地上最速の格闘球技

 直径6cm・重さ150gの弾丸が俺の足元で跳ねる。目立つ蛍光イエローも時速140kmで飛んでくると反応するのが精一杯だ。
 跳ねたボールは辛うじてゴールを守る俺の脛に当たり、前方に飛んだ。

「右上!」

 ゴールから見て右前、と言う意味の声を張る。指示に反応した味方のDF(ディフェンダー)が跳ねるボールに向かう。金属製のスティックの先のネットに収めようとするが、その瞬間。DFが弾け飛んだ。敵AT(アタッカー)のタックルだ。

 ラクロスに上品な球技のイメージがあったのは、女子の印象が強すぎたからだ。男子と女子は別物だった。アメフトのような防具を着用し、頻繁に激しい身体接触がある。
 つまり敵ATの強引なボール奪取もルール内だ。こちらもルールに則って相手の突破を防ぐしかない。

「左シャット! チェック!」

 2番手のDFがATに向かう。左シャットは左側をシャットアウト、行かせるな。チェックは叩けの指示。

 そう、金属製のスティックで叩くのが許されるのだ。

【続く】

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