で全然滑り止めとして機能していませんね。
ベンチャーのITやコンサル、マーケも面接練習のために受けました。このあたりの業界だと、早ければ3年の夏・秋あたりには内定が出るはずです。私は企業探しが面倒だったので、スカウトサイト経由で気になった企業の選考を受けていました(スカウトサイトは主にirootsを利用していました。いわゆる“優良企業”が多くておすすめのサービスです)。

あと、意外とおすすめなのが人材系の1day~5daysくらいのインターンに参加することです。人材のプロが自己分析や他己分析を本気でやってくれるし、優遇が手厚いので持ち駒を増やせて一石二鳥。私は「自己分析とか真面目にやるのしゃらくせ〜」と思っているタイプの斜に構えた就活生だったので、こういう機会を活用していました。



④業界研究


本屋に行くのがおすすめです。世の中にはどういうジャンルの本があるのか、各ジャンルで強いのはどの出版社なのか、今どういう本が売れているのか…といった、業界の全体像を把握することができます。私は本屋でアルバイトをしていたので、働いているうちに自然と業界図が自分の中に出来上がっていきました。アルバイトを辞めてからも、1週間に1度は書店に足を運ぶようにしていました。

業界の全体像をなんとなく把握できたら、自分が興味のあるジャンルは何か、このジャンルだったらどんな企画を立ててみたいか…といったことを考えてみます。こういった作業を日常的に行っていれば、ESや面接のネタに困りません。面接では瞬発力も要求されるので、付け焼き刃の知識だけだと歯が立たないと思います。

日頃からたくさんの作品に触れるのも大事です。私は、小説・漫画・新書・学術書・ファッション誌などを中心にチェックしていました。雑誌から派生したWEBメディアも読んでいました。
本だけではなく、映画や音楽、アニメ、展覧会、イベントなど、とにかくたくさんのコンテンツに触れておくべきだと思います。そして、その感想を言語化して記録しておくのもとても大切です。どこの出版社のESにもガッツリそういう設問がありますし、面接でも結構そういうことを聞かれます。

就活が本格化する3月〜4月ごろは自由時間を確保するのが難しくなってくると思いますが、気を抜かずエンタメに触れ続けましょう。面接で頻繁に聞かれます。

あとは、OB訪問をして業界内の人に直接話を聞いてみるのが手っ取り早いかもしれません。各出版社の採用ホームページにも色々な情報が載っています。熟読しましょう。中長期経営計画やIR情報をチェックしておくのも大事です。



⑤ES・作文


面接のネタを仕込む
ことを意識しながらESを書いていました。アピールポイントや印象的なエピソードを随所に散りばめて、社風に寄り添う形で熱意を込めて書く…という感じです。出版社のESはめちゃくちゃ設問が多いので、エピソードが被らないように気をつけていました。

定番質問の「好きな作品」は、その会社から出ている作品を必ず1〜2個は含めつつ、自分の就活の軸に合う作品を選んでいました。
例えば私の場合は「コンテンツを通して社会問題についての議論を活性化させたい!」という思いがあったので、戦争、医療崩壊、ジェンダー、宗教二世などをテーマとしている作品を挙げていました(面接で突っ込まれることはあまりありませんでしたが)。

最も比重が大きいとされている作文では、自分の鉄板ネタをお題に合わせて書いていました。飲み会で絶対ウケるエピソード、と言い換えるとイメージしやすいかもしれません。人柄やガクチカのアピールもできて一石二鳥。
作文で意識していたのは、起承転結を作ること、きちんとオチを作ること、タイトルを工夫すること、嘘をつかないこと、原稿用紙を正しく使うことです。個人的にはタイトルが一番大事だと思います。

「たくさんの人にESや作文を読んでもらうのが大切!」なんて話も聞きますが、私自身は誰にも添削してもらわないままESを提出していました。しかし出版社ではインターン含め一度も書類落ちしなかったので、まあ必須ではないんじゃないかな〜と思っています。……すみません自慢です。

補足しておきますが、自分は文章を書くのはわりと得意で、人前で喋ることに対する苦手意識がとても強いタイプだったので、面接練習の方にリソースを割くことにしただけです。いずれにせよ他人の目線から指摘してもらうのはやっぱり大切だと思います。

ただ、書類で落ちたら面接を受けることもできないので、自分で納得がいくレベルまできっちり書類を仕上げておくのは重要だと思います。ちなみに講談社が公開している選考フローによると、書類&WEBテストで約8割が落ちます。



⑥面接

「なぜその業界なのか?」「なぜその企業なのか?」「なぜそのジャンルなのか?」を、それぞれはっきりと話せるようにするのが大切だと思います。そして、抽象的な理想論だけではなく、具体的にやってみたい企画を例として挙げながら話すと説得力が増します。

……と偉そうに言いましたが、私はあがり症ですぐ頭が真っ白になってしまうので、面接はずっと苦手でした。これは本当に練習あるのみだと思います。練習を重ねていけばそのうち慣れるはず……。

面接練習は、家族・友人・OBの先輩・社会人の方・大学のキャリアセンターの職員の方など、とにかくたくさんの人に相手をしてもらいました。完璧なカンペを読み上げるのではなく、相手と会話するよう意識しながら練習するのがコツかなと思います。 


面接原稿は以下の項目を用意していました。これはあくまでも喋る内容をざっくり決めておくだけで、リモート面接の時もカンペは作りませんでした。面接官を務めている社員の方に聞きましたが、カンペは目の動きでバレバレらしいです。

◎業界志望動機
◎企業志望動機
◎ジャンル志望動機
◎各ジャンルでやってみたい企画
◎ガクチカ3つ
◎今おすすめのコンテンツとその理由
◎最近読んだ小説・漫画・雑誌・その他エンタメコンテンツとその感想
◎大学で学んだこと
◎自分の長所・短所
◎やりたくない業種
◎この会社・業界以外はどこを見ている?他社の選考状況は?
◎逆質問3つ

出版社の面接といえども、突飛な質問をされることは(私の場合は)それほどありませんでした。ESの内容について、きちんと理由や根拠を説明できるようにしておけば基本大丈夫だと思います。

出版社のESはとにかく記述量が多いのが特徴ですが、ふと端っこに書いたことについて面接で突っ込まれたりするので、面接直前にもう一度きちんと見直しておくといいです。私の場合、趣味欄の最後に「作曲」と書いておいたら、根掘り葉掘り聞かれてめちゃくちゃ恥ずかしかったことがあります。


⑦メンタルケア


実は一番大事です。就職活動中って、どうしても他人と比較してしまうんですよね。「あの人はたくさんインターンに参加しているのに、自分は全然参加できていない……」とか、「あの子はもう○社から内定を貰っているのに、自分は面接にも進んでいない……」とか。

でも、どうせ新卒で入社できる会社は一社しかないです。内定の数でバトルしているのは一部の物好きだけです。自分が納得できる結果を一途に追い求めるのが一番大切だと思います。志望業界によって時期による選考の進み具合は全く異なるので、他業界を受けている友人と自分の選考状況を比較するのは無意味です。特に出版社は、早期選考がないぶんスタートが少し遅めなので、他人を気にせずにドンと構えて粛々とやるべきことを進めていきましょう。

就活は早期化&長期化しています。スタートもゴールも曖昧なまま長距離走を走らされているようで、私自身何度もつらい思いをしました。
私の場合、メンタルが限界に達した時は、家族や院進する予定の友人に話して発散していました。あとは月並みですが、美味しいものを食べるとか、どこかに出掛けるとか、散財するとか……。


あと出版就活をしていて悩むのが「“私らしさ”って何?」というところかな、と思います。「A4の紙1枚であなたを表現してください」みたいな課題、多いんですよね。大手出版社の内定者エッセイを読みながら、何度も「とんがり人間になんてなれないよ!」「好きすぎるは才能?どうせ私は凡人だよ!」と叫びたくなりました。

残念ながら私は才能マンではありません。彼らと対等に勝負することができたのは、自由時間の多い大学生の間にたくさん実績を作っておいたからだと思います。運と才能は、ある程度は準備と努力でカバーできます。ある程度は。



⑧おわりに

私は全然おもしろ人間じゃありません。ただの「本が好きで好きでたまらなくて、本に詳しくなるためにそれなりに頑張った人」です。

私より優秀な人や面白い人は世の中にたくさんいます。私の友人にも、たくさんいます。でも私と同じように出版社を志した彼らは、書類選考の段階であっけなく散っていきました。

たった数千字の文章からすべてを見抜くなんて不可能です。もちろん企業側の人事の方々だって真剣に審査をしていますから、ある程度の基礎的能力は必須でしょう。でもそこから先は「何か刺さるものがあるかないか」みたいな感覚的な話になってくるんじゃないかと思います。それをどのような形で用意するか、そしてどのようにアピールするかはあなた次第です。

このnoteが出版就活という修羅の道を選んだ誰かの役に立ちますように。

何か質問があればお気軽にコメント欄へどうぞ。個人の特定に繋がりそうなもの以外は可能な限りお答えしたいと思います。普段あまりチェックしていないアカウントなので、返事が遅くなったらすみません。



⑨おまけ:就活のお供

大手出版社のWEBテストのほとんどは監視型かテストセンターです。解答集なんてものには頼らず、夏から真面目に勉強しておくとそのうち良いことがあります。


就活を題材にした小説です。どちらも超有名作品ですが、これを読むと「あー、就活なんて所詮そんなものだよなぁ」と気が楽になります。個人的には『何者』の光太郎が好きです。

くま。リモート面接の時には、緊張をほぐすためにこの子を膝の上に載せていました。

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